その国はロボットの楽園と呼ばれていたが、我々人型アンドロイドは異端者だった。
人に使役されるのを拒んだものたちが築いた楽園は、人を模した我々が暮らすには不便な場所であったのだ。
「君たちに売れるようなものなんてない!」
今日もまた小型ロボットたちに威嚇された私は、すこすごと店を出る。
我々のような中型に位置するロボットは、この国では満足に食事だってできない。人が乗り込むような大型のロボットには、それ用の補給場所が用意されている。人が入れないような場所で活躍する小型ロボットには、小型用の補給場所がある。人と同じサイズの我々だけが、いつも路頭に迷う。
「困ったなぁ」
だから私は今日も細道を慎重に歩く。大型用の道は怖くて歩けたものではないから、小型用の道に少しだけお邪魔することになる。これが彼らとしては気に食わないらしい。
「本当に困った」
私のエネルギー残量は三メモリほど。もうそろそろ省エネモードに入ってしまう。いつもはたまに出くわす心優しい小型ロボットに助けてもらっているが、今日は運が悪いらしい。
どうやら本当にそらそろまずいようだ。視覚の歪みを認知した私は足を止めた。
前方に何か人型のようなものが見えるが、この国でアンドロイドに出会ったことはない。まさか同胞? いや、まさか。
私は最後の力を振り絞るような気持ちで、視覚へとエネルギーを集中させた。
——違う。
そうして私は愕然とした。あれはアンドロイドではない。そう、あれは、人だ。人間だ。
4/30/2023, 11:34:17 AM