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楽園


「おかえりー」
 玄関を開けると××がリビングから顔を出す。
「ただいま」
 と返事をすると、ぱたぱたとスリッパの音を立てて××が廊下を歩いてきた。靴を脱ぎながら、俺の目は××に釘付けだ。待て、お前が着てるソレ、俺のパーカーだろ。
「ちょうど今、ロールキャベツ出来たから」
「ん」
 ぎゅう、と××を抱きしめた。可愛い。可愛すぎる。反則だろ。すーはーと深呼吸を繰り返すと、××が俺の腕の中でくすくす笑う。
「何、疲れてんの?」
 疲れてはいる。休日出勤なんて意味分からないことをしてきたのだ。疲れてはいるが、今、この瞬間、全てが吹っ飛んだ。ここは楽園か?
「最高……」
「へ?」
 ××に頬擦りしながら小さく呟く。口にするつもりではなかったが、出てしまったのなら仕方ない。腕に力を込めて、××の香りで胸をいっぱいにした。
「おい? マジで疲れてんの?」
「疲れてる。××によしよししてもらわないと動けない」
「はあー? っとに……」
 顔は見えないけど、××は笑っているんだろう。肩に顔を埋める俺の頭をよしよしと撫でる。嬉しい。癒し。はあー、元気になる。明日は休みだからのんびりするぞ。
 そのためにはまず、
「ありがとう。ロールキャベツ楽しみにしてた」
「ん。いっぱい作ったからな」
 美味しいご飯を食べよう。パッと顔を上げて、体を離す前に××の額にキスをした。

4/30/2023, 11:48:19 AM