『桜散る』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
桜散る遊歩道を歩いた。遊歩道は桜の花びらで埋め尽くされており、ピンクのカーペットのようだった。満開だった桜は散ってしまったが、とても美しかった。来年もまた見たいなと思いつつも、遊歩道を後にした。
テーマ「桜散る」
新緑が風にさわさわと揺られる。花は散り見物客もいなくなり、並木通りは平穏な週末を取り戻していた。隣で一緒に歩くこの人と、少し前に花見に来たのだ。今回はたまたま通りがかっただけだが、何故だろう。あのときと同じくらい嬉しそうにそわそわしている。どうしたのか尋ねたら「今日はずっと手を繋いでくれているから」だそう。別に手くらい普通に繋ぐのだが、改めて言われると何だか無性に恥ずかしい。他に人通りもないのに振り解きたくなって、しかしがっちり掴んで離してくれない。意味もなく頬が熱い。赤面を隠してくれそうな花もとっくにない。覗き込もうとする顔を何とかして避けながら、並木通りを早足で駆け抜けていった。
(題:桜散る)
「今年もあっという間だな。」
「そうだね。」
いつの間にか咲いていつの間にか散っている。
暑さに耐え、寒さに耐え
やっとその時を迎えたのに
それはあまりに短すぎる。
「ちょっと寂しいけどまた咲くよ。だってこの子達は生きているからね。」
ふんわり。可愛くて儚げなこいつの笑顔は桜の花のようだ。そしてその芯は強く桜の木のようにしっかりと根を張っている。
「みんなお花見したのかなあ。」
「だろうな。俺は花見なんかしたことがない。」
「私もだよ。桜の下でお弁当広げて
お昼なのにビールなんか飲んで。いいなあ。」
「来年してみるか。花見。」
「うん。忘れないようにしなきゃ。」
俺たちが来年も共にいれる保証はどこにも無い。
けれどこうして未来の約束をする。来年もまた桜が咲くと信じて。
「来年もまた同じ会話をしそうだ。」
「ふふ。あり得るね。」
桜散る
桜散る春の夕暮れ。
会社から帰宅路にある公園の前で足を止める。
陽の光を受け返しながら散る花びらは、星の瞬きのようで思わず目を奪われる。
「…綺麗」
「そうですね」
いつの間にか、隣にいた学ラン姿の少年が呼応し頷いた。独り言を聞かれた恥ずかしさと、急に現れた少年に驚愕し、目を見張った。
「ここ、桜が綺麗なんですけど、あまり知られてないみたいで穴場スポットなんですよ。ほら、人も全然いないでしょう?」
「そう、みたいね」
落ち着いて話すその横顔に、桜以上に目を奪われた。
花束を握る手が汗ばむ。
「近くに線路があるから、電車が通ると叫んでも聞こえづらいんですよ。…この道を人が通らない限り」
「…っ!」
抑揚のない声が不気味に響く。何も答えない私を見透かしたように少年は続ける。
「1年前の今日、僕はここで刺されました。犯人は、学生を狙った愉快犯だったそうで、すぐ捕まりました。誰でも良かったんですって。」
少年の声と自分の鼓動が耳の中でぶつかり合う。
「そして、その現場を見ていた人がいたんです。
犯人はそれに気付かず、すぐに逃げて行きました。
けれど、僕はまだ生きていた。電車が通ったけど、
最後の力を振り絞って、叫んで、たすけを求めた。
……あなたに」
ゆっくりとこちらを向く少年。
「どうしてあの時助けてくれなかったんですか?その菊の花は、どういうつもりで持ってきたんですか?」
視線を落とすと少年の腹部は、学ランにシミを滲ませていた。
「あの日、あなたが僕の声を聞いて動いてくれたら、こんな事にならなかったのに…っ」
どうして、という恨み聲と共に風が強く吹いた。
目を閉じて、風が止むのをひたすら待った。
再び目をあけると、そこに少年の姿はなく、
ただ桜が静かに散るだけだった。
咲いていないので
散ってもいない
蕾もまだまだ
骨張った桜の幹を見上げる
どの枝からどのように芽が出て
華やかに艶やかに
花ひらくのか
そして名残惜しげに
去っていくのか
それはもう少し先のこと
お楽しみは長く静かに味わいたい
#19『桜散る』
桜が散る様子はとても綺麗で儚くて。
だけれども瞬きを一回しただけの短い時間で
さっぱりと終わる感覚だ。
散った桜は地面に横たわるだけ。
それもいつのまにか消えている。
季節が周るというのはこういうことか。
桜散る
あの満開の華やいだ休日が夢のよう
若い緑の葉をつけ始めたユリノキが花を散らし切った風にうかれている
#桜散る
桜散る景色を横目に、私は思う。
あなたとお花見をした時から何年が過ぎただろうか? 一体いつまで、美化されていくばかりのあなたとの思い出を追いかければいい?
『桜散る』
1年に一度、たった数週間の
短い時間なのに
誰よりも派手に空に咲いて
綺麗なまま散っていく
美しいまま人の心に残ってく
そうなりたいとか
時々思ったりもする
『桜散る』
朝の支度を済ませ、そろそろ仕事へ‥のタイミングで息子から電話が来た。「俺のヘルメット、玄関に無い?」急いでいて忘れたのだろう、それは下駄箱の上にちょこんと置いてあった。
高所作業の息子にヘルメットは必需品だ。引き返すけど途中まで持って来て欲しいと懇願され、私は慌てて家を出た。急がないと私の仕事に間に合わない。川沿いの道を飛ばし、半分行った所でようやく息子に出合った。
「悪い!母さんありがとう!」ヘルメットを受け取った息子は車に戻りつつ「ほら、母さん上見て上」
そう言えば、川沿いの桜並木が満開だと聞きつつも中々来れずにいた。「俺のお陰で最後の桜に間に合ったね」と笑う息子を見送りながら、私は散る桜を暫く眺めた。
『桜散る』
中学生最後の4月、桜が咲きほこる木の下で告白した僕の言葉を、君は泣きながら頷いてくれた。
僕は必死になって君の涙を拭ってたのを覚えてるよ。
君が大好きな桜の木の下での告白、少し卑怯かなって考えたけど、君には僕の事、忘れてほしくなかったんだ。
よく小さい頃から一緒だった僕達は、毎日遊んだり、喧嘩したりしてたよね。
あっという間の十数年、君と過ごしてると、時が過ぎるのを早く感じた。
嫌な思い出もあったけど
君と出会えて良かったなって思った事のほうが多かった
白いカーテンの窓の外で桜の花がヒラヒラ舞っている。
君が大好きな桜の木。
とても綺麗だよ。見なくていいの?
ふと、そう思って君の方を見ると、君の目から桜の花弁みたいに大きな涙がこぼれてる。
君の涙をいつもみたいに、拭おうと思ったけど、
僕の手は、もう動くことは無かった。
お昼ご飯を食べてから、桜散る中を書類を持って走り抜ける。ふと、スマホのアプリを起動すると君からの連絡、頬が自然と緩む。さて、もうひと頑張りしましょうか。
咲いた桜になぜ駒つなぐ、
駒が勇めば花が散る~♪
てな唄がある。
私は落語ファンだが、落語には四季がある。
春夏秋冬(しゅんかしゅうとう)にそれぞれ合う噺があるから、春になったら落語の枕に、よく上の文句を引用する噺家がいる。
駒と言えば、馬肉の事を「サクラ」と呼んだりする。切ったばかりの馬肉は綺麗なサクラ色をしているからそう呼んだのだとか、
或いは、「けとばし」とも称する。今は馬肉なんて高級食材だが、昔は安い肉の代表みたいなものだったようだ。
だいたい浅草辺りの古い人は「けとばし」と言った筈だ。他ではあんまり言わないのかな?
若い頃、落語にすっかり夢中になって、都内の寄席や落語会に足を運んだものだが、落語のテープも集めていた。当時はYouTubeなんてないですからね。
五代目古今亭志ん生、八代目桂文楽、六代目三遊亭圓生は古典落語のBIG3と言って良い(全員、明治生まれ)。
この3人を中心に、とにかく買いまくった。高かったけど、惜しくなかったし、それぞれ何回聴いたか分からないくらい聴いたから、充分元もとれたのである。
浅草のレコード屋で落語のテープを6巻くらい買った時、ついでを装って、どうしても訊きたい質問を店の人にぶつけてみた。
落語によく出てくる吉原の大門(おおもん)が何処にあるのか、その頃の私は知らなかったのである。
落語の中でも廓噺(くるわばなし)は特に傑作が多い気がする。
落語ファンを自認しているクセに、大門も知らないなんて、恥ずかしいと思っていた。
「あのぅー、吉原の大門って、どういうふうに行けば良いですかね?」
レジのオジサンが、目を丸くして一瞬絶句したかと思うと、まあまあ広い店内中に聞こえるような大声で叫んだ!!
「おおおーい!吉原の大門はどう行ったら良いですか?だってよ!!!」
よっぽど嬉しい質問だったのだろう。店に居る人全員からニコニコした顔を一斉に向けられて、私は驚くやら恥ずかしいやら、ただ赤面するしかなかった。(このリアクション、さすが浅草である)
もちろん、その後店の人は道順を丁寧に教えてくれたのだが。
無事、大門を見つけた私は、桜肉の店も発見したので、ついでに入ってしまった。
そこは吉原にある有名な「けとばし」の老舗で、昔の評論家 安藤鶴夫(彼も明治生まれ)の本でも私は既に存在を知っていた。
中は座敷になっており、客はまだまばらであった。
胡座をかき、ひとりで酒を飲み、「桜鍋」をはふはふやっていると、なんだか急にパアっと店の入り口が明るくなったかと思うと、
上がり込んで来たのが漫才の内海桂子・好江の桂子師匠だった。
ちょいとお忍びで、なんて奥ゆかしくではない、漫才師らしく、明るく、賑やかに、それでいて堂々としたボスの風格で圧倒していた、
桂子師匠が現れたら、誰もがそっちを見るだろう、彼女はただ食事しに来ただけなのだが、場の空気はすっかり彼女が支配していた。
師匠もほんの30分くらいの短い時間で、ぱぱっと飲み食いして、店の事をさんざん褒めて、サッと帰って行った。
粋な人であった。
桜散る朝
気がついたら桜の木は萌葱色に染まり、爽やかな風を呼び寄せてくる。
過ごしやすい日になったのはいいけど、時の流れの速さにはいつも驚かされるなあ、と私は感慨に耽る。
桜散る
もうすぐ桜が散ってしまう
この桜が全部散ってしまうように私のこの命も散ってしまえばいいのにと思っている
#桜散る
満開の桜の木下
あんなにイキイキしていた新社会人の彼は、今では死んだ魚の目で電車のつり革にしがみついてた。
桜散る季節だね。
はらり
ちらり
ひらり
ふわり と
風も無いのに
静かに情緒たっぷりに散る桜
サクラチルとは悲しい響きだけれど
緑の葉が茂ると木漏れ日清々しく
秋の桜紅葉もまた素敵に映える
四季の美しさそのものの姿に惹かれる
#桜散る
『桜散る』(桜の森の満開の下)
ずっと探しものをしている。桜の花びらを掻き分け、腐った落ち葉の混じる土を掻き分けると好いた女の死に顔に行き着くのだが、瞬きをすればまた目の前の地面は花びらで埋め尽くされている。
冷たい風に頬を撫でられて顔を上げるとおれ自身が花びらに変じ、気づいたときにはまた地面を掻き分けている。手を止めて爪の間に入った土を眺めていると遠い昔のことを思い出しそうになるのだが、落ちてくる花びらに気を取られてまた地面を掻き分けることになる。
ずっと同じことの繰り返し。気が狂う間もないほどに満開の桜から花びらが散り続けている。
「桜が散る理由は意外と色々あるのな」
塩害、虫害、キノコ、自然な時の経過。ソメイヨシノに関しては、満開になったあたりで散るための手順が実行されて、ゆえに一斉に花が落ちるとか。
某所在住物書きは桜を書くにあたり、ネット検索の結果をスワイプで確認しながら、ぽつり。
「ソメイヨシノが一斉に咲くのは全部クローンだから、ってのは知ってたが、
そのソメイヨシノの花びらが一斉に散るの、そういう『一斉に散る仕組み』を持ってるからなのか……」
じゃあ他の桜は?
物書きはふと疑問を、持って、検索をかけようとして、面倒になって文字入力をやめる。
「散る、っていえば」
物書きは言った。
「例の桜問題、『ソメイヨシノが咲かない地域が出る』の他に、『ソメイヨシノが一斉に咲いたり、一斉に散ったりしなくなる地域がある』ってハナシも、あったような、無かったような……」
――――――
まさかまさかの前回投稿分に繋がる物語。
最近最近のおはなしです。都内某所のおはなしです。
某稲荷神社は比較的深めな森の中。木々が日差しを適度にさえぎって、都内にありながら、そこそこの涼しさを保っています。
稲荷の神様のご利益か、ここに住む狐のまじないか、ともかく在来種や日本固有種の花多いそこは、今まさに、盛春の花があちこちで、顔を出し花びらを開き、ミツバチやチョウチョを待っています。
さて。
この稲荷神社、「ぼっち桜」とか「夢見桜」とか言われている、今となっては本当の品種名もそれが在る事実自体もだーれも分からなくなってしまった、「ひとまず桜の仲間」ということしか知られてない桜がありまして、ソメイヨシノ散った今が丁度花盛り。
多分遅咲き品種なのでしょう。
ソメイヨシノほどの華麗さも、シダレザクラほどの豪華さもありませんが、
ぽつぽつ5枚の花びらを、勿論ぼっちなので受粉して実を結ぶこともありませんが、
ぼっちなりに、咲かせておりました。
「……結局何の品種なんだろうな?」
そこにやって来たのが稲荷神社の参拝客。
「一斉に咲かないからソメイヨシノではないし、八重咲きっぽいのはよく見れば雄しべと雌しべだし?」
名前を藤森といいます。
花と風と雨を愛する、雪降る田舎からの上京者。
今日は在宅でリモートワークをしておりまして、休憩時間に、ちょっと花でも撮りにきたのでした。
「神主さんは『夢見桜』と言っていたが、検索をかけても該当品種が出てこない。……愛称かな」
ポン、ポン。
立派に育った幹に触れ、かわいらしく咲いた胴吹きに気付き、スマホでパシャリ。
ふと、木の下に視線が向きました。
桜の花が、花びらではなく、花そのものとして、ポトリ、いくつも落ちています。
「スズメかシジュウカラの犯行だな?」
あーあー、綺麗にこんなに、落としてしまって。
桜散る木の下、緑と薄桃色の中に片膝をつき、
藤森、根本からポトリ落ちている桜の花をひとつ、拾い上げました。
きっと、ここの桜の蜜はとっても甘くて、美味しくて、絶品なののでしょう。
それを知った小鳥たちが春の甘露を堪能して、しかしメジロやヒヨドリのように蜜を上手に吸えないスズメは、プチリ、花をこうして落としてしまうのです。
しゃーない、しゃーない。
「夢見桜か」
ぼっち桜の木を見上げて、藤森、呟きました。
「いい夢でも、見られるのか?……まさかな?」
チラリ右見て、チラリ左見て、ぐるり周囲を再確認。
参拝客が自分以外居ないのを見てから、藤森、スマホで20分のタイマーをかけます。
桜散る通称夢見桜の下で、ちょいと昼寝してやろう。
どれどれ。
藤森は比較的キレイなあたりに汗拭き用のロングタオルを敷いて、すぅすぅ、幸福に寝息をたてます。
藤森が桜散る夢見桜の下でどんな夢を見たか、そもそも20分程度じゃ何も見てないかは知りませんが、
少なくともこの十数分後、神社在住の子狐が縄張り巡回、もといお散歩で歩いてきて、
寝顔さらす藤森のドテッ腹にドンと飛び乗り咳き込ませるのは、前回投稿分の物語で明らかなのでした。
【桜散る】
「散っちゃったねー桜」
「気づいた時に咲いてて、いつの間にか散るのが桜」
「言えてる」
「花見とかしたかった?」
「また、来年でもいいでしょ」
「また散った頃に、こんな会話して忘れてるかもよ?」
「それは良い」
「何が?」
「来年も、この先ずっと、俺ら一緒ってこと」
「……確かに、良いな」