hashiba

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新緑が風にさわさわと揺られる。花は散り見物客もいなくなり、並木通りは平穏な週末を取り戻していた。隣で一緒に歩くこの人と、少し前に花見に来たのだ。今回はたまたま通りがかっただけだが、何故だろう。あのときと同じくらい嬉しそうにそわそわしている。どうしたのか尋ねたら「今日はずっと手を繋いでくれているから」だそう。別に手くらい普通に繋ぐのだが、改めて言われると何だか無性に恥ずかしい。他に人通りもないのに振り解きたくなって、しかしがっちり掴んで離してくれない。意味もなく頬が熱い。赤面を隠してくれそうな花もとっくにない。覗き込もうとする顔を何とかして避けながら、並木通りを早足で駆け抜けていった。


(題:桜散る)

4/18/2024, 5:42:19 AM