水晶

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『桜散る』

朝の支度を済ませ、そろそろ仕事へ‥のタイミングで息子から電話が来た。「俺のヘルメット、玄関に無い?」急いでいて忘れたのだろう、それは下駄箱の上にちょこんと置いてあった。

高所作業の息子にヘルメットは必需品だ。引き返すけど途中まで持って来て欲しいと懇願され、私は慌てて家を出た。急がないと私の仕事に間に合わない。川沿いの道を飛ばし、半分行った所でようやく息子に出合った。
「悪い!母さんありがとう!」ヘルメットを受け取った息子は車に戻りつつ「ほら、母さん上見て上」

そう言えば、川沿いの桜並木が満開だと聞きつつも中々来れずにいた。「俺のお陰で最後の桜に間に合ったね」と笑う息子を見送りながら、私は散る桜を暫く眺めた。

4/18/2024, 4:16:52 AM