『束の間の休息』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「渡り鳥の旅」
「今夜、何としても山を越えるぞ」
数時間におよぶ参謀会議の末、リーダーのタングは重々しく言葉を吐き出した。
これまでの長旅で仲間たちの疲労は積もりに積もっていた。
しかし、明日からは天候が崩れそうだ。今日を逃すと数日間
の待機を余儀なくさせる。冬の寒さがくる前に目的の地に辿り着くためには今日しかない。
伝達係のムファが仲間たちを集めて宣言した。
「今夜、山越えを実行する。それまでゆっくり休み体力を回復してくれ」
仲間たちにどよめきの声が湧き上がる。
今年産まれたばかりの3羽の兄弟たちが口々に話し出す。
「やった〜、早く行きたい!今日のためにいっぱい飛ぶ練習をしてきたんだ」
「一番高く飛べるのは僕だよ」
「あんなに高く飛べるかな。こわいよ。僕一人だけ置いていかれたらどうしよう」
興奮している2人の兄弟を後目に、産まれた時から体が小さい末っ子のミカキが泣き言を言う。
母親は3羽を集めて話して聞かせる。
「私たちのリーダーは優秀なの。リーダーの指示に従って群れから離れることがなければ大丈夫よ。絶対に群れから離れてはだめよ。さあ、出発まで休みましょう」
タングも仲間の輪に入り休もうとした。しかし、気分が高揚して目を閉じても眠ることができない。目の前にそびえ立つ猛々しい山々を見上げる。
言葉通り今夜が『山場』だ。みんなの体力を考えると短時間で一気に渡り切らなければならない。優秀な参謀たちと隊列も段取りも綿密に計画をたてた。「大丈夫だ」タングは自分に言い聞かせた。
日が沈みあたりが暗くなった。風もなく静かな夜だ。
まずタングが飛び立つ。それを合図に仲間たちが後に続く。
壁のような山々がどんどん近づいてくる。山越えがはじまった。
高度が増していく。突然横から強い風が吹く。風に煽られ体勢を崩すものがいる。「出来るだけ山肌に沿って飛ぶんだ!決して群れから離れるな!」
随分飛んできた。仲間たちの疲労もピークに達しているはずだ。だが、再び飛び立つには何倍もの体力が必要だ。飛び続けるしかない。「がんばれ!大丈夫、飛び続けるんだ!」声を張り上げ仲間たちを励ます。
目の前から壁がなくなり、真っ暗な空間が広がる。ついに山頂を越えた。必死で飛んできたミカキも周りを見渡す。星空の中にいるようだ。はじめての眺めに感嘆の声をあげる。今までに見たことのない景色だ。
タングは仲間たちの顔を見ながら言う。
「私たちほど高く飛べるものはいない。みんなよく頑張った。降りも気を引き締めて飛ぼう」
高さ8000メートル、時間にして8時間。
全員無事に山を越えることができた。
疲弊した体を休め、食事を摂る。
誰一人脱落することなく山を越えることができた。
なんとかリーダーの責務を果たせたとタングは安堵する。
これからまだ数千㎞の旅は続く。ただ今だけは何も考えず深い眠りにつきたい。
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お題:束の間の休息
インドガンは繁殖地のモンゴルやチベットから越冬地のインドへ渡りをします。その際、8000mのヒマラヤ山脈を越えて行きます。世界で最も高く飛ぶ鳥と言われています。
「束の間の『束』、昔の尺度のことだったらしいな。指4本分の幅で、約5〜7cmだとさ」
休肝日、チートデー、虚無期間、CM。何かと何かの間に挟まった休憩であれば「束の間」だろう。
某所在住物書きは温かいコーヒーなど飲みつつ、お題を投稿するにあたり作成したメモを眺めた。
ネタはいくらでも出てくるのだ。「誰の」、「何に対しての」、「何処での」束の間の休息か、付加できる単語は多彩で、豊富だから。
なんなら今の冷え込みを数日後に控える夏日・真夏日の「束の間」とすれば良い。
この物書きのスキルとレベルでは難しいのだ。
「職場のデスクの上の『1束の間』、5〜7cmの幅の間での休息、とか考えたんだがな……」
そろそろ高難度お題と高難度お題の間の、休息や箸休め、筆休め的なお題が欲しい。物書きは嘆く。
再度明記する。ネタ「は」、出てくるのだ。
睡眠も外食も、休息には違いないのだから。
――――――
世は区切り、束の間の連続です。
仕事と休日、オンとオフ、「誰か/何か」としての役割の時間とフリーな時間。休肝日にチートデー。
今回はそんな、「束の間」に焦点照明を当てまして、こんなおはなしをご用意しました。
前回投稿分から続くおはなしです。でもわざわざ前回投稿分を確認しなくても読めるおはなしです。
都内某所、某支店の従業員に、付烏月、ツウキというのがおりまして、菓子作りが最近のトレンド。
その日は丁度、運悪く、外回りでバチクソに酷い怪獣客とエンカウントしましたので、
なんなら2日後にも今回よりマシながら怪獣客とエンカウントする予定がありますので、
お題回収、「束の間の休息」として、魂のHP心のMPを回復すべく、外食に出ることにしました。
「その外食に私を誘ったのは、本店案件としてあの客をあなたに回した報復か」
「あのさ藤森。そっちだって、あのおクソお客野郎様の被害者でしょ。単純に一緒にHPMP回復しようよって、それだけだよ。ダイジョーブだよ」
付烏月が外食に誘ったのは、付烏月の友達の真面目で誠実な雪国出身者。名前を藤森といいます。
藤森の行きつけに、お得意様しか利用できない静かな飲食個室スペースを持つ茶っ葉屋さんがありまして、そこに2人してご来店。
「あの件は、本当に申し訳ない」
「だから、大丈夫だって藤森」
「そうもいかない。今回は私が奢、」
「大丈夫だってば藤森。ホントに、気にしないで」
藤森は体に優しい滋味の薬膳をふたつ、
付烏月は背徳的和スイーツセットをどっさり。
それぞれ頼んで、仕事と仕事の合間の休息を、すなわちちょっと立地な食事を楽しんだのでした。
「体に優しいわりに、セットに付けたおにぎり、塩っ気たっぷりの雪国ご当地セット頼んだんだ」
「そうだな」
「いつもは藤森、低糖質低塩分ダイスキーなのに」
「たまには私だって故郷の味を食いたいさ」
「東京生活の束の間に?」
「束の間に。そうかもしれない」
束の間に、ツカノマニ。お題を回収したところで、両手を合わせていただきます。
藤森は野菜たっぷりの鶏スープから、付烏月はホイップクリームたっぷりのマロンどら焼きから。
仕事の面倒だの苦労だの、嫌なことは一旦置いといて、ぱくぱく、もぐもぐ。食べ始めます。
「付烏月さん。明後日の顧客のことだが、」
「あーあー。聞こえない。圏外。通信障害」
何事にも、休むことと動くことの境界をキッチリ引くのは、有益で大事なことなのです。
何事にも、疲れたらガッツリ心と身体を癒すのは、重要で充実させるべきことなのです。
付烏月と藤森はふたりして、仕事と仕事の間の休息を、それぞれの食事で楽しみました。
特にオチも山も無い、平凡平坦なおはなしでした。
仕方無いのです。無理して「1束の間」、5〜7cmの間で為される休息なんて展開行方不明をお届けするよりは、何倍もマシなのです。
しゃーない、しゃーない。
朝起きて急いで着替えてとりあえずバナナを口に入れて歯磨きしてトイレ行って駅までダッシュ
「座れないかなあ」と思いながら電車に乗るけど目の前の人は降りてくれなくて
「授業で使うんだった!」とコンビニへ向かってデータの印刷
「時間無くなっちゃう!」と早足で教室へ向かえばまだ先生は来てなくて
授業まであと5分
ほっと一息
「束の間の休息」
「束の間の休息」
私と笑っている貴方は
彼奴と笑っている貴方より
とても鬱くしく見えたわ。
【#94】
仕事が繁忙期に入った。毎年のことだから覚悟して構えてはいたけど、いざ忙しくなってくると毎年慌てるのは何故だろう。毎日やることは変わらないのに、そのサイクルが速まって、かつイレギュラーなことが発生すると途端にてんてこ舞いになる。
この時期は残業に残業を重ねている。不思議な日本語に見えるかもしれない。でもその表現がピッタリだ。文字通り、朝から晩まで働くし、休日は返上して出勤する。厄介なのは流行りのリモートワークに切り替えられない業種というところ。朝早く会社へ行き、夜遅く寝に帰る日々だ。
歳を取ると無茶ができなくなる。本当にその通りでこの繁忙期が過ぎると体に支障をきたしている。毎年同じ時期に顔を出すようになったものだから、かかりつけ医に「恒例行事だね」と笑われてしまった。医者のジョーク、分かりにくい。
でもある程度は無茶しないといけない時がある。部下に負担がいき過ぎている時だ。社会人数年目程度の子たちの中で、断りきれなくて請け負ってしまう子が毎年出てくる。毎年だ、毎年出るのに配慮できない教育担当の社員がいる。
直属の上司である僕からの業務だけでなく、他部署とも連携して行う作業があるからそれを細分化して仕事を振っているのだろうけど。細分化した仕事も請け負ってくれる子とのらりくらり躱す子がいて、偏りができてしまうのだ。
口酸っぱく言っても効かないものだから、自ら助太刀に出るしかない、と仕事を手伝うのだ。部下の分も、新人の子たちの分も。遠慮する部下たちに「僕だってこういう仕事できるんだよ!」と明るく振る舞う。
そうして、定時はまた過ぎていくのだ。
「ただいま」
そっと鍵を回して、ドアをゆっくり引く。なるべく音を立てないように、でも素早く中へ入ってドアを閉めた。戸締まりまでやって、ようやく息をつくことができた。
家だ、我が家だ。
連日の仕事でテンションが振り切れていて、今すぐ駆け回りたい気分だ。とっくのとうに日を跨いでいたので、音を立てないようにコソコソ歩いた。
寝室でスーツを脱いでパジャマに着替える。あとは風呂入って軽く何か胃に入れて寝るだけだ。わざわざ部屋着を挟まなくてもいいだろう。
洗い物を腕に抱えて部屋を出ようとして、ふと後ろが気になった。
寝室はクイーンサイズのベッドが一つだけ置いてある。そこで僕と妻、四歳の娘の三人家族で川の字になって寝ているのだ。
僕は息を潜めてベッドに近づいた。僕が仕事で帰りが遅いから、妻は奥の窓側で寝ていて、娘は僕と妻の間に挟まれて寝ている。
ベッドを覗くと、掛け布団から大きくはみ出た娘の足が見えた。寝ている間に上下逆さまになったようだ。妻は大の字になっていて、おそらく娘の下敷きになっているらしい。掛け布団だけは、何故かしっかり被っているものだから思わずクスッとしてしまった。
娘の顔を掛け布団から出してあげ、頭を枕に乗せてあげる。娘は変わらずスヤスヤ眠っている。ふっくらとした柔らかい頬を、僕は指でなぞった。
結婚は二十代で早々にしてしまったが、子どもはなかなかできなかった。不妊治療に二人で通って、たくさん喧嘩して、たくさん泣いて、何度も諦めようとして。
「でも、やっぱりあなたとの子どもがほしい」
妻は泣き疲れてぼーっとしたまま、そう呟いていた。こんなにつらい思いをするなら、一層のこと二人で幸せを探しながら歳をとっていこうと提案した時のことだった。
ただ子どもがほしいんじゃない、あなたとの子どもだからほしい。
妻の目から意思が見えて、僕はその妻に応えたいと思った。僕と妻の子どもを諦めないと、覚悟を決めた。
そしたら案外あっさりと子どもを授かったから拍子抜けした。知らせを受けた時はあまりの嬉しさに二人で一晩泣いたものだ。
元気に生まれてきた娘は、やはり可愛かった。将来、周りの友達のご両親よりも年寄りな自分の両親にショックを受けるかもしれない。早いうちから介護が云々聞かされるかもしれない。老後は娘に迷惑をかけないように、と今のうちから少しずつ準備しているけれど、今のご時世どうなっていくかわからない。
今は自分たちの問題よりも、娘が元気に成長していけるようにしなくては。
もちもちと柔らかく、きめ細やかな肌触りが癖になる。妻も同じ頬を持っていて、若い頃はしつこいくらい触っていつも怒らせてしまった。娘もきっともう怒る年頃なんだろうな。寝ている最中に触ったなんて知ったら、きっとショックだろう。
頭では理解しているが、触る手が止まらない。そのうち癒やされたのか、ウトウトし始めた。まだ風呂に入っていないし、何か食べないと空腹で眠れない。
僕は自分の意思とは別に、体を起こすことなくベッドに寄りかかったまま、意識を失った。
次に意識を取り戻した時、心は軽いのに体の節々がバキバキと鳴り、悲鳴をあげてしまった。
『束の間の休息』
束の間の休息
子どもが小さい頃、欲しくて、欲しくて堪らなかった時間。
5分でいいから、ゆっくりとお茶を飲みたかった。
5分でいいから、1人でいたかった。
5分でいいから、のんびりお買い物がしたかった。
子どもが大きくなった今。
あの時間が何より愛おしい。
5分でいいから、子どもを胸に抱きたい。
5分でいいから、公園でブランコに乗りたい。
なんの曇りもなく、私を信じて泣き叫ぶ、あの愛おしくて、うるさい声が懐かしい。
休息は束の間だからいいのだ。
いつでも好きに取れる休息なんて、面白くもなんともない。
束の間の休息
感謝の気持ちを持つと、いい人生になるらしい。僕の人生がイマイチなのは、きっと感謝の気持ちが足りないからだな。
カバーをパカッと開けて、フィルターを外した。案の定、埃が溜まっていた。夏中、本当に毎日フル稼働だったからな。
外の水道で埃を落とす。専用の泡洗剤をかけておく。その間、洗浄スプレーで本体を洗う。電気部分にかからないように慎重に。
フィルターの泡を落とし、物干しにぶら下げる。帰宅後、乾いているのを確認し本体に戻した。
パチっとカバーがはまる音を聞いて終了。
エアコン君、夏の頑張り、ありがとうな。冬が来るまで、ゆっくり休んでくれ。秋が短くなった近年では、束の間の休息かもしれないが。
山を散歩していると今秋初めて「アサギマダラ」に出会った… アサギマダラは日本で唯一の渡り蝶といわれるそうだ 薄ピンク色のフジバカマで束の間の休息をして 栄養補給していたようだ… これからも先は長いが元気に旅をしてね!
ポポヤ
すきな人のこえ
おだやかで
やさしくて
角ばったきもちも
なんでも受け止められる
ピンク色のおはなみたいなきもちになる
まいにち
がっこうとか
おしごととか
お買いものとか
いろいろある
とっても大変なこと
でも
だいすきなひとのおかげで
めんどくさいことも
つらいことも
いやでいやでしかたないことも
もうちょっとだけ頑張れる。
すごいよね?
きっとすきなひとは
神さまなんだとおもう
すきなひとや
みんながいると
わたしはがんばれます。
もし今日はわらえなくても
きっとあしたはわらえる。
だからわたしは
今日もにっこりします。
真っ白な天井
真っ白なシーツ
左腕に点滴
絶食…
頑張り過ぎた
私の心と体
「少し休みなさい…」
神様が強制的に休息をくれた
体は悲鳴をあげているのに
休めない! まだ出来る!
と気付かぬふりをしていた私…
気遣うべきは
自分の体だったのに…
無機質なベッドに
横たわりながら
私は 何故か
心の底から ホッとしていた
#束の間の休息 684
束の間の休息
駅の中のファストフード店が、今日はありがたい。
「いらっしゃいませ。ご注文をお伺いします」
「えーっと、コーヒーのSを……いや、やっぱりカフェオレで。あ、いややっぱり」
「大丈夫ですよ、今はお客様も少ないですから。ゆっくり決めていただいて」
「ごめんなさい本当。えーっとじゃあ……」
眠いわけではない。けれど目をさましたい。けれど夢に浸っていたい。けれど甘いのはもう十分な気もする。けれど−−−。
「じゃ、コーヒーのSとアップルパイで」
「かしこまりました。店内をご利用ですか?」
「そうですね」
「かしこまりました。ご注文を確認します、ホットのブレンドコーヒーのSサイズがひとつと、アップルパイがおひとつ。以上でよろしかったですか?」
「うん」
「では合計で330円いただきます」
財布を開くと、ちょうどの小銭が入っていた。トレーにのせる。若い店員は手際よく金を拾ってレジを打つ。
「ちょうど頂戴いたします。それではこちらをお席においてお待ちください」
札を受け取って、外向きのカウンター席に座った。昼時というのに店内に人はまばらだった。
ぼうっとしていると、さっきとは別の若い人が注文したものを運んできた。礼を言ってコーヒーに口をつける。
顔をしかめたのは苦いからでも、何か気に入らなかったからでもない。ただ熱いまま喉を通るこれが、今のわたしには必要だと感じた。
「ああ」
ため息がでる。
「ごめんな、福井」
アップルパイをかじった。ブラックコーヒーとはまるで対照な甘さ。熱々であることだけが共通点だろう。
わたしは、どちらかしかできないのだな。コーヒーかパイか、彼女はどちらかひとつを望んでいるのではないだろうに。
330円の休息は15分と経たずに終わった。その間に気がついたこと。店を出たなら、やるべきことがある。
わたしはスマホの電話帳を開いて、彼女の名前を探した。
『彼女と先生』
「束の間の休息」
友人が2人で日帰り旅に行きたいと言った
お互いに子どもがいるのでどうかしらと思ったが夫にぽそりと相談してみた
「子どもが大きくなったら時間もお金も余裕なくなって更に行きづらくなるかもしれないから今行っときな」
と言われてそれもそうかと計画を進める事になった
ふと遠方の友人のことを思い出し、夫の理論でいくなら今会いにいっておきたいが泊まりになるしな…子どもたちが夜「お母さんは…?」ってなるのは目に見えている。絶対気になるからやめておこうかしら
とそのまま夫に世間話程度に相談してみた
「子どもの事気になるのは当たり前でしょ。まあでも俺いるし、それはそれとして行っときな」
それはそれとするんだ…。そんなに言うなら数年ぶりに行ってみようかしら
柄にもなく少しイライラしている。理由はわかっている。お腹が空いているんだ。営業が朝から二件続いて、訪問先も離れていた。電車移動が長かったのもあって、昼食の時間を逃してしまった。
遅れてはまずいから三件目の駅までは着いておきたい。まずは電車に乗ることにした。
外出は社内にいるより気楽でいいが、食事のタイミングを逃すとモヤモヤする。電車内で飲食できない環境も変えられないのか。かといってOKと言われてもあまり食事をしたい環境ではないか。人目がある中で自分だけ食べているのも目立ってしまう。
駅に着くともう2時を回っており、定食屋のランチは軒並み終わっていた。まいったな。お昼を決めるのも得意ではないし、あれこれ散策する余裕もない。目に付いたお店に入るしかないか。
キョロキョロしていると、路地に入った所で白壁とレンガをまとったいかにも昭和な喫茶店が現れた。わかっている。創業はたぶん平成だ。
一も二もなく直感でここと決める。扉を開けるとカランカランとイメージ通りのベルがなる。
「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ」
ひげ面のマスターは恰幅がいい。他のお客さんはいないようだ。店内は木製の調度品で統一されていて、暖かみのある灯りが広がっていた。メニューを見るとコーヒー500円。これでも安い方かぁ。
お冷を持ったマスターがやってきたので慌ててしかめた眉を戻す。
「軽食もありますよ。セットならお安くなります」
「え?セット?」
マスターがメニューを手にページをめくると、サンドイッチやナポリタンといった喫茶店ランチがこちらに手を振っている。しかもコーヒーとセットで1000円とは!
「お昼逃しちゃったんでしょう?お食事すぐ出せますよ」
完全に言い当てられてきょとんとしているとマスターはさらに続けた。
「この時間にこの店に入るのは営業の昼食難民。この立地で20年以上やってれば一目でわかります。お客さんスーツ着てるしね」
なるほど。職業病みたいなヤツだ。私はサンドイッチとミルクコーヒーを頼んだ。
食事は2分と待たずに出てきた。
「ごゆっくり」
マスターの好意があたたかい。サンドイッチは玉子とベーコンとレタスが挟んであり、私の胃袋を満たすには十分だった。ミルクコーヒーも芳醇で優しい。束の間の休息には最高の空間だった。
時計を見ると次の約束まで時間がない。慌てて準備をしてマスターに会計をお願いする。
「はい、ありがとね。気をつけていってらっしゃい」
「はい、あの、また来ます!」
気づいたら口から出ていた。また来ます。うん、この駅に着いたら、また来よう。
束の間の休息を求めて。
今日はおもしろい天気だ。
車で走っていたら、先の方で雲が溜まっているように見えた。
濃霧?視界不良とかやだな…
と思っていたのになんの具合かそこには掠らなかったみたいだ。
でも帰り道にはしっかり捕まった。
前方にまた見えてる。
この辺りに留まっているのかな?
と走っていると突然の大粒の雨。
どうやら雨のゾーンだったらしい。
通り抜けると空が晴れてくる。
雨の辺りはしっかり曇ってたから狐の嫁入りではないだろう。
高速道路の下り坂、
水色の青空と緑に包まれた町が
半分半分になっている。
雨に洗われて、空も緑もピカピカで、とてもきれいだ。
車が鍵の電池が無くなりそうなことを知らせてくる。
ラッシュ時にお店に寄るのはすきではないが電池が切れるのは嫌なのでしょうがない。
コンビニに入り、電池以外も少し買う。
レジにはおじさんと若い男の子。
すごく雰囲気がいい。
男の子は黒髪ツーブロマッシュに金のリングピアス。
だけどおじさんと和やかに話している。
なんていい空気だ。
キャンペーンか何かでお茶2本おまけでくれた。
田舎のコンビニ、最強かよ。
束の間の休息どころか癒しでしかない。
外に出たら大きな虹がかかっていた。
幸せすぎて鼻血出して倒れそう。
「束の間の休息」
キムチを食べていたらやっぱ止められない止まらない状態みたいに食べてしまうのはかっぱえびせん状態になってしまった♪
仕事前
仕事の直前が一番リラックスしている
だから仕事が始まるとスイッチが
切り替えやすい
集中しやすいのである
仕事の合間に休息するけど
ほぼ集中は途切れてボーッとしている
コーヒーを飲んで切り替える
そんな感じで今日も
適度に
いくら大好きでも
四六時中一緒は疲れる
「行ってきま〜す」
ヨシ!仕事に行った、、
家事を終わらせ
束の間の休息と韓ドラを観よう!
「只今〜」
「お帰り〜」
今日も無事に帰宅し
ホッ☺️
#束の間の休息
束の間の休息
繁忙期でもないのに、やたらと忙しい週がある。何理由で忙しいか分からないため、いつまで続くかも目処がたたず、疲弊していく。
束の間の休息、寝ます。
人々は寝静まり、辺りは目を凝らしても闇闇闇、ひたすらに闇
自分の足音だけが夜にぽっと浮かんではすぐさま溶けていく
B男は鍵を差し込み、ガチャリと音が鳴るのを確認してゆっくりと回す
家の中はまるでもぬけの殻のような静けさだった
家族が眠っているのを起こさぬよう、スマホの灯りだけを頼りに抜き足差し足忍び足で自分の部屋へとゆく
こんな時間だ、風呂は明日の朝でいい
時計の針は0時をとっくに回っている
服を着替えて勝手知ったる自分の寝巻きに身を包む
そのままぼふりと疲れた身体ごとベッドへダイブする
重くなった瞼に抗うことなく外界からの刺激を全てシャットアウトした
明日は朝イチでバイト、その後は講義があって、終わったら高速に乗って県外へボランティアだ
薄れゆく意識は翌日のスケジュールを確認するように暫し現実と夢の狭間を揺蕩う
卒業論文を纏めたり、国試の勉強もどこかの時間ではやらねばなるまいという焦りにも似た緊張が脳みその隅っこで確りと主張している
一体いつまでこんな生活が続くのだろうだとか、そういった思考回路を持ち合わせる気力は無かった
その日は朝から大変だった。電話番の三輪ちゃんは風邪で休むし、依頼の電話は次々かかるし、昨日の仕事の書類もあるし、そういう時に限って滅多に来ない警察の見回りも来るしで、自分が今何をやっているのかもわからないほどだった。
すこしだけ休むことにする。
溜まった作業は取りあえずは置いといて、コーヒーメーカーでコーヒーを淹れる。ちょっとした茶菓子を持って、仕事スペースから離れて、一杯飲む。コーヒーの香りに没頭している時間が束の間の休憩である。
ふ、と顔を上げて天井を見る。天井にはいくつかの穴が空いている。一つや二つは屋根まで通っているんじゃないかな。リフォームを勧められるが、この跡だけは取っておきたい。
銃なんて本物を目の前にするのはあれが初めてだった。
まだ素人だったころ、散歩の途中で逃げてしまった飼い犬が見つからず、いよいよこの探偵事務所のドアを叩いた。
綾乃がいた。
背の高いスラリとした細身の女で、体の線がわかるようなスーツを着ていた。眼鏡の奥にはキツい目が光っていた。
中学生だった俺はすっかり魅せられてしまい、押しかけるように事務所に通うようになった。
あの日、逃げた俺の犬が見つかった。保護していた家取り戻した綾乃だったが、だがその家が不味かった。御礼参りとかで武装した男達が事務所に押しかけ、俺から強引に犬を取り上げようとしたところで、綾乃と乱闘になった。
綾乃は強かった。
だが、俺がいた。俺をかばいながらは戦いにくかっただろう。
とうとう相手は銃を取り出し、綾乃と天井を打ち抜いた。
そうまでしてどうして俺の犬が狙われなければならなかったのか。綾乃はなぜ撃たれなければならなかったのか。
獣医に犬を診てもらってもわからなかった。
俺は手掛かりを見つけなければならない。あの事務所が、どうやら女衒みたいなことに手を出しているっぽいところまではわかった。三輪ちゃんに一晩粘ってもらって、ようやく尻尾を掴めた。無理をさせてしまい、三輪ちゃんは今日は風邪だ。この女衒稼業がヒントになるかは分からないが、まずはここから。
気合を入れて、俺は電話が鳴る事務所へと戻っていった。