人々は寝静まり、辺りは目を凝らしても闇闇闇、ひたすらに闇
自分の足音だけが夜にぽっと浮かんではすぐさま溶けていく
B男は鍵を差し込み、ガチャリと音が鳴るのを確認してゆっくりと回す
家の中はまるでもぬけの殻のような静けさだった
家族が眠っているのを起こさぬよう、スマホの灯りだけを頼りに抜き足差し足忍び足で自分の部屋へとゆく
こんな時間だ、風呂は明日の朝でいい
時計の針は0時をとっくに回っている
服を着替えて勝手知ったる自分の寝巻きに身を包む
そのままぼふりと疲れた身体ごとベッドへダイブする
重くなった瞼に抗うことなく外界からの刺激を全てシャットアウトした
明日は朝イチでバイト、その後は講義があって、終わったら高速に乗って県外へボランティアだ
薄れゆく意識は翌日のスケジュールを確認するように暫し現実と夢の狭間を揺蕩う
卒業論文を纏めたり、国試の勉強もどこかの時間ではやらねばなるまいという焦りにも似た緊張が脳みその隅っこで確りと主張している
一体いつまでこんな生活が続くのだろうだとか、そういった思考回路を持ち合わせる気力は無かった
10/8/2024, 11:46:35 PM