かたいなか

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「束の間の『束』、昔の尺度のことだったらしいな。指4本分の幅で、約5〜7cmだとさ」
休肝日、チートデー、虚無期間、CM。何かと何かの間に挟まった休憩であれば「束の間」だろう。
某所在住物書きは温かいコーヒーなど飲みつつ、お題を投稿するにあたり作成したメモを眺めた。
ネタはいくらでも出てくるのだ。「誰の」、「何に対しての」、「何処での」束の間の休息か、付加できる単語は多彩で、豊富だから。
なんなら今の冷え込みを数日後に控える夏日・真夏日の「束の間」とすれば良い。

この物書きのスキルとレベルでは難しいのだ。

「職場のデスクの上の『1束の間』、5〜7cmの幅の間での休息、とか考えたんだがな……」
そろそろ高難度お題と高難度お題の間の、休息や箸休め、筆休め的なお題が欲しい。物書きは嘆く。
再度明記する。ネタ「は」、出てくるのだ。
睡眠も外食も、休息には違いないのだから。

――――――

世は区切り、束の間の連続です。
仕事と休日、オンとオフ、「誰か/何か」としての役割の時間とフリーな時間。休肝日にチートデー。
今回はそんな、「束の間」に焦点照明を当てまして、こんなおはなしをご用意しました。

前回投稿分から続くおはなしです。でもわざわざ前回投稿分を確認しなくても読めるおはなしです。
都内某所、某支店の従業員に、付烏月、ツウキというのがおりまして、菓子作りが最近のトレンド。
その日は丁度、運悪く、外回りでバチクソに酷い怪獣客とエンカウントしましたので、
なんなら2日後にも今回よりマシながら怪獣客とエンカウントする予定がありますので、
お題回収、「束の間の休息」として、魂のHP心のMPを回復すべく、外食に出ることにしました。

「その外食に私を誘ったのは、本店案件としてあの客をあなたに回した報復か」
「あのさ藤森。そっちだって、あのおクソお客野郎様の被害者でしょ。単純に一緒にHPMP回復しようよって、それだけだよ。ダイジョーブだよ」

付烏月が外食に誘ったのは、付烏月の友達の真面目で誠実な雪国出身者。名前を藤森といいます。
藤森の行きつけに、お得意様しか利用できない静かな飲食個室スペースを持つ茶っ葉屋さんがありまして、そこに2人してご来店。
「あの件は、本当に申し訳ない」
「だから、大丈夫だって藤森」
「そうもいかない。今回は私が奢、」
「大丈夫だってば藤森。ホントに、気にしないで」
藤森は体に優しい滋味の薬膳をふたつ、
付烏月は背徳的和スイーツセットをどっさり。
それぞれ頼んで、仕事と仕事の合間の休息を、すなわちちょっと立地な食事を楽しんだのでした。

「体に優しいわりに、セットに付けたおにぎり、塩っ気たっぷりの雪国ご当地セット頼んだんだ」
「そうだな」

「いつもは藤森、低糖質低塩分ダイスキーなのに」
「たまには私だって故郷の味を食いたいさ」
「東京生活の束の間に?」
「束の間に。そうかもしれない」

束の間に、ツカノマニ。お題を回収したところで、両手を合わせていただきます。
藤森は野菜たっぷりの鶏スープから、付烏月はホイップクリームたっぷりのマロンどら焼きから。
仕事の面倒だの苦労だの、嫌なことは一旦置いといて、ぱくぱく、もぐもぐ。食べ始めます。

「付烏月さん。明後日の顧客のことだが、」
「あーあー。聞こえない。圏外。通信障害」

何事にも、休むことと動くことの境界をキッチリ引くのは、有益で大事なことなのです。
何事にも、疲れたらガッツリ心と身体を癒すのは、重要で充実させるべきことなのです。
付烏月と藤森はふたりして、仕事と仕事の間の休息を、それぞれの食事で楽しみました。

特にオチも山も無い、平凡平坦なおはなしでした。
仕方無いのです。無理して「1束の間」、5〜7cmの間で為される休息なんて展開行方不明をお届けするよりは、何倍もマシなのです。
しゃーない、しゃーない。

10/9/2024, 2:57:36 AM