束の間の休息』の作文集

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束の間の休息』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

10/9/2023, 1:42:30 AM

あなたのぬくもりと響きに沈む
深い安らぎに私は私の境界をほどく
束の間じゃなく ずっとこうしていたい

10/9/2023, 1:21:59 AM

走る。走る。後ろなんか振り返らずにただ前を向いて走り続ける。
 靴の裏が擦りきれようとも、生い茂る枯枝で頬が切れようとも、肺が潰れてしまいそうなほど苦しくても、身体が重石になろうとも、ビュウビュウと吹き荒れる風のように走る。繋いだ左手は絶対に離さぬようにと注意しながら、数多もの木々の隙間を縫って、岩を飛び越え、駆ける、駆ける。
 しばらくして洞窟を見つけた。少々手狭ではあるが、周囲の安全は確保できるし、俺たち二人でぴったり隠れられる。これなら五分程度は休憩できるだろう。束の間の休息だ。
 じっとりと嫌な汗をかいた手を互いに離して、壁に沿うように座り込んだ。すぐ隣で、彼女も俺とおなじように座る。今までにないほど息が荒かった。
「だい、じょぶ、そ、ですか?」
「ムリ……………」
 まあ、だろうな。なんせ彼女は一国のお姫様だ。普段の移動方法はほとんどが馬車だったし、こんなに走る機会は無かったはずだ。
 深呼吸してすこし息が整ったところで、姫様が、
「あ、なたこそ……だいじょ、ぶ、なの……?」
「はい? 何が……」
「いえ、その……足に……」
「?」
 気まずそうに遣られた視線を追って自身の右の足を見ると、うっすら靴に血が滲んでいた。大方、どこかの指の爪が剥がれでもしたのだろう。傷を認識したことでズキリと痛みが走った。
「いえ、このくらい、お気になさらないで……」
「しかし……」
「私のことはいいですから、姫様は自分のことをご心配くださいね」
「うっ……」
 彼女はおとなしく口を閉じた。
 重い沈黙が、滔々とした闇とともに訪れる。身体は休まるが、これでは俺の心が休まらない。なんとなしに苦しくなって、俺は口を開こうとした。その時。
 ──カサッ。
 洞窟のすぐそばの、枯葉の動く音がした。
 何かが、洞窟のすぐそばを歩いている。
 警戒しながら頭を出す。彼女はすっかり怯えた様子で後ろにくっついていた。
「……チッ」
「だ、誰?」
「追っ手の犬です。わりと遠くですが、くそっ、もう此処まで来てるなんて……」
 隣国との国境まであとどのくらい? 何日掛かる? それまで彼女は果たして保つか? 不確定要素だらけで処理が追い付かない。不安ばかりが積もる。自信がない。俺はいま此処でどう動くべきか?
 ……ともかく今は逃げるしかない。
 改めて左手を差し出し、彼女に問うた。
「姫様、いけますか?」
「………ええ」
 やや長い沈黙の末、覚悟を決めた彼女は俺の手を握った。温かくて、柔らかくて、しなやかな手のひら。これを守れるのは今は俺だけなのだ。
 二人で顔を見合わせて、最後の覚悟を決め、いっせーので足を踏み出した。


▶束の間の休息 #26

10/9/2023, 1:18:54 AM

束の間の休息。


 カチ、コチ。時計の針が進む音。カリ、カリ。ペンが紙の上を走る音。無機質で、退屈な音だけが部屋を満たしている。

 “勉強”、“進学”、“大手企業”。馬鹿みたいにそれしか言わない親から課せられた作業を、毎日夜遅くまで、黙々とこなす日々。

 “窮屈”、“退屈”。私の体は、この2つの言葉で作られていると言っても過言ではなかった。いつまでこんな生活が続くんだろうと、絶望した時もあった。

 しかし、最近、ちょっとした“休み方”を覚えた。

 そろそろかな。ソワソワして、勉強机に置いていたスマホの画面を、ながら見しながら適当にペンを走らせていたら。画面が明るくなって、ポコン、メッセージをお知らせする通知が現れた。

 その瞬間、私は引ったくる勢いでスマホを掴み、簡素な返事だけ送った。勉強道具をテキトーに片付け、電気も消し、“退屈な私”の店仕舞いをした。バレないように、いつもこっそり準備している小さなリュックをクローゼットから取り出す。

 すっかり寝静まっている家の中を、まるで泥棒のように足を忍ばせ進み、玄関を出た。家の前には、最近出来た“悪友”が悪戯っぽい笑みを浮かべて、ひらり、手を振っている。

 それに私も同じように応えた後。少し離れた所に停めてくれている親友のバイクへ、2人して駆け出した。

 たった数時間。終わればまた朝がきて、憂鬱な毎日が始まってしまうけれど。

 今、この時だけは。私の時間は、私だけのものになる。

10/9/2023, 12:49:22 AM

束の間の休憩。最近の季節がそんな感じだ。酷暑酷暑でちょっと過ごしやすい時期が一瞬だけあってあとは厳冬連打って感じ。寒いわ。秋なんてなかった。

 今年はエアコンを新調したし暖房とか使ってみたい気分。だけど暖房って高いらしいな。それにクーラーと違ってつけなくても耐えられるから経済的にはつけたくない。

 でも年のせいか最近は暑さにも寒さにも弱くなった。日本の夏と冬が昔より暑く、寒くなったのかもしれないけど。

 なんにせよ最近は寒さが骨身にしみる。暖房つけてぇーって感じ。でも金がないんだこれが。やっぱり貧乏は悪だね。

 こうも寒いと布団から出るのがお辛い。そういえば毛布を新しく買い換えたいんだよな。もっと肌触りのいい毛布が欲しい。

 でも今使っている毛布はまだ使えるんだよな。肌触りだってまぁ普通。普通に不快感のない毛布だ。

 だけど今の毛布は寝るのが快適とは言えないんだよな。もっといいのが欲しい。生活レベルを上げたい。でも金がない。結局悩みってほぼ金のことなんだよな。

10/9/2023, 12:39:19 AM

皆さん、お疲れ様です。
 疲労困憊でしょう。とても心配していました。
 ゆっくり休みなさい。
 束の間の休息を与えましょう。

 天から神が舞い降りて、世界中の人々にそう告げた。

 美しい光が降り注ぐ。
 人々にとっては永遠の休息が与えられた。


『束の間の休息』

10/9/2023, 12:36:44 AM

『座るじかん』
テーブルに水滴 パンを用意する 食事ができたら
座るじかん 何気なしに座るじかん じかんがないと言うけれど じかんって減るのかな? あるじかんを
どう過ごそう 決めるのは自分 いつも自分

10/9/2023, 12:35:22 AM

仕事を効率よく行うには、

束の間の休息も有効に活用するべき

そんな言葉をかけてくれたのは

上司だった。

仕事に追われ過ぎて

クタクタになっていた私には

その言葉が暖かくて

嬉しかった

よし、次の仕事も頑張ろう





─────『束の間の休息』

10/9/2023, 12:23:58 AM

束の間の休息なんて、いらない!
欲しいのはちゃんとしたお休み!

いつだって、誰だって、休めるものならたっぷりとあるいはしっかりと休みたいのではないか。
仕事でも日常生活でも、たまたま結果的に休める時がある。それが私にとっての束の間の休憩というものだ

だから、『束の間の休憩になった』と、どこか受身的な感じがする。たまたまだから。

それでも休みは欲しい! アレっ?
はじめはいらないと言ったのに…。

おしまい

                  まー

10/8/2023, 11:57:09 PM

地球誕生46億年 

束の間の休息

束の間の仕事

束の間の遊び 

リボンで束ねられている

愛しき刹那のプレゼント

10/8/2023, 11:57:02 PM

「束の間の休息」

私には休みという休みが無かった。癒しが欲しくて猫を飼いたいと思ったが、家にあまり居れないのだから猫に寂しい思いをさせるのは嫌だなと思い飼えなかった…。そんなある日私は転職した。理由はなんとなくだ。私の新しい会社には癒やしの先輩がいる。先輩は癒やし系で、私の束の間の休息だ。この職に就いて良かった。本当に…あの時の違和感に従って辞めておいて良かった。

10/8/2023, 11:53:16 PM

束の間の休憩 

本をパラパラと。雨宿り。
木漏れ日に当たりながら君を待つ。
雫が輝き始めたとき、今日は夏なのだと気づきました。

10/8/2023, 11:42:56 PM

気にしない気にしない



ルーチンも何もない

そんな日は続かないけど

たまには



※束の間の休息

10/8/2023, 11:40:06 PM

束の間の休憩。
多分、人生のうちの休憩は大学生なんだろう。人生の夏休みって聞いたことがある。たしかに、中高生よりも授業時間は少ない気がするし、平日に休みもある。一人暮らしをする人もいるからなおさら自由になる人もいるだろう。自由というか奔放というべきか。夜通し遊んで、バイトでお金を稼ぎ、楽単で授業を乗り切る。誰かから見れば楽しそうで、誰かから見れば哀れなのかもしれない。どんな過ごし方であれ、自分で自由に使えるのはこの4年間なのかもしれない。人生の割と早い段階で休憩に入ってしまっているのかもしれないが、これが束の間の休憩なのならば思いっきり過ごすしかない。この思いっきりが実は結構難しいのではあるが。。

10/8/2023, 11:18:12 PM

「束の間の休息」

人生において
これほどの特権があろうか!
休むことを
ずっと奪われた者もいれば
休むことの
意味さえ忘れた者もいる
だが休みもほどほどにしないと
怠けて人生の宝を失うこともある
偉大なる時間の旗手こそ
この特権が与えられんことを!

10/8/2023, 11:17:49 PM

【束の間の休息】

 執務室の机の上へ山と積み重なった書類の束。記された文章の全てに目を通し、問題があれば筆を入れ担当部署へ送り返し、問題がなければ印を押し実行部署へと命を出す。
 この非効率な政治の回し方もいずれは是正しなければ、誰も宰相などやりたがらないと理解してはいるけれど、なかなかそこまで手が回らないのが実情だった。
 城の鐘が三時を告げる。多くの官僚たちはもう一踏ん張りの気合いを入れ直す刻分、僕からすれば遅い昼食の時間だ。
 いくつかの書類を持ち、執務室を離れる。向かう先は玉座の間。鐘の音も聞こえないレベルで集中し、自身の髪をグシャグシャと掻き回しながら書面と向き合う我らが王の眼前へと、新たに持ち込んだ書類をひらひらと振った。
「こちら、陛下のご判断が必要なものです」
「ああ、もうそんな時間か」
 仕事の進みが芳しくないのか、陛下は小さく息を吐く。今日はよほど悩む案件が多かったらしく、思考を巡らせながら頭を掻く癖のある陛下の髪はひどく乱れていた。
 検討していた提案書を大人しく放り出した陛下は、机の上の鈴を軽く鳴らす。恐らくは優秀な侍女たちの手で、すぐに二人分の昼食が運ばれてくるだろう。
 僕は陛下を休ませるために。陛下は僕が昼食を抜かないように。互いのためじゃないと深夜まで通して働いてしまう僕たちが決めた、午後三時の休憩のルール。漂ってきた紅茶の香りが、疲弊しきった脳に優しい。
 玉座の間の片隅に置かれた応接テーブルへと腰かける。束の間の休息に身をゆだね、僕は陛下の乱れた髪を指先でそっと梳いた。

10/8/2023, 10:58:16 PM

手当


 どれほどの時間が過ぎたのだろうか。この大陸に深く信仰されている聖光教会の教えに背く者たちの根城に踏み込んでから。
 俺の足元には今し方斬り捨てた反逆者たちの死体が山のように折り重なっている。少し遠くで銃声が聞こえるから、彼方はまだ交戦中なのだろう。

 「………」

 本来なら救援に向かうべきなのだろうが、俺は足を運ぶことはしなかった。理由は気が向かない、それだけだ。

 「ヴァシリー」

 その声に振り返ると、俺と同じように敵の返り血で真っ赤に染まったミルの姿があった。娘には怪我一つ……いや、右腕から出血している。

 「……怪我、してるな」

 「少しだけね。大したものじゃないよ」

 あっけらかんとした様子のミルに俺は息を吐く。彼女は不思議そうに首を傾げていたが、そんなことはいい。俺は娘の手を掴み、近くの部屋に入る。
 そこは交戦した痕跡が無い客室の一つ。ミルを椅子に座らせ、衣服をずらす。腕には白い肌を切り裂く、痛々しい裂傷があった。絶えず血が溢れ、古い血は傷口で黒く変色しこびりついている。

 「これの何処が少しだというのだ?何かの拍子で腕が動かなくなったら、どうするつもりだ?」

 「……痛くはないもの」

 似た言葉を繰り返すミルに俺はため息を吐き、近くの引き出しから処置に使えそうな白い布を取り出す。それから持っていた水をミルの傷口にかけた後、その白い布で傷口を拭う。すると、痛むのか娘は僅かに顔を顰めた。

 「例え痛くなくても、処置は施せ。放っておけば細菌が入り、腕を切り落とすことになるぞ」

 「……分かった。ごめんなさい」

 素直に謝るミルの腕に処置を施し、最後に包帯できつく巻く。処置を終わらせた後、俺はミルを抱き上げ、ミルが座っていた椅子に腰掛ける。

 「少し休む」

 「でも、まだ皆が……」

 「その状態で戦うか?今度こそ無事で済まんぞ」

 「………」

 大人しく俺にもたれかかったミルに軽く笑みを溢す。しばらくして娘から寝息が聞こえてきた。

 (……俺らしくも無い)

 今までは誰が傷つこうと気にしたことはなかった。だが、こいつは……出先で路頭に迷っていたこの娘だけは、どうにも俺の気を揉ませる。
 俺はミルのこめかみにそっと口づけた。

 「……俺はお前が勝手にいなくなることを許さない。いなくなるなら、その前に俺の手で殺してやる」

 小声で呟いたは夢の中のミルには届かないだろう。この感情が一体何なのかは分からない。が、自然と悪い気はしなかった。

10/8/2023, 10:44:51 PM

手放す作業はどんどん出てきて
本当に玉ねぎの皮を剥く作業だな
みんなそう思うものなんだよね

日常生活の中でも
イメージして
行動とともに外していく
そういうやり方している人も
いるんだなって知ったんだ


シャワーを浴びている時に
重たい感情が
シャワーのお湯と共に
体から外れていく

階段を登る時に
1段登る毎に
ゴロンと重いものが落ちていく

体がぶどうの房のようになっていて
歩いている時に
その重たい感情の一粒一粒が
ぼろぼろ落ちていく

もちろん
今まで使わせてくれてありがとう♪
の感覚でね

こういうことでもいいんだなって
わかると楽になるね



         〜束の間の休息〜

10/8/2023, 10:19:33 PM

[タイトル:星座にはなれない私]
[お題:束の間の休息]

 深夜二時を回っても、自己PRが一文字も埋まらない私のような人間が入れる企業なんてものがあるのだろうか。
 ないことはない、と思う。
 通っている大学の去年の内定者情報を見れば、私と同じ学部学科は八〇パーセント以上が就職できている。似たもの同士であるはずの友人も、だいたい内定が出ていて、遺伝子のもとである両親も就活を成功している。
 私だけがそこから溢れている、とは思えないし、思いたくない。
 それに、世の中には自己PRなんて嘘で塗り固めて内定を勝ち取る人もいる。埋まらないなら、無理やり埋めればいい、と。
「それができたら苦労しないよなー」
 なんて嘯いて、私は溜まりに溜まった検索タブを見返す。
『自己PRの書き方』
 まず目に映るのは、特別なことなんて書かなくていい、という一文。
 海外留学とか、バイトリーダーとしてとか、ゼミ長としてとか、そんなのはいらない、と。あくまで伝え方が重要で、華やかな経験がないからと嘘をつく必要はない。らしい。
 じゃあ何を書けばいいんだ。そんな気持ちで先を進めると、バイトとかTOEICとかサークルとか言ってくる。
 ねーよ、そんなの。コロナ禍なめんな。
 必死に引きこもってた奴らがバカを見る世の中だと、つくづく思う。バイトもサークルも、コロナじゃなきゃやってた。ありがたいことに親からの仕送りで十分に生活できた。趣味もやりたいこともなかったから。TOEICはどうだろう。友達がいたら一緒に挑戦していたかもしれない。向上心がなくても書けたであろう、自己がとことんまで欠けている。
 まぁ、結局自分のせいなんだろうな。だって、同世代はみんな条件同じだし。
 こんなふうに悲観してばかりで、時間だけが過ぎていく。その結果の午前二時。
 そういえば志望動機も書けてない。
 生きるために働くだけなのに、やりたいこととか求められても困る。でも、なんでもいいってフリーターしてると、将来生きることができない。ここで生活保護で生きればいいやって、振り切れないのも私の弱さだろうか。
 ふと、机の隅に置いていた履歴書に貼る予定の写真が目に入った。髪を束ねて背後に垂らし、葬式みたいな真っ黒のリクルートスーツに身を包む。せっかく写真館にお願いしたのに、目は死人みたいに澱んでいて、どことなく頬がこけている。私が人事ならこんなやつは採用したくない。
「・・・・・・一旦、休憩」
 うんざりして呟いた。
 休憩、といっても、常に半分くらい休憩しているようなものだ。一文字も書かずに見つめているだけで、履歴書を書いてる、とは言い難い。
 束の間の休息に、私は外に出た。夏休みは既に終わり、少しずつ秋めいてきている。街灯に虫が寄り付き、自動販売機には蜘蛛の巣が張っている。近くの水田には蛙が多く棲息しているようで、ゲコゲコと煩く鳴いている。
 七部袖くらいの緑のパーカーを着て、緩慢な速度で夜の住宅街を往く。先ほど自動販売機を通り過ぎたばかりだが、向かう先は別の自動販売機だ。そこにしか無いものが買いたい、というわけじゃなく、なんとなく歩きたい時に目印として定めた場所。往復で二十分程度なので、気分転換にちょうど良いのだ。
 イヤホンからは少しだけ古い音楽が流れる。サブスクに加入して以降、リピートするのは高校時代に流行った曲ばかり。なぜかは知らないが、大学に入ってから流行った曲はあまり好きになれなかった。
 懐かしさに身をやつしながら、少し空を見上げる。星座には詳しく無いので、オリオン座くらいしかわからない。

 オリオン座の名前の由来になっているオリオンとは、ギリシャ神話に登場する狩人だ。たくましく凛々しい美青年の形で描かれることが多く、好色としても知られる。
 彼を語るなら、恋人であるアルテミスも語らなくてはならない。ちょうど、今日は月も見える。月の女神であるアルテミスは、オリオンと運命的な出会いをした。なにせ狩人と狩猟の女神、気が合わないわけがない。
 そんなこんなで二人は恋人になるが、これに反対したのがアルテミスの兄であるアポロン。オリオンの粗暴な性格と、アルテミスが処女神であることが理由、らしい。
 ある日、アポロンは毒サソリをオリオンに放ち、彼は驚いて海に逃げる。海上付近を泳ぐオリオンの頭は、ただの光る岩にすら見えた。
 そしてアポロンはアルテミスに言った。
「君でもあれは射ち当てることは出来まい」
 
 巧みに、残酷に、でもギリシャ神話はそういうお話ばっかりだ。ギリシャ神話はとりわけ人間らしい神様だと評する人がいるけれど、間違いなく人である私は、やっぱりオリオンとアルテミスには幸せになって欲しかったなと思う。

 浜に打ち上がった死体のオリオンを見たアルテミスはどんな気持ちだっただろうか。オリオンを星座にしてくれとゼウスに頼んだ気持ちは。
 
 恋人はもう何年もいない。高校生の時、私に告白したアイツは、私が死んだら星座になって欲しいと思うだろうか。
「星座になれます、なんて自己PRじゃ誰も雇ってくれないな」
 休憩だというのに、結局そのことを考える。私は切り替えが上手くない。短所発見。短所ならいくらでも浮かぶのに、よく裏表とかいわれる長所のはちっとも浮かばない。
 長所もないしエピソードもない。〇から一はダメで、一から百はいいとかいうけど、私には一がない。
 私は改めて自分が星座になったらと考えて、思わず笑みが溢れた。私が星座なら、毎朝の星座占いは常に最下位だろう。
 言うことなんて何もない。ラッキーアイテムは心臓とか。あるいは履歴書。

 色々と考えごとをしているうちに、私は目的の自動販売機の前に辿り着いた。値上がりした百八十円のコーラをCokeOnで買って、すぐに開ける。
 プシュ、といい音がした。
 道路の真ん中を、はしたなくガニ股で歩きながら、喉を鳴らす。炭酸は一気飲みには向かないけれど、三分の一くらいは飲んだ。
 口の端が少しベタつく。
 残りを飲みながら、中途半端に考えごとをする。そういえば就職しない道もあるにはある。家庭に入る、という選択肢。
「そんなのあったな」
 そう言いながら、だからどうした、と思う。履歴書も婚姻届も、本質は変わりない。
 自分が、貴方に、合うか。就活も恋も同じこと。そうでないなら、その紙の先は地獄になる。だから履歴書も書けないのに、婚姻届なんて書けるはずもない。

 そう思いながら、私は左手を空に掲げる。先にはちょうど月があったので、なんとなく薬指の付け根あたりと被せてみる。
 それで何が変わるわけでもないけれど。
 

「こんにちはー、Uber eatsでーす」
 ガチャリとドアが開けられて、のそりと腕が伸びる。それにスシローから貰ってきた一人前の寿司を受け渡すと、小さくありがとうございますと聞こえた。
「ありがとうございましたー」
 そう言って、専用のバックを背負うと、背中越しに鍵の閉まる音がした。防犯意識は大変よろしいのだが、自分が正しく不審者だと言われているようで、なんだか切ない気分になる。
 そんな私の気落ちなんて関係なしに、次の依頼がスマホに届く。受けるか、受けないかは自分次第。もちろん、フリーターの私にとって、選択肢はあってないようなものである。
 自転車に乗って店舗へと急ぐ。最近努力義務化したヘルメットが重い。元々体力があるわけでもないので、緩やかに五月の風を切る。

 Uber eatsには履歴書がいらない。それが私の選んだ理由。
 ネット上の先輩曰く、コロナ禍よりは稼げないが、今でも充分需要はあるとのこと。もちろん、不安定な職業だし、一生自転車を漕ぎ続けるわけにはいかない。就活失敗に対する気休めにしかならない。
 両親は私の選択を渋々ながら了承したくれた。貴女の人生だから、と。我ながら甘い両親だと思う。時にその甘さが失敗を招くのだと、つい教えてあげたくなる。
「これは休憩だよ。人生の、束の間の休息だ」
 こんな論理がまかり通るなんてこと、あっちゃいけないんだよ。なにせ、人生は常に人生だ。生きている限り人生なんだから、休息なんてあるはずもない。
 あるいは、死んで星座になれば、それこそが休息なのかもしれない。
 私は星座に向かないけれど。
 
 やがて信号に差し掛かる。目の前では青が点滅し、もうすぐ切り替わることを教えてくれている。時々、マナーのなっていない配達員が歩道や赤信号をかっ飛ばす様がSNS上に流れるが、未だに私はそれをする度胸がない。これを突っ切って貰えるかもしれないチップに必死になれないのは、まだ私が半人前だからだろうか。
 まだ信号は点滅だったけれど、大人しく止まる。私の速力じゃ、向こう岸まで辿り着けない。

 私の死体は、きっと岸には辿り着かないだろう。

10/8/2023, 10:08:08 PM

対向車の灯りがまぶた越しに見える
規則正しいワイパーは子守唄
私のゆりかご、停留所はまだ先

10/8/2023, 10:06:24 PM

束の間の休息、それでも私は深い喜びを感じる。
瞬きの間に、疲れた心がほんの少し元気になり、
息をつくたびに新たな力が湧いてくる。
だから、この短い時間も大切にしよう。
心に響く瞬間こそ、私の人生を豊かにするのだから。

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