束の間の休息。
カチ、コチ。時計の針が進む音。カリ、カリ。ペンが紙の上を走る音。無機質で、退屈な音だけが部屋を満たしている。
“勉強”、“進学”、“大手企業”。馬鹿みたいにそれしか言わない親から課せられた作業を、毎日夜遅くまで、黙々とこなす日々。
“窮屈”、“退屈”。私の体は、この2つの言葉で作られていると言っても過言ではなかった。いつまでこんな生活が続くんだろうと、絶望した時もあった。
しかし、最近、ちょっとした“休み方”を覚えた。
そろそろかな。ソワソワして、勉強机に置いていたスマホの画面を、ながら見しながら適当にペンを走らせていたら。画面が明るくなって、ポコン、メッセージをお知らせする通知が現れた。
その瞬間、私は引ったくる勢いでスマホを掴み、簡素な返事だけ送った。勉強道具をテキトーに片付け、電気も消し、“退屈な私”の店仕舞いをした。バレないように、いつもこっそり準備している小さなリュックをクローゼットから取り出す。
すっかり寝静まっている家の中を、まるで泥棒のように足を忍ばせ進み、玄関を出た。家の前には、最近出来た“悪友”が悪戯っぽい笑みを浮かべて、ひらり、手を振っている。
それに私も同じように応えた後。少し離れた所に停めてくれている親友のバイクへ、2人して駆け出した。
たった数時間。終わればまた朝がきて、憂鬱な毎日が始まってしまうけれど。
今、この時だけは。私の時間は、私だけのものになる。
10/9/2023, 1:18:54 AM