『束の間の休息』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
名前を、呼ばれた気がした。
体を起こそうとするも、指先ひとつ動かせず。
ならばと、声を上げようとするも、掠れた吐息が漏れるだけだった。
それにしても暗い。今は何時頃なのだろう。
随分眠っていた気もするし、全く眠れなかった気もする。
夢を見ていないからかもしれない。
何時寝たのだろう。
そもそも、今は目覚めているのか。
自分は、目を開けているのだろうか。
「手に負えぬものまで対処しろなど、わっちは一言も言っていませんが。一体何をしているのですか」
聞き慣れた声。
したん、と何かを打つ音がした。
あぁ、機嫌を損ねてしまっている。
宥めなければ。
あれは構ってもらえずに、拗ねている時の打ち方だ。
早くしなければと、まだぼんやりとする意識を引き戻すように。
目を、開いた。
「やっと起きましたか」
「ち、とせ?」
「まだ呆けているのですか。わっち以外の何に見えると」
ふん、と鼻を鳴らすその姿に、ごめん、と掠れた声を漏らす。
声がうまく出ない。体が鉛のように重い。
何が、どうして、と混乱する思考で直前の記憶を辿ろうとすれば、しなやかな尾に頬を張られ妨げられる。
「わっちの社に入り込もうとした無礼者の瘴気に中てられたのです。まったく嘆かわしい」
そういえば、確かに境内の掃除中に黒い澱みを見たような気もする。
社に近づいたから、追い払おうとして。
腕を掴まれた後の記憶が、なかった。
「澱み、は?」
「犬に喰わせました。余剰分は切り裂いて燃やしましたが」
「ささら、どこ」
「そこで転がっています。たったあれだけで消化不良を起こすなど、本当に使えない」
そこ、と示された場所に視線を向ける。
視界の隅に、力なく揺れる茶色い尾が見えた。
「穢れが抜けきるまでは、おとなしく寝ている事です。社の管理の礼として、動くまでの世話を犬に行わせましょう」
そこで自ら行わないのが、猫らしい。
力なく礼を述べれば、視線を逸らし尾を揺らした。
ゆらゆらと揺れる尾を見ているうちに、段々に瞼が重くなってくる。
「ここ暫く、お前はよく働きました。ゆるりと休むが良いでしょう」
「でも」
落ちていきそうな意識を、何とか繋ぎ止める。
休むとしても、一日二日で元の通りには動ける訳でもないだろう。
その間に二人の世話や、神社の管理が出来なくなる事が不安だった。
「お前が心配するような事は、何一つありません。さっさと休みなさい」
素っ気ない言葉に、おとなしく目を閉じる。
すぐに訪れた睡魔に、今度は抗う事なく意識を落とした。
「まったく手が掛かる」
男が深い眠りについて、暫くして。
猫の姿をとる神は誰にでもなく呟くと、犬の元へと近づき、爪を出した前足を容赦なくその頭へと突き刺した。
ぎゃん、と小さく鳴いて、文字通り飛び起きる。
「な、何。あ、えと、」
「煩い」
ぴしゃり、と静かでありながら鋭い言葉に、犬は慌ててお座りをする。
「いつまで休んでいるつもりだ。さっさと動け、犬」
「はいっ!」
背筋を伸ばして返事をする。
眠る男の側へなるべく音を立てぬようにしながら近寄ると、枕元へと乗り男の額に前足を触れさせた。
僅かな険しさを浮かべる男の表情が、少しずつ穏やかなものへと変わる。
「それが終わったならば、人の形を取り、食事の準備をなさい」
「人…」
「わっちがわざわざ教えたのだ。出来ぬとは言わせぬ」
「出来ます!ボク、頑張る」
男を起こさぬよう声を潜めながらも、犬は神を見てはっきりと頷いた。
男の役に立とうと、自分から教えを請うたのだ。犬には出来ないなど言うつもりも、思ってさえもいなかった。
「よろしい。なれば、わっちは少し出る。留守中、それに何かあればその首、胴と切り離す故に心する事だな」
「大丈夫。ゴシュジンは守ります。今度こそ、絶対に」
噛みしめるように呟けば、神はそれ以上は何も言わず。
何も出来ぬ己の無力さに歯がみして、神に従い教えられるままに澱みを喰らったその従順さを、少しばかりは認めているからだ。
犬から視線を逸らす。
だが言い残した事を思い出し、振り向かすに口を開く。
「それが目覚めても、寝所からは出さぬように。無理を通すようであれば、眠らせなさい。それには休息が必要です」
「分かりました。ゴシュジン、最近は頑張りすぎてたから、しっかり休んでもらわないと」
今回の事がなくとも、男には休息が必要なのは犬の目にも明らかだった。
家事に、社の管理に、金銭を得るためのいくつかの仕事。
ここ数日の男の忙しない一日を思い返して、犬はしみじみ頷いた。
「社周りの化生を一通り狩り終えたら戻る。貴様にもいくつか残しておく故、後で狩るように」
それだけを言い残し、神の姿がゆらりと揺れて消える。
気配が完全に消えたのを確認して、犬は強張らせていた体の力をようやく抜いた。
「やっぱ、怖い。でも頑張らないと」
存在自体が畏怖するものではあるが、犬に必要だったすべてを請えば教えてくれるほどの優しさはある。
「今度はちゃんと守るから。今はゆっくり休んでね、ゴシュジン」
束の間ではあるが、ゆっくりと休んでほしい。
そのためにも、もっと出来る事を増やしていかなければ、と。
穏やかに眠る男を見て、犬は強く頷いた。
20241009 『束の間の休息』
束の間の休息
貴方からの着信が天国なら
ひよってる私は地獄にいるのを選んでるのかもしれない
だけど文面にどきどきするから
束の間の休息という意味では
返信後の返信待ちの時間かもしれない
《束の間の休息》
さぁ、いらっしゃいませ
お客様
紅茶やコーヒー、ジュースなどのお飲み物から
クッキーやケーキ、スコーンやタルト
お食事まで
沢山の物を取り扱っております
もちろん、他のご要望もお気軽にお申し付け下さい
ここは物語の英雄、“アニメ”や“マンガ”の主要人物達などの困難を乗り越えなければならない運命にある人のため
束の間の休息を得ることの出来る楽園にございます
大きな壁に突き当たってしまったとき
強大な敵に立ち向かう前に、またはその後で
困難に挫けそうになった時
此処に来て休んでいって下さい
そして、再び羽ばたいていって下さいね
————————————————————————————
「物語を神(作者)の考えた通り完結させる為に」
例えば 部屋で
スマホ見ながらごろごろしてる時
例えば 仕事場で
あったかいお茶を飲む時
例えば 出かけた先の公園で
ベンチに腰掛け日向ぼっこする時
家族・同僚・行き交う人々
周りに人はいるはずなのに
ちょっぴりひとりを感じる瞬間
笑顔の仮面を何処かへ飛ばし
耳を塞いで 目を閉じて
詰めた息を吐く
束の間の休息
それが終われば忘れちゃいけない
あなたの飼い猫 揃ってますか?
No5.『束の間の休息』
「束の間の休息」
「前回までのあらすじ」───────────────
ボクこと公認宇宙管理士:コードネーム「マッドサイエンティスト」はある日、自分の管轄下の宇宙が不自然に縮小している事を発見したので、急遽助手であるニンゲンくんの協力を得て原因を探り始めた!!!お菓子を食べたりお花を見たりしながら、楽しく研究していたワケだ!!!
調査の結果、本来であればアーカイブとして専用の部署内に格納されているはずの旧型宇宙管理士が、その身に宇宙を吸収していることが判明した!!!聞けば、宇宙管理に便利だと思って作った特殊空間内に何故かいた、構造色の髪を持つ少年に会いたくて宇宙ごと自分のものにしたくてそんな事をしたというじゃないか!!!
それを受けて、直感的に少年を保護・隔離した上で旧型管理士を「眠らせる」ことにした!!!悪気の有無はともかく、これ以上の被害を出さないためにもそうせざるを得なかったワケだ!!!
……と、一旦この事件が落ち着いたから、ボクはアーカイブを管理する部署に行って状況を確認することにしたら、驚くべきことに!!!ボクが旧型管理士を盗み出したことになっていることが発覚!!!さらに!!!アーカイブ化されたボクのきょうだいまでいなくなっていることがわかったのだ!!!
そんなある日、ボクのきょうだいが発見されたと事件を捜査している部署から連絡が入った!!!ボクらはその場所へと向かうが、なんとそこが旧型管理士の作ったあの空間の内部であることがわかって驚きを隠せない!!!
……とりあえずなんとかなったが!!!ちょっと色々と大ダメージを喰らったよ!!!まず!!!ボクの右腕が吹き飛んだ!!!それはいいんだが!!!ニンゲンくんに怪我を負わせてしまったうえ!!!きょうだいは「倫理」を忘れてしまっていることからかなりのデータが削除されていることもわかった!!!
それから……ニンゲンくんにはボクが生命体ではなく機械であることを正直に話したんだ。いつかこの日が来るとわかっていたし、その覚悟もできたつもりでいたよ。でも、その時にようやく分かった。キミにボクを気味悪がるような、拒絶するような、そんな目で見られたら、覚悟なんて全然できていなかったんだ、ってね。
もうキミに会えるのは、きょうだいが犯した罪の裁判の時が最後かもしれないね。この機械の体じゃ、機械の心じゃ、キミはもうボクを信じてくれないような気がして。
どれだけキミを、キミの星を、キミの宇宙を大切に思ったところで、もうこの思いは届かない。でも、いいんだ。ボクは誰にどう思われようと、すべきこととしたいことをするだけ。ただそれだけさ。
……ついに裁判の時を迎え、ボク達はなんとか勝利を収めた!
それから。
ボク達はニンゲンくんに、そばにいていいって言って貰えたよ!
とまあ、改めて日常を送ることになったボク達だが、きょうだいが何やら気になることを言い出したよ?
ボク達を開発した父の声が聞こえたから目覚めたと言っていたけれども、父は10,000年前には亡くなっているから名前を呼ぶはずなどない。
一体何が起こっているんだ……?
もしかしたら専用の特殊空間に閉じ込めた構造色の髪の少年なら何かわかるかと思ったが、彼自身もかなり不思議なところがあるものだから真相は不明!
というわけで、ボクはどうにかこうにか兄が目を覚ました原因を知りに彼岸管理部へと「ご案内〜⭐︎」され、ついに彼岸へと進むが……?
─────────────────────────────
「行ってらっしゃーい!……の前に!一応言っておきまーす!皆さんの滞在中は、見張りとしてそっちにいる静かな少年がお供しますよー!」
「……どうも。僕のことは気にせずお過ごしください。あと、彼岸探知機は破損させないようお気をつけて。」
「あぁ、頼んだよ!」
「それでは改めて、行ってらっしゃーい!」
どこからともなく引っ張られるような、変な感覚に包まれる。
気付けばボク達はトンネル?にいた。
「ここは……どこだい?」
「此岸と彼岸の境目、とでもいうべきでしょうか。そんなところです。」
「わー!こえ、わーってなるー!」
「確かに響いているね!」「たのちい!」
「ねーねー、⬛︎⬛︎ちゃん。おとーしゃんにあうんだよね?」
「そうだよ。今から会いに行くんだ!」
「ボク、おとーしゃんびっくりさせるのー!」「というと?」
「えとねー、ごあいさちゅのときにねー、ニンゲンしゃんのうちろにかくれるのー!でねー、そのあとばぁするの!」
「要するにサプライズゲストになるってわけだね!」「ん!」
わかってるのかわかってないのかわからん返事だ。
というか、自分の後ろじゃなくたって隠れる場所くらいありそうだけどな。……まあいいか。子どものやることだし。
「ニンゲンしゃん!ごあいさちゅのとき、うごいちゃめーだよ!」「はいはい。」「はいは いっかい!ておとーといってたの!」「はい。」「えらーい!」
……にしても、この先に「あの世」があるんだよな。死んでないのにあの世に行くとか……いや、実は全部夢とか?
それとも実は自分達みんな死にかけとか……?
「もうすぐ第一階層に着きますよ。」
「ちょっと緊張するねー!」「おとーしゃ!」「ここでぼくの正体が分かるかもしれない?本当に?」
口々に思ってる事を。全部あの世の人に聞こえてても知らないぞ?
「今のところ景色は変わっていないようだが───わっ!!」
またあの時の変な感覚が───。
気付けば若干薄暗い町?に出ていた。
変な建物やら、何を扱っているのかわからん店やら、正体不明の生き物やら、有象無象がより固まっている。
「有象無象?これでもある程度は分類されているようだよ、ニンゲンくん?」「そうなのか?」「ああ、ボクには分かるよ。彼らみんなに感情があるんだ。」「見ただけじゃ分からん。」
「それはそうと、あれ!見えるかい?あの岩でできた建物!懐かしいなぁ。おとう……博士があれの模型をくれたんだ。今でも研究室に飾ってあるんだよ。」
「それからこっち!あれは猫にそっくりだが、キミ達ニンゲンよりも能力のある……というか厄介な生き物だ。現実を書き換えてしまうんだよ。知的生物にとって、都合の悪いようにね……。」
「それでね、あっ───。」
「ん?」「博士だ。」「ボク達を探しているみたいだ。」
「行かなきゃ。」「あ、ちっこいの!自分の後ろに隠れて!」
「ボクちっこいのじゃないもん!」「しーっ!」「ん。」
「あ……博士、博士!」気づいていないのかな?
「あそこにあの子にそっくりな子が」
「博士!は!か!せ!」「ん?」
「博士ってば!」「あ、私を呼んでいるのですか?」
「当ったり前だろう?!!あんた以外に博士がどこにいるっていうんだ!!!」
「いや、あの……。私の息子によく似ていたものだからついぼーっとしてしまって。」「息子!本人だから!!!」
「は……なんで……。」「え、なになに?」
「どうして、ここに?」「いや、聞きたいことがあってさ。」
「君に異常がないかすぐ調べる。今ならまだ間に合うはずだ!君が寿命を迎えるにはあまりにも早すぎる。絶対に助けるから───!」
「ちょっと待ってってば!」「事情ならもっと後で聞く!」
「あのさ!話を!!聞いて!!!」「……?」
「ボク達───えーっと、後ろにいる彼らも含めて、全員生きてるよ。」「えっ」「生きてるんだって。」「え?」
「これは夢ですか?」「現実だよ」
幽霊に目を疑われるとは。変な感じだ。
「それで、聞きたいこと、とは一体?」
「……もしかして、生前の恨みつらみを聞かせるつもりですか?」「違うよ。」
「まあとりあえず、一旦挨拶させてよ!」
「博士───いや、お父さん!一万年ぶりだね!」
「ああ、久しぶり!よく会いに来てくれたよ!」
「「会いたかった!」」
「後ろの皆さんもこんにちは。私がこの子の父親です。生前は公認宇宙管理士をしておりました。」
「どうも。」「はじめまして。」
「この子がいつもお世話になっております。我ながらとても良い子だと思っているのですが、ご迷惑をおかけしていませんでしょうか?……少しわんぱくなところもあるので心配で心配で……。」
「自分は平気ですが、最近色々と困っていたみたいですよ。たぶん……あなたのせいで。」「げっ、ちょっとキミ!やめたまえよ!」「え」
「あー、えーっと……ちょっと!ちょっとあっち向いてて!」
「ん?」「どうしてもお父さんに会いたいっていうひとがいるから一緒に来たんだよ!だからあっち向いてて!」「えー?」
機械は小さい兄に向かって手招きをする。
兄は足音を立てないように頑張って静かに歩く。
「もういいよ!前を向いて!」
「ん?」「おとーしゃん!」「……。」「おとーしゃーん!」
「ボクだよ!⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎⬜︎だよ!」「おぼえてないのー?おとーしゃんなのに、わしゅれんぼしゃんなのー!」
子どもが無邪気に笑っている一方で、親は涙を見せる。
博士は真っ青な顔で小さな息子を抱きしめた。
「ごめん……ごめんな。私のせいで君が苦しんでしまった。私のせいで君は死んでしまった、私が殺してしまったようなものだ。済まなかった、済まなかった……!」「んー?」
「ボク、いきてる!」「?」「おとーしゃん、なんでえんえんしゅるのー?なきむししゃんなのー?」「ぇ……ぃゃ……。」
「おとーしゃん、だいしゅきー!」「ぎゅー!」
「良くも悪くも、おそらくお父さんのおかげでボクらきょうだいも無事再会できたんだよ!」「そうなんだ……?」
「あのっ!まあとりあえず!せっかくだから色々お話されたらどうですか?」「そうだね!ここじゃなんだから、私の研究室で話そうか!」
「ぼくとニンゲンさんは外で待ってるので、親子水入らずの時間を過ごしてください。」「お気遣いありがとう。ぜひ、そうさせていただこうかな。」
ずっと働きづめだった機械の、束の間の休息。
そして、ぼくにとっては自分を知るための時間。
「ニンゲンさん。気付いた?」「ん?」
「あの博士、髪がぼくと同じ構造色だった。」
「生き物は死んだらみんなああなるのかな。」
「わからんけど、そのうち何か分かるよ。多分。」
「そうだったらいいな。」
「ニンゲンさんも、何か面白いもの見つけたら教えて。」
「わかった。」
こうしてぼくたちは小さな彼岸の旅を始めた。
To be continued…
私の中で激しく蠢く猛火は何度水をかけようと時が経てば再び燃え盛り体を蝕み始める為、人間や動物が息を吸って吐くように私は定期的に炎を生み出し炎を放出しなければならない。……ああ、体が熱くなってきた。
両手にゆっくりと力を込めて締め付ければ体の内側から熱が抜けていくような感覚に襲われ、解放感から思わず笑みが漏れた。
「最高だ……貴様もそう思うだろう?」
醜く爛れた『ソレ』に声をかけるが返事はない。
「嬉しくて声も出ないか」
それもそうか、私の一部と言っても過言ではない猛火を一身に浴びているのだから。これまでの苦労や不幸もこの為だったのかと幸福に浸っているのかもしれない。……もう少し時間をかけてやれば良かったな。
「ぁ……ッ……」
ふと小さな呻き声が耳に届いた。
「どうした? 私に何か言いたいことでも?」
僅かに顔を寄せてそう問いかける。ソレは再び小さな呻き声を漏らした後、窪んだ穴から一滴の雫を垂らしながら言った。
「……ゃく……ご、……ろし……て……ッ」
ソレが囁いた言葉を聞き私は微笑んだ。
「それが貴様の望みか」
続けて聞こえた呻き声を肯定と捉え、私は原型を失いつつあるソレに手を添え直す。ぬるりとした感触に眉を顰めそうになるが、これも望みを叶えてやる為だと我慢しながら勢いよく両手に力を込める。
同時にこれ以上ないほどの解放感が与えられた。この瞬間、私には何も考えない"無"の時間が訪れる。怒りも憎悪も何も感じない一時の休息の時間。
「……最高だ」
小さく呟いて私は一時の安寧に身を任せた。
朝早く起きて、眠たい目をこすりながら
顔を洗い軽めの朝食を食べる
メイクして身支度を整えて、仕上げに鏡に映る自分に
気合いを入れるためのとびっきりの笑顔
狭くてむさ苦しい満員電車に揺られながら出社
まったく、子供じゃないんだから不機嫌を人にぶつけるんじゃないわよ、なんて思いながらも
ネチネチ嫌味ばかりの上司に、ぺこぺこ頭を下げながら業務をこなす
おしゃべり好きな同僚とランチしながら、社内のどうでもいい噂話に肯定も否定もせずニコニコしながら相槌をうつ
この子、そうやって私のことも影でコソコソ言ってるんだろうな
午後からも、時計を気にしながらパソコンにかじりついてやっと業務終了させた
仕事ができない上に、プライドだけはやけに高い後輩くんのフォローをしたからいつも以上に疲れた
クタクタになりながら、夕食のメニュー考えるけど
もうそんな気力も体力もないから今日も、コンビニ弁当でいいや
6畳にも満たないこの自宅の一室が、私の唯一の
安心できる場所で、素の自分でいられる無二の居場所
心を許せる友達も、心底愛せる恋人も、信頼できる家族もいないそんな寂しいアラサー女の地味なサンクチュアリ
だけど、そんな日々を淡々と生きて自分のやるべき事をやってるんだから頑張った私を労いたい
一日を乗り切った私にお疲れさまをこめてビールを一杯
はぁ、今日もしんどかった
「束の間の休息」
束の間の休息
思えば常に焦りと緊張がついて回っていた生活だった
今穏やかに過ごす時間があるのはこのあとの人生を走り切るためにあるのかもしれない
つかの間の休息
家にいると疲れていることに気づかない。
ずっと家にいたくせに疲れてるの?と考えてしまう。
家にいたからといって、何もしていないわけじゃないのにね。
今日、たまたま用事があって、本当に久しぶりに百貨店に行った。
少しだけ、ぶらぶら歩いた。
昔好きだったブランド物の洋服。
好きだった香水の匂い。
懐かしい。
好きだったものは、こんなところにあった。
一瞬だけど、心が蘇った気がした。
体力回復の夜(テーマ 束の間の休息)
22時過ぎ。
会社から出て、眠い頭を抱えつつ、行きつけの24時間スーパーへ向かう。
軽くお腹に入れるものを買い、半分寝ながら自宅へ。
独身中年男の、誰も待っていない家。
ゴミがそこかしこにある、荒れた部屋。
寂しいとか、汚いとか、時間があれば考えるのかもしれないが、とにかく、さっき買ってきた夕飯を胃袋に詰め込む。
これで後は寝るだけだ。
シャワーの一つも浴びたいところだが、そのまま寝る。
早朝に起きるためには、自分的にはいくつかコツがある。
寝るときに疲れを身体に覚えさせないことと、起きた後の熱いシャワーと、冷水。
(これで何とか目覚めをよくして、5時起き、6時に会社へ行く。これで朝礼までの貴重な作業時間を確保するのだ。)
気分は戦場の兵士だ。
僅かな休憩をキチンと体力の回復に使うことで、少しでも生存率を上げる。
早速ベッドに倒れ込む。
(あー。学生の頃にゲームでキャラを酷使した罰が下ったのかな。)
よくプレイしたそのゲームは、夜は限界なら翌朝6時まで活動できた。そして8時からまた活動できたので、キャラクターを訓練に次ぐ訓練で酷使して、能力を向上させていた。
今は、自分が死なないために、睡眠時間を確保するのだ。
12時から5時までの5時間。
体力回復し、脳の老廃物を洗い流して、翌日の仕事に備えるのだ。
明日も仕事が詰まりに詰まっている。
(あー、ワークライフバランスが取れた職場に転職したい。もうなんか、バイトでもいい。)
そして、明日のために、意識を手放した。
束の間の、僅かな休息。
束の間の休息でリフレッシュ出来た?
一人の休息が皆の迷惑にならないよう、
バリバリ仕事しなくっちゃ!!
うーん、こんな感じでいいんだろうか? 俺は上司に確認を取りに向かう。
「いいよいいよ、○○くん! キャッチコピーはこれでいこう!」
上司のお墨付きを貰った。次はイラストだが……。
夕日の沈むビーチを背景に緩みきった表情でフラダンスを踊る自分を捨てて、スーツで営業回りに走っていく男性をメインにしよう。
少々漫画的になり過ぎるかもしれないが、目をメラメラと燃え盛る炎にしてもいいかもしれない。
イラストだけ見るとなんだか余白が多い気がするが、キャッチコピーをメインにするならこれぐらいがちょうどいいのだろう。
俺は出来上がったサンプルを上司に提出した。
「うーん、目を炎にするのはちょっとやり過ぎかも……。でも、これぐらいのほうがインパクトはあるかもね。よし、今月は君のポスターで行こう!」
「ありがとうございます!」
初めて俺のデザインが採用されたことに、俺は確かな満足感を覚えた。
近いうちににこのポスターが取引先に貼られると思うと……駄目だ、ニヤケが止まらん。
社名の通り、社員のモチベーションアップもお手の物、ということか。
よーし、来月以降もバリバリ仕事するぞー!
束の間の休息
昨日、満中陰を迎えて、私の「これまで」にひと区切りついた…が…
今さらながらに気づいたのだが、状況が大きく変わるとき、頭と感覚のスイッチは同時に切り替わるものではないらしい。頭は次に必要な行動を示すが感覚は疲労感のような重さを手放せないでいる。はて、世には家族の介護を在宅でやり切った方々も少なくないと思うのだが、みなさんどうなのだろう…? すぐに元気いっぱいに次の必要へ進まれるのだろうか。それとも、とにかく次へと向かって進む中で徐々に適した活動性へシフトしてゆくのだろうか。
…ちょっとこぼしたくなっただけだ。
私の場合、強く疲労感を感じる要因は別にある。けれど私の身体はひとつしかないから、身体という「同一焦点」に重さを感じる、だけなのだ。わかっている、わかってるんだっ。
束の間の休息な感じを呼吸する方法を、探している。これから先もずっと有効なやつを。
むぅん…
「書いて」のお題が、一週間程一気に先に出してくれたらいいのに。
そうしたら書き貯めたり、一つの話に複数のお題を使ったりして、お題を浮かして束の間の休息が取れるのに。、
沈没覚悟で
酒かっ食らってるときに
おトイレタイム。
ここで思いとどまるか
束の間の休息とするかで
翌日のダメージに
雲泥の差がでる。
(束の間の休息)
その日、わたしは電車に乗らなかった。
並んだ列から自然に一歩横に踏み出した。わたしの並んでいた空間は何事もなかったかのように、すぐに埋まってしまった。わたしなど存在しなかったかのように。
電車が来ると、効率的に列が扉の中へと押しだされていった。スーツを着た中年の女がちらりとこちらを見たような気がしたが、気のせいかもしれない。
わたしは誰も並んでいない、反対方向の電車に乗った。
座席には、ぽつりぽつりまばらに人が座っているだけで、いつもより多く空気が吸える気がした。
カバンから読みかけの文庫本をとりだして、目で文字を追ったが、頭の中ではメロンクリームソーダのことを考えていた。
静かな喫茶店の完璧なメロンクリームソーダの中で、わたしは眠るのだ。甘く冷たいクリームの中でこの世のすべての記憶がなくなり、わたしはただのわたしになる。
透明でグリーンの小さな無数の泡が、全身の皮膚を柔らかく刺激して、わたしはグラスの底までゆっくりとおちていく。次第に眠りが訪れて、泡の数だけ夢をみるのだ。それは楽しい夢かもしれないし、おそろしい夢かもしれない。ゆっくりとあまい眠りが自分に訪れるところを想像する。
そして持っている文庫本をぱたんと閉じた。
わたしは電車を降りた。
束の間の休息。みんなは人と話すことや友達と話すことって言うけどそれは逆で夜に寝るのが唯一の休息
束の間の休息。
それを手に入れるために階段を下った。
うちの建物の三階は、昼間は社食スペースとして大活躍しているが、午後になると賑やかさは激減。混雑率は1%程度になる。
僕はその1%に混じりに来た。
ここに来る人は、サボりに来てるのか、あるいは食べ損なった昼食(コンビニ弁)を食べている人などだ。
社内ニートの人もいるかも知れないよねー、知らんけど。
三階に到着。
同フロアにあるコンビニに寄ることにした。
およそ230円程度のお買い物をして、のんびりな席を探す。テーブル席がいいなあ……。ソファもふっかふかがいいなあ。
目当ての席があったので、そこにしよう。
腰を下ろそうとする。
ふっかふかに身体を預ける。
温泉に入るときみたい。あー、って言っちゃう。
テーブルの上に、先ほどコンビニで買ってきた戦利品を投げ出して、目の前の大きな窓を眺める。
天井の隅から床にたどり着くまで、全部が窓ガラスだ。
その窓に映っているのは、都内某所のメインストリート。左右に迫ってくる高層ビル群に挟まれた高架橋の首都高速道路。その下には一般道路があるはずだ。見えないけど。
ちらっと、信号機の赤い色が見えた。今は停止信号で、もう少ししたら出発進行!
そんな三階からの景色をみながら、シュークリームを食べちゃうのだ!
やっと寝た 寝たで気になる 生きてるか
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病児を寝かしつけていると呼吸音確認しちゃいますよね。
高校に入ってからそんなものはない。
日々勉強と放課後講座と部活と探究活動に明け暮れている。
――束の間の休息
思いっきり泣いたので、心がスッキリと、穏やかとなった。だから、心の準備が出来た。私の諸天善神が、ずっと働いてくれていた。途中諦めていた。「それ、そうよね。」と、思った瞬間に道が開けた。時が来ているのだ。私の軌跡の中に、君たちが入ったことを嬉しく思う。私は、飄々と生きていく。ここ最近、穏やかに過ごせた。愉快だった。生命力が戻った。まだ、心が硬いが、もういい。過ぎ去ってみれば、束の間の休息だった。それは、時間を取り戻すことだった。若いと言われた。
束の間の休息103
臨時
また来週月曜日