『未来』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
自分でなんとかしないといけない
つらい事が多すぎる
未来を作らなくちゃ
やることが多すぎて
自分を追い詰めて
身動きが取れないときは
目の前のことだけに集中しよう
指一本だけでもうごかして
まずは起き上がろう
起き上がれたら顔をあらって
つぎは右足、左足
考えすぎてぐちゃぐちゃになったら
まずはそれだけ
たった一本でも指をうごかして
一秒でいいからうごかして
それを続けることだけに集中しよう
先のことなんか考えない
今を今だけを動くだけでいいよ
僕が高校生の頃、2023年の時ぐらいは自動車も公共バス路線バスもタイヤがなく空中に浮いて運転しているとこを想像していたが…実際は違う未来になってた。空中に浮いて運転の乗り物は開発段階かもしれないが。実際の世界はアニメの世界ではないよね。僕がこの先何年生きられるかはわからないけど、そんな未来になっていったら色々なところが変化しているだろう。人間も日常の事も仕事や世の中の情勢も。この先の未来は戦争もなく人も色々な事も平和に導いていく事に僕は願いたい。
#52 未来
いくら健康や安全に気をつけていても、
いずれ訪れる終わりからは逃れられない。
ポジティブなこと書きたいけど、難しいなぁ。
そんな話。
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例えば、
パンドラが開けて、トトロのメイよろしくブワッとなった箱。本来壺らしいが。
例えば、
ブッダが外に出て「うわあ…」ってなった四苦。
まぁ私は文章を書くのに四苦八苦してるわけだが。
ところで、
地震が続けば南海トラフを憂い、
雨が続けば、どこかで土砂災害が起きる日本で。
避難において障害となる正常性バイアスだが、これがあるおかげで希望-特に未来への-を持てるのではなかろうか。人生笑った方が勝ちとか、楽観主義とか。
そう思うと、労働人口の死因第一位が自◯っていうのは、うーん、問題しかない。
そこを乗り越えたとしても、老いと病魔の恐怖と寿命が待っているわけで。
なるほど未来に希望を持てない若者がわんさといるのも納得だ。
厚労省で出ている年齢別の死因順位を見ているうちに病みかけた私は、そんな風に考えた。
刹那主義という言葉があるのも頷ける。
生命は誕生以来、生きる方向に向かって進化してきた。その目的が何であるか、私には分からないし、多分どこにも正解は書いてないと思う。
なので生きる目的について考えても底なし沼にハマるだけで本当の答えは無い、それが私の持論である。
まぁ両親には何らかの動機があったのだろうが、
そんなの自分には関係ないので、
どう生きるかは自分で決めなければいけない。
未来を切り開くのは自分、という意味ではない。人生、自分の手ではコントロールできないことばかりである。ただ、どういう姿勢で臨むか、それだけは自分で決められる。
「4月19日のお題が、『もしも未来を見れるなら』だったわ」
あの時は結局何も思いつかなくて、ほぼお手上げ状態だったわ。某所在住物書きは己の過去投稿分をたどり、当時の失態を思い出してため息を吐いた。
「未来『は明るい』、未来『を変えてはいけない』、未来『に行くタイムマシンは理論上存在し得る』、未来『が分かってりゃ誰も苦労しない』。
ケツじゃなく、アタマに言葉を足すなら、『10年後の』未来とか、『人の絶えた』未来とか、そういうハナシも書けるだろうな」
まぁ、ネタは浮かべどハナシにならぬ、ってのは毎度のことだが。物書きはうなだれて、再度ため息を……
――――――
なかなか、おはなしのネタの掴みどころが無いのが「未来」なような気がします。こんなおはなしをご用意しました。
最近最近の都内某所。人に化ける妙技を持つ、化け狐の末裔が住む稲荷神社で、今年も小さな八重咲きの、水色や薄紫が、こんもり咲いています。
雨の花、大きな大きな大アジサイです。子狐は、「お星さまの木」と呼びます。
ちょっと大きめな葉っぱの上で、花は多くが上を向き、満開になれば、ふっくらこんもり花が寄り合います。それはまるで、お空の星粒が地上にやってきたようです。
神社敷地内の一軒家に住む子狐は、その星そっくりな花の咲く木を、「お星さまの木」と呼ぶのです。
狐の神社は森の中。いろんな星の花が咲きます。
キラキラ黄色いフクジュソウ、ヒラヒラ紫キクザキイチゲ、それから白い「お星さま」。
時折完璧な星の形をした水晶のキノコが、それを見に来た子狐に、「あなた近い未来、たぶん明日、今日の夜ふかしのせいでお寝坊するから、ちゃんと早く寝て目覚ましかけておくのよ」と、「私を信じなきゃあなた未来で不幸になるわよ」と、本当かウソか知らない未来を、イジワルな胡散臭い声で授けてきますが、
そういう変な連中は大抵、都内で漢方医として労働し納税する父狐に見つかって、周囲の土ごと掘り起こされ、『世界線管理局 植物・菌類担当行き』と書かれた黒穴に、ドンドと放り込まれていました。
多分気にしちゃいけません。きっと別の世界のおはなしです。「ここ」ではないどこかのおはなしです。
「お星さまの木の中は、涼しいなぁ」
コンコン子狐は枝と枝の間にスルリスルリ。水色のお星様を咲かせる木の中へ、入っていきます。
そこは子狐のお気に入り。枝の伸び具合と葉のつき具合で、中に子狐1匹分の「秘密基地」があるのです。
去年も似た場所に、小さな基地ができました。
今年もこの場所に、この基地ができました。
きっと来年も再来年も、その先も、子狐が大人狐になる未来まで、星空の秘密基地は、ずっとあり続けるのでしょう。
「お星さま、お星さま。良い夢分けてくださいな」
お星さまの木の中で、ガンガン熱気をさえぎる星空の下で、コンコン子狐は丸くなって、ふかふか尻尾を極上の枕に、お昼寝をすることにしました。
「お星さま、星の日傘、さしてくださいな」
最高気温32℃、朝から真夏日の都内でも、森の中のアジサイの、葉っぱの下に入れば快適です。
コンコン子狐はそのまま目を閉じ、すぐに寝息をたて始めました……
その日は、やけに静かだった。日曜日だというのに、車の音一つ聞こえず、夏だというのに、蝉の声一つ聞こえない。俺はどこにいるのだろう。意図して作られたような、人工的な沈黙の中で、ふとそんなことを考える。そして、解った。俺は今、家の中にいる。そこの二階のクローゼットの中にひざを抱えてうずくまっている。がっくりと下を向いた俺の瞳は、どうしょうもなく、人を欲しているような気がした。俺は、誰かを待っているようだ。しかし、誰も迎えになんか来ないだろうと思う。床は、足の踏み場もないほど、ゴミで埋め尽くされている。周りの白い壁には、無数の穴が空いていて、それらは、家のすべてに広がっているようだった。遠目からでもわかるほど、荒れ果てていて陰気な家だった。それでも、俺は、誰かを待つことをやめない。もう少し待とう、もう少し待とう、と、まるでケーキの生地を横長に広げていくように、一日一日を伸ばしている。外が、少し騒がしくなった。カラスの声が甲高く響き、どこからかサイレンも聞こえる。俺は、何を恐れているのだろうと思った。俺は、俺の心の中に潜って、少し考えてみる。俺は、怪物を恐れているようだった。そいつは家の外にいて、お前が出てくるのを、舌なめずりしながら、いまかいまかと待っているのだという。俺は、クローゼットから出た。そして、瞳をしっかりと開けて、目の前の光をギュッと捕えてはなさなかった。怪物と戦おうと決めたようだった。怪物の倒し方は決して、一通りではない。必ず、倒してみせる。そう決心した俺の目はもう下を向いてはいなかった。
そのとき、空気をブルブルと揺るがすような轟音が迫ってきた。すると、次の瞬間、窓から大量の水が、一斉に入ってきた。津波だ、と気づいたときには俺はもう呑まれていた。目の前に怪物がいた。俺を哀れんでいるようにも見えるし、蔑んでいるような気もする。眼の中に残された僅かな光で俺は怪物を見ていた。そいつを倒すチャンスはいくらでもあった。ずっと前から、あった。
「未来」
通りを歩くお年寄りは
未来の自分の姿
公園ではしゃぐ小さな子供もまた未来
みんな来た過去でこれからゆく未来
あの人は未来が見えていた。
だからいつも暗い表情をしていた。
変えられるのは自分の未来だけ。
誰かの未来なんて変えられない。
黒い噂の絶えなかった館の主をようやく裁けたその日、地下牢に捕らえられていた者のうち、ひとりの男がなかなかその場から動こうとしなかった。
「……そこの。お前はもう助かったんだぞ。いつまでそこにいるつもりだ」
最初は動けないほど衰弱しているのかと思ったが、他の被害者とあまり変わらない姿形をしているし、最初に会話をしたときも普通に会話できる状態だった。
いや、もしかしたら張りつめていた精神が急に緩んで、急激に悪化してしまったのかもしれない。その場に片膝をついて目線を合わせ、手を差し伸べる。
「……ここを出ても、また同じ目に遭うだけだ」
光の満足に届かないここは、余計に周りが薄汚れて見える。そんな壁に背中を預けたままの男は、感情の薄い声でつぶやいた。長い前髪に隠れて表情がわからない。
「お前のように、かわいそうな目に遭ってた俺を助けたやつがいた。そいつは俺が気を許した途端、金のためと俺を売った」
最初から金が目当てだったのか、心変わりしてしまったのか、悲しい話だが、今回の事件の首謀者のような人間がはびこる世界では、よくある話ではある。
「そこでこき使われていた俺を、またお前のようなやつが助けた。もちろん俺だって馬鹿じゃない、信用なんてしなかったし、回復したらすぐ出て行くつもりでいた。でもそいつは、巧みだった。人たらしとでも言えばいいのかね」
そして、男はまた同じ運命を辿る。それ以降も、こうして出会うまで、何度も。
「もう俺は未来が全然見えねえんだ。ここを出たってまともな生活を送ってる俺なんて想像できない。だったらここで野垂れ死んだほうがましだ」
声が震えている。ようやく、男の心に少し触れられた気がした。
男の正面に回り込み、まっすぐに見下ろす。前髪の隙間から、虚ろな男の瞳が見え隠れする。
「だったらその命、私に預けてみないか」
わずかに男が身体を揺らしたように見えた。
「ちょうど、メイドのような者が家にほしいと思っていたところだったんだ。私はてんで家事が苦手でな」
「……本職のやつを雇えばいい」
「目の前に職を失った者がいるのに?」
無茶苦茶な屁理屈なのはわかっている。
だが、この絶望に染まった男をなんとしても助けたかった。命を無駄に失ってほしくなかった。
「そんな綺麗事、どうせ今だけだ。お前もいずれ、俺を無残に扱う。金のために売る。性の捌け口にする」
「……わかった。なら、お前を裏切った瞬間に、すぐ私を殺してほしい」
はじめて、はっきりと私を捉えた。
「これを預けておこう」
腰から護身用の短刀をベルトごと外し、男の膝に乗せた。男の視線がゆっくりと、それに移る。
「肌身離さず持ち歩くといい。裏切った判断はお前に任せる」
もう一度視線を向けた男は、乾いた笑い声をこぼした。
「……馬鹿すぎないか。お前、そこそこの地位にいるやつだろ。さっき、隊長とか言われてるの、聞こえたぞ。そんなやつを俺が殺したら、痛い目に遭うのは目に見えてるぞ」
「そこは適当に言い訳を考えておいてくれ。俺に殺されそうになったとか盗人に襲われたとか」
「お偉いさんが呆れるな」
しばらくして、男が両手をゆるゆると持ち上げ、短刀に触れた。
剥き出しにした刃の先を、こちらの喉の方に向ける。
「殺してほしい、なんだな」
「なに?」
「殺してもらってかまわない、みたいな言い方じゃなくてさ」
「……ああ。己で立てた誓いを裏切る結果になるわけだからな」
「真面目すぎ。でもそういうやつほど豹変しやすい」
「もちろん信じろと軽く口にするつもりはないさ」
男は深く息を吐き出すと、頭を軽く振った。
あらわになった相貌はなるほど、中性的な美貌をしていた。薄汚れていてもそうとわかるのだから、相当だろう。
「わかった。お前が大人しくしている間は、従順なメイドになってやるよ」
「それでいい」
改めて差し出した手を、男は空いた手で取った。
お題:未来
未来は変えることができる、
良い方向にも、悪い方向にも
自分の意思を 強く持つこと
運がよくなくっても
恨まないこと
信じらる未来が 自分を強くする
未来を変えるのは自分次第だ
良いことも、ついてないことも
あるのが未来だ
落胆するより、楽観的に生きてゆこう。
必ずあるわけではない
どれだけ続くのかわからない
良いか悪いかもわからない
それでも
一度でも
夢を見ることを許してくれる
無限ではない時間の中で
時には癒やしてくれる
そう思える自分でありたい
鳥は卵の中で夢を見た
「未来」
もしもあの人の未来が見えていたら
助けられていたのかもしれない。
でもそんなこと出来ないのはわかってるよ。
できたとしてもあの人はそんなこと望まない。
だから私は強くなって
みんなを助けてあげられる人になるんだ。
明るい未来はないかもしれない
それでも明日は来るから
最善を尽くすの。
『未来』
未来のことなんかわからない
今で精一杯なんだ
いつの間にか夢は見失ったし
今やっていることが
未来で報われるかなんて知りっこない
でも
未来はそのうちやってくる
生きていればね
『未来』
未来、という言葉には、何かよくわからないが、すごい発明があったり、信じられないくらい便利になったり、自分の事なら、そう、将来の結婚相手と出会っていて、もしかしたら結婚して、かわいい子供がいて、子猫がいて、なんてポジティブな事ばかり浮かんで来る。
だけど、十年前の自分からしたら、今はそういう『未来』のはずなのに、全然、不思議なほど何も代わり映えもしない毎日を送っている。
言葉自体が、魔法の様に一人歩きしている気がするのは私だけだろうか。
そういう事を親友の加奈子に話すと、「美和子が未来に夢を求めすぎてるんじゃないの?」とアイスティーのストローから唇を離し、私に言う。
私からしたら、もうかれこれ、十五年くらいの間、お店で飲むのは夏でも真冬でも、ひたすら馬鹿の一つ覚えのように、アイスティーを飲んでいる、可奈子の方が十五年前から全く変わらず、おかしいんじゃないの?と思える。
私と可奈子は高校生からの親友だ。
だんだん周りが結婚したり、恋人ができ、一緒に暮らしている、と聞くと、どこで知り合い、そういう事になるのか、男性に縁がない私達からすると、不思議な気がする。
私は、耳鼻科に勤めてもう十年以上経つ。患者さんの多くは耳が遠くなったおじいちゃん、おばあちゃんが多い。出会いなど、あるはずがない。
可奈子はこれまた整形外科に勤めている。ごくたまーに、足を骨折した若い人が来るらしいが、痛みで可奈子の事なんて見ていられないらしい。たいていは、私と同じく腰が痛い、膝が痛い、といったおじいちゃん、おばあちゃんが患者さんの九割を占めるらしい。
二人とも失敗したかも、と思うが、三十歳を何年か前に過ぎた身で、今更職探しはかなり難しい。という訳で、こうして一緒に休みの日は愚痴をこぼしながら二人で気楽に過ごすことが多い。
ある日、おばあちゃんの手を引いて若い人が一緒に耳鼻科に来た。
ちょっと足が不自由らしい。
「車椅子、持ってきましょうか?」と聞くと、若い人のほうがびっくりしたように振り返り、「あ、すみません、じゃあお借りします」と言って、「ほら、ばあちゃん足上げて」と優しく乗せている。(お孫さんかな?)と思いながら、そんなに混まないので、すぐに順番になった。
「柏木ヨシさん」と呼ぶと、先ほどの若い人が「はい」と言って車椅子を押しながら、診察室に入る。
「どうしました?」何千回といったであろう言葉を、先生は言う。
「先生、この頃よう聞こえんで困りますわ」とおばあちゃんが言う。
付いてる若い人が「テレビの音がやたら最近大きいんです」と言う。
「まあ、年すりゃあ、耳も遠くなるなあ」と先生がのんびり言い、私に「聴力検査だな」と言った。
私はそのおばあちゃんに、しゃがんで、車椅子の目線にあわせて、はっきりとした口調で「ヨシさん、どのくらい聴こえるか、調べましょうね」と言い、付き添いの人に「検査室は狭いので入り口から椅子までは支えてあげてもらえますか?」と言う。わかりました、とその人は言って、狭い検査室になんとか手を引いて椅子に座らせる。
「音を流しますので聴こえたらボタンを押してくださいね」と言う。
おばあちゃんは、ひどく真剣な顔で聴き漏らすまい、とボタンを持っているが、押したのはかなり少なかった。
先生の前にまた車椅子で行くと、先生が「補聴器使ったほうがいいなぁ」と言った。「両方聴こえてないから両耳だな、町によく看板が出ているから、この紙見せて買ってはめれば、よく聴こえるからね」と先生が言い、私を見たので「はい、いいですよ」と言って待合室まで案内する。
すると、付き添いの青年が「あの、かなり高価なんですか」と言うので「高いものからかなり安いものまであります。高ければいいというわけではないので」と言うと、ちょっとためらったあと「こんな事、お願いするのは図々しいのですが、一緒に選んでもらえませんか?僕も全然わからなくて」と、とても困った顔をしていた。
それはそうだろう。眼鏡と違って、端で見ている人にはわからないし、悪質なお店は高いものを売りつけてくる。
幸い、うちは祖父母の補聴器は私がついていって選んだので、だいたいわかる。本人にも、どの程度聴こえるのがいいのかは、なかなか難しい。
だから私は「いいですよ。いつがいいですか?平日なら明日の水曜日の午後とあとは土曜日の午後と日曜日なら行かれます」と言う。
「じゃあ、明日の午後でいいですか?」と言うので「はい、大丈夫ですよ」と言ってから、「私は小林美和子と言います」と言うと、その青年は慌てて「す、すみません、僕は柏木陽介と言います、小林さん、どこにお住まいですか?近くまで車で迎えにいきますよ」と言ってくれたので、ご厚意に甘えてうちを出た角のところを教えてお願いした。
翌日、時間通りに柏木青年は現れた。小さめのワゴン車だった。
後ろの席に、おばあちゃんと並んで座った。わからないだろうな、と思いながら「ヨシさん、こんにちは」と言うと「はい、こんにちは」とにこにこして言う。
私は、祖父母の補聴器を買ったお店を教えて、そこに行った。
昨日のうちに、あらかじめ電話しておいたので「美和子さん、ありがとうございます」とお店のおじさんが出てきた。
聴力表を見せると、「ああ、これだとずいぶん不自由だったでしょうね」と言い、いつもの感じでお願いします。と言うと二つ出してきた。
「陽介さん、ヨシさんはうちで眼鏡をかけますか?」と聞くと「新聞を読んだりには」と言うので耳掛け式よりも耳穴式を選んだ。あまり聴こえすぎても疲れるものだ。その他の雑音も大きくなるからだ。
なので、そこそこの所で選んでもらった。陽介さんに説明し、使ってもらう。耳に入れると「ほう、前よりはよう聴こえるなぁ」と言ったので、車が通る、外に出てもらった。
そんなに聴こえすぎるようにはしてないので、歩道にいてもヨシさんは耳を押さえたり、しかめ面はしなかった。「では、これで一週間後に」と話して、陽介さんに話す。
「あまりよく聴こえすぎると、人間の耳は自然と必要な音にピントを合わせますが、補聴器はノイズも大きくなるので、聴こえすぎると疲れるので、このくらいでいいと思います。安いものではないので、一週間、これを借りてつけて生活します。お風呂とか顔を洗う時、気をつけてくださいね。外さないと壊れるので」
「眼鏡を使われるので、耳掛け式は耳が痛くなるので耳穴式にしました。不便そうだったり、何か言ってきたら、また教えてください。」と言うと「あのお金は」と言うので、「これを使って具合がよかったら買います。合わなければ別のをまたつけますから、そのあとで」と言ってから「ちなみにうちのおじいちゃんは頑固な人で三回変えたんですよ」と気が軽くなるように言った。
本当にそうだったから。
ても今は補聴器を手放せずまあまあ便利に使ってる。
「あ!そうだ。補聴器つけて電話に出るとハウリングを起こすので、ご家族にも教えてあげておいてください。電話に出る方は外さないといけないので」と言うと、陽介さんが
「わからない事ばかりで、小林さんにはお世話になりっぱなしですみません。でも、とても助かりました」と何度も頭を下げていた。
そうだ、ばあちゃんものどが渇いたと思うのでどこかでお茶しませんか?、と陽介さんが言った。
「す、すみません、重ね重ね」と盛んに陽介さんが恐縮している。
それじゃあ、とうちに連れて来たのだ。
補聴器を使いはじめのヨシさんには、子供の泣き声や若い女性の笑い声が、まだ疲れるはずだ。それにヨシさんが飲める物はお店には置いてないだろう。
「ヨシさん、はい、お茶どうぞ」とお饅頭と一緒に出す。
「悪いねぇ」と言ってお饅頭を食べながらお煎茶をおいしそうに飲む。
「どうしますか?陽介さんはコーヒー派ですか?」と言うと「お茶好きなんです」と言うので、お煎茶を入れながら「実は私もうちではもっぱら昼間はお煎茶、夜はほうじ茶なんです」と言いながら「甘いものは苦手ですか?」とお饅頭も出す。
フーフー、と冷ましながら一口飲んで「ああ、おいしい!小林さんの淹れるお煎茶はおいしいですね!」と言う。「良かった!実は、うちで一番おいしくお煎茶を淹れられるのは私なんです」と言いながら私もお煎茶を飲む。うん、おいしい。
ヨシさんに二杯目のお茶を淹れてあげながら「ところで、私の事は美和子でいいですよ」とお饅頭を食べながら言う。
釣られたように、陽介さんもお饅頭を手にする。
「美和子さん、いろいろと本当にすみません」と陽介さんが言うので
「気にしないでくださいよ。うちも祖父母がいるから、あまり気にならないんです」と言った。
「お茶、もう一杯、いいですか」と、陽介さんに言われ慌てて、でも心を込めて淹れてあげる。
「ヨシさん、テレビ、見ますか?」と言って私が再放送のドラマを入れる。するとヨシさんは、ぱっと顔を明るくして「よう聞こえるなぁ」と言って見ている。
私はお茶を飲みながら「テレビもいいみたいですね」と言った。
それを見て陽介さんが「こんな嬉しそうなばあちゃんは久しぶりだな」と心から嬉しそうに言い、優しい人なんだな、と思った。
そして、一週間が経つ頃、お互い電話番号とメアドを教えたので、陽介さんから私に、今の補聴器で良さそうだ、と連絡が来た。また水曜日の午後、三人で車でお店に行き、私はその日の朝、お店に電話しておいたので「ああ、美和子さん、今朝はどうも」と言い、「美和子さんのご紹介なのでこれで」と電卓を陽介さんに店主が見せる。
「えっ?本当はもっと高いんじゃあ」と言うと、店主が、「美和子さんのお知り合いですからね、少しお勉強させてもらいました」と言った。
また帰りに、うちでお茶をした。
恐縮しながらも、陽介さんもこの間よりつくろいでいる。
そして「美和子さん、お礼にどこかに出かけませんか?」と陽介さんが言った。私は何度か会い、陽介さんの優しい人柄に惹かれ始めていた。
「じゃあ、陽介さんのおすすめの場所で」といたずらっぽく言うと、わかりました、と笑顔を見せた。
そしてさり気なく「美和子さん、つきあっている人とか、いるんですか?」と聞いてきた。
私は笑いながら「いませんよ〜。私なんてだめなんで」と言うと陽介さんが「良かったら、良かったら僕とつきあってもらえませんか?」と言う。
驚いてお茶を誤嚥し、ゴホゴホとむせる。そしてちょっと赤くなりながら「はい、嬉しいです」と言った。
それから一年が経つ頃、私達は正式に婚約した。
私達は『陽ちゃん』、『美和さん』と呼び合っていた。
加奈子にはつきあいだしてひと月くらいの時、紹介した。
加奈子は、ショックが思いの外大きかったようだが、そのすぐ後、
「そっか!その手があった!」といきなり言い出した。
腰とかを痛めて一人で来れないお年寄りを独身の男性の孫が連れてくる、と一人で浮かれていて、陽ちゃんも、プっと笑い、「加奈子さんって、やっぱりどこか美和さんに似ているから、仲がいいと似るのかな?」と言っていた。
こんな未来が待っているとは、あの時は夢にも思わなかった。
そして、この先も二人で未来を紡いでいくのだと思うとなんだか粛然とした気持ちに包まれた。
私と貴方の未来…この先もきっと、私は、貴方に迷惑や心配をかけたり、喧嘩や言い合いばかりで、貴方が私を少し嫌になったり、嫌いになる事もあるかもしれない…この先、二人の間に、何があるかなんて分からない…でも、分からないからこそ、今を必死に生きるだけ…きっと、この先も、私との未来を想像して不安になる事もあるかもしれない…きっと、同棲や、結婚したら今よりもっと、大変だろうし、お互いの嫌な所も沢山見えてくると思う…でも、それでも、ずっと、こんな私の側にいてくれませんか…?ずっとずっと貴方だけが好きだから…
#未来
「全ての物事には、終わりがあるんだよ」
そう、笑って言われたら、何も返せなかった。
「…、」
「それが、今」
瞳を潤ませながら、俺の左胸を指でトン、と突く
「さようなら」
背中を見せて去っていく姿に、何を返せただろう
今更、意味のない手を伸ばす
でも、今が本当に、"終わり"の時だったのか
本当に、"未来"は、なかったのか___
未来に渇望したのはいつぶりだろうか
我が慢心によりしばらくは全てが我が思うままになると信じていた。
だがどうだろう。どれだけの力を手にしても邪魔が入り続けた。時にそれは時空をも超えた。
遂にその野望が砕けた時、私は未来に渇望した。再び彼らを打ち砕く日を。
粉塵に帰してそのあとを踏みつけてやると。
未来。
私に未来なんて
ない。ひたすら孤独で
寂しく終わるだけ。
だってあなたは、私を助けて
くれないし、絶対的に。
助けてくれたこともないし。
この暗闇は深い。
そこからてを伸ばしても
あなたがまず握ることは、
ない。
『期待はずれ』
未来はいつも期待はずれだ 僕の柔な妄想はぱさぱさの粉チーズ どうにも食べられないそれなりの現実 絶望するほどでもない 明日は変わらずやってくる
視線の先にヒントはないか? アイデアはきっとそのへんに落ちている 探そうじゃないか 見方を変えて 妄想を捨てて
「未来のこと見すぎだから恋人できないんだよ」
ふと先日言われた言葉を思い出した。
冗談かもしれない言葉が
私の心に棘のように刺さって抜けない
未来を思い描いて何が悪いの?
別れるとわかって付き合うとか
なんでってなるでしょ。
いつか私の隣で歩いてくれる人が来るまで
未来を見続けてもいいかな?
─────『未来』