『時計の針』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
【時計の針】
我が家にはアナログ時計がない。
一人暮らしを始めてから今日まで、一度も部屋にアナログ時計を置いたことがない。
今使っているデジタル時計は、日付と時間だけでなく、温度と湿度も表示される。
とても便利だ。
不満を感じたことはない。
なのに、何故だろう。
最近、アナログ時計を部屋に置きたくなっている。
丸い時計が欲しい。
針だけのシンプルなものではなく、数字で時間が表記されている時計が欲しい。
アナログ時計の何が私を引きつけるのだろうか。
時計の針
時計の針と言う言葉に、
私はONE OK ROCKのClock Strikesという曲での、ボーカルTAKAのライブパフォーマンスを思い出しました。
彼が曲の冒頭で、時計の針のように腕を動かすのがとても印象的です。
ワンオクはボーカルTAKAの声が驚異的で、曲もハードなものからポップな曲、優しいバラードまで、すごくいい曲がいっぱいありますが、その中でもClock Strikesは、壮大なロックバラードで日本語歌詞もとても素敵なのでおすすめです!
"永遠なんてないと言い切ってしまったら、
あまりにも寂しくて切ないでしょ?"
※歌詞引用しました。
#167
【時計の針】
こんばんは。とっても久し振り。
仕事が忙しくて、このアプリの存在を忘れてたよ。
今日は「時計の針」かぁ。
小さい頃は、秒針が動く瞬間を目撃するために
時計を1分間ガン見したりして…少し変わった子でした。
もしくは、こんな事ないかな?
何かに集中してる時、
時計の音なんて全く聞こえていないんだけど、
ふっと集中が途切れて時計を見上げた時、
それでもなかなか時計の音が聞こえてこない時…
一瞬、耳が聞こえなくなったのかと焦るよね。
寝る前に布団の中で聴く時計の音は、
うるさいぐらい気になるのにねー。
今夜は時計の針の音が気になる前に
すんなり眠れますように。
みんな、明日も安心安全でね!
こんな私のくだらないお喋りを
見てくれた人達に幸あれ〜!
ちくたくちくたくちくたくちくたくちくちくちくちくちくちくちくちく。針ってのはどうしてこうも刺さるみたいな音を出しやがるのか。しかも一秒ごとに。世界に縫い付けられているような気分になる。おいおいおれは布じゃねえっつうの、とは思うが、それでも本当に自分が布じゃないなんて証明もできなくて、とりあえず服を脱いでみる。自分の身体の見られる範囲をじろじろ見ると脇腹に縫い目があった。一瞬ぎょっとしたけど、これは盲腸手術で出来たものだ。おれは布じゃない。おれの内側にはしっかりワタが詰まっている。じゃあ布じゃないか。わからなくなってきた。ちくちくちくちくちくちくちくちくちくちくたくちくたくちくたくちくたくちくたくちくたく。あーっ。時間に縫製された思考が衣服の形になって、おれにまとわりついてくる。気持ち悪くてやんなっちゃうよ。おれって布なのかなあ?
No.4 時計の針
楽しい時はすぐ過ぎ、
お別れの時間。
1ヶ月に1度だけあの大きな時計の
長針と短針が1番上で出会う時
私達は再会し、
次に1番上で出会う時が
別れの合図なの。
またしばらく会えないのに
世間話ばかりで関係はお友達のまま。
でもいいの。きっと今が1番幸せだから
(実は)
一応シンデレラが元ネタなんです!
分かりました??
長針と短針がてっぺんで出会う時…
自分でもエモいなって思いました!!
最後筆者も悲しくなりました…
結局は追いかけて、もやもやしながら
密かに好きなのが1番楽しい時間なんでしょうね…両思いになれるとは限らないし。でも筆者は読者さんの恋めっちゃ応援してるよ!!頑張れෆ˚*
薄暗い雲が覆う外の世界と隔絶された大講義室にひそひそとした話し声とシャーペンのはしる音がこだまする。厳かな雰囲気を醸し出す教壇には誰もおらず、代わりに黒板には大きく自習の文字が飾られていた。
次の講義に向けたとは名ばかりの調べ物を強要させられる、正直言って意味の分からない講義。ならいっそのことなくせ、という意見はおそらくここにいる全員の主張であろう。
ネットが発達した昨今。調べ物にかかる時間はそれほど多くなく、大半の生徒が机と熱い抱擁を交わしている。
かくいう私も声を出すのが憚れる空気を前に手持ち無沙汰を極めていた。
こういう時に限って良いお話が思いつかないのは世の常らしい。
暫くして本格的に机との親交を深めるべきか悩み始めたその時、カバンの中にしまってあったスマートフォンから知らせが届いた。内容は成人式に行くかどうかという友人からの問い。
特別会いたい友人もいないから行かない、そう打ちかけたところでふとある旧友の顔が頭に浮かんだ。
彼とは中学卒業以来一回も連絡を取り合っていない。卒業時に連絡先は貰ったが勇気が出ず、この体たらく。
彼もまだお話を書き続けているのだろうか。そんな疑問を背に思うように進んでくれない時計の針を睨みつけた。
「時計の針」
お題「時計の針」
長く勤めていたところでは
入社したての頃「早く帰れるうちは早く帰りなさい
そのうち帰れなくなるから」と言われたが
特に残業することもなく
いつまでたっても定時で帰れた
仕事が終わらなければ残るだろうが
そうはならないのだから仕方がない
次の職場でも定時で帰れたし
今の職場でも定時で帰っている
そして今日も時計の針を見ながら帰る準備をしている
時計の針がカチカチとなる音だけが響いている。
静かすぎる6畳間のベッドに、カーテンの隙間から残暑の残る陽射しが降り注ぐ。
身体中に鉛を入れられたようなずっしりとした気だるさを感じながら、鑑識官の守山はもったりと寝返りをうった。
連続不審水死事件。この事件の手がかりを探しに、昨夜から目黒探偵事と共にSNSを騒がせている“海神様”の捜査に向かい、自宅に帰ったのが今朝のこと。
今日は有給としてもらったので、今後に備えて寝倒そうと思ったのだが、己の頭はそうは思っていないようだ。
枕元にある時計で時刻が14時過ぎであることを確認して、今朝のことを頭に思い返す。
目黒探偵の姪である、紗枝。怪異や、超常現象などに強い、いわゆる、除霊師のようなものらしい。成人はしているものの、まだ大学生だという。母であり、目黒の姉が実家の寺を切り盛りしており、そのテのこと…怪異などに詳しいのだそうだ。
紗枝の話では、海神様は人の強い執着心をエネルギーとして、人を食っているそうだ。SNSで拡散された影響で急速に人を食い、泥団子のように大きくなった結果実体を持ったのではないかという。
非現実過ぎて、それ以降は日を改めて話をすることになったのだが……。
守山は肺に溜まった濁った空気を大きく吐く。
ピリリリリリリリ
「うわっ」
秒針の擦れる音だけが支配していた空間に、突如高い機械音が流れる。
初期設定から変えていないこの電子音の元である端末を探ると、鑑識課の上司からであった。
跳ねる心臓を納めながら、画面をスライドして通話に応じる。
「はい」
「休みのとこ悪い」
おっとりとした普段の上司は、普段の倍早い口調で続けた。
また揚がったんだ。あの海辺で。死体が。
漫画などにおいて、針が動くときのカチリカチリという音で静寂を表現することは多い。よく考えてみれば不思議なものだ。もともと静寂という言葉は「なんの物音もしない」ことを表しているものであるのに、時計の針が動く音などまさに物音である。そう思うと、この表現は「針の音が聞こえる」という状況自体に着目しているものであると考えられる。
時計の針が動く音は本来とても小さい。それこそ、人が動く音などには到底敵わないものだ。それなのにその時その人は時計の針の音を聞いている、これこそがこの表現の肝であると私は思う。「静寂」と書かずに状況から「静寂」を読者に想像させる。それこそが表現のおもしろいところであるが、一朝一夕で身につくようなものでないことも事実だ。是非とも極めたいものである。
: 時計の針
時計の針は、24時をまわっていた。
帰ってきてから、ひと眠りしてしまったらしい。
化粧もなにもかもそのままで、着替えもせずにちょっとソファで横になったが最後。起きられやしない。
平日は情けなくもこんな感じだ。
帰ってきて、身体にいいものを自炊して、ゆっくりお風呂に入ってリラックスして。
そんなふうに過ごしたいけれど、もう職場にいる時点で全ての力を使い果たしてしまっているのだ。
帰路はふらふら、家のドアを開ければ半死半生、コンビニで買ったごはんで腹を満たせば即気絶。それでいいのか、私。
良くはない。良くはないが。
とりあえず、化粧だけでも落とそう。
気合いをいれて立ち上がる。
と、足に何かがぶつかって、バランスを崩した。
「あっ…」
彩花から借りたキャリーケースだ。
しまった、明後日使うから返せと言ってなかったか。
あわててラインをみると、彩花から鬼ラインがきていた。やばい。
でももう真夜中だし…。
でも明日も遅くなりそうだしなあ。
私、彩花と違ってクルマないしなあ。
とりあえず、急ぎラインだけ打っとこ。
謝りのラインをすると、すぐに返信が来る。
『これから取りに行くわ』
え、これから?どうしよう、部屋も強盗が入ったみたいだし、化粧もとれかけだし。
でも、彩花だしまあいいか。
部屋着に着替えよ。
なんかお詫びになるようなもの、なかったかな…。
ややしばらくして、チャイムが鳴った。
「こんばんは」私が言う。
「あ、ども。ごめんね、こんな遅くに」
「や、悪いの完全に私だから。こんな真夜中にごめんね、来てもらって。」
「真夜中って」
彩花を家にあげて、お茶をいれる。
「ごめんね、彩花、明後日使うんだよね。キャリーケース」
「え?いや違うよ。明後日は出張なくなって、一週間後。ラインしたじゃん」
やばい、ちゃんと読んでなかった。
「今日じゃなくてもいいなら持っていったのに、私」
「や、今日のがいいでしょうよ」
彩花が手さげ袋から何か出す。
「誕生日おめでとう」
「あ」
リボンの結ばれたワインと、大きめのラッピングされた袋。それに惣菜のパック。
机に並べて置き、彩花がニッと笑う。
「忘れてたんでしょ。だと思ったよ。」
「ありがとう…昨日6日だったんだ」
「え、昨日じゃないよ。今日だよ。まだ十時だって。え、時計壊れてんじゃん。」
スマホを見れば、確かに午後10時を少し過ぎたところだった。時計が止まっていたのだ。いつから?
時間はいつもスマホを見るので、わからなかった。
「最近サエコ忙しそうだもんね。ごはんとか食べてないんじゃないかと思って、惣菜買ってきた。野菜多めの」
「そのラッピングしてある袋は…」
「これ?ツボ押しぬいぐるみ!椅子にかけて使ってよ。めっちゃかわいいアザラシがツボ押してくれるから」
「もう結婚してくれ」
私がそう言うと、彩花は「キモッ」と言いながら惣菜のパックをあけた。
「ほら祝おー。誕生日おめでとう」
私がワイン、彩花は烏龍茶で乾杯することにした。ひといきついたら、時計を直そう。
明日からは、アザラシにツボを押してもらおう。
少しずつ頑張ろう。
あたたかな気持ちが、ゆっくりと広がっていく。
ひさびさに満たされた気持ちで、私は二杯目のワインを注いだ。
時計の勉強をしました。
子どもたちにとって一番難しいのは長針と短針の読み方です。「長い針はどっちを読むんだろう?」「短い針が5と6の間だからまだ6時になってないのかなぁ」子どもたちは友だち同士で話し合いながら、それぞれ理由をつけて自分の考えを述べることができました。
最後はみんなで1分間を体感してみました。「思っていたより長い」「1分集中するのって大変」そんな気づきができて、とても良い体験になりました。
「おはようございま〜す」
事務所に入ると、上司が険しい顔をさせ、腕を組みながら私を待ち構えていた。
「おい、遅刻だぞ」
「え、勤務時間は30分からですよね?まだ28分ですよ」
不機嫌な上司に向かって、私は時計の針を指差しながら異を唱えるのだが、それに対する上司の回答はこうだ。
「新入なら15分前には出勤するのが常識だろ!次遅刻したらお前減給な」
突然突きつけられた社会の”常識”とやらに、私は呆然と立ち尽くす事しかできなかった。
一体誰が時計なんて思いついたんだ。
時計の針と聞いて学校を思い出しました。
いつも早く授業終わらないかなぁと時計の針が
進むのをじーーっと見てて、たまに1分数えたり
授業が終わるまであと何秒かを計算したり。
そして急に当てられて焦ったり。
今思えばちゃんと受けるべきだったのかなと
ちょっぴり後悔。
でも今何とかなってるので今後も何とかなると
信じています!
その時その時に何となくで流されていれば嫌な
ことも過ぎていくものですよ。
よく学校とかで「過程が大事」と聞くことが多いと思いますが、私はそうは思えません。
終わり良ければ全てよしという考えなので、
過程はすっ飛ばしても結果がよければ他はまあ
いいでしょうと思ってます!
なんか論点ズレてないか……?まあいいか
また次のお題で!
「昨日登った針山、よく見たら生えてる棘が全部アナログ時計の針だったんだよね」
「女性との約束を破りすぎたんですか?」
「君はどうなのさ」
「普通の針でしたよ」
「え、針?」
「はい。根元にビー玉みたいな飾りがついてたのでおそらくまち針ですね」
「君何やらかして地獄行きになったの」
時計の針
『時計の針』
時計の針は時間を戻せるけど、現実はそうはいかないね。
でも、時計と違ってくるわない。
くるわったら捨てられるんだよ。
死と向き合って生きて。
毎日を大切に。
後悔する前に
賑わうショッピングモールの一角で
ふと目に入ったカップルの姿。
以前大好きだった元カレとその彼女。
遠目から見ることしか出来ず、その場を去る。
もう、彼の隣は私のものではない。
あの時の私は毎日必死で生きていた。
もがいて苦しんで、すがりついて
彼の傍に居れることが、幸せだと思っていた。
だけど、幸せだった日々を手放したのは私。
その日から、ぽっかり穴が空いたようだ。
それなりに充実はしていたし、楽しい日々を送っている。
それでも、今はいない彼の面影を探している自分がいる。
時間だけは過ぎていくのに
心の時計の針は止まったまま。
あの日からずっと止まったままなのだ。
#時計の針
〝時計の針〟
真夜中、いつもは寝静まっているはずの部屋に、
紙の音が鳴る。
時間を考えるとやめるべきだが、
体が欲しているのだろうか。
やめられない、止まらない。
…マンガは麻薬なのか?
やばい。
深夜テンションで頭までおかしくなってきた。
時計の針だけが、正常に動いている。
お題 時計の針
俺はいつも授業中時計を見る。
だけど、毎回時計の針が変わっている感じが居ない。
長針も短針も動いてないような。俺の目が悪いだけ。
だけど凄く時間が遅く感じる。退屈だからだろう。
楽しい時間ほどすぐに過ぎるのは本当なんだな。、
「あの、落としましたよ。」
背後から突然、若い女性にこう声を掛けられた。
カギかな?音はしなかったけど、と思いながら、「え…あ、あぁ…すみません。」と、反射的にペコペコと頭を下げてしまう。
2ヶ月も前に退職したとはいえ、長年の営業職のクセが残ってしまっているようだ。
しかし、「はい。」と、彼女が差し出した手のひらの上には…何もなかった。
「…えっ?あの、僕、何を…」
「最近、時間が止まったように感じていらっしゃいませんか?」
「…え?」
何を言っているんだろうと、彼女の顔を見ると、真っ直ぐに僕の目を射抜いていた。
「止まったというより、なんとなく張り合いもなく、ただ一日が過ぎていく、が正しいかしら。」
「あ、あの…」
「仕方ないわ、あなたからは失われているもの、大事なものが。」
「は、はぁ…」
なんだ、突然のファンタジー設定か?
「だから、はい。」
そう言って彼女は自分の手を、僕の胸に当てた。
「あ、あの、どういう!?」
「…大丈夫、あなたはまだ動けるわ。ちょっとお休みしているだけ。ほら、聞こえるでしょう?リズムを刻み続ける鼓動の音が…」
「あ、あの…」
「うん、もう大丈夫。時を刻み出した。」
「え?」
「それじゃあ。」
な、なんだったんだよ…。
唖然としながら、去っていく彼女の背中を見つめていると、ポケットの中のスマートフォンが振動した。
「メッセージ…いや、電話?」
珍しいと思いながら通話ボタンを押すと、先に辞めた先輩から、「フラフラしてると聞いたが、暇ならうちで働かないか。」という内容だった。
「あ…ありがとうございます!」
「お前さ、なんかやってないとダメになるタイプだろ?しかも、自分のことよりも他人のために。」
「え、あ…そう、なんですかね…。」
「自覚なかったのかよ。まぁ、そこも含めてお前の良いところだからさ。そんなお前とまた仕事したいと思ったんだよ。」
「あ、ありがとうございます…。」
さっきの彼女が、本当に何かしたのだろうか。
わからないけれど、何かが動いた。
それは事実…そんな気がした。
「彼、ちゃんと動いたみたい。良かった。」
「さっすが、うちの占い館No.1ですね!アタシも見習わなくっちゃ。「見習い」だけに、なーんてね!」
「たまたま見えただけよ、彼の中の、止まった時計が。それに少し、力を込めただけ。それと…昔、少しお世話になったお礼がしたかったの。」
この町に越してきたとき、部屋を探すのを手伝ってくれたのが、不動産屋に勤めていた彼だった。
そのときは本当に楽しそうに仕事をしていたのに、今日の彼は生気がなくて…思わず、力を使ってしまった。
「あーあ、少女マンガとかドラマなら、ここから恋愛に発展するんだけどなー。そういう気配はないんですか!?」
「そ、それは私にもわからないわよ!」
「ふふ、顔真っ赤ですよー。」
「…っ、もう!」
お題「時計の針」
回るもの。
誰の意思にも関わらず、世界のどこかで淡々と回り続けるだけの、二重もしくは三重に重なった細い針。たったそれだけの存在でさえ、今の私にとってはひどくおぞましくて憎いものに思えた。彼らが周回数を増やすたび、私は確実に時間が経過していることを知ってしまう。
あなたが終わりに近づいていくことを感じてしまう。
「また、何か考えていたの」
薄らと穏やかな微笑みをたたえて、あなたは壊れた柱時計を眺める私にそっと寄る。話す時に相手を見上げるのは、いつからか私の役目ではなく、車椅子に座るあなたの役になっていた。
日々、段々と石になっていくあなたの脚を見たくなくて、代わりに文字盤をじっと睨みつける。
「いいえ、なにも」
こんな機械が止まったところで何も変わるわけではないのに。そう理解していても、この針を再び動かす意味はないように思えた。この小さな家で時を告げるものは、あなたを含めてももう数えるほどもない。
あなたは私の視線の先を追うと、役目を終えたその家具を労わるように撫でた。
「止まっちゃったね。私より先に動かなくなるなんて。残念。あの鐘の音、好きだったんだけどな」
あなたはきっと私がこれを直すことがないとわかっている。それでも私に直接何も言わないのは、あなたなりの優しさなのだろうか。胸が痛かった。
古かったから仕方ないね、なんて笑いかけないで欲しかった。
確かに彼は、彼らは、あなたを起こす時間を教えてくれた。あなたと食事を囲む時間を教えてくれた。あなたと出かける時間を、お茶の時間を、眠る時間を教えてくれた。どれもなんてことはない日々の繰り返しで、かけがえのないものだった。
でも、だって、これは失われていく時間を示すだけで、あなたとあと何度こんな幸せを繰り返せるかなんてことは教えてくれないじゃないか。だから、だから。
「……ごめんね、ほら、そんな顔しないで。私は君といられるだけで十分だから」
いつの間にか零れていた涙を、私の頬からあなたの指がすくい取る。あたたかかった。
あなたみたいな人が呪われるべきじゃなかった。
「そろそろお茶の時間にしようか、それとも、散歩の方がいいかな。外に出るのは久々な気がするね。庭の花の調子はどう? 君がいつも水をあげてるの、知ってるよ。綺麗に咲くといいね」
頷く。頷く。頷く。
やさしい師匠。偉大な魔法使い。わたしのただ一人の大切な人。
あなたとの日々を緩慢に送る。進み続ける時間から目を背けて、規則的な右回りの針をこの手で折って。
外はきっと風が冷たいからと、あなたの脚をしっかりと覆うようにブランケットをかけ直した。
【時計の針】