にや

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時計の針がカチカチとなる音だけが響いている。
静かすぎる6畳間のベッドに、カーテンの隙間から残暑の残る陽射しが降り注ぐ。

身体中に鉛を入れられたようなずっしりとした気だるさを感じながら、鑑識官の守山はもったりと寝返りをうった。

連続不審水死事件。この事件の手がかりを探しに、昨夜から目黒探偵事と共にSNSを騒がせている“海神様”の捜査に向かい、自宅に帰ったのが今朝のこと。
今日は有給としてもらったので、今後に備えて寝倒そうと思ったのだが、己の頭はそうは思っていないようだ。

枕元にある時計で時刻が14時過ぎであることを確認して、今朝のことを頭に思い返す。

目黒探偵の姪である、紗枝。怪異や、超常現象などに強い、いわゆる、除霊師のようなものらしい。成人はしているものの、まだ大学生だという。母であり、目黒の姉が実家の寺を切り盛りしており、そのテのこと…怪異などに詳しいのだそうだ。

紗枝の話では、海神様は人の強い執着心をエネルギーとして、人を食っているそうだ。SNSで拡散された影響で急速に人を食い、泥団子のように大きくなった結果実体を持ったのではないかという。

非現実過ぎて、それ以降は日を改めて話をすることになったのだが……。

守山は肺に溜まった濁った空気を大きく吐く。

ピリリリリリリリ

「うわっ」

秒針の擦れる音だけが支配していた空間に、突如高い機械音が流れる。

初期設定から変えていないこの電子音の元である端末を探ると、鑑識課の上司からであった。


跳ねる心臓を納めながら、画面をスライドして通話に応じる。

「はい」
「休みのとこ悪い」

おっとりとした普段の上司は、普段の倍早い口調で続けた。

また揚がったんだ。あの海辺で。死体が。

2/7/2024, 8:50:54 AM