漫画などにおいて、針が動くときのカチリカチリという音で静寂を表現することは多い。よく考えてみれば不思議なものだ。もともと静寂という言葉は「なんの物音もしない」ことを表しているものであるのに、時計の針が動く音などまさに物音である。そう思うと、この表現は「針の音が聞こえる」という状況自体に着目しているものであると考えられる。
時計の針が動く音は本来とても小さい。それこそ、人が動く音などには到底敵わないものだ。それなのにその時その人は時計の針の音を聞いている、これこそがこの表現の肝であると私は思う。「静寂」と書かずに状況から「静寂」を読者に想像させる。それこそが表現のおもしろいところであるが、一朝一夕で身につくようなものでないことも事実だ。是非とも極めたいものである。
: 時計の針
2/7/2024, 8:48:42 AM