『時を告げる』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
時を告げる
またやってしまった。
迂闊に恋になど落ちぬよう、あれほど気を付けていたのに。
男性はいつだって優しい。
うんと若くても、さほど若くなくても、たとえ若さはもうとっくに手放していたとしても。
彼らは眩しいものでも見るようにそっと目を細め、柔らかな、それでいて少し困ったような表情を浮かべ、私を見る。
私はそっと目を伏せ、そんな彼らの視線にはまるで気付かなかった振りをして軽く微笑み、その場を立ち去る。
いつものことだ。
注がれる視線にいちいち応えていたら身体がいくつあっても足りないし、物事がちっとも前に進んでいかないからだ。
しかし、時々思いがけないアクシデントが起こる。
風薫る五月。
何でもない駅のコンコース。
客先へと向かう乗り換えのためのその場所で。
私の視線が彼を捉える。
周りより一つ飛び出した頭。
艶のある黒髪から覗く形の良い額。
前方8メートル。
彼も同じように私を見ている。
眼光は鋭い。
お互いに歩幅を進め、吸い寄せられるように徐々に距離が近付く。
前方5メートル。
私は彼に釘付けになった。
この気持ちは知っている。
そう、いつも私が気付かぬ振りをして受け流しているあの感情だと。
前方3メートル。
心臓が鼓動を早め、うっすらと首筋が火照り始める。
他にも大勢の人たちが行き来しているというのに、私には周りを窺う余裕はない。
いけない兆候だ。
前方2メートル
手先が震え、だんだん冷たくなっていくのがわかる。
しっかりしなければ。
立っていられなくなる。
前方1メートル。
お互いに自然と歩みが止まった。
ドンッ
心臓が小さく破裂した。
そう、もちろん私の心臓が。
彼はと言えば、私を見下ろしながら素っ気ないくらいぶっきらぼうにこう言った。
「何ですか?僕の顔に何か付いてます?」
眉根に皺を寄せ、まるで迷惑だと言わんばかりに私を見る。
「あ、えーっと、違うの、ごめんなさい。何でもないんです。」
私はふらつきながらも、慌てて踵(きびす)を返しその場を去ろうとすると、咄嗟に手首を掴まれた。
「待って、ちょっと待って……」
そのあとで声が追いかけてくる。
思いがけずの切羽詰まった声。
「大丈夫?顔真っ青だけど。」
「……大丈夫、うん、多分。」
彼は「はははっ。」と短く快活に笑った。
「そっちで、少し休もう。」
子供のように手を引かれ、雑踏の中、私はエレベーターの陰まで連れて来られた。
そこでやっと手を離される。
急に血流を取り戻した手首を私はさすった。
「あの、違ってたらすいません。僕たち前にどこかで会ったことありませんか?」
一見、使い古されたその言い回し。
照れくさそうにそう言いながら、彼は必死に何かを思い出そうとしている。
その顔すら、私は不思議なほど懐かしさを覚える。
「実は私もさっきそんな気がして、気が付いたらあなたから目が離せなくなっていて。」
私は彼を一目見たその瞬間に起きた出来事をそう告白した。
「そっかそっか。そうなんだ、参ったなあ。」
これからどうするべきか混乱で頭がいっぱいの彼を前に正午(まひる)の鐘が鳴った。
駅の時計台の鐘だ。
太陽はちょうど東でもない、西でもない中間地点にいる。
私たちはまだ戻ることも出来るし、このまま先に進むことだって出来る。
どちらを選ぼうと自由なのだ。
まるでお互いの人生のように。
「お天気もいいし、少し歩きましょう。知ってる?この先にツツジが綺麗に咲いている公園があるのよ。ちょうど今見頃なの。」
私はツツジが好きだ。
どんな花を見るよりも心が浮き立つ。
赤や白、薄ピンクに赤のふの入ったものなど、様々だ。
少し毛羽立った葉のあの緑だって、もちろん美しい。
初夏の青く眩しい日差しの中、一斉に咲き誇るツツジの群落に、心が踊る。
私はそう言って、左手でまだ戸惑っている彼の右手を取り、改札を出た。
駅の階段を下る途中で、
「ありがとう。 僕を見つけてくれて。また一緒にツツジが見られるんだね。」
ふと、そんな声が聞こえた気がして数段上にいる彼を振り返ると、器用に左手でスマホを操(あやつ)りどこかに電話を掛けていた。
あれ?今の声、気のせい?
「あー、すまん。午後の予定はキャンセルだ。みんなでうまくやってくれ。」
気難しそうなビジネスマンの顔をした彼がいた。
あ、ふふふっ。
やっぱりそうか。間違いない。
また私たち、今回も二人そろって左利きだ。
お題
時を告げる
お昼の時を告げるチャイムがなる
緊張からしばし解放される
同僚と他愛のない話をするランチタイム
ホッとするひとときだ
人とのコミュニケーションをとるのは得意な方ではないが
自分のやりたいことや趣味を話すのは好きだ
視野を広げるきっかけになるし
新しい興味が湧いてくるかもしれないからだ
今日もたくさんの学びがあった
さて、午後の仕事に向かうとするか
時を告げる鐘が頭を揺さぶる。
特に悩んでいる訳でも無く、辛いわけでなく、理由もないけれど、死にたい日がある。
扉を開けて号令をかける声も、聞きたくない日がある。疲れてどうしようもなくて一人でいたい時がある。一人でいると寂しいことがある。
今日も休みたかったな、休めなかったな。
夜は好きだけど、朝になる時間は好きじゃないの。くだらない今日にゴミの自分を飾って、さよなら。
時が迫る…
言葉が頭をかすめる…
「今日は雲ってるけど…」「見えないけど…」
「こりずに来い」「また来い」「また来いよ…」
「もう遠慮なんてするな…」「いいか」
「来たくなったら何時でも来い」「わかったな…」
子供の頃に頭を撫でられたみたいな笑顔で…
あの人の笑顔が浮かぶ…
時は迫る…
あの人の笑顔が見たい
俺は…俺は…
あの人に会いたいんだ
今…
あなたに会いたい…
……
豪雨は大変でしたね
弱音を吐かない貴方だから…
心配しております…
あなたに会いたくて…
580キロ離れた街で…
俺は今日も俺を生きてます
あなたに憧れて…
あなたの笑顔に近づきたくて…
今日も今夜も…
この街の片隅で…
俺は…俺を…信じて…
明日も明後日も…
あなたのように…
この方といられるのは、真夜中の12時まで。
時計を確認しながら、王子様と踊る。
ああ、もうすぐ12時、離れないと…
そう思っても、心と、王子様の腕は離してくれない。
どうしよう、魔法がとけてしまう…!
意を決して王子様から離れる。
急いで階段を降りて、ガラスの靴が片方脱げて、焦って取りに行くうちに、時を告げる鐘が鳴って、魔法がとけて…
ない。
ドレスはそのままだし、王子様も変わらず追いかけてくる。
な~んだ、嘘だったの、あの魔女の話は。
私ったら焦って、バカみたい。
「王子様!朝まで踊り明かしましょう!!」
そうして二人は、パーティーが終わるまで踊り続け、その後幸せに暮らしましたとさ。
──そのころ。
「ア!!魔法とき忘れてた!!!!!!」
【時を告げる】
時を告げる。
Q 時を告げるものといえば?
A 時計、
Q 時を告げるものといえば?
A …なんだっけ?
Q 何を告げる?
A …?
Q ?
A ?
? ?
? ?
Q この世界で一番大切だった物は何でしょう?
A ??????
忘れていく。何もかも。全てを差しを以て忘れていく。
何が。誰で。何故か。自分。
『境目は誰にも見つからないよ』
✡
時を告げる
鳥の声
陽の光
夜が明ける
用がないと時計を見ない
時計は私を見てくれないから
タブレットやiPhoneを使う時に
たまに見るくらいで
あまり時間を意識してない
時が告げるのではなくて
動いている事象に時を感じる
時は常に何も語らないで、そこにいる
時を告げる
あんまりいいの思い付かない…。
最近スランプ。
そういうときは、好きなアニメみる!
私、今年13だけど、シティーハンターが
好きなんだ!りょうの普段とのギャップも
かっこいいし、なにより曲がいいの!
聞いてみて!本当に心を抉るような刺さる
メロディなんだ!
「ずっと、一緒にいようね。」
俺は、けして叶わない恋をしている。
余命一週間の女の子。今はすっかり弱っていて、苦しそうにしている。
久しぶりに彼女の体調がすぐれているとき、最後の別れを告げた。
数分後、彼女は旅って行った。
-数日後-
葬式の日、俺は彼女に別れを告げた
-数年後-
今年も、彼女の命日がきた。仏壇の前に座って、お線香をあげる。
今日も、時を告げている。
小さな教会の、小さな庭の片隅で、ぼくはきみと出会った。家にいるのがいやで、逃げるように駆け込んだ出入りの少ない街外れの教会。最初、驚いたように毛を逆立てていたけれど、ぼくに慣れてくれたのもすぐのこと。
きみとの出会いは、偶然だろうけれど。ぼくにとってはとても大切なことだった。きみにはそんなつもりはなくとも、たしかにぼくの心の無聊を慰めてくれたのだから。
それから毎日、ぼくはそこに通っていた。そうしているあいだは、心穏やかでいられた。時は緩やかに停滞していた。それでいいと思った。
あくる日、きみは物言わぬ存在となっていた。生まれたての小さな体では、箱庭のようなこの庭でも過酷な環境だったのだろう。きみはもう、ぼくの手を舐めたり、にー、と言ったりはしない。
教会の鐘が鳴る。立ち止まるな、と言うように。きみだったものをそっと土に還して、立ち上がる。
宝箱に仕舞っていたいくらい、たいせつな、陽だまりのような時間だったけれど。時間はぼくの手の中からこぼれ落ちてしまったみたいだから。
湿った土の小山に花を添えて、ぼくは箱庭から抜け出した。
テーマ「時を告げる」
時を告げる
作業BGMのように耳を通りすぎる教室の音声
小さく聞こえるノートに黒を乗せる音
頭の中はぼんやりしていて
瞳が映した黒板の白をただ書き写す
視界に入る何人かが正面の壁の右上辺りを見ている
先生も左手首に視線を移した
♪︎
聞き慣れた音が学校に響き、授業終了を告げた
動画途中に広告が流れた時のように
本編の内容が一旦停止される
チャイムが鳴り止むと、授業終わりの挨拶をした
次にチャイムが鳴るのは、下校時間を告げる時。
目を覚ませ
朝だ起きろと
音が鳴る
まだもう少し
昨日に居させて
《明けぬ朝は無い》
(刀剣乱舞/にっかり青江)
草木も眠る丑三つ時、にっかり青江は目が覚める。
「はぁ....」
理由というのは悪夢を見たからである。
刀も夢を見るのかと思ったが、実際見ているのだから仕方が無い。
かつて自分が斬った女と子供の幽霊が出るのだ。
あの人おなじ笑みを浮かべた女と、無邪気に近寄ってくる子供の姿にゾッとして飛び起きる日々。
とはいえ解決しないままでは困る為、"夢の中"という特殊な状況にうってつけの刀・姫鶴一文字に"夢の中にもぐってもらう"ことにより、解決の糸口を探すことにした。
夢の中ではあの日のように女の霊が幼子を腕に抱いて笑っている。
「っ.....」
逃げ出したい気持ちを抑える。
その時、隣にいる姫鶴が「あの女の人、なんか言ってない?」と呟く。
青江は「え?」と声を漏らし、改めて女の霊に向き合う。
「.......」
確かに何か、口が動いてるように見える。
「斬っちゃダメだかんね。あの人の伝えたい事を聞くのは、青江の責務だかんね」
姫鶴の言葉に青江は頷き、一歩近づく。
霊は笑ったまま青江に近付く。
そしてようやく音が聞き取れた。
「私たちを斬ってくれてありがとう。あなたのお陰で苦しみが無くなったのよ」
そしてフッと霊は消えたのだ。
目が覚めると朝日が昇り、時告鳥が鳴いている。
「ははっ....。なんだ....それを伝えたかったんだね....」
長い夜の終わりを告げる時告鳥の鳴き声は、青江にとっての暗く終わりの見えない夜の時間に終わりを告げていた。
呪いとも呼べる己の逸話に苦しむ時間は、ようやく終わったようだ。
# 時を告げる
おわかれの時を告げる。気づいた頃にはもういなかった。あなたは私の前から消えてしまった。
一人っ子だった私にとってあなたは唯一の姉のような存在だった。空気が読めなくて少々オテンバ。時々ミーハーで、たまに大雑把。悩み事を打ち明ければいっしょに悩んで考えてくれる人。嬉しいことがあれば真っ先にあなたに報告しに行っていたのだけれど、いつもいつも全力で喜んでくれた。反対に悲しい話をすれば、私よりも泣いてくれた。冗談のつもりで「姉のような存在だと思っていますよ」と言ってみたら執拗にお姉ちゃんと呼ばせようとしてきて正直鬱陶しかった。自分の感情のままに天真爛漫に、周りを明るく照らしてくれる人。
大好きだった。
あなたとお付き合いをしていた彼が最期を見届けたみたいだけど、彼は「一人になりたい」とぼそり告げてすぐどこかに行ってしまった。
あなたはもう消えてしまった。祈ることでしかあなたには会えない。
あなたの世界はもう見えない。
人生は苦労が7割…
良い事が3割…まあ、比重で言うなら
そんな感じかな…
一生で考えても、1日で振り返っても
楽しくて良い事の方が断然少ない…
修行に来ているのだから当たり前なんだが
しんどい事がず〜っと続くと頭では理解
していても、気持ち的には段々キツくなる
どんなに大変な案件にぶち当たったとて…
「あと、1年の辛抱だから頑張れ!」
…なんて、終了の「時を告げる」システムがあれば、もっと楽に構えられるのに…
後は、いかに自分自身が物事をふわっと
受け流すかだけだな…
結局、苦か楽かを決めているのも
我が心ひとつでどうにでもなる訳だ…
時を告げる
授業終了のチャイムが鳴る。
待ちに待った昼休みだ。
午前は数学とか理科とか,難しい科目ばっかりだったからしんどかった。
午後にも物理がある、あー金曜日って最悪。
でもそれはそれ。今は昼休みなんだから休むべきだ。
午前頑張ったからご褒美にちょっと奮発して購買でチョコパン買った。
友達に「太るよ?」とか言われたけど。
焼きそばパンをむしゃむしゃされながら言われても
説得力無い。
疲れた時は、好きな食べ物と、馬鹿みたいな無駄話の組み合わせが一番身体と心に効く。
その分,時間はバカ早く過ぎるけど。
そうこう言ってるうちに予鈴が鳴る。
眠たいツラい午後の授業の始まりだ。
はぁ、次の楽しみは放課後の無駄話か。
授業がんばろ…
「時を告げる」
毎日正しく時を刻んでくれる時計。
正午になると鳴る自治体の音楽放送。
時間通りになる近所の学校のチャイム。
入学式、卒業式、成人式、入社式。
時が経った事を知らせてくれる。
誕生日、記念日、金婚式、還暦のお祝い。
思い出を振り返りながら、時間の経過を告げてくれる。
でも、一番正確に毎日の時間を告げてくれるのは、自分の腹時計だったりする、どうでもいい様な事実······
「時を告げる」
その時は突然やってくる。
心の準備もないままに。
ある日突然。
時を告げる
時を告げる音が鳴る。
なんの音か、どこで鳴っているか分からない。
だが、いつも正確に同じ時間に鳴る。
少し遠いようで、聞こえはするがうるさくはない。
近隣の施設の何かの時間だろうか。
何にしろ、私にとってはちょうどいい時報だ。
時を告げた、朧月。
僕はもう、ここにはいられない。
最初から約束されていた。
僕だって最初から分かっていた。
それでも縋ってしまった。
時を急かす、朧月。
まだ貴方のとなりにいたい。
叶わない願いは七夕に。
あの日吊るした願い事は燃やされてしまったかな。
この想いもあのときに消えていたらな。
時を告げる、朧月。
ずっと、ずっと、貴方のことが、────…
─時を告げる─ #56