《明けぬ朝は無い》
(刀剣乱舞/にっかり青江)
草木も眠る丑三つ時、にっかり青江は目が覚める。
「はぁ....」
理由というのは悪夢を見たからである。
刀も夢を見るのかと思ったが、実際見ているのだから仕方が無い。
かつて自分が斬った女と子供の幽霊が出るのだ。
あの人おなじ笑みを浮かべた女と、無邪気に近寄ってくる子供の姿にゾッとして飛び起きる日々。
とはいえ解決しないままでは困る為、"夢の中"という特殊な状況にうってつけの刀・姫鶴一文字に"夢の中にもぐってもらう"ことにより、解決の糸口を探すことにした。
夢の中ではあの日のように女の霊が幼子を腕に抱いて笑っている。
「っ.....」
逃げ出したい気持ちを抑える。
その時、隣にいる姫鶴が「あの女の人、なんか言ってない?」と呟く。
青江は「え?」と声を漏らし、改めて女の霊に向き合う。
「.......」
確かに何か、口が動いてるように見える。
「斬っちゃダメだかんね。あの人の伝えたい事を聞くのは、青江の責務だかんね」
姫鶴の言葉に青江は頷き、一歩近づく。
霊は笑ったまま青江に近付く。
そしてようやく音が聞き取れた。
「私たちを斬ってくれてありがとう。あなたのお陰で苦しみが無くなったのよ」
そしてフッと霊は消えたのだ。
目が覚めると朝日が昇り、時告鳥が鳴いている。
「ははっ....。なんだ....それを伝えたかったんだね....」
長い夜の終わりを告げる時告鳥の鳴き声は、青江にとっての暗く終わりの見えない夜の時間に終わりを告げていた。
呪いとも呼べる己の逸話に苦しむ時間は、ようやく終わったようだ。
9/6/2024, 10:36:04 AM