『時を告げる』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
アオい夕暮れに、セーラー服を漕ぐ。
風に置いてかれる君の微笑は
私の顔を緩ませて、愛の鐘が時を告げる。
【時を告げる】#38
「なんで目覚ましかけてないの?」
「かけたわ!お前が叩き落としたんだろうが!」
時刻は午前8時を少し回ったころ。
このまま何事もなければ、あと1時間ちょっとでシドニー行きの飛行機は定刻通り飛び立ってしまうだろう。
無情にも、彼を置き去りにして。
あれはナイチンゲールよ、ひばりなんかじゃないわ。
なんて優美にごまかすような状況になる前に、どうやらあたしは別れの時を告げる歌を奏でるはずのひばり改め我が家の目覚まし時計をぶん投げて黙らせたらしい。
哀れな目覚ましは役目を果たせぬままどこか不貞腐れたように床に転がっていた。
あ"ー!!と叫びながら駆け込んだ洗面所の方から聞こえてくる喧騒を、あたしはベッドの上にぼんやりと座り込んで、聞くともなしに聞いていた。
またしばらくのお別れだというのに情緒もへったくれもないなぁとへらりと笑う。
あれはナイチンゲール。だから大丈夫、まだ行かなくていいの。
真似して言ったらやっぱ帰らないって言わないかな…無理か。
急き立てられているような速さで全ての支度を終え、荷物を掴み足早に玄関へ向かう彼の後をポテポテと追う。
背を向けたままトントンと踵を靴へおさめ、ドアノブに手をかけながらじゃあな!と告げる彼の上着の裾を思わずキュッと引いてしまった。
……別に一生の別れじゃないんだし。
それぞれにいくつかの季節を過ごしたら、
また『久しぶり』と笑って共に過ごせるのだ。
わかってはいるんだけど。
掴んだ裾からそっと手を離し、じゃあねと告げるために顔を上げた刹那、くるりと振り返った彼に腕を取られグンッと前へ引き寄せられる。
勢いのまま体勢を崩して前につんのめったところをそのまま抱えるように無言で抱きすくめられた。
形のいいおでこがぽすりとあたしの肩へ置かれる。さらりと目の端で金髪が揺れるが、表情は見えない。
何も言わない背中に手を回し、ぽふぽふと宥めるように抱擁する。
……離れ難いのはお互い様だよね。
「……また来るわ」
「ん、待ってんね」
そうして彼は、再度あたしをぎゅっと抱きしめると振り切るようにガバリと身体を起こし玄関を飛び出していった。
ガンガンガンと階段を勢いよく駆け降りていく音。続く無音。
情緒もへったくれもない。
ひばりも歌声を響かせない。
それでもあたしはこういう朝でいい。
こういう朝がいい。
時を告げることのできなかった哀れなひばりを拾い上げてサイドテーブルへことりと納め、ひとつ伸びをした。
とりあえずお洗濯をしよう。
もしかしたら飛行機見えるかも知んないし。
方角知らんけど。
『時を告げる』
/遠距離恋愛のお話
まるで天使。
真っ白いシーツの上、波打ち広がる君の髪が、朝日を浴びてキラキラと輝いていた。
長い睫毛、スッと伸びた鼻梁、静かな寝息、思わず溜め息が漏れる。
かわいい、うつくしい、マジ天使。
サイドテーブルに置かれた君のスマホのアラームを解除しておく。よし、邪魔者は消えた。
こんな機会は滅多にないので、気持ち良さそうに眠る君をスマホのカメラで撮りまくった。
火傷しそうなほどにスマホが熱をもつが気にしない、それ程貴重な君の寝顔。
耐えろ、我がスマホよっ。
まだまだ起きる気配のない君のすぐ側。
ベッドに腰掛けながら、たった今撮った画像をホクホク顔で見る。
ああ、もう、たまらない。
変な声が出そうになるのを堪えていたら、いきなりガバッと上掛けが跳ね上がった。
突然の事に驚く前に、グイと力強く抱き寄せられその上に上掛けが覆い被さり。
薄暗い中、寝起きで不機嫌そうな君の目とかち合った。
……もしかして、起きてました?
恐る恐る聞けば、君は少しだけ口角を上げて頷いた。
テーマ「時を告げる」
短い小説『時を告げる』
「時間だ…行ってくるよ」
荒れる波。波打つ水しぶきが船着き場にも掛かる。これから船出の時間だというのに、それを引き止めるような悪い天候だ。
これから、数年間遠い国へ単身赴任しなければならない。最愛の妻を置いて遠い所へ行くなんて、想像もしていなかった。恐らく妻も想像していなかっただろう。
数年間ハグが出来ないのは辛いし、当たり前のように横に座ってテレビ見てご飯食べて他愛もない話をしていた日々がかけがえのない日々のように巡ってきて、目頭が熱くなる。最後に、もう一度だけしっかりとハグをして、しばしの別れの挨拶をしよう…。
妻もハグがしたかったようで、腰から首に手を回し、キスをしてきた。妻の唇はいつも以上に熱かった。
汽笛が鳴った。このまま時間が止まれば良いのにと思ったが、行かなければならない。
…別れの時を告げることにした。
「…もう時間だ。行ってくる。しばらく会えないけど、数年後には必ず戻って来るよ。…そうだ」とっさに思いつき、カバンに付いている愛用のキーホルダーを外した。
「これ、僕だと思って。」
愛用のキーホルダーを妻に渡した。これで少しでも寂しさを紛らわせれたら嬉しい。
妻は重い表情でも、少しだけ顔が綻び、受け取った。
…だが、その時、違和感を覚えた。
もう一度確認したが、妻の指には結婚指輪が無かった。ずっと付けていたのに、一体どうしたのだろう。
妻の顔をよく見てみた。うつむき気味だが、口角は大きく上がっており、細かく震えている…ように見えた。キーホルダーがそんなに嬉しかったのだろうか。
妻は何も言わなかった。ただキーホルダーを握りしめていた。悲しいが、船出の時間なので振り返らずに船に乗った。
戻った時、家の中は妻のものは一切無くなっており、あの時渡した愛用のキーホルダーだけが置かれていた。
別れの時を告げたのは妻の方だった。
同窓会の飲み会。
ずっと気になっていた彼と隣。
やばい…心臓が破裂しそう。
時折見える彼の八重歯が
いつにも増して愛おしく感じた。
「ね、〇〇もそう思うよね?」
『え…?あ、うん!』
「ほら〜。だから言ったろ??」
久しぶりに呼び捨てで呼んでくれた。
やっぱり私、まだ彼の事好きなんだな。
「…今何時か分かる?」
『あ、えっと……11時37分ぐらい』
「あー、じゃあ12時ぐらいに解散でいっか」
あと23分。
あと23分で、彼がいなくなってしまう。
あーあ、何時かなんて言いたくなかったのに。
ー時を告げるー
好きな人に告白されたい❤️💕💓🥰💖😘😍💍🌹👩🏻🤝👨🏼💖👩🏻❤️👨🏻💋
サァ、と雨音が聞こえて目が覚めた。
ぼんやりとした頭で窓の方をみると、勢いよく雨粒が降り込んできているのに気づいて慌てて起き上がる。お腹の上で丸まっていた猫が不服そうに鳴いたけどこればかりは許してほしい。
いきなり立ち上がったせいでふらつく身体を叱咤しなんとか窓を閉めることができた。でも開いている窓はここだけじゃない。寝室や自室の窓も開けっ放しではやく閉めないと大変なことになる。
ガンガンと増していく頭痛に思わずその場に座り込む。元々、偏頭痛持ちではあるけどここまで酷いのは久しぶりでひんやりとした窓ガラスに頭をくっつけたまま動けなくなった。
情けないな、と膨らみはじめたばかりのお腹を撫でていると、先ほどリビングを出ていったはずの猫がすり寄ってきた。珍しく喉を鳴らしながら甘えてくる姿になんだか目頭が熱くなる。小さな頭から背までゆっくりと撫でてやると同じようにゆっくりと私の腹にすり寄ってきた。たったそれだけのことで沈んでいた気分が和らいでいく。
「さすが、母猫先輩だなぁ」
去年出産して3匹の子猫の母となったこの猫はとても頼りになる先輩だ。今も自室で仕事ばかりしていた旦那に喝をいれてきてくれたようで、バタバタと階段を駆け下りてくる足音が近づいてきている。
腹にぴったりと身を寄せる先輩を抱きしめて目を閉じる。ありがとう、というと控えめな鳴き声で返事をしてくれるのにキュンとした。旦那より好きだよ、といえばリビングに駆け込んできた足音がピタリと止まった。
ちらりと様子をみれば情けない顔で項垂れていたから笑ってしまう。本当に先輩には敵わないな。
【題:時を告げる】
時を告げるとはなんだろう難しい問題だ
未来のこと?それとも過去のこと?
それともカウントダウンなのか
まだわからない考えなきゃね
調べてみるとベルやなにかの合図だったりする
そのようなことで「時を告げる」などと言う難しい言葉を使うのかと言われれば微妙だか言葉として言うのではなく文字として書き伝えるのだろう
少し話は変わるが「時を告げる」このお題が出た時に1番初めに思ったことは、自殺へのカウントダウンと考えたかっこよく言うなら死へのカウントダウンだろう
なぜこの言葉が最初に思いついたのか…
この長々としたよく分からない話には落ちはない
1つの言葉調べてみて答えがあるとしても分からないものもある。一人一人の言葉に対しての解釈は違う、答えがあったとしてもいろいろな解釈ができる
だから日本語は面白い。言葉に対する意味を考えてみよう時が告げるまで
さあ 始まりだ
一歩先へ 前へ
腐った1日は この時間をもって終了だ
午前零時の鐘は
昨日の僕とのお分かれを告げる
泣いた時間も終わりだ
憤った時間も終わりだ
超えてきたはずだ
試練のときだ
今が壁だ
悔しくて泣いた夜
何も手につかなかった朝
無駄に天井を見ていた昼
明日が来るのがこわい夜
でも
さあ 終わりだ
明日は また 戦いに行くんだ
笑えないことばかりだけど
無理をしてでも笑うんだ
お前は馬鹿だと言われて
悔しい顔をしたら 僕の負けだ
やるべきことは
夢を語ることだ
言い訳するやつには 夢はもったいないだろう
始まりの鐘は
こんな深夜に うなり 鳴る
聞こえたんだ 始まりを告げたんだ
【時を告げる】
「ねぇ、時間ってなんだと思う?」
「えー、なに、急に」
シズクは顔をしかめた。いつも一緒にいるカナは時々難しい話をする。
「いいから。時間とは?」
「んー…」
シズクは頭をひねった。時間。時間を刻むのは時計。では時計がないと時間は存在しないのか?否。時計は人間が作ったものだけど。それがなくても、時間という概念は存在する。
「元々は、日時計とかで時を刻んでたわけだから…。太陽の動き、つまり地球の自転によって刻まれているもの?ということは、時間とは、天体の動きのこと…?」
話しながらどんどんわけが分からなくなっていく。
「なるほど。でもそれだと、光が届かない場所では時間が存在しないことにならない?深海に生息するウミユリは、毎年同じタイミングで性細胞を放出するみたいよ。」
(性細胞…?)
聞き返したいのはヤマヤマだが、余計ややこしい話になりそうだ。
「光だけが時を刻んでるわけじゃないってこと?」
「そう。というか、結局、1秒の定義って、昔は天体の動きを元にしてたけど、今は原子の動きを元にしてるらしいよ。」
(え…。何が言いたいんだろう。)
シズクはちょっと肌寒くなってきた季節には少し冷たすぎるシェイクを吸い込んだ。
「私さ、カレンダーとか時計以外の、『時を告げるもの』を大事にしたいな、って思うの。」
「例えば?」
スウウウウウウウ。
カナは突然両手を広げて息を吸い込んだ。
「これ。この匂い。この温度。夏の終わりを告げるもの。」
確かに、近頃夏服では夕方は寒く感じるようになってきた。
「寂しいし、ちょっと焦っちゃうね。あっという間に今年が終わっちゃう。」
17歳の夏が終わるのか。確かに、辺りを見回せば、時を告げるもので溢れてる。熱を失った青葉、乾燥した空気、空は高くなってるし、虫の声も違う。
「えー、どうしよう。」
シズクは急に不安になってきた。
「なに、どうしたの?」
「私何もしてないよー。」
「シズクが?いろいろしてきたでしょ、成績だってずっとトップなんだし。」
確かにそうだけど。ただ授業でやった事を全部覚えてテスト用紙に書くのが得意なだけだ。シズクと違って、カナはいろいろ自分で考えていて、もっと大人に見える。
「焦ったってしょうがないよ」
カナが笑う。まだストローを噛む癖が直ってないらしい。
「そうかなぁ。」
時を、告げる。ねぇ、なんのために?
・時を告げる
「〇〇時〇〇分、ご臨終です」
嫌というほど耳にした、無機質な声がした。聞きようによっては、冷たくも思える声だ。特に、大切な人を目の前で亡くした遺族にとっては。
けれど、私は知っている。
その言葉を発する医師が、闘牛の如く荒れ狂う感情を、必死に押し留めていることを。
ああ、助けられなかった。必ず治すと約束したのに。そんな、「医師」の見本のような感情だけじゃない。
悲しい、悲しい、悲しい…
視界が白く染まるほどに唇を噛み締めても、医師は決して、俯かない。
患者は一人ではない。泣き顔で巡回に行くわけにはいかないのだ。
なんて愛しい立ち姿だろうか。私はそっと、医師に近づいた。その頭を撫でてやりたくても、二度と叶わない体である。
顔を覗き込むと、わずかに医師の目が見開かれた。
こやつ、霊感があったのか。調子に乗って変顔をしてみたが、反応はない。おい、恥ずかしいじゃないか。
生きていれば、コツンと頭でも叩いてやるところだ。
ふいに、硬く閉じられていた医師の口が、僅かに開く。
せ、ん、せい。
先生。私は目を見開く。死んだ身に目があるのか、なんて無粋な質問はしないでくれ。
それは懐かしい呼び名だった。私がこの病院に勤務していたのは、もう三十年も前だというのに。
医師の、太い眉が下がる。私とそっくりの眉だ。他は母親似のくせに、変なところだけ似やがった。
ああ、意識が薄れていく。最期の時間を変顔なんかに使うんじゃなかったな。
もっと言いたいことがあるんだ。
そうだな。頑張れよ。あんまり無理するなよ。家族に心配かけるからな。
それから…お前に看取ってもらえてよかった。
チャイムなんて鳴らなくても、お腹が空くし、あくびも出てくる
微睡みの中でただ身を休める。
これ以上に素晴らしいものがあるのだろうか?
ただこの瞬間だけは誰にも邪魔されず一人の時間が
永遠と続く。ただ唯一の存在を除いては。
今日もまた憎ったらしい程に清々しい陽の光と共に耳元で静寂を突き破るアラームの音で朝を知る。
【時を告げる】
【時を告げる】私の心が時を告げる。いくべき時だ
やるべき時だと。グズグズしている暇はないとー。
やりたいことは1つ。それに向かって行けべき時と
告げている。もっともっと行くんだ!私!
そして、夢叶えよう!そんな生半可なきもちでは
夢はかなわない。自分の限界を超えて、もっと必死
になれ。そうすべき時がきいてると告げている。
3年後のpure
お題に沿って書くとは
時告げると、言えばやはりコロナ陽性になった事だろう
これは現在進行形
8月末から喘息とのような咳が続き
9/1に夜発熱、9/2に内科受診でコロナ陽性
以後寝たきりで激しい喉の痛みと38.5以上の熱が3日続き
ようやく収まったのもつかの間
今度は喉の乾きと喘息が襲う
しばらく休め、という事かもしれない
#時を告げる
そんな謂われの鳥おったな?
調べたら、
時告げ鳥は鶏。
夜告げ鳥は夜鳴鶯。
昼告げ鳥は…いない?
春告げ鳥は鴬。
夏、秋、冬は…季語はあってもそう呼ばれる鳥はいない?
基本的に時は告げないで欲しい。
寝たら明日が来ちゃうから、
『もう夜中だよ?』
って…知っててダラダラ起きとるんじゃ!
まあ寝なくても明日は来ちゃうけど。
少しの間だけ忘れさせていて。
仕事のこと思い出したら寝れんくなるやろがい!!!!(-_-#)
#時を告げる
春はホトトギスが訪れを告げる。
夏は蝉が訪れを告げる。
冬は雪が訪れを告げる。
秋は?秋は何が訪れを告げるだろうか。
紅葉か、味覚か、はたまた植物か。
ただ、私はいつの間にか訪れて去っていく。そんな秋が四季の中で1番好きだ。
ただ私のことを黙って受け入れ、そのまま突き放す。そんな秋が。
私は幾人の命を看取ってきただろうか。時には追い詰められ自死を決意した者の命を、病床に臥す老体の命を、不運な赤子の命らを私は看取った。しかし、彼の者の行先は知らない。ただ私は時を告げるもの。人が最後の心拍をするとき、私は側にいる。
「まだ死にたくない。」
1人の男が血塗れた胸を手で押さえ、呟いた。彼の手によって失われた命も私は看取ってきた。そして、次は彼を撃った者を私は看取るのだろう。
「お前は悪魔か…」
男は私を見て言った。人は奇妙な存在で、ある者は私を天使と言う。私の姿は、彼らの行く末を知らしているのか願望なのだろうか。私は横になる彼に手を差し出した。
「貴方の時は終わった。行くべき場所に行くだろう。」そう告げると男は身体を置いて飄々と歩いていく。まるで彼だけには分かる道があるようだ。残された亡骸の赤黒くなった軍服には銀色のドックダクが煌めいていた。私はすぐ次の者に呼ばれた。
「まだ死にたくない。」
と男が呟いた。
「時を告げる」
「余命半年」今日がその時かもしれないと思う。最後に、好きな人に会いたい。家族と過ごしたい。ああ、もっとやりたいことがあるのに。みんなに有難うって言いたいし、さようならも言いたいのに。そろそろ時間だから、もう行かなくちゃ。涙がとまらないのはなぜ?もう瞼が閉じてしまう、おやすみなさい。
Episode.19 時を告げる
カチ、カチ、カチ、カチ。
時計の音が静かな部屋中に響きわたる。
この不思議な心地良さと不安感が苦手だ。
高一の夏休み、今日は大雨で僕は部屋に籠っていた。
両親は買い出しに行ったため家には僕一人だけだ。
僕の家にはカチ、カチ、と音が鳴る時計がある。
これが不気味で、心地よくて堪らない。
理由は分からない。
一人だという状況下で物音がするのが怖くて不気味なのか、むしろその怖さを半減してくれる心地良さなのか。
カチ、カチ、カチ、カチ。
ゴーン、ゴーン。
僕はビクッと体を震わせた。
この音は正午を告げる音だ。
いつも聞いているはずなのに、なんだか落ち着かない。
僕は大雨による薄暗さと憂鬱さ、一人でいることの不安のせいにした。
それを塞ぎ込みたくなり、二階の自分の部屋に入った。
布団にくるまり、イヤホンをして音楽を聞きながら両親の帰りを待つ。
しだいにウトウトしてきて、いつの間にか眠っていた。
ガチャッ、という音が聞こえて目が覚めた。
両親が帰ってきた。
しかし今起きたばかりのため眠気が酷い。
二度寝しそうになりながらも少しの安心感を覚える。
コンコン。
「爽明、起きてる?少し遅くなったけど昼食買ってきた
よ、降りておいで。」
ゆっくりと起き上がり体を伸ばす。
「今起きた…おかえり、ありがとう母さん。」
僕は眠気に耐えながら一階に降りていく。
カチ、カチ、カチ、カチ。
時刻は午後一時半、時計は勿論動いている。
しかし先程のような不安は消え去り安心感だけが残る。
「父さんおかえり」
「ただいま。さっ、冷めないうちに皆で食べようか!」
「いただきまーす!」
三人の声が重なった。