『放課後』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「放課後」
頑張った日の空はいつもと違っている気がする。
ちょっと怒られちゃったりしたけど、そんな日の部活帰りの夜空は澄んだ藍色をしている。
広い夜空を見上げると宝石がきらきら輝いている。
今日を生き抜いた私へのご褒美のように感じた。
上を向いてすうっと息を吸えば私は明日も頑張れる。
だから私は頑張った日には空を見上げる。
【放課後】
さてさて、今日はワクワクドキドキチョベリグテンアゲな話題を持ってきたよ。
「先輩。話題よりも…ちょべり?てんあげ?なんですかそれは」
おやおや、たった数年生まれるのが早いだけでこの言葉が伝わらないのかい?悲しいねぇ。チョベリグは超Very Goodの略でテンアゲはテンションアゲアゲの略だよ。
「知らないですけど?」
これがジェネレーションギャップか。いやはや、私も老いたね。
「冗談はいいので話を聞かせてください。死語が今回の話題だったりします?」
そんな訳ないだろう。チョベリバのテンサゲのぴえんといった感じだね。ぱおんぱおん。
「先輩、未成年で飲酒は宜しくないですね。生徒指導の先生呼んできます」
待て待て。些細な戯れじゃないか。それに私はこの部活動のせいであの生徒指導から睨まれているんだ。勘弁してくれ。
「二人だけの部活動。いや、同好会ですよね。それも違う。同好会を名乗るのもおこがましい人数な上に放課後に屋上でオカルト部として記事を書き、掲示板に貼ったり、配って回る活動。それは睨まれますよね。先輩は部長ですし、尚更ですね」
まるで私が悪の親玉かつ全ての元凶の様な言い分じゃないか。占拠はしていないし、記事を書くという文芸活動。そして、愛しのオカルトの何が悪いんだい?頭にアルミホイルを巻いて電波がーマイクロチップがーノストラダムスの予言がーと騒ぎ立てる陰謀論者じゃないんだ。オカルトと陰謀論を同一視する愚か者は宇宙人に拐われて改造手術でも受けてきてくれたまえ。
「あー…。色々と突っ込みたい所はありますが…。何言っているんですか先輩は。そういう事を言うから周りから『何コイツ』と奇異の目を向けられるんですよ」
奇異?そうだったのかい。私の優れた頭脳に嫉妬している愚民の視線だと思っていたよ。ふふふっ。
「先輩」
怒らないでくれたまえ。私が学年成績三位以内かつ学内の成績でも五位以内には入っている秀才だよ。それに偽りはなかろうよ。
「それは紛れもない事実ですね。尊敬しています。それ以上に異常…。何でもないです」
美少女には欠点があった方が人間味があって素晴らしいだろう?同じ人間だと愛せるだろう?完璧というのは理解から遠退く代物なんだよ。ふふっ、普遍的な美少女というのは実に愛らしいね。
「…。」
呆れてくれるなよ。私の顔面は普遍だ。実に面白味もない。整ってもないが崩れている訳でもない。つまらない面だよ。
「そこじゃないですけど…。先輩のどこを見ても普遍的とは言えま…。ゴホン。というか、外見気にするタイプなんですか?先輩」
美少女に憧れるのは老若男女関係ないんだよ。美少女であればちやほやされるからね。大勝利だよ。愛される事は才だよ。私は私の道を往くからそういう才など桜の木の下に埋めてきたが。欲しかったらスコップを貸そう。その才を入手出来れば愛され後輩の爆誕だ。
「今の流行りは祠の破壊らしいですけどね」
そう。それだよ。今回の話題は。
「先輩が流行りの祠破壊の話を持ってくるとは…。あれ、単なる罰当たりの愚か者の末路の話ですよね?というか、戯言では?」
インターネットという広大な海の妄想の産物ではなくこの辺りで本当にそれやってのけ、祟られた配信者の話だよ。
「ヤラセ臭が凄い眉唾オカルト…」
祟りが本物ならオカルトだろう?ヤラセならいくらでも暴いてやろうじゃないか。彼の活動を昇華する学生の慈善活動だよ。
「えぇ…」
引かないでくれたまえよ。件の彼の祠破壊動画の保存は既に行っているし、動向も常に見ている。配信にはノイズ、オーブ、文字化けしたコメント等々の異常現象ハッピー特盛お買い得欲張り盛り過ぎセットで見ていて飽きないよ。
「先輩は言葉を盛るのが流行りですか?」
テンアゲなのが伝わるだろう?
「はぁ…?」
さて、粗方用件は伝わっただろう。これがPCルームの鍵と学校のPCからインターネットに接続する為のコード。そして、件の配信アーカイブのデータ。一緒に視聴をして謎を暴こうじゃないか。
「用意周到な上にナチュラル犯罪…」
法に触れているのかい?それは驚いた。鍵はお借りしたのとコードは丁重に教えてもらったもの。アーカイブの保存は問題ない。ネットの海に流さなければいいのさ。何も悪くないね。
「…はぁ。分かりました。一緒に怒られる覚悟は出来ましたから行きましょう」
バレなければ問題などないのだよ。ふふふふっ。大船に乗ったつもりできたまえ。
「何処からその自信が湧いてくるんですか…。もういいです。早く共倒れしましょう」
ネガティブだね君は。だが、共倒れしてくれる覚悟は好きだよ。うふふ。
放課後
寄り道をしてはいけないという言いつけを
頑なに守り続けていたあの頃。
今思うと、少しだけ破ってみてもよかったのかも
〝放課後〟
1日がほとんど終わろうとしてる、放課後の教室。部活をしてないから、日直のときでしか、こんな時間まで残ることがない。
少女漫画のワンシーンを、すこし思い出す。なんて、現実じゃあり得ないのにね。
「よかった……教室開いてた!!」
教室の引き戸が開く、肩を上下に息をする男子。なんて声をかければいい? そもそも返事はした方がいい?
男子は机からプリントを取ると、あたしの存在など気にせず戻っていく。
変に声をかけなくて正解だったね。早く日誌を書いて帰……足音する? 次は誰? えー、帰ったんじゃなかったの!? さきほどの男子が顔を覗かせた。
「まだ忘れ物だったら、もう少し日誌書いてるし、探してていいよ」
「探すんだったらそれはもう忘れ物じゃなくね?」
「ん? あれ、そうなのかな……?」
なぜか会話は続き、気づいたら、放課後をクラスの男子と一緒に居た。
なんで向こうは戻ってきたんだろう。日頃話もしない男子との会話、初めて…そんな印象を持ってしまうほどに笑うところにドキッとした。
少女漫画のワンシーン、そんな気がした。現実ではあり得ない……そう想像しちゃえばいいんじゃない? 誰にも絶対に内緒だけどね。
放課後
あの子をいじめない?
って会議に参加した。
なんでこの子たちはそんなひどいことをするんだろう?
って思ってた。
でも私は何も言えなかった。
怖かった。
夕方5時の通学路、重たい荷物を持った君と
少し肌寒い10月の風、頬を撫でる。
道端の木々は、少しずつ色を変えていて
なんだかそれは静かな花火のようだった。
来年の紅葉は、誰と見るのかな、と
君は少し寂しそうな顔をしながら問う。
そんな、来年になってみないとわからないよ、と
答えに困ってしまって、変な返事をしてしまう、
君は目を伏せて、ふふっ、と
もー、笑わないでよ。恥ずかしい、、
そんな会話
11月中旬、交差点の交通事故
ニュースで大きく取り上げられていた。
君のいない通学路は
なんだか苦しくて、辛くって、
そんな、まだ君と、雪を見れていないのに。
廊下からテニスコートを眺めればガラス越しにきみが微笑む
「放課後」
君と帰る放課後の時間がとても好き
教室で少し話して、時間になったら帰る
私の登下校の交通手段が車だったから駐車場までだけど、教室から駐車場までの短い間
少しでも長く君と話していたいから
普段歩く速さより遅く私は歩く
たまに学校と家が自転車で行ける距離だったらと思う
そしたらもっと長く君と居れるのになぁって
学校終わりに街の方に行って遊びに行くってことが出来ないのがとても悲しい
帰りに映画行こ!って言ってるクラスメイトを見て
少し羨ましいと思った
まぁ少しの間だけでも君と一緒に居られるのは嬉しい
誰にも邪魔されない2人の時間
日々の疲れが取れる放課後が1番好きだ
文化祭のためだけに作ったダンスチーム
たくさん練習したよね!
放課後、ふと気づくと教室の窓に腰掛ける女がいる。
少なくともクラスメイトではない。
教室には私だけで、ドアは閉まっていたし入ってくる音も聞こえない。ここは2階だが、もちろん窓からの音ひとつだって聞こえない。
毎日行われるそれに少し警戒して鍵をかけてみたりしたけれど、それを嘲笑うように彼女はいつのまにか黒板横の端の窓に腰掛け何かを見つめている。
初めの頃は話しかけても何も言わないし、まさか幽霊ではと思い逃げたりしてみたけど、貴重な自習時間を霊もどきに使うのもアホらしくなっていつしか気にしなくなった。彼女はよく見たら影があるし髪や服が風に揺れるから霊ではないのだと思うが、そも制服が違うせいでより正体がわからない。そして、何よりなぜだかどこか見覚えのある顔をしているのが不気味で、まさか霊ではないかと思う要因の一つだった。しかし彼女はただ放課後の窓辺に現れては、じっと外の一点を見つめて去っていく。瞬きの合間に消えるその瞬間だけ、微笑みを私に残して。
鍵をかけても窓を監視しても無駄だった。図書館で在学中の生徒や卒業生、果ては近隣の学校の制服。どんなに調べても彼女の手がかりは何ひとつない。もう一週間も経った。いっそ、諦めてしまおうか。
そうだ。元々は集中できる自習の時間だったはずなのに、いつのまにか彼女を突き止める時間に変わっていた。しかしどれだけ探っても彼女の存在するという証拠のかけらすら見当たらない。それでもう良いじゃないか。毎日毎日いつのまにか窓にいるのは気になるが、それだけだ。彼女は何も言わず静かに座っているだけだ。なんやかんやで彼女が現れてから二週間目なのだし、良い加減慣れてきた。ただ気にしなければいいだけだ。
チラリと窓へ視線を向けて、けれどなんの反応も得られないのは今更だ。彼女がこちらを見るのは去り際の瞬きする一瞬だけ。それ以外は出てってくれないかと話しかけてみても、隣に立ってみても消しゴムを投げてみても、あまつさえ少しの嫌味を吐いてみたって気づいていないかのように真っ直ぐ外を見つめているだけなのだから。
まったく、ここは呪われてでもいるのだろうか。
手元のノートに碌に集中できずに大きく息を吐き、しかしわざわざ教室を移動したくはないと意固地になる。そんなことをすれば霊かどうかもわからないのに恐ろしくて逃げている小心者みたいじゃないか。もしかしたら彼女は壮大な悪戯を仕掛けている生徒かもしれないのに、そんな噂の種になるようなことはしたくない。けれど残念ながら、これ以上の案はなかった。完全にお手上げだ。
今度は小さく息を吐き、今日もそこにいる彼女を眺める。
彼女は、一体何者なんだ。
「ねえ。なにをみているんですか?」
問いかけていた。言いたいことは沢山あったのに、口をついて出たのは無意識の言葉だった。けれど返事が返ってくるはずもない。分かってはいたがあまりに真剣に見つめるものだからそれほど気になっていたのかもしれない。
どうせ返ってくるはずもない独り言に、バカバカしいと席に戻ろうとした瞬間、普段は微動だにしないはずのそれが、明確に動きを見せた。
ゆっくりと外に向けられる人差し指。
指し示すそこには青々としたなんの変哲もない木。
「ただの、木?」
消えるその瞬間しか見せたことのないはずのやわらかな笑顔がこちらに向けられていた。考えずともわかる。これは明らかに、わたしの問いに対する答え。
聞こえていた、理解していた。知っていたのだ!
感動にも似た、肌がゾワリとする感覚が全身を覆って、少しだけ吐き気すら催した。
ではなぜ。今まで一度も、彼女はなんの反応もしなかったのだ。あんなにも声をあげただろう。物を投げつけてみたし、反応するようにわざとらしく嫌味まで言って見せた。それなのになぜ今になって反応を返すようになったのだ。
手のひらで踊らされているような、馬鹿にされているような不快感。敗北感。やはり悪戯している他学年の生徒なのではないか。思えば当初から彼女には振り回されてばかりだ。怒りを隠すこともせず睨みつけていると、彼女は返事のないことに小首を傾げてまた外へと向き直った。
私を気にも留めない態度に苛立ちは増し、けれど冷静な思考の一部が疑問を浮かべる。
今一度この2週間ちょっとのことを思い返してみるが、果たして自分は今まで純粋な疑問を彼女に向けたことがあっただろうか。
出会い頭は「幽霊??!」と叫び逃げ惑い、しばらくは出てってくれやらここはあなたの教室じゃないやら色々話しかけてみたが、なんの手応えもないことを悟るとそれ以降は話しかけるなんて手は考えもしなかった、と過去の行動を思い出した。ふつう、あそこまで無反応なのもおかしいだろう。けれど、それならば初めからこうすればよかった。
「はじめまして。あなたの名前は?」
先ほどとは打って変わりやっと進展しそうなことに急上昇した自分の機嫌に、口角がゆるりと上がっていく。
声は聞こえている。理解している。そして、反応も返ってくる。まだお手上げと言うには早かった。負けてなんていない。怒りが喜びに変わっていく。
まずは彼女について知ろうと話しかければ、驚いたように目を見開いてこちらを向く。するとなぜか、今度はニヤリと悪戯するように笑っていた。
そして差し出した手を握った彼女の、自身より温かい手に私も少しだけ目を見開いたのだった。まさかこの後もっと驚くことになるなんて思わなかったけど。
執着していたのはいつのまにか私だった。
いつだって受け入れるようなその笑みに、
恥ずかしいことに私は甘えてしまっていたんだ。
放課後
放課後、
教室の窓から
好きな人がサッカーをしている。
そんな学生時代の温かい時間。
少し生成りになったカーテンの匂い、
遠くから見るだけで幸せだった感覚、
私の青春。
我ながら、良い時代に産まれてきたなぁ、と思う。
スマホに縛られる事もなく、
「今」その瞬間を大事に生きていた。
大人になった今も、
その感覚を思い出して大事にしたい。
【放課後】
グリコ チョコレート パイナップル
決まった道しか通っちゃ行けなかったけどたまに通ったいつもと違う道ちょっぴり良かった
遊びに行きたくて走って帰ったら、思ってたよりずっと早く家に着いてびっくり こんなに早く走れたっけ?
校庭で缶けりして遊んだ 昼休みに遊ぶのと少し雰囲気が違う 後に掃除、授業がない解放感 心地いい疲労感 もう味わえない
(放課後。)🦜
あのね
・僕達・・雀の勉強はね。
食べ物を探す方法や、
・危険な
天敵から
身を守る方法を
勉強する事
なんだね。🦜
✣人間しゃん、みたいな
義務教育は無いけど、
・生き残る方法を
勉強するんだね。🦜
「放課後、何してるかと
聴かれても。🦜
・テレビは、無いし、
・ゲームも、無い。
まして、
・漫画なんか、観ても
全然、面白く無いし
読め無いんだね。」🦜
✣だから、放課後は、
電線の上で皆を
観察しているんだよ。🦜
・今日は運転違反で
警察に捕まった
車が居るとか。🦜
・まだ小学生で
可愛い女の子が
歩いて居るなとか。🦜
【世の中の移り変わりを観察
しているだよ。】
「放課後」
放課後一緒に帰ろう。
君に勇気を出して、そう言った。
内気でいつも言いたいことが言えない僕に勇気を君がくれた。
今日は放課後のことで頭がいっぱいだった。
放課後になり下駄箱に行くと君が待っていた。
おまたせ。と僕が言うと遅いよーと君は怒っていた。
ごめんね。と僕が言うと君はしょうがないなーと僕に言った。
可愛い君の姿に僕は思わず笑みがこぼれた。
帰ろっか。と君が言う。
ずっと君に伝えたい言葉があったのになかなか言えない僕は自分に嫌気がさす。
ねぇ、君はよく誰かと帰るの?と君が僕に聞いた。
ううん、そんなことないよ。と僕は答えた。
君には彼女とか居ないの?と続けて君が聞く。
居ないよ、と僕が言うと君はじゃあ、好きな人は?と聞いた。
そういう君は?と僕は聞いた。
私はね、居るよ。という君。
僕も居るよと伝えた。
私はね、ずっと好きなんだ。という君に僕は何も言えなかった。
いつまで待てばいいのかな。と君は言う。
ねぇ、ちょっといい?と僕は言った。
何?という君に僕はずっと君が好きだった。と伝えた。
やっとか。という君に僕はえっ?という言葉が出た。
ずっと待ってたよ。私も好きだよ。と君が言った。
これが僕の今の彼女との甘い放課後の思い出。
海色の切手が無きゃダメだよ。
私はある人に手紙を出そうとしていた。
問題は、名前も思い出せないし、
住所も、生きてるか死んでるかすら
わからないこと。
そんな時
噂を思い出した。
「放課後ポスト」。
学校から開放された放課後のように
自由なポスト。
なんでも、
そのポストは
住所や宛名が書いていなくても
ポストの上にとまっているカモメが
必ず届けてくれるらしい。
でもまさか
そのカモメが喋るとか、
普通の切手じゃダメなのとか、
そんなことは予想つかないよね。
ねー、ボクもう今日の分運んじゃうけど。
カモメに急かされる。
ごめんなさい。切手、それ以外持ってないんです。
海色の切手、本当に持ってないの?
カモメはポケットをまじまじ見る。
よく分からないが、
ポケットをまさぐると、
藍色のような、水色のような、
綺麗な切手が1枚出てきた。
手書きのような字で
"Good Midnight!"
と真ん中に書かれていた。
ほら、あるじゃん。さっさとこの切手の上に貼って。
は、はい。
切手を貼ると、
さっきまで空白だった
住所と宛名の所に文字が現れた。
なるほど、この切手のおかげで
カモメが運べるんだ。
ね、キミさ、あとでそこの雑貨屋行きなよ。
と言うと、
カモメは数枚の手紙を持ち、
すぐに飛び立ってしまった。
言われた通りに雑貨屋へ行くと
フクロウに似たあの人が
店員さんだった。
お久しぶりです。
その声は
驚きすぎて
すぐお店のドアを閉めた
私の耳には届かなかった。
題 放課後
放課後は好きじゃない
だって、みんな部活で私はやることないし。
私は動くのが嫌いだから、1人帰宅部だ。
部活すればって友達に言われるけど、興味ないんだよね。
それに早く帰りたい。
だから、嫌いなのは、正確にはホームルームが終わってから家に着くまでの一人の時間だ。
靴箱から靴を取り出して、帰宅しようとした時、ちょうど同じクラスの竹下と一緒になった。
「あ、宮野、今帰り?」
「うん、帰りだけど・・・竹下は?部活は?」
結構体育で活躍していた印象だから、運動部なのかな、と思って聞いてみる。
「部活してないけど、帰宅部。他の友達みんな部活でさ」
「あ、竹下も?一緒だね」
私はその返答を聞いた途端親近感を覚える。
「宮野って部活してないんだ?してそうなのに」
「私もそう思ったけどね、竹下も部活してそうって」
「僕?僕は早く帰って勉強したいから」
「え?そうなの?!」
意外な返答が返ってきて、びっくりして、竹下をまじまじと見る。
私と同じ部類の人間だと思ったけど、全然違ったみたいだ。
「そうそう。東高目指しててさ、だから部活してる時間惜しくて」
「す、すごいね・・・」
超難関校の名前を聞いて、私は萎縮してしまう。
私みたいに面倒なことしたくないっていう理由じゃないんだ。
「すごくないよ、だって僕がしたいことだから」
「いや、凄いから、私部活とか面倒だな、とか、家でゆっくりしたいなっていう理由で部活し出ないだけだもん。すごく尊敬するよ」
私がそう言うと、竹下は照れたように頭をかいた。
「ありがとう。でも、頑張っても、なかなか学力が届かなくて、部活やってたら受からないっていうのが本当の所なんだけど」
「すごいよ〜!そうやって目標にむかって頑張れるのって才能だと思う!!私もそういうこと見つかったらいいのになぁと思うよ」
「宮野はないの?目標」
私が竹下に感心していると聞き返された。
「え?う〜ん、絵を描く位かな?コミック読んで、模写したり。イラスト描くのは好きなんだ」
「そっかぁ、じゃあ美術部とかも良さそうだけどね」
「なんか違うんだよね、美術部みたいなのじゃなく、私はコミック調のイラスト描きたいんだ。そういうの描いている時は、楽しいから、家に帰りたいってのも正直ある」
私の言葉を聞いて、竹下が頷いている。
「そっか、宮野もちゃんと自分の好きなことしてるんだね。それも目標に続いてる道かもね」
いつの間にか、一緒に下校の道をたどっていた私たち。
話に夢中になって無意識に一緒に歩いていた。
「これが将来の道に続くと思う?私、自分に才能あると思えないんだ」
イラスト、ネットで見ると沢山上手な人がいて、劣等感にいつも負けそうになってしまう。
私にはできないんだ、無理なんだって。
でも、描くことは好きだから、やめてないけどね。
ひたすら絵は描き続けているけど。
「続けていれば夢に近づく確率上がるんじゃないかな。僕も、勉強毎日してるけどさ、正直無理って思う日もあるけど、でも、やらなければ確率は平行線のままだけど、やりつづければ合格率は上がると思うんだ。そうしたら頑張れるよ」
「確かに」
私は竹下の言葉を聞いて頷いた。
そうだよね、描かなければ画力も上がらないけど、小学校の頃から頑張っていた私は確実に上手くなってる。
コミュニティでも、上手いって言ってもらえる時はとても嬉しい。頑張ろうって思う。
「お互い、毎日コツコツ頑張ろうよ。そうしたらきっと、自分の夢に近づけるから」
「そうだね・・・そうだね」
私は竹下の言葉に何度も頷いた。
夢は・・・漫画家の夢はいつか叶う日が来るかもしれない。
少なくともやらないよりやりつづける毎日の先に希望はあるって思えたから。
「ありがとう、竹下」
私は竹下に笑いかけた。
こんなにウキウキする気持ちの放課後は初めてかもしれない。
「どういたしまして」
竹下は私に笑い返した。
何となくその場の空気が明るく色づいた気がした。
私達はそのまま、最寄りの駅に着くまで、お互いの夢について語り合いながら帰っていったんだ。
芋虫の気持ち悪さは、上から見たせいなんだと思う。
細いアスファルトの道を、アオムシが這っていた。
鮮やかな黄緑色のアゲハのアオムシは、ふっくら膨らんだ偽の頭の節の下から、もわっとした柔らかな頭を懸命に伸ばして、せっせと足を進めている。
しゃがんで覗き込む。
離れてみると、うねうねら、ぐにゃぐにゃと決まりなく動いてみえる体だが、近くでよく見てみると、つやつやの節の下に、みっちりちょこちょことついた小さな足たちが、規則正しく動き続けているのがわかる。
顔を上げて辺りを見回す。
アオムシが道を見つめてせっせと歩いているその先を辿ってみる。
どうやらアオムシは、校庭の隅の小さな畑の、蜜柑の木を目指しているようだ。
放課後の校庭は騒がしい。
みんな、放課後にはまだお家の人が帰っていないから、学校が終わったら、学童の教室へ下校する。
それから、学童の教室で宿題を終えて、校庭で遊ぶ。
僕も、みんなも。
だから、今も校庭は騒がしい。
ついさっきも、鬼ごっこをしている一年生が、僕とアオムシの脇を走り去っていった。
踏み潰されたら可哀想だ。
それに、踏み潰しても可哀想だ。
三年生のあの子は、今日はおろしたての新しい俊足で来たと自慢していたし、今日、僕たちの学童教室に来ているアルバイトのお姉さん先生は、虫が苦手だ。
僕はアオムシにゆっくりついていって、見張ることにした。
校庭では、低学年の子たちが、きゃあきゃあと声を上げながら、走り回っている。
元気の良い子たちに囲まれて、六年生のリーダーが大声を張り上げる。
「グーとパーで分かれましょ!!」
向こうの鉄棒では、高学年のおとなしい子たちが2、3人くらいで固まって、お話をしている。
僕はゆっくりアオムシについていく。
アオムシの足は、意外とゆっくりで意外に早い。
じっと見ていると遅いけど、ちょっと校庭に気を取られると、いつのまにか一歩分くらい前にいる。
おばさん先生が、別の先生とお話をしている。
お姉さん先生は汗を拭いながら、小さい子と一緒に校庭を走り回っている。
カラスが鳴いてる。
かあかあ
僕はアオムシについていく。
このアオムシ、首のあたりに青いラインが入ってて、カッコいい。
なんだか、中学生とか高校生のお兄さんたちが履いてる、スマートな運動靴みたいだ。
なんで緑なのにアオムシって言うのか、今まで分からなかったけど、今分かったかもしれない。
きっと、この青いラインの青なんだ。
だって、ピカピカの黄緑の中にくっきりと引かれた青は、本当にカッコいい。
僕はアオムシについていく。
「鬼ごっこに入らんの?」
振り向くと、汗まみれのお姉さん先生が立っていた。
僕は首を横に振る。
ちゃんと断る理由も言った方がいいかな?と思ったけどやめておいた。
お姉さん先生は、虫が苦手だから。
「本当にいいの?」
お姉さん先生は、不満そうな、心配そうな顔で、そう聞いた。
「うん、僕、しない」
僕はダンコとして言った。
「…そっか、入りたくなったらいつでもおいでね!」
お姉さん先生は、ちょっと困ったような顔をしてそう言って、校庭へ走っていった。
僕はちょっとホッとして、それからまた、アオムシについていった。
アオムシが学校の畑の土についた時、笛の音が聞こえた。
外遊びの終わりの合図だ。
僕はまた、ホッとした。
アオムシがここまで来るのをちゃんと見れてよかった。
ホントは木に登るところも見たかったけど。
「帰るよー!」
おばさん先生の呼び声が聞こえる。
賑やかなみんなの声が、おばさん先生の方に移動していく。
バイバイ
僕はアオムシに手を振って、走り出す。
五時のチャイムが、放課後の校庭に鳴り響いた。
【放課後】*125*
学校から駅まで一緒に歩いて
早帰りの時はそのまま電車でお出かけ♪
部活帰りには友だちと駅でよくアイスも食べたなぁ
懐かしーーーい
制服…今着るとヤバいコスプレ笑
「放課後」
学校にも家にも
この世界の何処にも
私の居ていい場所は無かった
私の存在は許されなかった
追い出されるように
学校へ向かい
皆んなに笑われながら
家へと帰る
″このまま消えてしまおうか″
放課後の憂鬱...
澄んだ空に助けられていた
あの頃の私
放課後
今日は高校の卒業間際に起きた出来事を回想してみようと思う。
卒業式を二週間後に控えたある日の放課後。
私は教室で友人といつものおしゃべりに花を咲かせていた。
それはお互いバイトまでの時間調整でもあった。
今となってはどんな話をしていたのかまでは記憶にないが、おそらくは女子の関心事である新色コスメの話や、バイト先の人の噂話、好きな歌手のMVの話だったり、ときどきはそこに恋の話も混じっていたかもしれない。
この年頃の女子たちといったら、もう話したいことが次から次へと溢れ出してきて、いくら時間があっても足りないくらいなのだ。
そのとき、
私たち二人しかいない教室にタタタタタと数名の男子が入ってきた。
忘れ物か何かだろうと気にも止めずにいたら、その中の一人が意志を持ってこちらへと向かってくるではないか。
その子はすらりと背が高く、勉強は出来るが寡黙なタイプ、普段から女子との交流は少なめだったように思う。
私はと言えば、勉強は大の苦手、その代わりに誰とでもすぐに打ち解けることが出来るという特殊能力を持っていた。
え?なに?
私が戸惑っている最中、あとの男子二人が友達を廊下へと連れて出ていくのがわかった。
あー、何か始まるな。
しかも、たぶん面倒くさいことが。
こういう予感は何故か当たるように出来ているものだ。
案の定と言うか、いわゆる告白というものだった。
「三年間ずっと好きだったんだ。」
彼は怯むことなく私の目を見てそう伝えてきた。
まさしく覚悟を決めた武士のような凛々しい顔付きをしていた。
一方、私の方はと言えば、内心どうしょもないくらいにたじろぎ、うろたえていたと思う。
当たり前だ。
彼らはきっとこの日のために何度も綿密なシュミレーションを重ねてきたのだろうが、私にとってはまさにこの瞬間が青天の霹靂なのだから。
「あー、でも、私付き合ってる人いるよ。」
私は動揺を顔に出さぬよう、努めて冷静にそう言った。
当時、私には学校外に三歳年上の彼がいて、他の人が付け入る隙がないくらい二人の関係はうまくいっていたのだ。
「知ってる。だから付き合ってとは言わない。ただ、気持ちだけは伝えておこうと思って。」
彼は堂々とはっきりそう言い切った。
付き合うことが出来ないと分かっている相手に告白する意味なんて果たしてあるのだろうか?
自分の気持ちだけを一方的に押し付けられても私には何も出来ないのに。
身勝手過ぎる。
私は無性に彼を責めたくなった。
でも待てよ、何かが引っ掛かる。
そのとき、ふと過ぎ去った日々の記憶が頭の隅をよぎった。
あれは確か高二の修学旅行のときのことだ。
彼らと班行動が一緒だったことを思い出したのだ。
どういう経緯でそういうことになったのかまでは覚えていない。
島根県の津和野を散策して回ったとき、彼は常に私の隣にいた。
お土産屋さんでソフトクリームをおごってくれ、そのあとお揃いのキーホルダーまで買ってくれた。
帰りの新幹線では席が隣同士で、あんなに盛り上がって一緒に写真を撮ったではないか。
うとうと眠り込んでしまい目を覚ましたときに私を包んでいたのは、彼の大きなコートだったっけ。
今の今まで忘れていた記憶が、一気に私の脳内を駆け甦っていた。
そっか、そうだったんだ。
彼はただの身勝手な人なんかじゃなかった。
すでにあの頃から、彼なりに気持ちを伝えようとしてくれていたではないか。
私は鈍感な自分を恥じた。
と同時に、どうにかしてこの場を収めなければならないと思った。
「じゃあ卒業までの二週間は今まで通り友達として過ごそう。」
私は取り繕った笑顔でそう言うのがやっとだった。
彼はホッとしたのか初めて少し笑顔を見せた。
でも、結局この約束は守られなかった。
なぜなら、私は卒業式までの間、彼と話すことはおろか、顔を見ることさえも出来なかったのだから。
現実というのは結構な確率で残酷だ。
小説や映画みたいに美しいラストシーンが待っているなんてことはほとんどない。
あれから三十年以上経った今でも、あのときのことを思うと胸が痛む。
大人になった今ならもう少し上手くやれるのにという私自身の反省に似た後悔と、当時の彼の勇気を最大限称えた上で、この話は終わりにしようと思う。
お題
放課後