題 放課後
放課後は好きじゃない
だって、みんな部活で私はやることないし。
私は動くのが嫌いだから、1人帰宅部だ。
部活すればって友達に言われるけど、興味ないんだよね。
それに早く帰りたい。
だから、嫌いなのは、正確にはホームルームが終わってから家に着くまでの一人の時間だ。
靴箱から靴を取り出して、帰宅しようとした時、ちょうど同じクラスの竹下と一緒になった。
「あ、宮野、今帰り?」
「うん、帰りだけど・・・竹下は?部活は?」
結構体育で活躍していた印象だから、運動部なのかな、と思って聞いてみる。
「部活してないけど、帰宅部。他の友達みんな部活でさ」
「あ、竹下も?一緒だね」
私はその返答を聞いた途端親近感を覚える。
「宮野って部活してないんだ?してそうなのに」
「私もそう思ったけどね、竹下も部活してそうって」
「僕?僕は早く帰って勉強したいから」
「え?そうなの?!」
意外な返答が返ってきて、びっくりして、竹下をまじまじと見る。
私と同じ部類の人間だと思ったけど、全然違ったみたいだ。
「そうそう。東高目指しててさ、だから部活してる時間惜しくて」
「す、すごいね・・・」
超難関校の名前を聞いて、私は萎縮してしまう。
私みたいに面倒なことしたくないっていう理由じゃないんだ。
「すごくないよ、だって僕がしたいことだから」
「いや、凄いから、私部活とか面倒だな、とか、家でゆっくりしたいなっていう理由で部活し出ないだけだもん。すごく尊敬するよ」
私がそう言うと、竹下は照れたように頭をかいた。
「ありがとう。でも、頑張っても、なかなか学力が届かなくて、部活やってたら受からないっていうのが本当の所なんだけど」
「すごいよ〜!そうやって目標にむかって頑張れるのって才能だと思う!!私もそういうこと見つかったらいいのになぁと思うよ」
「宮野はないの?目標」
私が竹下に感心していると聞き返された。
「え?う〜ん、絵を描く位かな?コミック読んで、模写したり。イラスト描くのは好きなんだ」
「そっかぁ、じゃあ美術部とかも良さそうだけどね」
「なんか違うんだよね、美術部みたいなのじゃなく、私はコミック調のイラスト描きたいんだ。そういうの描いている時は、楽しいから、家に帰りたいってのも正直ある」
私の言葉を聞いて、竹下が頷いている。
「そっか、宮野もちゃんと自分の好きなことしてるんだね。それも目標に続いてる道かもね」
いつの間にか、一緒に下校の道をたどっていた私たち。
話に夢中になって無意識に一緒に歩いていた。
「これが将来の道に続くと思う?私、自分に才能あると思えないんだ」
イラスト、ネットで見ると沢山上手な人がいて、劣等感にいつも負けそうになってしまう。
私にはできないんだ、無理なんだって。
でも、描くことは好きだから、やめてないけどね。
ひたすら絵は描き続けているけど。
「続けていれば夢に近づく確率上がるんじゃないかな。僕も、勉強毎日してるけどさ、正直無理って思う日もあるけど、でも、やらなければ確率は平行線のままだけど、やりつづければ合格率は上がると思うんだ。そうしたら頑張れるよ」
「確かに」
私は竹下の言葉を聞いて頷いた。
そうだよね、描かなければ画力も上がらないけど、小学校の頃から頑張っていた私は確実に上手くなってる。
コミュニティでも、上手いって言ってもらえる時はとても嬉しい。頑張ろうって思う。
「お互い、毎日コツコツ頑張ろうよ。そうしたらきっと、自分の夢に近づけるから」
「そうだね・・・そうだね」
私は竹下の言葉に何度も頷いた。
夢は・・・漫画家の夢はいつか叶う日が来るかもしれない。
少なくともやらないよりやりつづける毎日の先に希望はあるって思えたから。
「ありがとう、竹下」
私は竹下に笑いかけた。
こんなにウキウキする気持ちの放課後は初めてかもしれない。
「どういたしまして」
竹下は私に笑い返した。
何となくその場の空気が明るく色づいた気がした。
私達はそのまま、最寄りの駅に着くまで、お互いの夢について語り合いながら帰っていったんだ。
10/12/2024, 12:35:16 PM