『手を繋いで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
桜舞う春の午後も
蝉の鳴く真夏の早朝も
金木犀が香る秋の夕暮れも
指先がかじかむ冬の夜も
あなたと手を繋いで歩いていくこの日常が
ずっと続きますように。
お題:手を繋いで
ある日突然影の世界に迷い込んだ私は、あの日からずっとそこでの生活を余儀なくされていた。
放課後には後輩(かれ)の声を追い掛けて、彼の呼び掛けにここだよって返事をする毎日。
とりあえず、食事も授業も滞りなく出来ているのだけは有り難かった。
いつも通りに過ごす一人ぼっちの世界で、相変わらず影達は犇(ひし)めき合いながら和気藹々としている。
やる事のない私はそれをぼんやりと眺めて時間を潰し、授業を受けてを繰り返す。
そうして本日の授業を終えて、また後輩(かれ)との問答が始まる。必死に捜してくれる後輩(かれ)とそれに答え続ける私。
でも今日は、鏡の側に行っても後輩(かれ)の声は聞こえなかった。何処の鏡に行ってもそれは同じで、酷く胸が苦しくなる。
遂に彼は諦めてしまったのだろうか、と。
そうしたら私はどうなってしまうのかと、不安と恐怖が一気に押し寄せてその場にへたり込んで⋯⋯声を殺して泣いた。
拭っても拭っても止まらない涙に、最終的には諦めてそのまま止まるまで流し続ける。
そうして気付いたら疲れて眠っていたらしくて、起きた頃には真暗になっていた。
正直、怖くないと言ったら嘘になるけど⋯⋯もう何もかもどうでも良くなってて、体も怠くてその場でもう一度寝直そうかと思い始めた時だった。
『先輩!』
そう聞こえて、私が振り向こうとした瞬間―――衝撃と共に体を締め付けられる。
自分が抱き締められてると理解するまでに、少し時間は掛かったけど⋯⋯ここで過ごして始めて感じた温もりに、夢じゃないとようやく分かって泣きそうになるも何とか堪えた。
先輩、先輩って繰り返す後輩(かれ)の声に、まともに返事する事も出来ずにただギュッと抱きしめる。
ようやく離れて、見えたその顔は泣きそうで⋯⋯でもどこか安堵するような表情をしていた。
『ずっと、捜してたんすよ。声だけ聞こえるのに、全然姿見えねぇし⋯⋯だから色々調べて一か八かで試して―――ほんとに、見つかって良かった。』
そう言って私の目元を指で拭う。あれだけ泣いたのにまだ流したりなかったのか⋯⋯私の目にはまた涙が溜まっていたらしく、拭われると同時にポタリと1滴落ちた。
『私の声⋯⋯届いてたの?』
『俺には聞こえてましたけど、他の奴には分かんないっす。あと、俺こっちに来る方法は知ってても、戻る方法分かんないっす』
すんません。
そうバツの悪そうな顔で謝る彼。
『帰り方分かんないのに、一か八かで来ちゃったの? なんでそこまで』
してくれるの? って言い終わる前に、その言葉は彼によって飲み込まれた。
直ぐに離れた温もりに驚いていると、もう一度抱き締められて『そんなの、アンタの事好きだからに決まってるでしょ。いい加減気付いて下さい。』なんて言われて、もう我慢できなくてふふっと笑ってしまう。
『ごめんね、笑ってる場合じゃないって分かってるんだけど⋯⋯嬉しくて、止められそうにないや。』
それだけ伝えて彼に抱きつきながら笑う私を、どんな顔で受け止めてたのかは分からない。
でも、この影の世界で彼と2人きりで生きるのも悪くない。
そう思ってしまったのだから、もう認めるしかないと彼に向き直る。
『私も君の事、好きみたい。だから⋯⋯帰る方法がわからないなら、この世界で私と一緒に生きてくれる?』
そう言った私に一瞬驚いた顔してから、彼はふわりと嬉しそうに笑った。
『そんなの聞いたらもう離す気ないっすわ』
そう言いながら立ち上がった彼は私に手を差し伸べながら、とりあえず帰りましょう、先輩。と言ったので、私も頷きながらその手を取り彼に立たせてもらうと昇降口を目指す。
その道中で私がどっちのお家に帰るのかと聞いたら、真っ赤になりながら動揺した彼。
可愛いと思ってつい笑ってしまったら、不貞腐れた彼に家来ても良いっすよって言われて、今まで凄く寂しい思いをしたのでお言葉に甘えることにした。
そうして彼と手を繋いで歩く帰り道は、いつも通り影が犇(ひし)めくだけの景色なのに⋯⋯何故か凄く煌めいて見えた。
「ね、最後に手を繋いでよ。これが最後だからさ」
両手を切断しなければ壊死が全身に広まってしまうと診断された日、僕は彼女にそう言って手を差し出した。涙を流す優しい彼女は僕の手を握りしめてくれた。
この温もりがもう自分の手で感じられないと思うと悔しいやら悲しいやら。
「そんなに泣かないでよ、君の手は無事なんだからさ。僕は大丈夫だから、」
「大丈夫なんかじゃないでしょ!」
彼女は滅多に大声を出さないのに叫んで僕の手を力強く握りしめた。
「大丈夫なんて言わないで!元気もないし、目だって虚なのに大丈夫なんて言わないで!」
「もういいんだよ。最後に君と手を繋げただけで。もう...いいんだ」
確かに大丈夫じゃない。僕は大丈夫じゃないけど、諦めてしまっているからもう「大丈夫」なんだ。これからずっと彼女と繋いだ手の温かさ、痛みは着いて回る。そんな予感がする。それはきっと僕自身を苦しめる記憶にしかなり得ないけど、それでも最後に、いや、最期に彼女と手を繋げてよかった。
成功するかどうかあやふやな手術を受けるため、僕は手術台に横たわり麻酔を吸う。
ああ、最期に思い出すのはやっぱり彼女の手の温かさなんだな。
お題:手をつないで
本当は手を繋ぎたい。
恋人なんだから。
でもその権利がないことを知っているから、
手ぇつなごって言えないでいる。
彼女は結婚したいのだ。
僕だってできることならそうしたい。
でも今はできないよ。
幸せにできない。
だから
恋人だけど、
無意識に一線を引いてるんだ。
僕では彼女の気持ちに応えてあげられない。
今ここで彼女の手を握ってしまったら、
それはとても卑怯でずるいことだ。
愛してるからこそ、
別れなきゃいけない気がしてる。
白いシーツに爪を立てた
その手の甲に 重ねた手
包みこんだ その細い指が
縋るように絡み合った
【手を繋いで】
最後の瞬間も
どうか このまま
お題『手を繋いで』
私と手を繋ぎましょう。
ほら、一緒に行きましょう。
そして、星と星を繋いで、遊びましょう。
星の粒がきらめく海に手を浸して、
木の船から身を乗り出して
消えない傷を作りましょう。
手を繋いだ、ふたりだけで。
お題 手を繋いで
夢中になると、今その時に全力を注いでしまうのは私の悪い癖だ。現にこうして私は今、写真撮影に夢中になった結果、迷子である。いい年した大人が、夕暮れ時に。どうしても写真が撮りたかった。綺麗な蝶を見つけたのだ。撮れると思ってしまったのだ。撮れなかったが。頼みの綱であるスマートフォンはついさっき充電が底を尽きた。全くどうしてこうなった。
これは腹を括らなければいけないな、と思う。幸運なことにここは住宅街。恥ずかしいが背に腹は変えられない。勇気を出して呼び鈴を鳴らし、道を聞こう。周りを見渡せばどの家も温かみのあるあかりが灯っていて、私はそのうちのひとつに、吸い込まれるように手を伸ばした。
「そこはダメ」
ぎゅっと反対側の手を引かれ、思わず振り返る。ドールハウスから出てきたみたいな乙女心くすぐられる格好の女性が険しい表情をして、私の手を引いていた。
「あ、その、私迷っちゃって、スマホも使えなくて…」
「でしょうね。でも、そこも、あそこも、あの家も…とにかく全部ダメだから」
「はい…すみません…」
「ついてきて。ここから出たら帰れるでしょう」
そう言って、彼女は私と手を繋いだまま歩き出した。私は黙って彼女の後に続いた。数分ほど歩くと、見慣れた大通りに出た。あっさり見つかった帰り道に先ほどまでの苦労は何だったのだろうかと頭を抱えたくなる。
「わざわざありがとうございました。スマホも使えなくて、困っていたので助かりました」
「たまにいるのよ。複雑だからね、ここって」
「ひとつお聞きしても?」
「なあに」
「…どうして、呼び鈴を鳴らしてはいけなかったんでしょうか、ここには何かルールがあるんですか?」
不思議だった。道を尋ねることがそんなに悪いことなのか。だとしたら認識を改めなければならない。そう思って、何気なく聞いたことだった。彼女は急に真顔になった。私の背中を嫌な汗が伝って落ちる。
「…食材がわざわざ歩いてきてくれたら、便利なことだと思わない?」
瞬きをした次の瞬間、もうそこには住宅街なんて無くて、もちろん彼女も、いなかった。握り締めていたスマホが振動する。充電は72パーセント。道を検索するには、充分すぎる残量だった。
【手を繋いで】
あなたと手を繋いで歩く帰り道
なんでもなかった日々が
いつもの道が特別になった
この先、何度この道を通るのだろう
そして、何度思い出すのだろう
いくつ季節が巡っても
この先もずっと、あなたと共に
あなたの指の形がよく分かる。すらりとしていて、骨ばっていて、心地よい体温を私に分けてくれる。ペンを握り、ギターを操り、時折料理をし、そして私に触れる指先。私があなたの体の中で一番好きなところ。
私から手を繋ぐと、あなたはそれが自然だとでもいうように私の手を包んでくれる。本当はもっと強く握ってほしい。境目が分からないくらい強く握って、いずれ一つの生物みたいになれたらいいのに、と思う。
けれどきっと、そう言ったところであなたはそうしないのだ。私の手を傷つけたくないから、と言うのだろう。そういう木漏れ日のような優しさが、私は好きなのだ。
その日はお母さんの機嫌が良くて、遊園地に連れて行ってもらう約束だった。
おうちを出てから真っ直ぐ。長い坂を降りたところに、最寄りの駅があるんだって。わたしは学校に通う以外で外に出ないから、知らなかった。
下り坂は怖い。そのまま前に転がるんじゃないかって、ビクビクして歩幅が狭くなる。
早くしなさいって、お母さんに何度か言われた。急かすばかりで、手を繋いではくれない。
いつもなら、お出掛けするときは、お父さんの運転する車に乗る。だけど、今日は『女の子だけの会』だから、お父さんには内緒。お母さんがそう決めた。
そのはずなのに、駅で知らない男の人が声をかけてきた。
「なんだ、そのガキ」
「娘がいるって、前に言ったじゃない」
「聞いてねぇし、めんどくせぇ。お前とはこれで終わりだ」
男の人はそのまま去って行った。
「あんたがいると、私の人生が滅茶苦茶だわ」
眉間にシワを寄せてわたしを見ている。いつものお母さんに戻っちゃった。
「……トイレに行ってくるから、私が戻るまで動くんじゃないわよ?」
わたしが返事をする前に、お母さんは急ぎ足で行った。
私はずっと待っていた。その間に通り過ぎた電車は五本。ここは田舎だから、一時間に一本しか来ないって、お父さんが言ってた。
わかってる。お母さんは戻って来ない。でも、動くなって言われてる。わたしはいつもお母さんを怒らせるから、ちゃんといい子で待ってなきゃ。
「お嬢さん。こんな所でなにしてるの?」
顔を上げると、お父さんの親友がいた。この人は、あだ名をたくさん持っていて、なんて呼べばいいかわからない。お母さんはゲボクって呼んでた。お父さんは……なんて呼んでたかな?
「お母さんを待ってる」
「一緒に待ってもいい?」
「いいけど、ゲボクさんが退屈しちゃうかも」
「ゲボクはやめてくれないか」
「なんて呼べばいいの?」
「おじさん、とか」
おじさんは無口だけど、隣にいてくれるだけで安心する。不思議な人だなぁ。
お父さんが話してた気がする。おじさんの隣にいると、すっごく眠くなるんだって。それ、わかるかも。わたしも、とても眠たくなってきた。
「駅で寝たら風邪引くよ」
「待ってなきゃ。お母さん怒っちゃう」
「風邪引いて病院に行くほうが、お母さんはもっと怒るんじゃない?」
「……そうかも」
「じゃあ帰ろう?」
「うん」
「眠いなら、おんぶしようか?」
「ううん。歩く」
おじさんは足が長いから、おんぶしたほうが早いと思う。それでも、一歩一歩をわたしに合わせてくれる。その優しさが嬉しい。
どきどき止まって見せると、おじさんも止まってくれる。お母さんなら、先を行ってしまうのに。
おじさんとは離れてしまわないように、ずっと手を繋いで、おうちまで続く坂を上った。
「こんなん久しぶりやわ」
隣で寝転んでくすくす笑うきみ。
指と手のひらからゆるく伝わるあたたかさ。
「一回だけでいいから」とお願いしたら目を丸くして、「なんや、そんな簡単なことでええんや?」と首を傾げていた。
「一生のお願いとか顔めっちゃ真剣やから……何言われるんかと思った」
きゅっと軽く手を握られる。目が合って、微笑まれる。
「かわいいなあ」
恥ずかしくなって目線をそらした。
「いつでもやるし、また言ってな」
「……うん」
ーーーーーー
お題 手を繋いで
【手を繋いで】
君のぬくもりが伝わる一時を過ごしたいと思うから。
【手を繋いで】
ベッドに眠る妻の横顔は昔出逢った頃のままに綺麗だった。
思えば毎日寂しい想いをさせていたのだろう。
それでも私の前ではいつだって明るく元気な笑顔を絶さなかった。
私に気負いをさせないために。
そんな私は毎日仕事ばかりで家庭を振り返る事はなかった。
家事も子育ても妻に任せっきりで。
一緒に過ごしたのさえ手で数えるくらいだ。
だけどこんな私の傍にこの歳になるまでずっと寄り添っていてくれた。
それなのに。
あの日の君との約束を私は忘れて君は独り天国へと旅立った。
「本当に私はダメな夫でしかなかったな。」
私はそっともう目を醒ますことのない妻の手をそっと握った。
「年を取っても僕と手を繋いでいて欲しい」
私が君に送った、最初で最後のプロポーズ。
君ははにかみながら目に涙を浮かべていたね。
「近いうち私も君のところへ逝くだろう。その時、もう一度君に言うよ。その時は」
僕とまた手を繋いでくれますか?
君と手を繋いだ事を思い出した。君の干からびたフランスパンのような感触の手は、当時の私にとっては何よりも心強かった。決して、裕福とは言えない暮らしだったけど、その欠落はむしろ僕たちを十分に満たしてくれていた。それは、あえて白黒の下書きで描き切るのを辞めた現代アートのようだった。
こんばんは、ほあです。
うらんとむつきは邪魔者の削除で忙しそうでしたので、私が2日連続書かせていただいてます。
僕の調子としてはまぁ、壊れかけですね。もうそろそろ壊れるかもしれませんが。
そうなると人格の制御が一気に大変になってくるんですよね…気を張っていなければ、いつの間にか僕に会ってますから。
その前例として、うちとかがそうでしょう?
まぁあの人達のことはいいんです、どうせもう死んでいる存在ですから。
僕は全世界の人間が嫌い、という訳ではなく、あくまで周りの人間が嫌いということらしいですよ。
私も昨日聞いたのですが、「別に全世界の人が嫌いなんじゃないよ、会ったこともない人をどう嫌えと言うのさ。周りが嫌いなだけ、裏切って利用してくるような連中なんて好きになれるわけないでしょ」とのことらしく。
私はてっきり、人間という生き物自体を嫌っているものかと思っていましたから。
大切な部分が抜けていたら誤解するでしょうに…。
あの人のああいうところはきっと、これから先大きな変化がない限り変えることは不可能でしょう。
人間不信が強い方ですから。好印象を持ったって、それで信用できるかと言われたらできませんから。
現に私たちは未だ信用されていません。警戒心が強すぎるんです。
私たちは離れることがないと約束しているのに。あの幻覚の方がありえないぐらい信用されています、腹が立ちますね。
手を繋いで
手を繋いだら君はにっこりと笑いかけてくれた。
だからよく君とお出かけする時は手を繋いだ。君の体温を感じられて心地よかった。でも···君はいつの間にか他の奴と手を繋ぐようになったよね。
酷いなぁ
僕はこんなにも愛してるのにさ
そう話す友人に寒気がする。友人は数年前おかしくなったのだ。友人の奥さんが事故でなくなってから
ありがとうじゃ伝えきれないくらい
貴方に感謝の気持ちを
こんな私を受け止めて励ましたり
愛してくれてありがとう
今までのどんな出会いも涙も苦しみも
貴方と出会う為にあったんじゃないかって
思うくらいに、何かが報われた気がしたんだ
だから誰が何と言おうが気にしない
甘い誘惑にフラついちゃうかも知れないけどネ、笑
だけど私はもう貴方だけが特別だって
貴方が私の最後の人だってもう決めてるから
貴方以上の人なんて居るはずないもの
他の誰よりもコレからも
ずっと仲良く過ごして生きたい離れたくない
こうやって貴方と2人共に手を繋いで
ずっと寄り添いあって歩いて行けたらいいネ
【手を繋いで】
みんなで手を繋ぎましょう
性別、人種、生まれた場所、育った環境
関係無く
みんな仲間な筈なんです
殺し合う筈では無いんです
生命を奪い合っていい筈では無いんです
しかし、ただの一般人にできることなどたかが知れています
だから伝えるんです
正しい情報を
いつになったら、みんなで手を繋げるんでしょう
お題:手を繋いで
手と手を繋ぐ。
仲良し二人組が手を繋いで歩くのか。
握手をするために手を繋ぐのか。
手を繋ぐとき、他のものを繋げる。
手を繋ぐとはそれだけの力がある。
一見、小さな行動の1つだけど。
行動の大小は関係ない。
行動に、意味を見出すからこそ意味ができる。
小さな行動1つ1つに素晴らしさを感じたら。
どれだけ素敵ことだろう。
No.20 3月20日 木曜日
貴方が繋いでくれた手は大きくとて
私には優しすぎる手でした
貴方が離してくれた手は記憶を遺して
私を今も離さないの?