『手を繋いで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
あなたの指先の温もりを
忘れてしまわないように
繋ぐ手は
あなたを思う分だけ強く
あなたを思う分だけ柔らかく
“手を繋いで”
【冬のはじまり】、ついにこの時季がやってきた。カリッと揚げたり煮込んだり、寒い外で食べればなお美味しいアレの時季が!(11/30)
凍みるように寒くても、【泣かないで】。(12/1)
程よい【距離】間って、たまに分からなくなる。(12/2)
【光と闇の狭間で】いい感じの場所を探してる。(12/3)
ねぇ、【さよならは言わないで】って約束したじゃん、まだ居るって希望を持たせてよ。(12/4)
【夢と現実】を混ぜるのは良くないと知っていますが、想像できることは、いつか実現できるって本で見て、目を輝かせてます。(12/5)
【眠れないほど】顔を圧迫してくる小動物よ、可愛いが苦しいです。(12/6)
股の下から【逆さま】に景色を覗き込んで、頭に血が上ってクラクラするけど、気づかなかった世界が見えた気がした。(12/7)
掃除をしていたら、【部屋の片隅で】コインを見つけた、いつの間にそこに?(12/8)
いつも待たせてるよね、甘えさせてくれて、【ありがとう、ごめんね】。(12/9)
人が多い所では、いつも【手を繋いで】くれるキミ、それは、私が迷子にならないため?それとも、恋人として意識してくれてるから?(12/10)
No.196『手を繋いで』
…あの時、手を離さなければよかった。
手を離さなければきっと今も手を繋いで君と笑い合えてたのに。
手を繋いで
あなたが寂しくならないように手を繋いでいられたらいいのに…
《手を繋いで》
保全させていただきます。
いつも読んでいいねを下さっている皆様にはいつも本当に感謝しております。
この場をお借りして、御礼を申し上げます。ありがとうございます。
今、こちらを始めるきっかけになった創作に力を入れております。
こちらで色々とイメージを膨らませられたおかげで、内容が固まってまいりました。
本筋として力を込めておりますので、応援してくださると嬉しいです。
手を繋いで
雪玉なげあって
赤くなった冷たい手
温めてあげる
手を繋いで
『手を繋いで』
⚠二次創作、(もしかしたら)BL、ifストーリー
少し肌寒い秋の夕暮れ。
昼間とはうってかわって静かになった海岸を、弟と並んで歩く。
日の沈みかけた砂浜に、波の打ち寄せる音が穏やかに響いていた。
この海は、かつて僕と弟が一緒に暮らしていたころに、両親と四人で来た場所だった。
その後すぐに僕と弟の征司郎は離れ離れになってしまい、ここに二人で来ることができたのはこれで二回目だった。
しかし征司郎は僕が海外へと渡った後もここへ来たことがあるらしく、懐かしいと話していた。
「昔さ、ここに二人で来たことあったよね。覚えてる?」
試しに問いかけてみると、弟は頷く。
僕は隣で歩く弟の横顔を見ながら、ここへ来た時のことを思い返していた。
あまり細かいことは覚えていないのだが、征司郎の手術が無事に終わり、ようやく二人で遊べるようになって喜んでいたのを覚えている。
その時僕と弟は、手を繋ぎながらどこまでも続く海岸に沿って走っていた。
遠くまで行き過ぎたせいで帰れなくなり、両親にこっぴどく叱られてしまった。
でも、握った手の感触と、風を切りながら進んでいく爽快感は今でも鮮明に思い出せる。
この世界に僕と征司郎二人だけになったような気がして、寂しいような嬉しいような気持ちになったことも。
僕は夕日に照らされた弟の横顔をちらりと見る。
「ねえ、あの頃と同じようにさ、手、繋いでみない?」
「は?」
弟は眉をしかめ、あからさまに嫌そうな顔をする。
まあ、兄弟とは言えどいい大人同士で手を繋ごうと言われて躊躇しない人間はいないだろう。
嫌だよ気色悪い、と弟はそっけなく答えた。
仕方ないので無視して弟の手を握る。
弟は迷惑そうな目でこちらを睨んだが、僕の手を握り返してくれた。
暖かくて、懐かしい感触だった。
→夢うつつ
幼い頃、私の部屋は2階にあった。トイレは1階。夜中に1人でトイレに行くのが、何よりも怖かった。
天井に付けられた階段の灯りは仄かで頼りなく、1階を照らすほどの光量はない。真っ直ぐな階段の下は、底の見えない洞窟のように見えた。存在しない冷気を感じる……。
「一緒に行ってあげる」
一度だけ、そう言ってプラスチック製の小さな手が私を導いて連れて行ってくれたことを覚えている。
赤ちゃん人形というのだろうか? 小さな女の子の姿をした人形は、柔らかいプラスチック製だった。その子と手を繋いで階段を降り、無事にトイレに到着。事なきを得て、再びベッドに戻った。
この、少しぼやけたフィルム写真のような記憶は、私の中に確かにある。しかし本当にあったことなのかは不明である。
テーマ; 手を繋いで
むかし
父と手を繋いで歩くのが好きだった
父の大きくて暖かい手に包まれる
あの感触が好きだった
大人になった今は
手を繋ぐことなんてないけれど
私は今でも これからも
あの感触はきっと忘れない
「いつもいっしょ」
幼い頃、手を繋いで寝ていた私たち。
いつもいっしょだから、ゆめのなかでもいっしょ。
起きた時に夢を覚えていなくても、気にしたことはなかった。
ただ、ふたりで手を繋いで横になるだけ、それだけでよかったのだ。
それは、良い夢を見るおまじないでもあったし、安心して眠ることができる習慣でもあったから。
やがて一緒に寝ることが無くなってからは、そのことを忘れてしまっていた。
そして、幼馴染から別の関係になった私たちは、手を繋いで横になっている。
「小さい頃もこうやって手を繋いで寝ていたこと、覚えてる?」
忘れていても構わなかったのに、彼から「覚えてる」と言われたことが、予想以上に嬉しくて、鼻の奥がツンとする。
あの頃、眠るのは遊ぶ時間が減るみたいでもったいなかった。
今は、ひとりで眠るのがなんだか怖いときがある。
このまま目が覚めなかったらどうしよう──と。
言葉にはしないけど、私が手を繋いで眠りたいときは、そんな不安を抱えているとき。
手を繋ぐ──ただそれだけなのに、心が澄んでいく気がする。
大丈夫だと思わせてくれるのだ。
いつもいっしょ。これからもずっと。
いつか遠い未来に、そういう時が来たら、手を繋ぎたい。どちらが先だとしても。
────手を繋いで
幼稚園の頃、よく友達と手を繋いで帰った。
おうちに遊びに行った帰りは、離れがたくて、手をかたく握りあい、
「手と手がくっついてはなれないー!」
なんて言って、2人の母を困らせた。
幼稚園から、小学校に上がって、手を繋いで帰ることはなくなった。だんだんと、手と手を繋げる距離で居ることも減っていって、中学生になる頃には、『昔仲良かっただけのただの同級生』になっていた。高校受験が決定的な別れ道だった。
かつて手を繋いで離したくなかったあの子とは、高校進学以降会っていない。今どうしているのかも知らない。
それでも、手をかたく握りあって別れを惜しんだあの思い出は、何故か今も忘れがたく、私の心に刻まれている。
手を繋いで
私は貴方が好きでした。
その美しい焦げ茶色の目
まるで初雪の様な白い肌
柔らかい指に触れたくて触れたくて
仕方がありませんでした。
ある日、貴方が私の手に触れてきました。
そのまま手を繋いで歩きました。
手を繋げれたらいいのにな
『手を繋いで』というテーマについて…
どんな時でもみんな手を繋いで…
みんな手を繋いでいれば幸せな日が来る…
苦しい時…悲しい時…辛い時…こんな日はみんなで手を繋いでいようね…
そんな日が続けばきっと幸せになれるよ…
頑張っていれば周りの人がきっと認めてくれる…
頑張っていればきっと周りの人が助けてくれる…支えてくれる…
どんな時でも乗り越えれば笑える日が来るね…
どんな壁が来てもみんなで手を繋いでいようね…
自分が思う『手を繋いで』っていうテーマになっていたかもね。
手を繋いで
うちによく来ていた大工さんがいた。古いお付き合いで、ご近所だったし、お互いの家にお茶を飲みに行ったり来たりの仲だった。義母が生きていた頃は、その流れで「裏の雨樋が外れかけてるの」などと言うと、さっそく来て直してくれたりしていて重宝だった。その代わり、季節の果物や、到来物のお菓子を持って行ったりして、良い関係だったと思う。
その人が癌になり、奥様も他界して、お茶の行き来が少なくなったある日、ちょっと買い物に出たら、その大工さんが道端で立ち止まっていた。
「◯◯さん、どうしたの?」
「体のためと思って、毎日散歩してるんだけど、なんだか疲れちゃってさ、足が前に出ないんだよ」
「あら、そんなら、私がお宅まで送るよ。掴まって!」
私が手を差し出すと、はじめは照れたのか「いいよぉ」と言っていたが、その手を引っ張って立ち上がらせると、そのまま手を繋いだ。
そこから大工さんの家まで、せいぜい100mぐらいだったと思うが、ひどく時間がかかった。足元がおぼつかなく、よろけるのを支えながら家に辿り着いた。
「いやぁ助かったよ。ありがとうよ」
「いいよ。また手を繋いで散歩に付き合うよ」
「あはは、そうかい?頼むよ」
帰り道、私は肩や腕に痛みを覚えた。大工さんは相当な力でしがみついていたらしく、それを支えて歩いて、筋肉痛になったらしい。
彼は、それから数ヶ月後に亡くなった。2回目に手を繋ぐ機会はなかった。
『手を繋いで』
「ママ、僕を見て」
懐かしい夢を見た。ママの顔、今となっては思い出せない。写真一枚残ってない。ママがいなくなった時、パパがママの写真を全部ビリビリに破いて捨てたからだ。
当時の僕は何をしているのか分からなかったんだけど、今なら分かる。裏切られた憤りからの行動だったんだろう。
「マサキ、これからはパパと二人で暮らすんだ」
「うん」
本当はなんでなのか、ママはどこに行ったのか聞きたかったけど、聞いてはいけない気がして聞けなかった。
パパはちゃんと僕を見て、僕の手をしっかりと握った。パパは僕のこと見てくれる。だったらパパがいいと思った。
パパはいつも疲れてた。僕と手を繋いで保育園まで送って、仕事に行って、外が暗くなってから迎えにくる。
ママがいた頃はパパと手なんて繋いだ記憶はなかった。ママとも繋いだ記憶はないけど……。パパの手は温かくて大きい。
初めパパは料理だって下手だった。
「美味しくないよな? ごめんな」
パパは知らない。ママが出してくれるごはんは美味しかったけど、あれはママが作ったわけじゃない。お店で買ったやつだ。
パパは下手な料理をいつもちゃんと作ってくれたから、キッチンはいつもグチャグチャだった。パパが疲れてソファで寝てる時、僕は踏み台を持って行って、お皿を洗おうとしたんだ。僕も役に立ちたかった。だけどお皿が落ちて割れてしまった。
ガシャーン
大きな音がして、パパは慌てて起きて、僕がお皿を割ったのだと分かるとため息をついた。
「ごめんなさい」
怒られると思ったのに、パパは怒らなかった。それからうちの食器は割れない食器になったんだ。僕もパパの役に立ちたくて、お手伝いをするようになった。
「マサキは偉いな」
「パパのほうがもっとえらいよ」
そう言ったらパパは笑って抱っこしてくれた。
そんな男二人の生活がずっと続いた。僕はもう無力な子どもではない。結婚もして、子どももいる。親父は先日仕事を辞めた。定年退職ってやつだ。
それでも元気だから、いつも息子と手を繋いで散歩に行く。
「親父、ありがとう」
「ん? 何のことだ?」
「何でもない」
あの時、僕を見てくれて、大きな手で僕の手を包んでくれたから、僕は迷子にならずに済んだ。
今となっては親父の手はそれほど大きいとは思えない。だけど、あの頃の僕にとって、何者からも守ってくれるような大きな手はとても頼もしくて格好いいと思った。
だからもし親父が迷子になることがあれば、僕がその手を握って親父を守ろうと思う。
(完)
さりげなく
傍らにある
大きな手
深く染み込む
その温かみ
礼を言われるのは嫌いじゃない。恩を売っておいて損はないし、回り回って自分に返ってくるとも言うじゃん? 見返りを求めることを否定する連中も居るけど、それって綺麗事。寧ろ損得無しに関係を続ける方が俺にとっては気持ち悪いね。親切ってのは自分のためにするもの。礼を欠いて失礼だと言われるのは相手側。なら、やればやるだけ身になるしハッピーだと思っていたけど……それっておかしい?
「ありがとう、ごめんね」
親友から急に言われた言葉。一瞬、時間が止まったみたいに体が固まる。今日もいつもどおり生徒会の仕事を手伝っていた。お互い長机の上でまとめた書類を揃える最中、世間話を切り出すように顔も見ないままあいつは前触れなく言ってきた。当然意味がわからず、しかし声のトーンから大事な話をされた気がして焦る。俺は考える間も無く疑問を口にした。
「なんだよいきなり。礼はともかく、謝罪される謂れはねえよ」
「ううん、ごめんね」
「はあ? だから理由を説明……」
「疲れてるよね、顔に出てる」
「何言ってんだよ、力仕事でもないし。平気だ」
「違う。心が」
そう言って親友の──司は俺の胸をトン、と押して困ったような笑みを浮かべた。心? 改めて自分の胸に手を置いてみるが思い当たる節はない。
ホッチキスの無機質な音が生徒会室に響き、整理した書類が閉じられていく光景をただ見つめる。全て閉じ終わったところで再び司は口を開いた。
「もう来なくていいよ」
「え、」
「こういう言い方はよくないか。疲れている時は来なくていい」
「疲れてなんか……」
「自分の許容量が分からないうちは仕事を任せられない、と言えばいい?」
「……」
「俺は誠也が倒れないか心配なんだよ。今の君は確実に無理してる」
「無理なんてしてない」
「今月、もう何件誰かの仕事を代わりに受け持ったか覚えてる?」
「……?」
「自ら買って出たのが三件。交渉後に任されたのが三件。押し付けられたのが五件。何も言わずに決められたのが二件。他にも、小さな手伝いを挙げればきりがない」
「なんでそんなこと知って……、てか俺が進んでやってるんだから良いだろ!」
「良くない。生徒会に居ると大抵のことは耳に入るんだ。調べたものもあるけど、今はそれは別にいいじゃない。重要なのはこれ以上続けたら誠也が壊れるって話」
「だからって……」
嫌な予感がしたんだ。今まで礼は言われても、一緒に謝罪してくる奴は居なかったから。それがこんな風に突然来るなと言われて、自分のためにしてきた事が全て良くない事のように言われて。血が滲むんじゃないかってくらい拳に力が入り、悔しさで奥歯を噛み締めた。じゃあどうしろ、っていうんだ。
「……簡単に言うなよ。好きでしてることだ。お前には関係ない」
「関係ある。死へ向かっていく親友を見過ごせ、って言うの?」
「大袈裟な」
「大袈裟じゃない。誠也が誠也を大事にしない限り、それは死んでいくことに等しいよ」
「俺は自分を大事にしてる! 自分のためにしてんだから」
「それは本当に自分のため?」
「本当に自分の……!」
自分のためにしている、と思う。誰かを助けたいとか守りたいとかそういう無償の愛を持つどこかのヒーローを目指しているわけじゃなく、俺は俺のためにやりたいことをして、礼を受け取る。その経験が役立つ事もあるし、結果的に人望が厚くなるのも良いことだ。十分見返りを貰っていて得していると思った。だが、司は死へ向かっている等と物騒なことを言う。俺のやってきたことを、否定するみたいに。
「誠也のやりたいこと、本当に出来てる?」
「出来てる……」
「じゃあ休養はちゃんと取れてる?」
「最近は、試験勉強してたから……あんまり」
「自分だって忙しいのに変わらず人のことばっか優先してるよね」
「生徒会長のお前に言われたくない」
「俺はちゃんと寝れてるから大丈夫だよ」
帰り支度を済ませ上着を持って部屋を出ようとする司の後に無言で続く。普段なら和気藹々と会話しながら下校し、寄り道したり買い物したりするがそんな気にはなれない。司が戸締りを済ませている間に昇降口へ向かう。後ろで引き止める声が聞こえたがこれ以上何も聞きたくなかった。一刻も早く一人になりたくて、手早く靴を履き替え下駄箱を後にする。
「待ってよ!」
校門を通り過ぎたところで走ってきた司に腕を掴まれた。なんだよ、もう話すことなんて無いのに。前を向いたまま振り払おうと軽く腕を振るが司は強く握って離さない。まだ何か文句があるのかと諦めて振り向く。
「嫌われるのが、怖いんだろう」
「!」
「誰かの手助けをしていないと自分に価値は無い、って決めつけてる。だから俺は……」
──金槌で頭を打たれたような衝撃だった。まだ何か話しているのが分かるが右から左にすり抜けていく。これまで築いてきた理想像ががらがらと崩れ落ち、残ったつまらない自分すら丸裸にされていく感覚。惨めだと思った。落ちた視線の先の地面が歪んで見え、これ以上恥を晒したくないと今度こそ大きく手を振り払って帰路へ走った。脇目も振らずに家へ帰ると即座に自室へ駆け込む。
心の底に押し殺した、誰にも知られたくなかった部分を覗かれた。俺自身も忘れて無かったことにしていた痼り。見返りを求めた理由の根底はそこにあった。頼られることで存在を確立させ、ここに居てもいいんだと自己暗示をかけて過ごす。思い返してみるとなんて生き様だ。ヒーローなんてとんでもない、俺はどこにでもいる村人Aだ。
#ありがとう、ごめんね
手を繋ぎたい?
ないよ、そんなの。
繋ぐ相手が欲しいとか
そんな相手がいないと寂しいとか。
そんな可愛らしい感情
どうやったら湧くんだろう。
手が空いていてホッとする。
何にもない方がいい。
(手を繋いで)
一人じゃないよ
横を向けばすぐ隣にいるよ
急がなくていいよ
自分の歩幅でゆっくりさ
焦らないでいいよ
手を繋いで一緒に前に進もうよ
⚠血の描写があります。苦手な方はフィールドバックを推奨致します。
【お題:手を繋いで】
大陸レークスロワは、剣も魔法も存在する。
故に、日々奇々怪々な事件が起こる。
【Sugar Blood】
これは、奇々怪々な事件をまとめたファイル、特殊警察事件ファイルの中の一つである。
甘ったるい匂いの中に混じる鉄の臭い。そして、場に似つかわしくない、明るいピンク色の髪をツインテールに結んだ少女。
今目の前には、血を流し絶命している死体が一体。満遍なく撒かれたざらめは、場の空気を異様なものにしている。
健常者であれば、間違いなく発狂するであろう現場も、慣れてしまえば……いや、元より自分自身が健常者でないので、何の気なしに眺められてしまう。
少女……ざらめの食事が完了するまで、特にすることもなく、近くにあった木箱に座り込むと、ふと、左の掌が視界に入った。
目の前にある遺体が高校生だからだろうか。ふいに、あの子が生きていれば、このくらいかと考えてしまう。失くして長い、繋いだ手の温もりをなぜか思い出した。
あれはもう、何年前だったか。自分がこの街、ユークドシティに来たのは、駆け落ちが目的だった。
元々、漢文化の国、桜花の貴族……桜花では華族(かぞく)と呼ぶが、その中でも華族をまとめる家、黒影家の嫡男として自分は産まれた。
当然のように後継者教育が施されたが、それ以前に当主、父は全く使い物にならなかった。
元より体が弱かったらしい母が、自分が産まれると同時に亡くなったからだ。
父は母を異常な程愛していたらしい。彼女が居なくなった喪失感は、父を壊すに足るものだった。
物事着いた頃には、ろくに会話ができない父に代わり、当主代理としての教育をずっと受けていた。
正直に言ってしまえば、父も家も嫌いだった。
だから逃げ出した。
それが良いか悪いかは、今も尚わからない。
なんにせよ壊れた歯車はもう元には戻らないのだ。
「おじさま!」
思考を遮り、自分を現実に引き戻したのは、少女の声で。
「……ざらめ、もう食事は終わったのか?」
「終わったのです!」
ぴっ! と片手を挙げて、元気に返事するざらめの頭を撫でると、嬉しそうにする。
これだけ見ると猫のようだ。
「では、今日はもう帰ろうか」
「はいなのです」
自分が手を出すと、ざらめは躊躇いもなく手を繋ぐ。血の臭いから逃れるかのように路地裏を出ると、いつかのような、燃えて見える真っ赤な夕日が顔を出していた。
何の気なしに、背後を振り返る。そこには闇が広がるばかり。
「おじさま? 帰らないのです?」
「……いいや、帰ろう」
一瞬、懐かしい声で名を呼ばれた気がしたが、それは幻聴に他ならない。
もう、居ない人間の声が聞こえるわけがないのだ。
手を繋いで家路に着く。
この日常は、誰かの日常を奪いできている。
ーあとがきー
今回のお題は【手を繋いで】
青春とか、淡い恋物語が始まりそうなお題で、血の描写がありますとかいう突拍子もない注意書きですよ、イカれてますねっ!
さて、短編を毎日書くのにタイトルなど付けてらんないので、あとがきでこのお題の時に〜と書くので、その時のお題を冒頭に付け足しました。
さてさて今回の話、Sugar Bloodは、逆さの時の赤いざらめの話です。そう、赤いざらめと雨の日の死神は別なのです。殺人事件であるのには変わりはありませんが。
此度の語り部の名は、黒影柘榴。色々と拗らせてるおっさんです。歳は38歳。
父親のことは嫌いですが父親に似てる。そんな男です。
ざらめちゃんは……何者なのでしょう? 人ではないのは確かです。
柘榴を最初から最後まで語ろうとすると長いので、彼も小出しで語ることになりそうです。それこそ妻子の話とか。
ざらめちゃんも、いつか語りたいですね。
さて、このままではあとがきが長くなりますので、今回はここまで。
それでは、またどこかで
エルルカ