→夢うつつ
幼い頃、私の部屋は2階にあった。トイレは1階。夜中に1人でトイレに行くのが、何よりも怖かった。
天井に付けられた階段の灯りは仄かで頼りなく、1階を照らすほどの光量はない。真っ直ぐな階段の下は、底の見えない洞窟のように見えた。存在しない冷気を感じる……。
「一緒に行ってあげる」
一度だけ、そう言ってプラスチック製の小さな手が私を導いて連れて行ってくれたことを覚えている。
赤ちゃん人形というのだろうか? 小さな女の子の姿をした人形は、柔らかいプラスチック製だった。その子と手を繋いで階段を降り、無事にトイレに到着。事なきを得て、再びベッドに戻った。
この、少しぼやけたフィルム写真のような記憶は、私の中に確かにある。しかし本当にあったことなのかは不明である。
テーマ; 手を繋いで
12/10/2024, 7:48:20 AM