『手を繋いで』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
手を繋いで夕方
公園のドッグランで
しあわせな犬たちを見て笑顔
「手を繋いで」
貴方の大きな手。
どこへでも連れてってくれた。
どんな時でも離さないでいてくれた。
歩いてるときは優しくトントンしてくれた、貴方のその手。
今はもうぎゅっと握ってもけして握り返してくれない。
手を繋ぐのはちょっと照れ臭いな。
【手を繋いで】
雨の中、アルアは路地裏を走り回っていた。石畳の窪みに溜まった雨水が、あちこちに水溜まりを作っている。雲に覆われた夜空は、いつもに比べて一層暗い。灯りを持たないアルアは、一歩踏み出すたびに、ぱしゃりと音と水飛沫を上げた。靴は元より、スカートの裾もすっかりびちょびちょだ。
(――これも全部、アルフレッドのせいだ)
アルアは胸中で一人ごちた。
濡れたスカートは足に纏わりついて鬱陶しいし、何より走ることで受ける風が当たるたびに冷えて寒い。どちらかと言うと、体が弱い方の自分だから、明日はおそらく熱を出して寝込む羽目になるだろう。
これも全て、突然、雨夜の中を飛び出していったアルフレッドのせいだ。
何かに気づいたような顔をしてから、泣き出しそうなほど顔を歪めて、出て行った。泣きたいのはこちらの方だ。
当てもなく路地を右に左にと曲がっているうちに、少し開けた場所に出た。樹が一本植わっていて、その側にベンチが一つ置いてあるだけの簡素な広場だ。そこでアルフレッドが佇んでいた。どうせなら、樹で雨宿りでもしていればいいものを。
足音に気づいたらしい彼が振り向いた。アルアの姿を認めて、表情を凍りつかせる。逃げ出そうと彼が踵を返しかけたそのとき、アルアは叫んだ。
「待ちなさい、アルフレッド!」
普段、全く大声を出さないせいか、叫んでからアルアは咳き込んだ。一旦は離れようとしていた彼だったが、彼女を心配して結局戻ってくると、体を折り曲げて咳き込む彼女の背中をゆっくりとさすり始めた。
「……落ち着いて、アルア。ゆっくりと息を吸って……」
彼の言葉に従って、ゆっくりと呼吸を繰り返すうちに、荒い息が整ってきた。彼女の呼吸が治まってきたのを見計らって、彼はそっとさする手を下ろした。
アルアは深呼吸すると顔を上げた。その顔は林檎のように赤く、彼の顔色は逆に真っ青になった。彼女の額に自分の掌を当てて、熱を測る。
「……ごめん……」
すっかり彼女は熱を出していた。自分は彼女をどれだけの時間、雨の中走り回らせていたのだろう。気まり悪そうな顔で俯く彼に、アルアは小さく息をつくと、手を差し出した。
あなたが何に罪悪感を覚えて、飛び出していったのか、その理由は知らないけれど、それでも傍にいることぐらいはできる。それがあなたの慰めになるかはわからないけれど。
はっとしたように顔を上げる彼に、彼女は微笑みを浮かべて口を開いた。
「宿に戻りましょう、アルフレッド」
彼はおずおずと彼女の手を取った。アルアがその手を握り締めると、強い力で握り返された。
手を繋いで
(お題更新のため本稿を下書きとして保管)
2023.12.10 藍
手を繋いで
ー寒いね。
ーうん。手を繋いで帰ろう。
君の指先は氷のように冷たかったけど、互いの体温で温まっていく。
家に着くまでに、ぽかぽかになっているといいな。
#75 手を繋いで
私と比べて、
長くてスラっとした指、
整えられた爪に、
暖かくて透き通った白い肌、
でも私には
ヨーロピアンな藍色の瞳と
もっちもちの肉球があるんだもん
君と手を繋いで歩いたよね
それがとっても幸せだったんだ
アインホルツ帝国の首都ドルトファン。
自然溢れる街の中で、人々は日々の生活を営んでいた。それは夜も変わりなく、柔らかな光がドルトファンを照らしている。
皇帝ロレンツは、妻のロレンスと共に散歩に出ていた。彼女の国を巡る混乱も収まり、二人は晴れて夫婦になれた。
彼女の婚約者の蒔いた火種が、レクステリア王国──現ルリスリアン公国への国難として襲い掛かった。
周辺国に包囲され、国内も不安定な中で彼女は周囲の支持を得て指揮を取った。
そして、名実ともにルリスリアンの指導者となった。
それはさておき、今日はお忍びデートなのだ。買い物と解説を交えながら、ドルトファン城まで歩く。
「ロランス、行こうか。案内するよ」
「えぇ、ロレンツ様」
二人の正体がバレて騒ぎになるまで、あと少し。
「手を繋いで」
「手を繋いでいた宇宙人のことを思い出すなあ」
僕は思ったことを口に出す。
「うん?ああ、二人の大きな男の人と手を繋いでいるヤツ?」
「そうそれ!」
パパはすぐに分かってくれた。
さすがパパ。
でもママは分からなかったみたいだった。
「連れ去られる宇宙人だよ」
パパがそう言うと、ああアレねって言ったから知ってるみたいだ。
「でもあれ、合成写真だって。しかもドイツの雑誌のエイプリルフール記事」
パパが嫌な事をいう。
「もー夢壊さないでよ」
「次の週でネタバラシしたら、送られて来た抗議文みたいなこと言うんじゃない」
僕が文句を言うと、変なツッコミが返ってきた。
「それでなんで宇宙人を思い出したの?」
パパが聞いてくる。
「今、僕はあの宇宙人みたいだなって」
僕はパパとママの手を繋いでいる。
あの写真みたいに。
「それで、あの宇宙人の気持ち、ちょっとわかるなあって思って」
「宇宙人の気持ち?」
パパとママが不思議そうにこっちを見ていた。
「どんな気持ちだと思ったの?」
ママが聞いてくる。
「手が疲れるなあって」
そう言うと、パパとママは楽しそうに笑った。
「疲れちゃったか。じゃあ抱っこしちゃうぞ」
そう言ってパパは僕を抱っこした。
「これで宇宙人君は疲れないね」
パパは笑っている。
「ダメ」
僕はダメ出しする。
「何がダメなの?」
パパが不思議そうに聞いてくる。
「ママが一人ぼっち。ママ、手を繋いで」
手を繋いで歩こう。
あなたと私の歩幅は違うけど。
手を繋いで、横断歩道をまたいで、境川をこえて、お惣菜屋の匂いをかぎながら、三輪車のベルの音にややビビり、軽く足音を立てて行こう。
トンネルくぐって歩こう。
君は、私の歩幅の二倍はある大きな靴の紐を結びながら、ため息つきつき進む。
瓦屋根の上の雑草を踏んで、廊下の隅をくだり、縁側から庭に出て、街に繰り出そう。
中華街のあかりに照らされて、君の顔は小籠包みたい。
思わずお腹が減っちゃって、手を伸ばしたら君は抱っこしてくれた。
「そろそろおかんが、ご飯を作って待ってる時間だからね」
って、夕焼け空を見たよ。
動悸がするような、夕焼けの空を、中華街のイルミネーションか、二人の影を紫色に染めていた。
「手を繋いで」
金色の草原の上を一人で歩く。
不思議な心地の良い風が吹き私は後ろを向いた。
彼が待っていた。私は彼に駆け寄って手を繋ぎ歩いていった。
萩原実琴
手を繋いで
手を繋ぐことすら理由が必要な私達
イベント事は普段なら嫌いだけど
会う理由になるから馬鹿みたいに
小さなイベントも大事にしてる
北の方から風が吹いてきた
寒いと言って君の手を掴む
付き合ってからだいぶん経ったけれど、
手を繋ぐときはちょっと緊張する。
あなたから繋いでくれる日を待つ。
#手を繋いで
「手を繋いで」
横にいる彼女をそっと見つめる。
僕よりもちょっと幼くて、まだ喋ることも上手にできない小さな女の子。
彼女の手は僕の方に伸びていて、ぎゅっと手を握っている。お風呂に入る時だって、ご飯を食べる時だって片時として、手を離したことは無い。
今までも、これからも。この手が離れることはないだろう。
「ねぇ、そろそろご飯食べよう?」
「うっ…ん!」
だいぶ発音は出来るようになったようだ。
出会った頃に比べれば、上達はしているだろう。
「今日はね、パンだよ!」
「……ってっ、たぁ!」
ニコニコと笑う君。嬉しそうで良かったと出された食事に口を付ける。
もぐもぐと美味しそうに食べる、彼女を尻目に僕は1人考える。此処からどう脱出しようか。
連れてこられたのは2年前。
君はまだ赤ちゃんだったからきっと覚えてないだろう
けど。
起きて、食べて、寝る。
与えられた物で暇を潰す。
そんな、生活にも懲り懲りしていた頃だった。
壁に貼られた紙を見て唖然とする。
生き残りたくば、どちらかを殺せ。
そう書かれた文字とナイフがあった。
殺せ。殺せ?ころせ?コロセ。
横を見る。文字もまともに読めない彼女には、どんなに恐ろしいことが書かれているなんて知る由もないだろう。
巫山戯んな。年端もいかない子を閉じ込めて、挙句の果てにはコロセって。
「いい加減にしろよ!!」
怒りに任せて壁を蹴る。ドンッと音がして、足がジンジンと痛む。
「アッ…どっぅし…て?」
「あっ、ごめんね。君を怒った訳じゃないんだ。」
怖がらせてしまった。頭を優しく撫でる。
どうするかなんてもう決めている。
そっと手を離す。
彼女の大きな目が見開く。
「心ではずっと手を繋いでるからね。どうか、僕のことを忘れて、君として生きて。」
きっと僕は不細工な顔をしているだろう。
グサッと自分の首にナイフを突きつける。
頸動脈を切れば1発だろう。
「ぁっ、!あっあー、ならっ泣」
意識が遠のく。もう痛みも無くなってきた。もうそろそろ死ぬだろう。
カチャっとドアが開く音がした。
君の泣き声も遠のいていく。
大好きだよ。
君に届くことの無い声は喉の中で消えていった。
【 手を繋いで 】
幼い日の思い出。
あの人に手を引かれて、その背中を見つめながら帰る。
親の代わりに迎えに来てくれるその人を、尊敬していた。
自営で忙しい親の代わりは、叔父だった。
体を壊したからと、子どもの相手をさせられるのは、
複雑な気持ちだったかもしれない。
とはいえ、親よりも長くいるから、懐くのは当然だ。
どんな遊びにも付き合い、イタズラをしたら叱って。
本当に、親代わりの存在だった。
だから、突然いなくなってしまった虚無感は、計り知れない大きさで襲ってきた。
泣く、という行為すら忘れ、呆然とする。
大人になったら、子供の手を引いてあげよう。
子供心に決意した、ある冬の出来事だった。
手を繋いで
わたしがなかなか言い出せないそのひとこと
なのにさらりと私の手を取るなんて
あなたはずるいよ
でも嬉しさが上回って頬がゆるむ
ああ、私はまんまとあなたの無自覚な策に溺れてく
好きです
「手を繋いで」
俺としたことが、こんな日に限って手袋を忘れてしまうなんて。コートのポケットに突っ込んだ両手を強く握りしめても、温まる気配はまるでない。震える俺の前を、仲睦まじく手を繋いだカップルが通り過ぎて行く。あいつらが手袋をしていないのはわざとだろう。そうだ、これに託けて、あの子と手を繋ぐことができるかもしれない。あの子はよく自分は体温が高いのだと言って、友達に手を握らせていた。この冷えきった真っ赤な手を振って見せれば、きっと気付いてくれるだろう。
「お待たせ!ごめんね、寒かったでしょ?」
視線を上げると、頬を染めたあの子がいた。小さな両手には、俺がプレゼントした茶色の手袋。
「ちょうど今来たところなんだ。」
俺は両手をポケットにしまったまま、背筋を伸ばして精一杯爽やかに笑った。
手を繋いで
たまに…暗闇にいるような感覚に陥る時がある
怖くて…寂しくて…心細くて…
そんな時…誰かに…誰でもいいから側にいて…手を繋いでほしいと望んでしまう…
手を繋いで…
お互い歳をとっても
手を繋いで仲良く歩けたら良いね♡♡