もんぷ

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手を繋いで

 先生の手は、私の手よりも随分大きくてやけに熱を持っていた。私なんかよりもずっと長く生きているのに繋ぎ方がぎこちない。それがあまりにもかわいらしくて思わず口角があがった。
「…はい、これで満足?」
「まだです。」
「……はぁー、さすがに見つかったらまずいからさ。そろそろいいでしょ?」
「まだ。」
口元のニヤけを隠しきれない私とは違い、先生は辺りをずっとキョロキョロしながら不安そうな表情を浮かべている。私とて好きな先生に職を失ってほしいとは思っているほど歪んではいない。こんな時間にこんな教室に誰も来る訳は無いと分かっているから実行に移しているのに、本当に先生は心配性だ。慎重派で真面目。民衆が想像する模範の教師像そのままのような人。なのに、細かいところが抜けてて詰めが甘い。だから、こういう人間に足元を掬われてしまうのだ。弱みともいえないような弱みだが、先生にとっては他の人に知られてほしくないことだったらしい。なんでもするから黙っててほしいと懇願する先生の表情はすごくかわいかったなー。でもなんでもするなんてあんまりペラペラ言うもんじゃないですよ。私以外だったら何をさせられてたか分かったもんじゃないでしょう。そう考えたら私のお願いなんてかわいいものでしょう?ねぇ、先生。

3/21/2025, 9:53:32 AM