『手ぶくろ』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
No.26『プレゼント』
散文 / 恋愛 / 掌編小説
吐く息が真っ白になる昼下がり。私はかじかむ手に息を吹きかけて、空を見上げた。見上げた空はどこまでも澄み渡り、遥か遠くに低い雲が浮かんでいるのが見える。おそらくはそこから飛ばされて来たであろう風花が、ひらりひらりと舞い落ちて来た。
「やっぱ手袋に挑戦してみようかな……」
クリスマスに恋人からリクエストされたのは手編みのマフラーだけど、あかぎれとしもやけだらけの彼の手が頭から離れない。真冬に冷たい水を使う職業に就いている彼の手は、痛々しくて見ているのも辛いのだ。
「やっぱ手袋にしよ」
独りごちて久しぶりに手芸店に寄り、白と青の二色の毛糸と編み物の本を買った。マフラーなら本を見なくても編めるのだけれど、手袋になるとそうはいかない。
「うそでしょ……」
それから数週間が過ぎ、とうとうクリスマス。結局、手袋は片方しか編み上がらなくて。数週間後にもう片方を編み上げるからと、とりあえず編み上がった片方だけを彼に贈った。
その帰りに早速、手袋を使ってくれた彼の片方の手は、私の手と一緒に彼のポケットの中にある。
お題:手ぶくろ
手ぶくろ
あってもなくてもいいのだけど
あればうれしい。
ずっと持ち歩くのはめんどくさい。
気を抜くとすぐ失くなるところも。
でも見つかれば嬉しい。
あればあったかい。
自分に似合う新しい手ぶくろを探したりする。
いろんな形がある
いろんな色がある
道に落ちてたり
ブランド店に置いてあったり。
なにかと似てる。
手ぶくろ
今日寒空の下で別れを告げられた。
外は晴れていたはずなのに雪がチラチラ舞い始め、余計に寒さが増すのを感じながら|仁奈《にな》は家路までの道のりを一人トボトボと歩く。
「あれ、仁奈だよね、久しぶりじゃん」
「う、うん、|冬馬《とうま》久しぶり! こっちに帰ってたんだね」
なんてことだろう、こんな最悪な日に幼なじみの冬馬と久しぶりに会うことになるだなんて。
仁奈は泪していた目を擦りながら笑顔で振り向いたけど、冬馬にはお見通しの様子。
「三年間は転勤の予定だったんだけど、もう戻れることになったんだよ。 だからまた宜しくね!」
「そうだったんだね、うん、また宜しくね」
笑顔で答えたつもりだけど、泪が止まらない。
「仁奈どうしたんだよ、もしかして別れたのか?」
「う、うん··········で、でも大丈夫」
冬馬が転勤でこの土地を離れる時、駅まで見送りに来てくれた仁奈には彼氏がいて、指輪をしいたことも知っていたのだから、指輪をしていない仁奈を見て彼氏と別れたことを知るのは簡単なことだった。
「そんな目をして大丈夫なわけないだろ、あんなに仲良かったのにどうしたんだよ」
「うん、それがさ、他に好きな子が出来たんだって……だから、もう一緒にいられないって言われちゃった」
「なんだよそれ、酷すぎるじゃん」
「ても、もういいの……」
仁奈の彼氏は、冬馬の友達の友達だったから、冬馬はこのことに対して苛立ちを覚え、今すぐにでも電話しようとしてくれていたのだけど、仁奈はそれを辞めさせた。
「そんなんで良いのかよ!」
「うん、もういいよ……ありがとう」
人の気持ちなんて変わらないのだから、何か言ったところでもうどうしようも無いことくらい分かっている。
「そうだった、ずっと返そうと思ってたからまだ持ってたんだよ、手を出してご覧……」
「えっ、これって」
「ずっと返そうと思って持ってたんだよ、今日は寒いから早く使いな!」
ガサゴソとバックから取り出し手に渡されたのは、見送りに行ったあの日、冬馬に貸した仁奈の手袋だった。
もう無くなってると思っていたのに、大切に取っておいてくれていたなんて。
「あ、あのさ、こんな時に言うのはどうかと思うけど、良かったら結婚前提で付き合わない」
「あっ、えっと……」
「ごめん。いきなりは狡いよな! 返事は幾らでも待つから、考えといて欲しい」
突然の告白だったけど、冬馬は仁奈のことがずっと好きだったのだとあとから知ることに……。
仁奈はいつも自分を気遣ってくれる冬馬のことを家族のような存在だと思っていたので、ずっと恋愛対象として見ていなかったのだけど、今回のことがあってから少しずつ意識するようになっていき、そして何時しか付き合うことになった。
――それから数年後――
「ほら、二人共手袋忘れてるよ」
「そうだった、ありがとう仁奈!」
「ママ、ありっとさん」
仁奈は冬馬と結婚して、今は三歳の娘と一緒に家族三人で仲良く暮らしています。
かじかんだ指先がいつの日か、脆い氷のようにボロボロと壊れてしまうんじゃないだろうか、と。
実際にそんなことは起こるわけないと分かってはいながらも、乾ききって氷のように冷えた手をそのままにしておくのも何だか嫌で、たまたま立ち寄った雑貨屋で手袋を買ってみた。息を白くしながら手を通すと、これは確かに風が直接当たらずに以前のように直ぐに指先から冷えていく感覚がない。
それでも、自ら熱を生み出すことが苦手な私ではその小さな温もりでは足りなくて。いつの日か大切な誰かが貸してくれた、くたびれつつも暖かい体温の籠った手袋の温もりを思い浮かべては「こんなもんか」と白く冷めた息を静かな街へと投げ出すのだった。
「手ぶくろ」
子どものころに大好きな手袋を片方無くし
たことがあった。しばらくして、通学路の
側溝に落ちているのを見つけた。
とても汚れていて自分のだと分かっていて
も拾えなかった。
2日後に手袋が両方揃っていた。
いまだに誰が拾ってくれたか私は知らない。
テーマ【手ぶくろ】
制作者:いと。 12.27 2022 23:30
最近は使っている人が多い手ぶくろ。
でも僕は手ぶくろをしない。
そうしないと君は、手を繋いでくれないから。
「...ずっと待ってるよ。」
そう言って僕は一人歩き出した。
亡くなった君のことを胸にしまって──
私は昔、手袋が大好きだった。
手が温かく、怪我をしないから毎日のように
手袋をはめていた。
スマホを使い始めてからは、手袋を使わなくなった
手は寒くなったのはもちろんだけど、
なんとなくだけど、心まで冷えきってしまう
誰か私の前に現れて、凍ってしまった手と心を
溶かしてほしい
今年も寒いですね、私の学校では駅伝があり毎年恒例行事です。体操服の長袖長ズボンにあれ?手袋がない、、、と寒かったです、その時友達から手袋を片方だけもらいました、ありがとう友達
寒くても手袋はつけず、ハンドポケットか暖房の効いた部屋で暖まる。例外で外で何か作業があった場合は手袋をつける。
テーマ:手ぶくろ #45
※この物語は#20からの続編です
昨日に引き続き、ミデルの貸してくれた手ぶくろがとても温かい。
「なんかラクラ、ニヤニヤしてる?」
「してない!」
変な勘違いをされたかも知れない…。でも寒い中、暖を取れるとなると自然に頬が緩んでいたのかも知れない。
「ミデルは、寒くない? 片方貸してくれているけど…
」
「私は平気!」
元気よく言ったミデルに頷いた。寒かったら魔法でどうにかするか…とも思った。
「それにしても長い道のりだね」
僕がそう言うとミデルは、静かに頷いた。
「もうすぐ入り口」
そう言うミデルの体は、凍りついたようにカチコチになっていた。僕はそんなミデルの肩に触れる。
一瞬ビクッと肩を上げたミデルが振り返る。
「ミデル」
僕がそう呼ぶとミデルの手を僕は包み込む。
「大丈夫。僕もいるし、怖くなったら逃げ出してもいい」
僕がそう言うとミデルは何も言わずに僕を見て頷いた。
「地下牢はこの扉の向こう。ここ以外に出口はない」
ミデルの視線の方向には大きな扉があった。扉の前には2人の警備員がいた。ミデルがその警備員に近づいていく。僕もそれについて行った。
「何者だ」
警備員の1人が僕たちに言うが、ミデルも僕も答えない。
「おい、止まれ」
やりを突き出されたかと思ったが、次の瞬間
「うわっ!」
「何だ!?」
宙に浮いた。
「ごめんね、少しの間だけだから。見逃してね」
ミデルがそういったかと思うと宙に浮く警備員たちの額を触り
「"睡眠魔法"」
小さく呟いた。たちまち警備員たちの頭はガクッと下がり、熟睡してしまっていた。
「すご…」
僕が口を開けて呆然としていると
「それほどでも〜」
少し照れてミデルが言った。
大きな扉を開けるとそこには街が広がっていた。地下牢と入っても完全に隔離されているわけではないらしい。ある一定の場所。すなわちこの扉の内側で生活や労働をされているらしい。
「ラクラ、こっち」
そう言って手招きするミデルは、物陰にいち早く隠れていた。扉の前にいた警備員と同じ服装をした者たちがが集まってくる。
「あれがこの地下牢の管理人たちと裏の社会のこわーい人たち」
ミデルは、ジィっと彼らを見つめていた。ミデルも彼らに酷いことをされてきた被害者である。だからこそ詳しいのだろう。
「ありゃ? ミデルちゃんかい?」
急に後ろから声をかけられ2人同時に肩を上げる。
「サカキさん! お体の方はもう大丈夫なんですか!?」
どうやらミデルの知り合いらしい。
「やっぱり、ミデルちゃんだ。こんなべっぴん見間違える訳がないもんなぁ〜」
ニコニコと笑うサカキさんと呼ばれる人はもう70歳くらいに見える。
「んで…。そこの隣りにいるのは…?」
「あ、ラクラ・クームです」
「こちらお友達のラクラ。こっちはサカキさん」
僕は頭を下げるとサカキさんも頭を下げる。
「それにしても…ミデルちゃん。どうして戻ってきたんだい。外の世界に戻れたはずだろう?」
「それが…」
ミデルが話そうとしたとき
ーーカーンカーンカーンカーン
けたたましい音が当たりに響き渡る。
『侵入者が入ったようだ。見かけんヤツがいたら、すぐに管理にいうように』
放送も入った。
「あぁ…どうしよう。このままだと…」
「ミデルちゃん、ラクラくん。私の家へ来なさい。外にいるより安全だろう」
「でも…バレたら…」
サカキさんは首を横に振る。
「大丈夫。伊達にこの年になるまで生きていたわけじゃないさ」
僕ら2人は裏道のようなところを通っていくサカキさんに着いていった。
わざと、
手ぶくろを
忘れるの
そうでもしなきゃ、
貴方は
手を繋いではくれないでしょ?
貴方は知らないのね
私がどれだけ
貴方の温もりに
飢えているかを
コロナ
コロナになっちゃた...
熱高すぎて体痛いし
食欲ないし...
これ一週間続くの??
手ぶくろ
娘は、私の手を天然手ぶくろという
娘は、自分の手を差し出して
私に、両手サンドをさせる
娘の手が、みるみる温くなり
私の手は、どんどん熱を奪われる
あかぎれでカサカサの手ぶくろ
これから、ますます出番あり
手ぶくろ
彼女はいつも左手に手袋をはめていた。なぜなのか、を問うと少し気まずそうな顔をして、痕が残ってるから、と言った。
どんな彼女だって愛せる。たとえ痕が残っていようが、その痕すらも愛してみせる、そう思っていた。
しかし、彼女は片時もその手袋を外そうとしなかった。それでも愛していた。いつか彼女がすべてを打ち明けてくれると信じていたのだ。
信じていた自分がどれほど愚かだったか、今となってはその手袋の意味を理解してしまっていた。
きっといつもは外していたのだろうと思われるそれは手袋の布越しでもはっきりとわかった。
手を繋いで、彼女の左手の薬指にあるものを理解してしまったそのとき、ようやく自分の愚かさに気づいたんだ。そして彼女のずるさにも。
「違うの。本当にあなただけを愛しているわ」
そう被害者のように涙を流す彼女に、愛情なんてわくはずもなく、ただ別れを告げた。
手を繋ごう
手ぶくろ越しに感じる温もりは、
この季節だけの特権
テーマ“手ぶくろ”
手ぶくろって冬にしか使わないから
毎年片方が行方不明で。
結局新しい物を買う事になる。
それなのに。
自分が好みの手ぶくろは無い。
可愛さとか、素材とか
そういうのも重要なんだけど
結局肌触りが重要で。
それなのに
毎年毎年
気に入った手触りの物に会えずに
妥協した手ぶくろを買う。
そう言う理由もあり
結局失くす。
愛着が沸かないから
失くす。
片方だけ。
手ぶくろ
寝る前にハンドクリームを塗って、
スマホいじって寝るから
指の先を切って手袋つけたまま寝てる。
流れていく星を探している間、片手はポケットに、片手はお互いの右手と左手に分けあって、離さないように繋いでいて
『手ぶくろ』
慌てていたから、コートは持ってきたのに手ぶくろを忘れてしまった。
コートのポケットに突っ込むけど余り温まらない。
「おはよう、寒いね」
友人はコート、マフラー、耳当て、手袋の完璧な防寒対策で登校していた。
「いいなーあったかそう」
「なんで何もつけてないの…見てるこっちが寒くなるって」
呆れた様子でそう言われる。
手が悴んでヒリヒリしてくる。
カイロぐらい持ってくればよかった。
「しょうがないなぁ、もう。はい、つけて手袋」
そう言うと片方の手袋を差し出して、私の右手に付けようとする。
「えっ、いいよ…ってゆうかなんで片方?」
「あんたが右手に手袋つけて、でも左手は寒いままでしょ〜?
だから私の手袋をつけた右手で温めてあげる。大丈夫、これ両手兼用タイプだから」
手袋を纏った右手で、私の裸の左手を包み込む。
渡された手袋はほんのりと中で熱があって暖かかくて、きっと私の右手はすぐに温まるだろう。
そっちこそ、自分の左手は寒くなるのに。
「…ありがとう」
「なによ〜どういたしましてー」
手を繋いで登校する。
次は私が温めるね。
こんな雪の時期にふさわしい一冊
新美南吉著「手ぶくろを買いに」
挿し絵は黒井健
あの表紙の破壊力ったらない
メンタル弱めのときはあれだけで泣けてしまう
こぎつねのはじめてのお使い
お母さんきつねの心配と
知らんぷりしてくれる店主のおじさん
あたたかいものに包まれて
こころがほっこりしてくる
深々とした雪景色もまたいい
自分のためにもう一度買い直そう