ののの糸糸 * Ito Nonono

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No.26『プレゼント』
散文 / 恋愛 / 掌編小説

吐く息が真っ白になる昼下がり。私はかじかむ手に息を吹きかけて、空を見上げた。見上げた空はどこまでも澄み渡り、遥か遠くに低い雲が浮かんでいるのが見える。おそらくはそこから飛ばされて来たであろう風花が、ひらりひらりと舞い落ちて来た。

「やっぱ手袋に挑戦してみようかな……」
クリスマスに恋人からリクエストされたのは手編みのマフラーだけど、あかぎれとしもやけだらけの彼の手が頭から離れない。真冬に冷たい水を使う職業に就いている彼の手は、痛々しくて見ているのも辛いのだ。
「やっぱ手袋にしよ」
独りごちて久しぶりに手芸店に寄り、白と青の二色の毛糸と編み物の本を買った。マフラーなら本を見なくても編めるのだけれど、手袋になるとそうはいかない。

「うそでしょ……」
それから数週間が過ぎ、とうとうクリスマス。結局、手袋は片方しか編み上がらなくて。数週間後にもう片方を編み上げるからと、とりあえず編み上がった片方だけを彼に贈った。

その帰りに早速、手袋を使ってくれた彼の片方の手は、私の手と一緒に彼のポケットの中にある。

お題:手ぶくろ

12/27/2022, 3:00:36 PM