浅塩

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慌てていたから、コートは持ってきたのに手ぶくろを忘れてしまった。
コートのポケットに突っ込むけど余り温まらない。
「おはよう、寒いね」
友人はコート、マフラー、耳当て、手袋の完璧な防寒対策で登校していた。
「いいなーあったかそう」
「なんで何もつけてないの…見てるこっちが寒くなるって」
呆れた様子でそう言われる。
手が悴んでヒリヒリしてくる。
カイロぐらい持ってくればよかった。
「しょうがないなぁ、もう。はい、つけて手袋」
そう言うと片方の手袋を差し出して、私の右手に付けようとする。
「えっ、いいよ…ってゆうかなんで片方?」
「あんたが右手に手袋つけて、でも左手は寒いままでしょ〜?
だから私の手袋をつけた右手で温めてあげる。大丈夫、これ両手兼用タイプだから」
手袋を纏った右手で、私の裸の左手を包み込む。
渡された手袋はほんのりと中で熱があって暖かかくて、きっと私の右手はすぐに温まるだろう。
そっちこそ、自分の左手は寒くなるのに。
「…ありがとう」
「なによ〜どういたしましてー」
手を繋いで登校する。
次は私が温めるね。

12/27/2022, 1:49:42 PM