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手ぶくろ


彼女はいつも左手に手袋をはめていた。なぜなのか、を問うと少し気まずそうな顔をして、痕が残ってるから、と言った。
どんな彼女だって愛せる。たとえ痕が残っていようが、その痕すらも愛してみせる、そう思っていた。
しかし、彼女は片時もその手袋を外そうとしなかった。それでも愛していた。いつか彼女がすべてを打ち明けてくれると信じていたのだ。

信じていた自分がどれほど愚かだったか、今となってはその手袋の意味を理解してしまっていた。
きっといつもは外していたのだろうと思われるそれは手袋の布越しでもはっきりとわかった。
手を繋いで、彼女の左手の薬指にあるものを理解してしまったそのとき、ようやく自分の愚かさに気づいたんだ。そして彼女のずるさにも。
「違うの。本当にあなただけを愛しているわ」
そう被害者のように涙を流す彼女に、愛情なんてわくはずもなく、ただ別れを告げた。

12/27/2022, 2:07:21 PM