狼星

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テーマ:手ぶくろ #45

※この物語は#20からの続編です

昨日に引き続き、ミデルの貸してくれた手ぶくろがとても温かい。
「なんかラクラ、ニヤニヤしてる?」
「してない!」
変な勘違いをされたかも知れない…。でも寒い中、暖を取れるとなると自然に頬が緩んでいたのかも知れない。
「ミデルは、寒くない? 片方貸してくれているけど…

「私は平気!」
元気よく言ったミデルに頷いた。寒かったら魔法でどうにかするか…とも思った。
「それにしても長い道のりだね」
僕がそう言うとミデルは、静かに頷いた。

「もうすぐ入り口」
そう言うミデルの体は、凍りついたようにカチコチになっていた。僕はそんなミデルの肩に触れる。
一瞬ビクッと肩を上げたミデルが振り返る。
「ミデル」
僕がそう呼ぶとミデルの手を僕は包み込む。
「大丈夫。僕もいるし、怖くなったら逃げ出してもいい」
僕がそう言うとミデルは何も言わずに僕を見て頷いた。
「地下牢はこの扉の向こう。ここ以外に出口はない」
ミデルの視線の方向には大きな扉があった。扉の前には2人の警備員がいた。ミデルがその警備員に近づいていく。僕もそれについて行った。
「何者だ」
警備員の1人が僕たちに言うが、ミデルも僕も答えない。
「おい、止まれ」
やりを突き出されたかと思ったが、次の瞬間
「うわっ!」
「何だ!?」
宙に浮いた。
「ごめんね、少しの間だけだから。見逃してね」
ミデルがそういったかと思うと宙に浮く警備員たちの額を触り
「"睡眠魔法"」
小さく呟いた。たちまち警備員たちの頭はガクッと下がり、熟睡してしまっていた。
「すご…」
僕が口を開けて呆然としていると
「それほどでも〜」
少し照れてミデルが言った。

大きな扉を開けるとそこには街が広がっていた。地下牢と入っても完全に隔離されているわけではないらしい。ある一定の場所。すなわちこの扉の内側で生活や労働をされているらしい。
「ラクラ、こっち」
そう言って手招きするミデルは、物陰にいち早く隠れていた。扉の前にいた警備員と同じ服装をした者たちがが集まってくる。
「あれがこの地下牢の管理人たちと裏の社会のこわーい人たち」
ミデルは、ジィっと彼らを見つめていた。ミデルも彼らに酷いことをされてきた被害者である。だからこそ詳しいのだろう。
「ありゃ? ミデルちゃんかい?」
急に後ろから声をかけられ2人同時に肩を上げる。
「サカキさん! お体の方はもう大丈夫なんですか!?」
どうやらミデルの知り合いらしい。
「やっぱり、ミデルちゃんだ。こんなべっぴん見間違える訳がないもんなぁ〜」
ニコニコと笑うサカキさんと呼ばれる人はもう70歳くらいに見える。
「んで…。そこの隣りにいるのは…?」
「あ、ラクラ・クームです」
「こちらお友達のラクラ。こっちはサカキさん」
僕は頭を下げるとサカキさんも頭を下げる。
「それにしても…ミデルちゃん。どうして戻ってきたんだい。外の世界に戻れたはずだろう?」
「それが…」
ミデルが話そうとしたとき
ーーカーンカーンカーンカーン
けたたましい音が当たりに響き渡る。
『侵入者が入ったようだ。見かけんヤツがいたら、すぐに管理にいうように』
放送も入った。
「あぁ…どうしよう。このままだと…」
「ミデルちゃん、ラクラくん。私の家へ来なさい。外にいるより安全だろう」
「でも…バレたら…」
サカキさんは首を横に振る。
「大丈夫。伊達にこの年になるまで生きていたわけじゃないさ」
僕ら2人は裏道のようなところを通っていくサカキさんに着いていった。

12/27/2022, 2:19:04 PM