『愛情』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
愛情
貴方のことならなんでもわかる
私の愛する唯一のひと
愛しい貴方
貴方と出会ったのは
深夜の交差点
恋人を失って茫然自失
赤信号も気づかずに渡ろうとした私
腕を掴んで引き戻してくれた
生きる意味をくれたひと
これは運命
去っていく後ろ姿を見送った
貴方には恋人がいた
私のように貴方を愛す人だったら
貴方に釣り合う人だったら
でも違ったの
貴方が知らなかっただけ
寂しく辛そうな背中
それも少しの間
すぐに忘れるから
貴方を見つけるのは簡単ではなかった
あの夜お礼も言えずに別れていた
運命のひとだからいつか再会できる
待ってはいられなかった
もう貴方を愛し尽くしていたから
時間はかかったけど見つけたよ
多くの時間を費やしても
少しも苦に思わなかった
貴方のことを知るごとに
愛が深くなっていった
運命だと確信できた
貴方の上司は最低だった
パワハラで降格異動してきた男
優しい貴方は部下を守るため
一人で受け止めていたのよね
重い荷を背負ったよう俯きがちだった
空いた役職に貴方が就いた
パワハラから解放と同時に昇格
重荷からの解放か仕事への意気込みか
すっと背筋の伸びた後ろ姿
病めるときも
健やかなるときも
この命ある限り
愛し続け真心を尽くすことを誓います
貴方が私を知らなくても
太陽の下での続き
愛情
「どうしても 冬に会って欲しいの?」
君は、頑なにそう言って居たのに・・・
何故 僕は、あんな事を呟いて
君と一緒に出掛けてしまったんだろう...
すぐ 冗談だよと返せば良かった。....
君が 出掛けようと言った時に否定
すれば良かった。....
君が僕の前から 姿を消して
一年が 過ぎた。
初めの内は事件や 何かに巻き込まれたの
かと思い 気が気じゃ無く
方々を探し回った。
だけど 君は、どこを 探しても
見つから無かった。
君と最期に会った 暖かい春の日
木漏れ日の中で 君と一緒に
草の上に寝転んで 君は
とても嬉しそうに笑って居たね
まるで 焦がれていた物に
初めて 触れた様な
そんな笑顔だった。
帰り際に交わした君とのキス
君から 言い出した時は
びっくりしたけど...嬉しかった。
僕は、照れくさくて
躊躇う様にキスを
したけど...
君は、僕の頭を引き寄せ
情熱的なキスを返した。
瞬間 頭の中が 真っ白になった。
君は、貪る様に
必死に記憶する様に
僕の唇に吸い付くから
僕の体は 背筋から
甘い 歓喜の痺れが
走っていた。
思えば あれが君との最期だった。
君が結局 何者だったのか 僕は
知らない
だけど...
「冬にしか会えない...」
君が言った その言葉を
僕は、もっと深く考えるべきだった...。
ねぇ 僕は君に愛情を注げていただろうか...
結局 君に愛情を貰ってばっかで
何も返せていない様な気がする。
僕がそんな風に考え込んでいると
ふと カーテンの隙間から
冷たい風が吹き込んで来た。
そうして 僕の耳朶に...
「馬鹿ね... そんな事ある訳無いじゃない」と そんな君の声が
飛び込んで来た様な錯覚を覚えた。
僕は、顔を上げ
目から流れる水滴が これ以上流れない
様に 必死に堪えた。
あなたから貰った愛情を
今度は私があげる番
私からの愛情を受け取って
─────『愛情』
好きなものをひとつにまとめて
()で囲って右上にiを付ければ
そこはあいじょうで満ちている
こんなことでふふっと笑う
そんな人にもiを付ける
愛情か? とか訊かれても困る。
一言で言えば、腐れ縁のようなものだ。正直、面倒臭い。
注意しても聞かないし、こっちをおちょくってくるし、仕事の腕はいいようだがまともなところなんて見たことがない。
それでいて、他の人には優しく接しているが、俺の前ではあの態度だ。
でも、俺のことを遠回しに心配してくれているのは知っている……してるよな? 俺にだけああいう態度を取るのも、まぁ、俺には甘えているんだと思えば悪くない……そうか?(自問自答)
だから、体調を崩して、俺の前なのに少ししおらしくしているお前は調子が狂う。早く元気になっていつもみたいに軽口を叩いてくれ。
少し調子が戻ったお前に「気安く頭を触るな」とさっき怒られたばかりだというのに、ベッドで眠るお前の頭を撫でる。
愛情か? とか訊かれても困る。
この複雑な想いをまだその一言にまとめたくない。
『愛情』
きっかけはフランス語の講義だった。言葉を学ぶ以上話し相手は必要であり、講義の場合その役割は隣の席にいる人が担う。友人や知人同士でそれぞれがペアを作る中、余り者にいたのがノンさんだった。
フランス語では肯定を「ウィ」、否定を「ノン」という。それが名前を呼ばれている様で恥ずかしいのだとノンさんは語った。面白がってあらゆる質問に否定で返した時から、少しずつ打ち解けていった。
ある日の講義で、三十分ほどのショートフィルムを鑑賞して感想を述べ合う課題が出た。フランスのパリを舞台にしたロマンスで、それなりの面白さだった。
講義の後半で、ビズが話題になった。頬と頬を寄せあってリップ音を軽く鳴らすフランス式の挨拶で、親しい間柄で行われるらしい。文化や風習という言葉をこれほど意識したのは初めてかもしれない。
講義が終わって昼は何にしようかと考えていた折、ノンさんから図書館へ行かないかと誘われた。特に断る理由もないので了承する。その意図するところが何なのか、気になるのももちろんあった。
「借りたい本でもあるんですか?」
食堂に向かって行軍する人々の流れに逆らって、図書館へと歩いていく。木についた新緑が眩しく、風が初夏の香りを運ぶ。ノンさんの長い髪が吹かれて揺れる。
「あの、少し、気になる本があって」
それから会話はなく、ただ歩幅を合わせて黙々と歩く。
五分ほど歩き、図書館に辿り着いた。学生証を機械に読み込ませて中に入れば、館内はいつもより閑散としていた。腹が減っては勉学にも勤しめない。
検索コーナーへと向かうものだと思っていたけれど、ノンさんは地下一階にある、年代に分けられた古書の棚へと向かった。階段は金属製で、丁寧に降りても音が反響した。
ほとんどの人間が、目的がなければ古書に用はないらしい。フロアには誰もいないようで、ノンさんを追いかけてぐんぐんと奥まった場所へ行く。結局、フロアの隅っこにある棚の前で足は止まった。
「ここら辺に、気になる本があるんですか?」
棚に置かれた本を一冊手に取る。かなり古い材質の装丁が手に馴染まず、ぱらぱらと捲ると中は漢字だらけで読める箇所が一つも見当たらない。
「あの、ごめんなさい」
謝罪される事柄に心当たりがなかったので、首を傾げることにした。
「その、気になる本があるというのは、嘘、なんです」
「なるほど?」
本を棚に戻す。
「その、ビズ、してくれませんか」
一瞬、ビズという単語が処理されずに脳を通過していく。再試行したインターネットみたいに、遅れて理解がやってくる。
「したいんですか?」
小さな頷きが返ってくる。
「いいなって、思って」
「分かりました。やりましょう」
戸惑っているノンさんの肩を優しく掴んで頬を寄せる。リップ音というよりかはタンギングといった感じの音が鳴った。
「どうでした?」
「映画の、ヒロインになった気分です」
ビズされた方の頬を両手で押さえながら、ノンさんは恥ずかしそうにはにかんだ。
用件は本当にそれだけだったようで、図書館はその本分を果たすことなく終わった。せっかくだからと一緒に昼食をとることになり、お礼ですとりんごジュースを奢ってもらった。
「別に断らないんで、今度何かする時は普通に誘ってください」
食堂のおばちゃん特製のカレーを雑に頬張る。
「それなら、もう一つ、あるんですけど」
「何ですか?」
バッグをごそごそと漁り、ノンさんはスマホを取り出した。
「連絡先、交換したいです」
「そういえば、してませんでしたね」
メッセージアプリを開いて、QRコードを読み込ませる。ビズより先にやるべきでしたねという言葉は飲み込んだ。その代わりに一枚、隣で頬を撫でているノンさんを写真に収めて、『交換記念です』というメッセージと一緒に送信する。
『これからよろしくお願いします。』
律儀に読点のついた返信に、思わず笑みが溢れる。流石に今回ばかりは「ノン」とは言えなかった。
9.愛情
愛情とはなんだろう。子供の頃はわからず、先生に聞いてみたこともあった。
先生はいつも「家族はあなたを愛しているのよ」って説明してくれたが、いつも僕は納得いかなかった。
先生には言ってないが、僕に家族はいない。
小さい頃に捨てられたんだ。
僕の心はポッカリ空いていた。
多分、愛が欲しかったんだ。
誰でもいいから僕を愛して、
僕の心を愛でうめてほしかった。
でも、家に帰っても誰もいないひとりぼっち。
いつも寝る時は寂しくて泣いていた。
ある日、先生が家庭訪問で家に来た。
僕の家を見て、全てを悟ったのか僕に
「ねえ、私と一緒に住まない?私があなたのお母さんになるの!」と言ってハグしてくれた。
こんなに暖かいハグをしてもらったのははじめてだ。
暖かくて僕の心が暖かくなっていくのを感じた。
とても嬉しくなった。これが愛情なのだと…
そう思った。
「いいの?僕は先生の子供になってもいいの?」
泣きながら聞いていた。
愛情とは、家族関係なくあるんだなとそう思った。
愛情╱11月27日 月曜日
貴方と両想いになってから、私から貴方への愛情は増していくばかり。
私の知らないことを教えてくれることとか。
私が傷つかないように考えてくれるところとか。
女性を「女」って呼ばないところとか。
私のこと可愛いって言ってくれるところとか。
自分には自信が無いのに、家族との仲がいいってことは自信が持てるところとか。
知れば知るほど魅力的だね。
この先、お互いに愛情が薄れたりすることがあるかもしれないけど、そんな時は仲直りした日のことや、今迄のことを思い出して乗り越えていきたいな。
愛情
こんなに愛情を注げるものはなかなかない。
好きで好きで仕方がない。
この愛情は届いているのでしょうか。
28.愛情
君に注ぐあたたかな気持ち
かたちや表現はそれぞれ違っても
君を想いやる心は違わない
君に注ぐ優しい視線
見てない様で見守ってる
今笑ったね!今怒ってるね!
君に傾ける大らかな意識
何を想ってるの?待ってるよ
恥ずかしそうに話す言葉を
君に注ぐ柔らかな光
いつでもどこでも
君を心から信じてるよ
たゆたえども沈まず
尊び、憂い、
そこに存する
対象は
人はもちろんだが
人だけでない
しかし、
わたしが知る限り
それを持ち合わせ、
その想いを
行動に移せるのは
人のみである
歳を重ねることで
心の中にあった
『愛情』の定義が
変化してきた
まー
愛は流れて流されて
何処へ辿り着くのか
情が語りかけている
こころを見てごらん
澄んでいるのか
歪んでいないか
それをどう捉えるか
愛を伝える時の心は
受けとめた時の心は
あたたかく感じるか
冷たいものだったか
自分しかわからない
『愛情』
施設育ちの友人は「愛ってなにかわかんない」とよくこぼした。
愛は実体のあるものではない。言葉によって存在する抽象概念だ。
普段私たちは愛という言葉を気軽に用いるが、愛とはなにかと改めて問われればそれに答えるのは簡単ではない。それにも関わらずこの言葉が気兼ねく頻繁に使われるのは私たちが愛というものを知っていると感じているからだ。
多くの場合、人は幼少期に親と触れ合い、かわいがられたり褒められたりといった体験をする。その具体的体験を通して得た感覚や感情は、愛という名称を知らない人からすると、なんとなく温かい感じとか安心する感じなどといった漠然としたものでしかない。しかし愛という名称を知ったあと、その現象が愛という感じなのだと理解する。つまり具体的な触れ合いのなかで体験した名状しがたい感覚や感情、その出来事全体が愛という言葉によって概念化されまとめられる。このプロセスを経て愛を受けた人は自分が愛されたことを知り、愛というものを知る。
こう考えると、愛されたと感じる体験が非常に少ない、あるいは全くなかった人は愛とはなにかということを理解することが極めて困難であるといえる。知識として愛という言葉とその意味を知っていても自分の体験のなかにそれがなければ決してわかるという感覚にはならない。
「誰かに愛されたいよ」
「私のことを一番に愛してくれる人が隣にいてほしい」
愛がなんなのかわからないと言いながらも彼女は愛されることを渇望していた。会ったこともない人を探すことが不可能に近い難題であるのと同じように、なにかもわからないものを求めて彷徨うのは常に苦痛を伴う。
愛されるとはどういうことだろう。私たちは何をしてもらったときに愛されていると感じ、後に振り返って愛されていたと感じられるのだろうか。
私が思うにそれは自分がありのままに他者に受け入れられ、認められ、寄り添ってもらえたと実感できたときだ。
ただ衣食住の世話をされることが愛されることではない。
自分の気持ちを相手に素直に伝えることができ、それを認められ、受け入れられ、満たしてもらったとき初めて人は素直に愛されたと感じることができる。
愛がわからず愛を求め続ける人たちはこういった体験がとても乏しい。
そんな人たちを見ると私は彼、彼女たちが生き抜いてきた過酷な境遇を思わずにはいられない。
自らの意思を伝えることも出来ず自分を殺し我慢し続けてきたのではないか。
生きることに意味を見いだせずそれでも懸命にもがき続けているのではないだろうか。
「でもあなたに会えたのは嬉しく思ってる」
あるときふいに彼女が私に言った。
それを聞いて私はただ素直に嬉しかった。
もしかしたらほんの少しでも彼女に愛を与えられたことがあったのかもしれない。
そんな楽観的な希望に近いことをちょっとだけ考えた。
私は自分を犠牲にしたり能力以上のことをしようとは思わない。
でももし可能であるなら、出来る限り、私の周りの人たちだけにでも、愛を与えられる人でありたい。
※取り敢えず長文だから覚悟して※
《後の方は難しい文》
私の考え 私の感覚
愛情って何処から来るんだい?
人の情は何処から来るんだい?
《愛情》
現世に愛情はありますか?
現世に情識ありますか?
「情識」
情を司る人体機能は
年が重なるにつれて
醜く汚いものと認識しだした
《愛着の乱れ》或いは《愛着の汚れ》。
愛情知らぬ者が子を産み
虐待、育児放棄
愛情知らぬ者が恋愛し
DVやどっちかが奴隷化
【愛情の闇】
《大人の愛情表現》と《子供の愛情表現》
その違いが人類の愛情を変化させてしまったのか?
人類の愛情教育が不足している現在には
〈綺麗な愛情表現方法〉がない。
愛着の乱れは愛情の乱れ
愛情の乱れは性欲の乱れ
性欲の乱れは人格の乱れ
人格の乱れは本質の乱れ
本質の乱れは自我の乱れ。
命の大切さを考え続けなければ
〈愛着〉即ち【愛情】を持つ事ができない
愛情即ち命を大切に慈しむこと
他を憎み誹り虐を持つは
愛着に非ず愛情に不座し
愛に在っても情に非ずる
如何にも笑止千万な世の形
許し難い反愛なる教育精神
自を知らずに愛を知る
愛を知らずに情を知る
そんな道理は世に非ず
故に人に非ず妖人なり
日の妖人
魔地(マッチ)一本
禍事の元
《追加》
愛情をお金で買おうとする非人が居る
寧ろお金で愛を手放してる事は言うまでもない
《慈悲深い思考を持つ者》
《慈悲浅い思考を持つ者》
《慈悲が無い思考を持つ者》
《愛弱性食情愚不学能乱》
非を愛す不愛を拾いて
愛を化かし理を曲げる
弱愛奴隷相に我を沈め
邪情に帰依したる故は
情邪の鬼と為らう性道
視野狭く道筋反れるを自覚せず
あたかも我が身が勝者と唄いけりなん
《法難邪正》法難負正《法難情不》
我門閉鎖に愛に溺れ他を憎む鬼神と鬼仏
末理の中に末法現れ地は干乾びる現世の嘆き
【鬼愛に相し情鬼と化す】
不情に登り幻情と学び非ずに
自を落とし給う不情なる灯火かな
考に慈を心に愛を持ち
慈愛を情に乗せ他の邪を喰らい
悪情愛を滅する行に取組むにて
愛を浄化出来ましょう
愛浄化(あいじょうか)
愛情も浄化しなきゃ詰まっちゃうよ
そしたら愛なんて人から感じなくなる
《不覚愛情識是抄》
無愛情とは鬼情の始まり
鬼情の先に闇情有りましょう
闇情即ち《情が隠れ暗い》
情とは感覚
情が荒いとは
感覚が荒い
感覚が荒いとは
意識が荒い
意識が荒いとは
思想が荒い
思想が荒いとは
気持ちが荒い
気持ちが荒いとは
生きる道が荒い
生きる道が荒いとは
道理がない
道理がないとは
学びがない
学びがないとは
自考がない
自考とは
自分自身を考える力と説く
自分が解らなければ
愛情など理解できなかろう
勘違いと感違いの区別は
自分自身を理解していなければ
見定める事は出来ない
何を学び何を考えるか
何を愛し何を紐解くか
根本は全て自己と説く
愛の根は心
自心を知らなければ
情も得ない。
※そんな私は強度の人間不信
寧ろ人間じゃないかもね
愛情とか考えてみたが
やはり殺意しか生まれない
他人の愛情を感じれなくなった時
人は人を狩りに行く
それが《狩人の法則》
同時に
今の時代風景であり
現実に起こっている
社会問題
【愛殺】あいさつ
ふっと頭に降りてくる言葉たちの物語
愛情はこの辺にしとく
さぁ〜てお次は何のテーマかな?
愛してる
あぁ、なんて愛おしいんだろう
朽ちることのない素肌
潤った唇
眠そうにあくびをする姿
怒って怒鳴っている姿
全てが愛おしく感じてしまう
どうしてこんなに愛しいのか
昔は大嫌いだったのに
「金を金に換える奴なんて居ないでしょ?愛に愛を返されても何も生まれない。だから俺は金を貰って、向こうは愛を貰う。愛情って対価ですから。」
彼は、論破するでもなく、悟ってる風なわけでもなく、それがごく当たり前のように、この世のルールを教えるみたいに俺にそう言った。
「無償の愛じゃ食べれないので。まぁ、当たり前ですけど。無償なんで。」
タオルで髪を雑に拭きながらスラスラと自論を述べ、ベッド脇のコンセントに刺したドライヤーを拾い上げた。それを黙ってじっと見てると、不満そうな顔をしてこちらへ向き直る。
「腑に落ちてない、って感じっすね。」
「うん。だって俺、金払ってないし。」
「貴方は別ですよ。」
「君の言う“対価”ってものがあるならさ、俺と居るだけ無駄なんじゃない?お金発生しないしさ。」
「違いますー。貴方とはお金目的で会ってないので適用外ですー。」
「そうなの?」
「そうですよ!むしろ、俺が払いたいくらい。こんなに愛してくれて、大切にしてくれて、俺のこと想ってくれてるんだから。意味わかんない。お金払わないとバランス取れなくてマジおかしくなりそう。」
「まじで財布出しそうだからやめて。……そしたらさ、俺と居るのは生産性のない行為、ってことでいい?」
「え、逆に何か生産性あります?物理的な。」
「ないわ。」
「でしょ?」
「案外正しい気がしてきた。」
「でしょでしょ。信頼とか、欲求とか、精神的な話してたらキリがないっていうか、それだけに支えられてる仕事の身としては何も言えないです。」
「じゃあ今日も、無駄で生産性がないのに俺に会ってくれるんだ。」
「あれ、怒ってます?」
「ううん。嬉しい。君が純粋な好意からここに居てくれてる、って知れてめっちゃ嬉しくなっちゃった。」
「こんなんで喜んでもらえるならもっと早く言ったのに。」
無駄で、
「君が心赦してくれたと勘違いしちゃいそう。」
呆れるほど堕落的。
「存分に勘違いしちゃってくださーい。」
それがいつか勘違いじゃないと気づくまで、
頑張って俺を愛してて。
俺だけの貴方で居て。
夜闇を急ぐ。自分自身に急き立てられて。
一度でも足を止めたら、もう走れなくなりそうだ。それほど疲れている。任務を終えて追手も退けたが、返り血の匂いが呼吸を妨げ、受けた傷が絶えず存在を主張している。
少しは身綺麗にして行きたいが、そんな暇はないようだ。
一心に駆ける。……今は、ただ、会いたい。
辿り着いた家は既に灯りが落ちて暗いが、家の主は起きて待つと言ってくれていた。足を止めると同時によろめいて、手を付いた戸ががたり、と音を立てる。
『どなたです?』
私だと短く答えると、戸が開いて中に引き込まれた。現れた女はそのまま素早く戸を閉め、私の背中に手を添えて体を支える。寄り添い、嗅ぎ慣れた香りを吸って、全身が一気に緩むのを感じた。
そして何故かふと、遠い昔のことを思い出す。まだ里で他の子供達と遊んでいた幼い頃、年上の誰かが捕まえた鈴虫をくれたことがあった。大喜びで竹籠に入れ何処へ行くにも持ち歩いていたそれが死んだ時、突付いても息を吹きかけても、どうやってももう鳴かないのだと解って、たしか、私は泣いたと思う。あの頃は、例え虫でも死は悲しかった。
お怪我を見ます、と言って灯りを付けようとする女の手を取って引き寄せた。肩口に顔を埋め、残った力で縋るように抱き竦める。
『…すまない。』
すまない、きっと私には、お前を置いて行くことしかできない。でも、だからどうか、お前は私より先には死ぬな。
抱き返す指先を背中に感じながら、そっと女の肩に涙を吸わせた。生きている。
【愛情】
失敗したくない。特に好いた女の前でなら尚更。
悪友にあれこれ入れ知恵され、親友にも世話を焼かれ
それでも踏み出せず。
彼女は野菊だ。踏み荒らしてはならない。手を伸ばしても届かないこの関係ままでいいとさえ思った。
ある晩に彼女が囁く。
「貴方の本当のお嫁さんにして下さい」
茶を吹いた。
「は、はぁ!?意味わかってんのかよ?!」
頬を染めてこくんと頷く彼女が煩わしい。
言わせてしまった。
「やめろ、そういうこと言うのやめろよ…」
燃え滾るような欲が抑えられなくなる。情けない口許を隠す。
耐えてきた。蹂躙してしまう。手折ってしまう。
それさえも言い訳だ。ちくしょう格好悪いな。
【どうか 誰よりもやさしいきみが、“人”を愛し、愛され 幸せに人生を終えられますように】①
「ねえ、18265番 あなたの名前を決めましょう。
それは、とっても大事なものよ。だから、私は一晩中悩んで決めなくってはいけないわ。」
ああ、たのしみね!明日の朝、あなたは 初めて名前を呼ばれるのよ!
無造作に髪を伸ばした女性はそう言い、ベッドに私を置き、「おやすみ」と言い部屋を出ていった。私はロボットだから寝る必要はないのに。
中古で半額の私を買った女性は”ミラ“と言うらしい。
ご主人様、と呼ぶと怒られた。
ミラは私に何を求めているんだろうか。人間はよくわからない。
朝まで来ないと言っていたから、スリープモードになろう。
「おはよう、ノア!いい朝ね。きっと今日は、人生で忘れられない日になるわ!」
「あのね、ノア。これからあなたの名前は“ノア”というのよ これからは、そう名乗って。
…私、あなたがこの名前を気に入ってくれるかしらって考えて、昨日はちっとも眠れやしなかったのよ!」
…どうかしら、気に入った?
ちらりと上目遣い気味にこちらを伺うような素振りを見せるミラ。
気にいるも何も、私はロボットだから感情なんてインプットされていない。
「名前を与えてくださりありがとうございます、光栄です。」
「ねえ、昨日から思っていたのだけれど…それ、やめてちょうだいな。
もっと砕けた話し方がいいわ。ね、おねがい」
ミラは少し不満げに眉を顰めた後、にこっと笑って抱きついてきたから、私も笑顔に切り替えて言葉を発する。
「わかったよ、ミラ。なにか手伝えることはあるかい?」
愛という言葉に
囚われ過ぎずに
頑なになった、自分を許せたら
頑張っていた、自分を褒めていたら
こんな形ですれ違うことも
きっとなかった、はずなのに。。
【お題:愛情】