やなまか

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失敗したくない。特に好いた女の前でなら尚更。
悪友にあれこれ入れ知恵され、親友にも世話を焼かれ
それでも踏み出せず。
彼女は野菊だ。踏み荒らしてはならない。手を伸ばしても届かないこの関係ままでいいとさえ思った。

ある晩に彼女が囁く。

「貴方の本当のお嫁さんにして下さい」
茶を吹いた。
「は、はぁ!?意味わかってんのかよ?!」
頬を染めてこくんと頷く彼女が煩わしい。
言わせてしまった。
「やめろ、そういうこと言うのやめろよ…」
燃え滾るような欲が抑えられなくなる。情けない口許を隠す。
耐えてきた。蹂躙してしまう。手折ってしまう。

それさえも言い訳だ。ちくしょう格好悪いな。

11/27/2023, 5:58:11 PM