『愛情』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
「金を金に換える奴なんて居ないでしょ?愛に愛を返されても何も生まれない。だから俺は金を貰って、向こうは愛を貰う。愛情って対価ですから。」
彼は、論破するでもなく、悟ってる風なわけでもなく、それがごく当たり前のように、この世のルールを教えるみたいに俺にそう言った。
「無償の愛じゃ食べれないので。まぁ、当たり前ですけど。無償なんで。」
タオルで髪を雑に拭きながらスラスラと自論を述べ、ベッド脇のコンセントに刺したドライヤーを拾い上げた。それを黙ってじっと見てると、不満そうな顔をしてこちらへ向き直る。
「腑に落ちてない、って感じっすね。」
「うん。だって俺、金払ってないし。」
「貴方は別ですよ。」
「君の言う“対価”ってものがあるならさ、俺と居るだけ無駄なんじゃない?お金発生しないしさ。」
「違いますー。貴方とはお金目的で会ってないので適用外ですー。」
「そうなの?」
「そうですよ!むしろ、俺が払いたいくらい。こんなに愛してくれて、大切にしてくれて、俺のこと想ってくれてるんだから。意味わかんない。お金払わないとバランス取れなくてマジおかしくなりそう。」
「まじで財布出しそうだからやめて。……そしたらさ、俺と居るのは生産性のない行為、ってことでいい?」
「え、逆に何か生産性あります?物理的な。」
「ないわ。」
「でしょ?」
「案外正しい気がしてきた。」
「でしょでしょ。信頼とか、欲求とか、精神的な話してたらキリがないっていうか、それだけに支えられてる仕事の身としては何も言えないです。」
「じゃあ今日も、無駄で生産性がないのに俺に会ってくれるんだ。」
「あれ、怒ってます?」
「ううん。嬉しい。君が純粋な好意からここに居てくれてる、って知れてめっちゃ嬉しくなっちゃった。」
「こんなんで喜んでもらえるならもっと早く言ったのに。」
無駄で、
「君が心赦してくれたと勘違いしちゃいそう。」
呆れるほど堕落的。
「存分に勘違いしちゃってくださーい。」
それがいつか勘違いじゃないと気づくまで、
頑張って俺を愛してて。
俺だけの貴方で居て。
夜闇を急ぐ。自分自身に急き立てられて。
一度でも足を止めたら、もう走れなくなりそうだ。それほど疲れている。任務を終えて追手も退けたが、返り血の匂いが呼吸を妨げ、受けた傷が絶えず存在を主張している。
少しは身綺麗にして行きたいが、そんな暇はないようだ。
一心に駆ける。……今は、ただ、会いたい。
辿り着いた家は既に灯りが落ちて暗いが、家の主は起きて待つと言ってくれていた。足を止めると同時によろめいて、手を付いた戸ががたり、と音を立てる。
『どなたです?』
私だと短く答えると、戸が開いて中に引き込まれた。現れた女はそのまま素早く戸を閉め、私の背中に手を添えて体を支える。寄り添い、嗅ぎ慣れた香りを吸って、全身が一気に緩むのを感じた。
そして何故かふと、遠い昔のことを思い出す。まだ里で他の子供達と遊んでいた幼い頃、年上の誰かが捕まえた鈴虫をくれたことがあった。大喜びで竹籠に入れ何処へ行くにも持ち歩いていたそれが死んだ時、突付いても息を吹きかけても、どうやってももう鳴かないのだと解って、たしか、私は泣いたと思う。あの頃は、例え虫でも死は悲しかった。
お怪我を見ます、と言って灯りを付けようとする女の手を取って引き寄せた。肩口に顔を埋め、残った力で縋るように抱き竦める。
『…すまない。』
すまない、きっと私には、お前を置いて行くことしかできない。でも、だからどうか、お前は私より先には死ぬな。
抱き返す指先を背中に感じながら、そっと女の肩に涙を吸わせた。生きている。
【愛情】
失敗したくない。特に好いた女の前でなら尚更。
悪友にあれこれ入れ知恵され、親友にも世話を焼かれ
それでも踏み出せず。
彼女は野菊だ。踏み荒らしてはならない。手を伸ばしても届かないこの関係ままでいいとさえ思った。
ある晩に彼女が囁く。
「貴方の本当のお嫁さんにして下さい」
茶を吹いた。
「は、はぁ!?意味わかってんのかよ?!」
頬を染めてこくんと頷く彼女が煩わしい。
言わせてしまった。
「やめろ、そういうこと言うのやめろよ…」
燃え滾るような欲が抑えられなくなる。情けない口許を隠す。
耐えてきた。蹂躙してしまう。手折ってしまう。
それさえも言い訳だ。ちくしょう格好悪いな。
【どうか 誰よりもやさしいきみが、“人”を愛し、愛され 幸せに人生を終えられますように】①
「ねえ、18265番 あなたの名前を決めましょう。
それは、とっても大事なものよ。だから、私は一晩中悩んで決めなくってはいけないわ。」
ああ、たのしみね!明日の朝、あなたは 初めて名前を呼ばれるのよ!
無造作に髪を伸ばした女性はそう言い、ベッドに私を置き、「おやすみ」と言い部屋を出ていった。私はロボットだから寝る必要はないのに。
中古で半額の私を買った女性は”ミラ“と言うらしい。
ご主人様、と呼ぶと怒られた。
ミラは私に何を求めているんだろうか。人間はよくわからない。
朝まで来ないと言っていたから、スリープモードになろう。
「おはよう、ノア!いい朝ね。きっと今日は、人生で忘れられない日になるわ!」
「あのね、ノア。これからあなたの名前は“ノア”というのよ これからは、そう名乗って。
…私、あなたがこの名前を気に入ってくれるかしらって考えて、昨日はちっとも眠れやしなかったのよ!」
…どうかしら、気に入った?
ちらりと上目遣い気味にこちらを伺うような素振りを見せるミラ。
気にいるも何も、私はロボットだから感情なんてインプットされていない。
「名前を与えてくださりありがとうございます、光栄です。」
「ねえ、昨日から思っていたのだけれど…それ、やめてちょうだいな。
もっと砕けた話し方がいいわ。ね、おねがい」
ミラは少し不満げに眉を顰めた後、にこっと笑って抱きついてきたから、私も笑顔に切り替えて言葉を発する。
「わかったよ、ミラ。なにか手伝えることはあるかい?」
愛という言葉に
囚われ過ぎずに
頑なになった、自分を許せたら
頑張っていた、自分を褒めていたら
こんな形ですれ違うことも
きっとなかった、はずなのに。。
【お題:愛情】
「あんたみたいな子、産まなきゃ良かった。」
母から言われた言葉だ。
母は昔から愛情が無かった。
笑顔がぎこちなくて、ご飯が温かくなかった。
私が5歳の頃、母は突然変わった。
ぎこちない笑顔すら見せなくなり、洗濯物や料理をしなくなった。
いわゆる育児放棄だ。
私は幼いながらに母を演じた。
一人っ子のふたり家族。
どう考えても母がいなくなったら終わる環境。
父と離婚したのは私が生まれてすぐの話だった。
私の世話を母ばかりしていて父がそれに気づいた頃にはもう遅かった。
父の目の前には、離婚届の一枚の紙と印鑑が置かれていた。
母が夜中に枕を濡らしていたことを知っていた私には、とても良い光景ではなかった。
父が家を出ていってからは早かった。
元々住んでいた家に母と二人で住み、母が私を育ててくれた。
そして5歳の誕生日を迎えた頃には私の目を見る母の姿はどこにも無かった。
「まま、ごはん」
「あ?まま疲れてんの。見て分かんない?
ほんっとあんたって子はだからそんなちっさい脳みそなんだよ!!」
「…ごめんな、さい。」
「謝るんだったら黙ってくれる?また外に出されたくなかったらね」
「……」
私が覚えてる限りはこれが一番長く話した会話だった。
母は2人娘がよかったらしい。
私が生まれてすぐに父が出ていって、男の人を探す余裕もなかった母にはもう1人子を産むのは難しかった。
私と母には会話はもちろん愛情もない。
物心ついた頃には母からの愛情がなかった。
いつでも死と隣合わせの私の人生は、壮大なようで卑小だった。
今、私はもうすぐ19歳になる。
まだ母とは一緒に暮らしているし相変わらず会話はない。母は新しい彼氏が見つかり、家に帰ってくることは稀だ。
父からは連絡もなければ音沙汰もない。
多分、私との間には愛情がないからだ。
母は5歳になるまでは私を愛してくれた。
本当の愛かは理解できないが、それでもおぼろげな愛情を私にくれた。
まだ心にはぽっかり穴が空いたままだけど、この穴を埋めるには愛情以外方法はない。
貴方は、愛情を注げていますか?
私の目を見て、答えてください。
"愛情"
ある日のことだった。
母に、チョココロネが食べたいと言ったことがある。
すると、次の日、母は、チョココロネを買ってきてくれた。
これが、愛かと妙に感心した。
父は、本も映画も見ず、ゲームもしない人だった。
人生を損していると思っているが、
父のことは、好きだった。
両親の元に生まれて、人生が有利になったことは、
一つもない。
だが、親ガチャで、ハズレたとも思わない。
それは、きっと、とても幸せなことで、
胸を張っていいことだろう。
『好き』とか『愛してる』とかが分からなかった。
でも今日、知ってしまったかも。
偶然出逢った人だけど、凄く心惹かれた。
これが、『好き』なのか。
自分は、その人と付き合った。
そしたら自然と『愛してる』と思うようになった。
これが『愛情』か。
人は、無知だ。どんな生物も無知から始まる。
でも、こうやって理解していくものなのだろう。
それだけでも凄いなと思った。
#愛情
所謂『推し』は
わたしにとっては単なる憧れで
どうこうなりたい等と
決して思わず
寧ろずっと憧れであって欲しい
わたしはかなり鈍感なので
愛情を注がれ続けると
段々とわたしの愛情も育まれてゆく
そんな恋愛が合っているようです
今や子供も動物も
対象が増え
いずれ訪れる別れに
怯えています
【愛情】
僕が手に取ったいいものを見たあの子が、
「とてもいいものね、彼が見たらきっと喜ぶ」
と言ったものだから、僕はあの子にそれをあげたんだ
「ありがとう」と花のように咲いた感謝を置いて、
遠くに居る彼へそれを持ち寄り笑うあの子はとても幸せそうだった
少し痛む胸の奥を見ないふりした僕もまた、幸せだった。
相手の気持ちが知りたくて
会うたびたくさん会話した
得たものといえばちっぽけだった
陽が沈みきるすこし前の夕焼けに
落ち葉が風に舞い
また道に落ちてゆく
そんな光景を横目に見ながら
たわいもない話が続いてゆく
意を決して
私との関係を聞いてみた
友達だよと返された
気持ちは伝えてないけれど
きっと気づいてくれていると思っていた
それとも気づいていたからなのか
夜空を眺める私の目には
星屑がキラリと落ちていった
愛情
お題 愛情
貴方にむけた想いが
友情からいつしか愛情にかわっていた
そのことに気づいたのは
ここ最近のことである
いつものように繋いだ手が
貴方の冷え性の冷たい手が
私の心をより一層暖かくした
気づかないふりをしながら
静かに今日も春が来るのを待っている
愛情が欲しい。空っぽで虚しい私という器に、愛情というものを詰め込んで欲しい。詰め込んで、流し込んで、溢れるまで繰り返して欲しい。
でも結局、虚しくなるだけなのかもしれない。
なら、私も愛情を与えれば良いのではないだろうか。本気で愛情を注げるなにかを見つければ良いのではないだろうか。
まあ、そう簡単に見付かるわけがないのが現実であるのだ。
あぁ、愛情によって満たされたい。
普段は、何考えてるのか分からない友達。ちょっと怖い。けど、自分が本気で悩んでる時、しんどい時、そっと近くに来てくれる。
きっと、それは不器用な彼女なりの『愛情』の表現なのだろう。ねぇ、大丈夫。ちゃんと伝わってる。
愛情というと、花を育てる事だと思うのは何故だろう。
そっと優しく水をやり、日に当て、肥料をあげる。
それは、花を大切に思う気持ち。
自分の寂しさを紛らわせたり、沈黙が不安で何かを人に話したりするのは、どこかおどろおどろしくて、暗い愛情のように思う。
それは、人を使って自分で自分をさすっているようなものだから。
何かをする時、花に水をあげる時のような優しい気持ちでできたらいい。
その時幸せを感じられたら、それは真の愛情だと思う。
沢山の人から、少しずつ愛情を注がれる。
一人の人から、沢山の愛情を注がれる。
これって、どっちの方がいいんだろう?
どっちの方が満たされるんだろう、幸せになれるんだろう?
〜愛情〜
愛情
愛情って加減が難しい。
かけ過ぎてもいけないし、
かけなくても良くない。
しかも、正解はかけられた方にしかない。
愛情深いってのは、
実は自己満足なのかもね。
paki
一口に愛情と言っても、様々な形があるだろう。
当然目には見えないものだから、わかりやすくなるように別の形に変えて。
例えば、どれほどたくさんのお金を使ったとか、時間を費やしたとか、言葉を与えたとか。
人にそれぞれによって変化された愛情を、受け取る側が正確に感じ取れるかはまた別の話だ。
そして同じように愛情を返すことが出来るかどうかも。
ただ、受け取ってもらう前提ではない、見返りを求めない無償の愛情というやつも時には存在するので、なかなか厄介である。
一方的に与えられるだけで、相応のものを返せない返させてもらえないというのは、案外居心地の悪いものだ。
意外とこの無償の愛情というやつが一番恐ろしいものかもしれない。
このように愛情とは様々な側面があり、与える立場も受け取る立場も角度によっては非情に映っても実際どうであるかは当人にしかわからないものなのである。
「それはつまり?」
「浮気のように見えたかもしれないけど浮気じゃないのです」
君は、冷えたグラスにゆっくりと
溢れそうなほどたっぷりと注いでくれた。
アルコールを含んでいないはずなのに
いつの間にか酔いは回る。
愛情
身近な人に、「愛情って何だと思いますか」と聞いてみた。
「親から子への無償の愛」
これは母の解答。にっこり微笑んでいるが、ちょっと圧を感じる。感謝してます、はい。
「見返りを求めないこと」
親友からの答えだ。無償の愛と少し似ている。答えながら虚空を見つめていたのが気になるが。今度、酒でも奢るよ……。
「何をされても許せることかな?」
久しぶり会った父は言う。気障な解答だ。こっちの目を真っ直ぐに見て言うのも、何か腹が立つ。そういうとこだぞ。
「恋からの変貌、の、最終形態!」
恋に恋する年齢の妹が、少女漫画片手に元気よく答えてくれた。瞳がキラキラしている。姉としては、この汚れなきまま、清らかに育ってほしいと思う。多分、無理な願望だけれど。
「うーん……拉致監禁?」
物騒な答えは、彼女のものだ。いつも通り、にこにこと穏やかに笑っている。
一瞬、固まって、うん? と首を捻る私に向かって、彼女は言う。
「やっと、私の気持ちに応えてくれる気になったの?」
カフェのテーブルの上で、私の手を握る。
私は彼女を見た。いつもの笑顔、いつもの温もり、いつもの声色。
目だけが、変なふうに光っている。
「ありがとう、嬉しいな。もう準備はしてあるの。さっそく行こう」
私の手をとり、立ち上がる。踊るように。舞うように。私の腰に腕を回し、唇を耳に近づける。
「今日から、あなたは私のもの。たくさんかわいがってあげるね」
彼女は店を出る。私も店を出る。彼女の家に向かう。私の意思は置き去りのまま。彼女の部屋は狭い。彼女の目は私に向けられている。一時たりとも背けられることはない。私の意思は、置き去りのまま。
愛情って、何ですか?