『幸せに』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
幸せに
不幸を知って初めて幸福に気付けるのだとしたら、そんな幸せ欲しくない。それは幸せという名の後悔でしかないのだから。
不満を抱えて幸せに気付けていないのだとしたら、それはせいいっぱい生きている証…なのだと思う。せいいっぱい生きて行き着く先が後悔しかないのなら、そんなの間違っている。
相棒とあいみょんのLIVEとかこんな幸せな日はないね!ってインスタに投稿してる未来を夢見てお互い勉強中。
#幸せ
「豊永くんって彼女とかいないの?」
サークルの飲み会で出会ったばかりの、けばけばしい化粧の女が声をかけてくる。換気の悪い安居酒屋の店内はアルコールと煙の匂いが混じって酷く息苦しい。それだけでも嫌だと言うのに、わざとらしく俺の腕に豊満な胸を当てて来ているこの女は、羽虫を誘う花のように濃密で濃い香水の匂いをぷんぷんと撒き散らしている。
ああ気持ち悪い。だから飲み会なんて来たくなかったんだ。淀んだ空気も酒も濃い味の料理も、全部苦手だと言うのに。一度くらいは顔を出してくれ、と頭を地面に擦りつけて頼む友人の勢いに負けた過去の自分を恨む。出そうになった恨み節を飲み込もうと、なおも右腕にしがみつく女を振り払って烏龍茶のグラスに口をつける。早くこの時間が終わることを願って、進みの遅い時計をチラ見しながら、心にもない談笑に身を投じた。
解散時間は八時過ぎ。二次会カラオケへの誘いをキッパリと断って家路に着く。身に染み付いた悪臭たちを一刻も早く落としたくて、少し足早になる。それに、家では可愛いお姫様が俺の帰りを今かと待ちわびているのだ。寄り道なんてするものか。
電車に揺られ、最寄り駅から徒歩10分。お姫様の待つお城はそんな場所にある。まあただのマンションなのだが。家に入る直前、玄関前で髪を整える。あの子を幻滅させる事はしたくないから。一息ついてドアを開ければ、ぱたぱたと足音を立てて、彼女は満面の笑みで俺にしがみついてくる。
「きょーお兄ちゃん、おかえり! きょーもいちにちおつかれぇ」
これが俺のお姫様。パステルピンクのパジャマが良く似合う、今年で5歳の俺の妹。俺の帰りがどれだけ遅くても、眠気まなこを擦って待っていてくれる、いじらしい女の子。今日だってほら、お風呂上り、シャボンの香りをした髪を乱して駆けてきた。舌っ足らずなその口で労われるだけで、疲れなんて吹き飛んでしまいそうだ。俺の身体をひしと抱きしめ嬉しそうな姿に、自然と笑みが零れてしまう。が、突然お姫様は顔をしかめて俺から離れる。
「きょーお兄ちゃん、くしゃい」
「ほ、ほたる……?」
「くしゃいお兄ちゃん、やだ」
俺に染み付いた悪臭に対してなのは分かる。それでも、妹のその一言は俺の心に酷く突き刺さった。それはもう致命傷ギリギリくらいに。だから飲み会なんて行きたくなかったんだ。今日何度目かの後悔を胸に脱衣所へと急いだ。
丹念に泡を立て、身体や髪に擦り付け、隅の隅まで丹念に流せば、すっかりシャボンの良い香りになった。着替えた部屋着も清潔で、これならお姫様の機嫌を損ねないだろう。濡れた髪をタオルで拭きながら寝室に入れば、半分目を閉じかけている妹の姿。こくりこくりと船を漕ぎながらも、懸命に目を開こうと頑張るその姿が可愛らしい。妹は俺の到来に気づくと再び俺に飛びついてきてすんすんと鼻を鳴らす。さて、お姫様の評価は如何に。
「お兄ちゃんせっけんのにおいー。ほたるといっしょ!」
合格。心の中でガッツポーズする。お姫様はぴょこん、と俺から離れると、続けて俺に絵本を差し出してじっとこちらを見つめる。見つめ返せばもじもじと手遊びを始めた。読み聞かせのお誘い、彼女がこの時間まで睡魔に抗っていたのもこの為だ。もちろん俺は断らない。だって愛しい姫様の頼みなのだから。
布団に潜って物語を語り聞かせれば、お姫様は様々な表情を見せてくれる。白雪姫がお城を追われればハラハラとした顔、小人たちと暮らし始めれば楽しそうに鼻を鳴らす。コロコロ変わる表情はどれも可愛いけれど、やっぱり一番好きなのは、瞳輝くにっこり笑顔。この先何があろうとも、彼女には笑顔でいて欲しい。だって童話のお姫様は、いつでもハッピーエンドを迎えるものだから。
おしまい、と本を閉じれば隣で耳を傾けていたお姫様は、すやすやと安らかな寝息を立てていた。起こさないよう、ゆっくりと布団から出る。掛け布団を彼女の肩までしっかり掛け直して、その小さなおでこに優しく口付けた。いつか大きくなって、彼女だけの王子様か見つかるその時までは、仮初の王子様を演じよう。だって俺は彼女にとって、たったひとりのお兄ちゃんなのだから。
どうか今は良い夢を。そしていつかは幸せに。そう願いを込めて寝室の扉をゆっくりと閉めた。
【幸せに】
幸せに暮らしましたとさ。
それで終わり人生って嫌だなって思う。
もっと刺激が欲しいとも思うし、色んな事に挑戦し続けたいとも思う。
あんまりアクティブなタイプじゃないけど気持ちはそんな感じ。
どうか、幸せでいてください
そう言って、僕の彼女は消えてしまった。前の彼女も、その前の彼女も。彼女未満の、気になっていた女の子も。隣の家のお姉さんも、従姉妹も、気難しい妹も。みんな、同じ言葉を残して、逝ってしまった。
僕が彼女たちを愛したからこんなことになってしまった、んだと、思う。この小さなセカイで、君と僕の恋は、愛は、世界の命運を背負い込んでしまった。そして、彼女たちを、えいえんがあるという向こう側に突撃させてしまった。彼女たちが運命に特攻したあと、決まって骨が降り注いだ。一人の人間の身体にある骨量よりずっと多くの骨が降るから、きっとそれは特攻し死んだ彼女のものではないんだと思う(混ざって入るかもしれないけど)。僕は骨が降るたび街を歩き回り、肋骨を一本だけ拾う。それを持ち帰り、部屋の奥にしまってある木箱に収める。かちゃり、と、すでに収められている肋骨たちが鳴る。僕は、この肋骨たちを彼女たちの遺品とすることにした。向こう側にいって、骨も肉も涙も残らなかった彼女たちを悼むために、誰のものかもわからない肋骨を用意する。肋骨を詰めた箱を抱きしめるたび、僕は彼女たち一人一人を思い出す。この箱の中には彼女たちの誰一人としていないけど。僕は、この箱の、ここに詰め込まれた、誰のものでもない肋骨を通して彼女たちを感じる。
僕にとって彼女たちを感じるということは、結局のところ、彼女たちの感じた不安や寂しさや恐怖に思いを馳せることではない。彼女たちの怒りに共感することもないだろう。これはただ、あの日にあった恋心を追体験するための儀式だ。儀式だから、骨は本物でなくて良い。箱は棺でなくて良い。僕は、彼女たちを愛している。僕に、腐ることのない恋を残してくれるから。
かつん、かつん、かつん
骨がまた、降り出した。きっと、どこかで誰かが向こう側に行ったのだ。それは、少女かもしれないし少年かもしれない。老年かもしれないし青年かもしれない。そもそも、人ですらないかも。いずれにせよ、きっと、僕みたいな人間が誰かを愛してしまったということだ。
「どうか、幸福でいてください」
きっと、そう言われたのだろう。
「どうか、幸福でいてください。私の苦しみや悲しみが、私の命が、あなたの都合の良い解釈になりかわり、平べったい、美しくて無害な思い出になって、あなたの退屈を紛らすための慰めになるから。思い出を反芻することで得られるかりそめの快楽を幸福と拡大解釈してください。なるべく不幸でいなくていいように。私の命をそんなことのために使い果たすあなたが、不幸を感じるなんてあまりにも身勝手だと思うから。だから、どうか、幸福でいてください」
―幸せに―
良い天気だから公園でお花見した。
満開の桜を眺めながらのお散歩気持ち良かった。
「幸せに」
全世界に祈る
#5 幸せに
幸せが何であるかも、どんなふうであるかも、未だにはっきりとしないというのに。私は幸せになることを恐れているし、避けている。
不満足でありたい。
満たされないでいたい。
いつまでも自由に焦がれていたい。
不幸になりたいわけではない。
報われず、理不尽に打ちのめされたいわけでは決してない。
多くを望むのが、恐ろしく怖いだけだ。
生まれながらに、過剰なものが性に合わないだけだ。
私は臆病で愚かで怠け者である。
幸せを望まぬ、怠惰な人間である。
幸せに
「どうか、どうか──」
祈るように指を組んだ母親の口から漏れ出る言葉を、私はまるで呪いのようだと思いながら聞いていた。
他人の願う幸福がどんなものかなんて、その本人でない限り分かりはしないのに。それなのに彼女は、彼女の描く幸福を私に与えんとするのだ。
どうか、どうか。この子が幸せになりますように。
頭を垂れて繰り返す女の背中を見つめながら、私は私の願う幸福のために刃を振り下ろした。
【幸せに】
「今、あなたは、幸せですか?」
そう聞かれたら、きっと私は「はい」や「いいえ」ともつかない返事をするだろう。
別に"不幸せ"というわけではない。
少なからず、理解ある友人や仲間はいるし、尊敬したいと思える人もいる。つつがない暮らしを続けられているし、将来の夢や趣味・興味・関心も、たくさんある。
現状に不満はない。不満があるなんて言ったら、なんて傲慢なのかと怒られてしまうだろう。
ただ、まだ私は、もっと幸せになれると思っている。
自分のやりたいことを叶えて、できることを増やして、たくさんの人々に出会って、色んなことを知っていく。
そうしたら、きっと私は、今よりも幸せになれる。
今よりも、さらに幸せになることを望んでいる。
だからこそ、「今、とても幸せです」とは言えない。
これこそ、本当に傲慢なんじゃなかろうか。
でも、私は、"幸せになる"ということに貪欲であり続けたい。どれだけ傲慢で馬鹿らしいと思われたとしても。
他の皆は、どう思い、どう考えるのだろう。
ねぇ。「今、あなたは、幸せですか?」
・幸せに
人の幸せを願うことはあっても、
幸せになりたいと思ったことは無い。
でも、不幸になりたくないとは思う。
"不"という言葉は、
打ち消し、否定する時に使われる。
幸せを打ち消し、
否定する様なことはしたくない。
"幸"という言葉のなかに、
「思いがけないしあわせ」という意味がある。
今消えてしまいたいと思う人へ。
予期していなかった幸せが訪れることを願って__
幸せになること。それは、全人類の共通目的だと思う。
人それぞれ、幸せの種は違う。家族を持つ、大金持ちになる、ゲームをする、好きなことで生きていく。今は不幸でも、最期に幸せだと言えるように、必死で生きていく。
幸せになること。それは、時に人を縛る。
人それぞれ幸せの種は違うのに、社会に染みついた固定概念で、幸福者と不幸者に分けられる。幸せなのに、不幸だって言われる。
人それぞれ幸せの種は違う。だから、他人の概念なんて気にするな。私が、君が、彼が、彼女が、幸せだと思えること。それを追求して、どうか末長く、幸せになってください。
幸せって感じる時はどんな時?
沢山のお金を得た時?立派な家を持った時?素敵な女性と結婚できた時?暖かい家族に囲まれた時?豪華な車を買った時?優れた能力を身につけた時?高度な技術力をマスターした時?頑健な身体に変われた時?微動だにしないメンタルを手に入れた時?
⭐️平凡な人間が直向きに努力して、自分自身に挑戦し続ける姿はとても美しい。
⭐️人間の悪魔部分に気付き、まともに生きようと苦悩しながら生き抜く姿は美しい。
⭐️案外人間は脆い生き物だと悟り、他人をそして自分を許そうとする気持ちを持って生きること。大切なことだが、
それがわかって類人、なかなか出会ったことがない気がする。
そんな人間になるよう努力中^ ^
それがオレの幸せ。
幸せになりたい
勝手に自分を人と比べて落ち込んだり
僕なんか嫌いだ......
なんて思って独り涙を流すことがよくある
でもみんな幸せのために頑張ってる
一人で泣いている場合じゃない
自分を好きになれるよう努力しよう
『幸せ』
幸せとは一体なんだろうか。愛か?お金か?地位や名声?あるいは自由?
駆け落ちして生活苦に喘ぐ恋人たちは幸せなのだろうか。孤独な億万長者は不幸なのだろうか。肩書き目当ての人間に囲まれる権力者は幸せなのだろうか。自分で何者かになるしかない、選択の重さを背負った若者は不幸なのだろうか。
世の中にはいろんな人がいる。十年後の不安で命を絶つ人がいれば、今日のパンを得られずに死ぬ人もいる。その死を悼んだ数万人が献花に訪れるような人もいれば、孤独死の末に骨まで土に還る人もいる。生まれて来なければよかったと叫んで死ぬ人がいて、もっと生きたかったと死の淵で嘆く人がいる。
世の中はままならなくて、誰だって隣の芝生は青い。自分には得られないものばかり欲しがって、手元にある誰かが喉から手が出るほど欲しいものには見向きもしない。失って初めて価値に気付くことの傲慢さに、果たして何人気が付いているのだろう。
与えられたカードで勝負するしかないのだと、どこかの誰かが言った。与えられるカードは千差万別で、ロイヤルストレートフラッシュのような素晴らしい手札があれば、役どころかハイカードすらパッとしないゴミのような手札もある。引き直しはできない。努力はそれをどこまで補正できるのだろう。
努力は報われるとは限らない。報われた人が努力しているとも限らない。世の中にはどうしようもないものが結構あって、運もその一つだったり、そうではなかったりする。たとえば溢れるほどのピアノの才能を持った青年が、絵画の道で成功できずに心を病むように。百年に一度のバスケの才能を持った少女が、陸上競技で挫折しスポーツから離れるように。自分の適性に気が付かなかったり、適性と好きが違ったり。あの子と自分が逆だったらよかったなんて、そんなことは無数にあって。世の中は理不尽で、どうしようもなくて、結局のところ、幸せは自分で見つけるしかないのだ。週末のちょっと高いディナー、ボーナスで買う新しいバッグ。昼過ぎまで寝る休日、昔の仲間と青春時代に帰るフットサル。くだらない話ができる友達、授業がだるいと言える環境。酔っ払って道で寝ても生きていられる治安、そこら中に自動販売機が設置できるモラルの高さ。雨風を凌げる場所で寝られること、明日のご飯の心配をしなくていいこと。死にたいと思うほど生きられたこと、死にたいと言える相手がいること。
何が幸せかは、あるいはその人が決めるのかもしれない。人の数ほど幸せがあって、人の数ほど不幸があるのだろう。
『幸せに』
道を尋ねてきたおじいさん、雨の信号待ちで傘を差しかけてくれたサラリーマン、目の合った赤ん坊。
見かけなくなったコンビニ店員、コールセンターのお姉さん、消えちゃったSNSのアカウント、繋がりの切れたフォロワー。
もう会うことのない、名前も知らない誰か。
偶然にひと時のやりとりをした人たち。時と共に関わることのなくなった人たち。
記憶のひだに埋もれていく存在のひとつひとつ。
袖振り合うも他生の縁というのなら、その縁を辿ってこの願いが届きますように。
どうか幸せに。
4月2日
一応春休みなので今日は親戚に会う
今回は親戚からこっちにきて
泊まるという話になった
叔母家族は
昔はドイツだったが
最近日本に移住したらしいので
電車で来るかな
ちなみに従兄弟の
ネリネはハーフで凄く美人で
実は初恋相手だ
振られてから気まずかったが
今はなんでも話せる仲で
よくネリネとは日本のゲームをして遊んでる
たまにドイツ語がでる
昔はドイツにいったりしてたので
ネリネと外国語でも喋りたいと思い
英語でも喋れると聞いてから
猛勉強した思い出がある
明日はネリネにどんなゲームを薦めようか
(暗いです)
歩く2人をずっと遠くから眺めていた。仲睦まじく並んで手を握り、あの人は人とぶつからないように壁になって歩いている。
あの人が向ける笑顔、表情、仕草全てがあの子を大事にしていると物語っていた。風に遊ばれる髪をすかれて、「危ないよ」と転びそうになる腕を引いて抱き寄せて。
それがひどく羨ましく妬ましく、どぶのように醜く汚いどろどろした部分が流れ出て、最低な手段をとった。あの人に恨みを持った人間なんて沢山いて効果的なのは大切な者を奪うことだと唆した。
あの子が居なくなったら、悲しむあの人に声をかけて代わりになれると思っていたのに。球体は話しかけた自分を映していたが空っぽで交わした言葉のどこにも感情なんてのってない。機械と話している気分だった。
あの子じゃなきゃ、あの人の目にすら映らなかったのだ。計画は失敗して命に別状はなく大怪我をさせただけ。この後起こることが容易に想像がついた。
この世から消すつもりで大事な人に手を出した、報いがくる。
記憶も容姿もここにいる自分を作り替えないと、あの子にならないとそれは得られない。愛されるためには自分を消さないと成り立たず、消えた自分が『幸せに』なることはなく。
暗い路地裏、冷たい床に這いつくばって最期までそんな事を考えている。自分はなんて滑稽なんだろう。
失われていく四肢の感覚にあの子も同じ様な思いをしたのだろうか。怖い思いをさせてごめんね、と心の中で懺悔しても、もうおそい。
もやが、かかって、よくみえない、みみなりがする
愚かな女の涙は血と共に流れ出て、嫉妬と後悔の水溜まりは、彼女が求めて止まない男のブーツを汚していた。
(前回、前々回と繋げて(?)みました)
【幸せに】
春休み、息子が帰ってきた。大きくなっていた。
体重103kg(BMI 33)
決して、このままではいけない。私は密かに息子のダイエットの決意をする。和食に切り替え、お菓子は置かない。
YouTubeでダイエットダンスを見つけて誘うと素直に踊りだした。息子は「自分の肉を感じる…」と目を丸くしてこちらを見た。こっち見るな。
数日後、仕事から帰ったら「ご飯作っておいたよー。お風呂も沸いてるよ。」とニッコリ笑って迎えてくれた。
なぜか息子を想わせる様な山盛りの麻婆茄子、白いご飯に冷えたビール。楽園か?
食後は、ヨーグルトクリームのデザートまで出てきた。
以後、家に帰ると、息子の笑顔と手料理が待っている日々が続く。
息子は手強い。
「うん、美味しくできてる!」
味見した母が唸った。
お腹をすかせながら野菜を切り、牛肉を炒めるのは大変だった。今、色とりどりの具材がカレーに包まれて鍋の中で踊っている。台所はカレーの香りで一杯になっており、鍋からフツフツと音がする。切った野菜の大きさは等しくないが、それでもほとんど一人で頑張って作ったのだ。母の声を聞き、僕は一仕事やり終えた達成感に満ちていた。
気づけば僕は空腹を我慢できなくなっていた。
「どれどれ」
僕も母の使った小皿に一口分いれ味見をする。口にいれた瞬間、全身が震えるように感じた。野菜は程よく柔らかくなっており、カレールーと絶妙にマッチしていて口いっぱいにカレーの香りが感じられる。小皿一口分で僕は満足して自然と笑みを浮かべた。