『平穏な日常』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
今この瞬間の世界のどこかに平和でもなく穏やかではない日々があるからこそ、なおさら平穏は光り輝いて見えるのだろう。
それは一瞬だった。
形のないものが崩れる時、誰もが気づかないものだ。
流れゆく思いが、過ぎ去っていく時代が、刹那である。幼い子供は責任ある大人へ成長し、小さな芽は大樹へ育ち、木造の家は枯れゆく。
その中に、私たちは存在している。まるで時間を止めるかのように、秒針の音を聞いている。
目を閉じたら、また明日。
『あの頃に戻りたい』と切なくなるのなら
そもそもあの頃なんて作らなくていいよ
そう自分に言い聞かせる
お題:平穏な日常
タイトル:
何事もなく一日が終わるのが一番いい。
でも、そんな日がずっと続くのはなんか嫌だなあと思うのはなんでなんだろうね。
ふかふかのベッド、わくわくする冷蔵庫。
おいしい朝ごはん、いつも通り四角いリビング。
平穏な日常。ぜんぶぜんぶ、僕のしあわせ。
「なーんか暇ー」
暖かい日差しが降り注ぐ5月の日曜。
ソファに寝っ転がってみたは良いけど眠くないし、だからと言って動きたくはないし、でも日曜だから勿体無い気もするし。
原因不明かつ行き場のない“日曜日のきもち”。
日曜日あるあるな気がする。
ふと窓の外に目をやると、雉虎の目つきが悪い猫がのそのそと歩いていた。
体は大きめでぎりおデブといったところ。
「散歩たのしい?」
窓越しから話しかけると、猫はめんどくさそうにこちらを見てから足を止めて毛繕いをし始める。
「…お前、やるな」
まさか人間の言葉がわかる猫だとは。
目の前でぺろぺろと毛繕いをする猫をじっと見つめる。
耳が欠けているので恐らく地域猫というやつなのだろう。その割にはおデブだが。
「どうせ、その見た目を利用してご飯でもなんでも貰ってるんでしょ」
猫はこちらを見ない。自分の足に夢中になっている。
「…いいな、毎日楽しそー」
猫の生活など毎日が冒険のようなものではないのだろうか。木に登ったり、野原を走り回ったり、屋根の上で昼寝をしたり。
毎日いろんなことがあって飽きなさそう。そんなことを猫を眺めながら思った。
毎日が冒険で、発見に満ち溢れた生活。
変わったことも起こらない、おだやかな生活。
変わり映えがないことはつまらないかもだけど、それ相応の出会いがあったりする。
「でもまあ、平穏な暮らしも悪くないな」
ソファから体を起こすと、猫はもう居なかった。
【平穏な日常】
「今日ご飯抜きか〜」
そう言って俺は諦めて寝ることにした。
俺はいわゆる孤児でスラム街に住んでいる。
ご飯にありつけなかったりもするが割と平穏に過ごしている。
ある時俺はご飯を見つけたと思い走って行くと、捕まった。
こいつは奴隷商か、
スラム街に住んでいるやつなんか自分の生活に精一杯だ、助けてなんかくれない。
しかも俺は色素が薄い。
関わりたくも無いだろう。
運が悪かった。そう思うしかない。
ドカッッッン!!
どうやら俺は運がいいらしい。
それからは早かった。
国の騎士は壁を破り奴隷収容所を見つけそそくさと奴隷商達を捕まえてった。
この国では奴隷は違法である。
どこかの国は合法だと聞いたことがあるなぁ。
そんなこんなで俺は助け出された。
身寄りのない俺は孤児院に入れられた。
なんで俺が今まで孤児院に入って無かったかと言うと、孤児院に入るにも金がいる。
たくさんいるわけではないが親がいるなら必要だ。
そんな金も出したくなかったらしい。
俺は何故か色素がとても薄い。
髪の毛も白く肌も真っ白、目も青く両親とは似ても似つかない姿をしている。
最初は喧嘩していた両親もだんだん俺が可笑しいと思ったらしい。
捨てられた。
そんな俺が孤児院に入っても勿論誰も寄り付かない。
子供はどころか、孤児院の先生も薄気味悪がって陰口をたたく。
ある時孤児院が火事になった。
孤児院の先生のよそ見だったのだが、俺が居るから不幸になったとか喚いていた。
孤児院の人達は皆大丈夫だったが俺は孤児院にも、居場所は無いらしい。
アホらしい。
俺は何処かで期待してたらしい。
人と仲良くなれるのでは?と、
そんなこと俺には無理らしい。
こんなコトなら奴隷にでもなってたほうが楽だっただろうな、
奴隷だって高いから簡単に殺したくないだろう。
スラムで暮らしてた位の生活は出来る。
働いてご飯を食べ食い凌ぐ。
それはスラムだったから出来たことだ。
ここは商店街。
お金を持ってて買い物をして暮らせる、普通の人が暮らしている。
わざわざ何処のやつかも分からない奇妙なガキを誰が雇うだろう。
ああ、平穏な日常に戻りたい。
ここで俺は死ぬだろうか、あれから2日ご飯もそうだがここには川がない。
飲めない水ばかりだ。
町外れの狭い建物の間で俺は動けなくなっている。
ああ、なんて価値のない人生なのだろう。
仕方がない。
来世は幸せになりたいなぁ。
「おい、ガキ生きたいか?何をしてでも、」
生きたい?当たり前だろ俺はこんな人生まっぴらだ。生きれるもんなら生きたいさ。
「そうか、、、」
「やめ、やめろ、、、」
バンッ、、、、カラヵㇻ
カチ
【ふう、一仕事終わり。
うわ服汚れた、だっる〜】
あれから俺はマフィアに拾われた。
どんな姿をしていても仁義を通すだけで、仲間にしてくれる。
俺はこの組織に忠誠を捧げている。
当たり前だ、命の恩人だ。
今日は殺しの帰り。
俺の同僚が横領しやがって殺して来たとこだ。
組織はどんなやつでも拾ってくれ世界を与えてくれる。
なぜ裏切るのだろう。
白い悪魔だ何だの言われるが俺はこの平穏な日常を気に入っている。
ボスには感謝だな。
これからも俺を使って貰えるように頑張らなきゃ。
平穏な日常
変化がある方が刺激的で
楽しかったり、辛かったり
知らなかったことを知れたり
たくさんの経験ができる
そんな人生を望む人もいる
私はそうじゃない
ちょっと暗い話になっちゃうけど
仕事や人間関係に疲れちゃったから
自分に抱えきれる分だけの
変化と刺激で
新しい出会いを
小さな変化、刺激でも
きっと楽しいことはあるって思うから
[平穏な日常]
朝目が覚めて、ゆっくり自分の意識が覚醒する。
無事今日も起きれた。それだけで嬉しい。
当たり前の日常が何よりも大切だと,気づいたのはつい,最近だ。
人生は有限。限りがある。だから、悔いのない生き方をするためにこの日常を大切にしようと思った。
平穏な日常
変化が大事だという
繰り返しの日々その中に
小さな変化をつけることが
楽しく暮らすコツなんだとか
何かのコラムで読んだことがある
なるほど
大きな変化はストレスだけど
小さな変化ならよい刺激になりそう
当たり前みたいに過ごす日々が
ちょっと良い1日の積み重ねでありたい
歳を重ねると、時が経つのが速くなると言う。
だからかな?
退屈してる暇はないと思っていた自分が信じられないくらい、1日1日を慌てずに過ごしたいと思うようになった。
平穏な日々。
時間に追われず、行き急がず、自然と湧き出る好奇心に従って日々を過ごせたら…。
本当の贅沢って、きっとそんなことなんだろうな。
放課後、校舎裏。少女漫画で言えば告白シーンに出てくるような典型的なシチュエーションで、俺は今、例にも漏れず学年一の美女に告白されている。
「えっ、えっっ??北村さん。それって俺に言ってるの?」
どうやったらここまで情けなくなれるのか分からないほど俺は狼狽えていた。
なんなら、上ずって気持ち悪い声が出る始末だ。
でも、どんだけ情けなくともそこんところの事実はしっかり確かめとかなきゃ後々取り返しのできないことにでもになりそうで怖かった。
「目の前に、鈴木くんしかいないのに、他に誰に告白するっていうの?」
ふふと花が綻ぶように俺を少しからかうように笑う彼女はやっぱり美しくて綺麗で、目の前の現状を把握するのに俺は長く時間がかかった。
信じられない。信じられないが、こんな劇的なチャンスを男として逃す訳にはいかない。
ので、返事は
「み、みみ身の丈に合わないものですが、よろしくお願いします!!」
もちろんYESでしかなくて。やっぱり返事も先程と同じくきもく、格好のつかない俺らしい情けないものだった。
次の日。それはそれは浮かれた心地で学校に行くと、俺と彼女が付き合ったことは瞬く間に噂として学内に広がっていたらしく、友人から速攻で糾弾を受けた。
「お前どういうことだ鈴木!!」
「なんでお前みたいなやつが高嶺の花である北村さんと付き合えてんだよ!」
「陰キャのくせに!」
『おかしいだろ!!!!』
それはそれは酷い罵詈雑言で、しまいには最後のセリフは満場一致でみんなの声が揃っている程だった。
クラスの中に入ればヒソヒソと囁かれている始末で、自分の席にただ座っているだけでもいささか居心地が悪かった。
そんな何処かいつもの日常とは違う日を半日過ごして昼休みになった。
いつものように友人と購買に出かけようとした時
「鈴木くん!!」
後ろから声を掛けられた。
振り向くとそこには北村さんがいて、少し焦った顔でこちらへ走ってくる。
「北村さん、どうしたんですか?」
「お昼、せっかくだから一緒に食べようよ。」
昨日に続き今日まで。俺はなんて幸せものなんだろう。
と、馬鹿みたいに惚けていたところを隣の友人に強めに肩を叩かれて正気に戻った。
「も、もちろん!」
屋上に行くと、そこには誰もいなくてここに昼食を食べに来たのは俺たち2人だけのようだった。
2人きりのシチュエーションにまた浮き足立つような気持ちになって、それを悟られないように菓子パンを頬張っていたらまたも肩を叩かれた。
「鈴木くん。あーん。」
北村さんは、そう言いながら玉子焼きをお箸でつまんで俺の口元へと差し出す。
そんな状況に俺は半ばパニックなっていた。
やばいやばいやばい。
どういうことだこれ!?
俺が、北村さんにあーんしてもらうなんてどんなご褒美だよ!??
もう意味わかんねぇよ!!
なんか色々超えて嬉しすぎて今なら空飛べそうだわ
自分の中の感情を閉じ込めておくキャパが限界を迎えて、そんなバカげたことを思った瞬間。
思いに比例するように、現実的ににありえないことに俺の身体は宙に浮かんだ。
どういうこと!!?
次は俺は違う毛色のパニックに襲われた。
え???なんで俺浮いてんの。何コレ?え、ええ?
俺は北村さんを置き去りにどんどん空へと浮かんで、雲へと近づきそうになった、その瞬間、、、
――目を覚ました。
目を開けて最初に見たのはいつもの天井で、一階から母さんの早く起きろと言う声が聞こえた。
生まれてきて始めて目覚めたことを後悔した。と同時にそりゃそうだとも思った。
いつも通り学校に登校しても、俺の友人はいつも通りで、誰も俺が北村さんと付き合ったことを糾弾する声は無い。
当たり前だ。夢だったのだから。
教室の廊下側の窓際の自分の席に座って夢を振り返ってみる。
そういえば、そもそもうちの学校の屋上は解放なんてされてない。
そこから夢だと気づければもう少しダメージは少なかっただろうか。
ただの夢を見たはずなのに、なんだか目の前の幸福を取り上げられたような悲しい気持ちで俺は教室からぼんやりと廊下を見つめていた。
思えば、学校一の美女と付き合えるなんてそんなベタな展開現実でほぼあるはずなんてないのだ。
まぁ、百歩譲って、同じく顔の整った男が彼女と付き合うのならわかるが、特に目立ちもしない陰キャの俺が彼女のお眼鏡になんぞかかるわけが無い。天地がひっくりかえらない限り、俺と彼女が付き合うなんて現実あるわけないのだ。
なんか、考えれば考えるほどなんだか惨めになってきた。
結局俺にはいつもの当たり障りのない平穏な日常がお似合いってわけだなと考えがまとまったところで机に突っ伏してふて寝することに決めた。
まぁ、さっき噂の彼女が廊下を通る時に目が合ったような気もしたが、そんなことは俺の勘違いだと惨めな期待を追いやるようにして、俺はまた幸せな夢を見られるように願って机の上で眠りについた。
―――典型的な夢オチ
お題【平穏な日常】
蛇足 不思議なことに天地がひっくり返って彼らは付き合うことになります。
お世辞にも良好とは言えない家庭に生まれ育った私は、ずっと平穏な日常を望んでいた。
例えば少しだけ早起きして夜と朝が溶けた空を眺めるとか、お弁当に入らなかった卵焼きの端っこと白米をインスタントのお味噌汁で流し込んでみたりとか。自分には無縁であろう都会の流行特集をしている情報番組を横目に身支度を整えて家を飛び出す。きっと駅に到着した頃には鍵を閉めてきたか不安になって考え込んでいるだろう。
こんな生活なんて馬鹿馬鹿しくて呆れられてしまうかも知れないが、それでも私はその程度の生活に憧れていた。身の丈に合うそれなりに堕落した一般庶民の生活───こういうので良かった、はず、なのだが。
玄関を開けると目の前には2人の男性。表情筋はおろか目線すら動かない少し強面のおじさんを見て、ぽかんと口を開けたまま身動きが取れなくなってしまった。
「✕✕✕✕さん、署までご同行願えますか?……おおよそ理由はご自身で検討はついているかと思いますが」
この瞬間、私のささやかな願いはどこかに消え去ってしまったのだ。
平穏な日常
東日本大震災。
今年で13年。ふと思うと、今日まで、いろいろとありすぎた。
当時は仙台市内に住んでいた。
義父がその一ヶ月前に亡くなり、義母が転倒し入院。
骨折&肺癌が見つかり検査当日であった。
娘は学校、相方は仕事。私は義母の病院へ行く途中だった。
突然の揺れ。今までに無い恐怖を感じた。
避難生活。小学校体育館に近隣住民が押し寄せ、横になる場所の確保も出来ず、座ったままの状態で、真っ暗の中、肩を寄せ合い過ごしていた。
3月末に引越し予定だったが、引越し業者も被災したため、4月下旬に延期。生活が不安定だった。
なんとか引越しを終え、新しい職場、学校、義母の入退院・通院、同居が始まった。
相方は鬱病を発症、娘はイジメによる不登校、義母の認知症のため、会社を退職し、パート生活となった。
自分自身も壊れそうだったが、そうは言っていられな、い。踏ん張りどころであった。
数年後、義母が亡くなり、つづいて相方が心筋梗塞で亡くなった。
娘の不登校は続いていたが、なんとか定時制の進学が決まった。
家族が減り、実家近くに引越し。
今度は、私の父に病気が見つかり、入院介護。母の骨粗鬆症によるせぼねの圧迫骨折。こちらも介護となる。
パートも新たに、中々の目まぐるしい日々が続いている。
自分自身の時間が設けられず、泣いてしまう日々もあるが、いままでと変わらない日々を過ごすであろう。
3・11を迎え、日常を振り返る。
これが私の平穏な日常である。
『平穏な日常』
朝起きて朝日を浴びて時計見て、寝坊したーってめちゃめちゃ焦りながら
布団たたんで、飯食って、歯磨いて、頭梳かして
鞄の中身を確認して、定期やリボンも確認して
いってら~って緩い声を背にバス停まで一目散に走るの
バス停について、よかったまだ着てないって息をついて、
コンクリの隙間から生えた花を可愛いって思うような
ふと仰いだ空が綺麗だなって思うような
小鳥の声に季節を知るような
そんな穏やかな日常を送りたい。
『平穏な日常』
十七匹。それが今日倒した魔物の数。この世界は、魔物にあふれている。
俺は、魔物専門の討伐をしながら旅をしている。なぜ旅をしているのかといわれても、特に意味はない。しいて言えば帰る家もないから放浪している、といったほうが正しいか。魔物討伐だって、金になるからやっているに過ぎない。
俺が生まれる数十年前までは魔物なんて存在はいなかったらしい。突如、空から謎の隕石が降ってきたとともに魔物たちが蔓延るようになったそうだ。未だに隕石と魔物の関連性は解明できていない。
今や魔物は当たり前の存在となった。魔物は理性を持たない、動物となんら変わりない存在。ただ、動物とは違う意図をもって人間を襲ってきていることが判明している。だから、魔物討伐は必要なことであり、金になる。おかげで俺は生きていけるんだから魔物さまさまと言ったところだが。
今日もよく討伐したとほくほく顔で近くの町に向かっていると、獣道で同じく町に向かう人の姿が見えた。向こうもどうやら一人らしい。しかも、見た感じ碌な装備もしていないときた。
ここはそこまで厄介な魔物は存在しないにせよ、なんの装備もしていないのは流石に危ない。とはいえど、声をかけるとそのままの流れで護衛をするはめになりかねない。できるだけ金にならない仕事はしたくない。どうしたものかと悩んでいると、俺がいることに気が付いたようで、向こうから近付いてきた。
「あの、もしかして町へ向かう最中ですか?」
そういってぼろぼろのフードをとったその人は、中性的な顔をした女性であった。てっきり男性だと思っていたので、少し拍子抜けした。
「え、ええ、ハイ」
俺は、できるだけ表情に出さないように答えた。いや、だいぶしどろもどろになってしまったから、少し不審に思われたかもしれない。
幸運にも目の前の女性は気にしていなかったか気づかなかったようで、特に何も変わりなく話を続けた。
「それなら、そこまでご一緒しませんか?」
やはりそうきたか。しかし、どう見ても魔物と闘えそうな風貌をしていない。それに金を持っているようにも見えない。どう断ったものかと悩んでいる時だった。
「大丈夫ですよ。ここには魔物は出てきません」
「え、どういうことですか?」
「私はこの周辺の魔物の生態を調べているんです。そして、調べていくうちにこの獣道を使っている間は魔物には襲われないことが分かったんです」
「それはまたどうして。獣道なんて、人間を簡単に襲える格好の場所でしょうに」
「そうですね。しかし、魔物はこの獣道には近づけないのです。この花が咲いているから」
そう言って女性が顔を向けた先には、小さなスミレの花がそこかしこに咲いていた。淡い紫色がそこら中に散らばっている。それなりによく見る花だと思うが、果たしてこれが魔物が近づけない理由なのだろうか。
「正確に言うと、このスミレ特有の紫色が魔物には近づけない原因ではないかと推測しています。実際、他の色のスミレが咲いている場所では魔物は普通に出現する」
「じゃあ、この紫を再現できればいいのでは?」
「紫は貴族の色です。平民である私たちが簡単に身に着けることは禁じられています。それに、この色を再現すること自体難しいのです」
「そ、それならこのスミレを増やせば村が襲われる心配もなくなるのでは?」
言いながら、何を言っているんだ俺は、と自分に対してつっこんでいた。そうやって魔物の心配がなくなったら俺の仕事はなくなってしまう。それは困る。しかし、研究者を名乗る女性の話が気になって仕方なかった。
女性は、俺の疑問に対して誠実に回答してくれた。
「このスミレの植生は少し難しいようで、簡単に増やせないんです。今この獣道に育っているスミレを維持するのが限度です」
「そうなのか……」
安堵したような、気落ちしたような、複雑な気持ちであった。とりあえず、この獣道は安全は確保されているようだ。それならこの女性と一緒でもいいだろう。二人で町に向かって歩を進めた。
…道中でこんなに平穏な気持ちでいられるとは思わなかった。今まで、町や村へ向かう道中は警戒など怠ってはならなかった。改めて周囲を観察すると、普段は感じない木々のざわめきや鳥の囀りを感じられた。隣を見ると、俺以上に落ち着いて周囲を観察していた。
「…私は、今の状況がいいことだとは思っていません。今や魔物が存在する世界を当たり前となってしまっている。だから、できるだけ早く魔物の生態を解き明かして、魔物の存在しない日常を取り戻したいのです」
彼女の言うことはあまりにも無謀であった。机上の空論といってもいい。空論にすらなっていないかもしれない。しかし、彼女の決意は固く、俺には反論することができなかった。
…魔物が存在しない世界か。そんな世界、本当に叶うのだろうか。
「…俺も、そんな世界、見てみたいです」
ふと口に出てしまった言葉は、噛みしめれば噛みしめるほど自身の中で大きくなっていった。魔物と常に対峙するこの生活はなくなり、稼ぎはなくなってしまうかもしれないが、平穏な日常を取り戻すことができる。それは俺にとっても理想だったのかもしれない。
隣の女性は嬉しそうにはにかんでいた。それを見ながら、スミレが咲き誇るこの獣道を、ゆっくり進んでいった。
何か良いことないかなぁ〜
っていうよりも
何も悪いことがありませんように
って願ってしまうのは
ネガティヴすぎるのかな。。。
”平穏な日常”ほど幸せなことはない
『代わり映えしない 明日をください』
「平穏な日常」
手ですくうくらいの平穏さを
保てたならそれで十分
泣いても笑っても人生だからね
ショコラ
第四十一話 その妃、予言者也
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
誰にも気付かれぬよう視線を走らせる。目立つ空席に一人、堪え切れぬ笑みをこぼしながら。
何かを言いたげな奴等の視線を無視し、席に着く。そして、会議を仕切る男を遮って声を上げた。
「自業自得かな」
その場の全員が言葉を噤んだ。図星に他ならなかったから。
誰もまともに調べ上げなかったのか。
誰も止めようと思わなかったのか。
誰も、“子規”に賛同する者はいなかったのか。
(それも致し方のない事よ)
まともに調べなかったのではなく、調べられなかったのだ。
全国を牛耳る御上と呼ばれる奴にか、それとも過保護な親鳥にか。あの小鳥の情報が、厳重に管理されていたために。
止めることもなかっただろう。我々こそが絶対的に正しいのだと、疑うことすらこの国の人間どもはしないから。
小鳥への賛同がなかったのも同様。それが正しいものであればある程、この国の奴等は反発していく。
己と違えば、それは悪。疑う事や考える事を辞めさせ、そして恐怖心を奪う。
それが“己”なのだと植え付けたのは、他でもないこの国の帝である。
しかし……今は、正直言って気分がいい。
同じ顔にも見飽きていた所だ。
(……それに、そろそろ良い頃合いであろう)
どれだけ美人であろうと、どれだけ賢かろうと、どれだけ人脈があろうと、誰も娶ろうとしない帝。
それを見兼ねた高官たちが誘拐してきたのは、未来がわかる予言の巫女だと言うではないか。
「愚かな」
誘拐したことにではない。
妃として迎えるつもりがないということにでもない。
あの小鳥を選んだ時点で、奴等はこの国での平穏な日常を放棄したのだ。
「その点につきましては、私も同意致しますわ」
扉の開く音はしなかった。争うような声も。
けれど、女はそこにいた。側に控える男と、まるで初めからこの場に居たかのような顔をして。
急に訪れた異質に、その場の全員が臨戦態勢を取る。
一触即発の張り詰めた空気感。
それは、自分の中に植え付けられた歪んだ正義感か。それとも本物の正義に対する悪意か。はたまた暴かれることへの恐怖や焦りか。
しかし、そんなものに、一切の興味はなし。
「して、そなたは何故この場に来たと申すか」
「勿論、その必要があったからですわ」
「呼んではいないが?」
「あら。呼ばれていなければ来てはならないとは、聞いておりませんでしたわ」
そもそもこの女の矛先は、端から下には向いていない。
「何より先日、帝より賜りました素敵な贈り物の御礼に、再度予言に参ったのです。何事も早い方が宜しいでしょう?」
「申してみよ」
「……以前、以て言っておきましたでしょう。帝の御命を狙う不届者が居ると」
その視線の先にあるのは、ただ一つ。
「予言通り、その首頂戴しに参りました」
愚国を治める天辺。
他でもないこの――帝である。
#平穏な日常/和風ファンタジー/気まぐれ更新
平穏な日常
あれは 平穏な 日常を 切り裂いた
真夏の 霹靂 のような 衝動さ
目覚めた 朝に 突然の 追憶が 走り出す
君の 瞳に 僕の 心は 染まってく
心の奥の方 扉の向こう 鍵がかかっていた 毎日を
朝の 目覚めが 急に 鮮度を 変える
霹靂が 音を立てて
稲妻に 打たれた 衝動
あれは きっと おとなになって 忘れ かけていた
夏草の 少年の 頃の ような
雨雲の 向こうに 差し込んだ 太陽
雲の 割れまを 突き抜けていく 光が 指して
蒼い 空に 浮かんだ 月が 水面に 写ってる
風が 少しだけ 吹いて 表面を 揺らしてる
鳥は 横切る 雲を 珍しそうに 謡う
突然に 雨が 降り出し そうな 世の中でも
この朝が 雑踏の 向こうから
毎日を 知らせる
君は 色を 変えた ガラスの 向こうの 虹の ように
息を 呑んで 深く 霧の 向こうでも
透明の 音色を 奏でて
流星の ような スピードで
変わってく 毎日を
君の 言葉が この世界を 限りなく
色を 付けた 色彩を つけてく
何度目かで 僕は
そのニュースの 意味を 知った
神様が いったことでさえ
心を 染めるのに 時間が かかる
それでも 君の 言葉は
僕の 知らない 世界を 言葉で 埋める
ピースが 見つかった 解けない 鍵の パズルを
僕は 君となら その断片を
見つけることが できるだろ
平穏な日常
君となら もっと わかるだろ
平穏な日常
君となら もっと
変わるだろ