噛まれゐぬ

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「なーんか暇ー」
暖かい日差しが降り注ぐ5月の日曜。
ソファに寝っ転がってみたは良いけど眠くないし、だからと言って動きたくはないし、でも日曜だから勿体無い気もするし。
原因不明かつ行き場のない“日曜日のきもち”。
日曜日あるあるな気がする。

ふと窓の外に目をやると、雉虎の目つきが悪い猫がのそのそと歩いていた。
体は大きめでぎりおデブといったところ。
「散歩たのしい?」
窓越しから話しかけると、猫はめんどくさそうにこちらを見てから足を止めて毛繕いをし始める。
「…お前、やるな」
まさか人間の言葉がわかる猫だとは。
目の前でぺろぺろと毛繕いをする猫をじっと見つめる。
耳が欠けているので恐らく地域猫というやつなのだろう。その割にはおデブだが。
「どうせ、その見た目を利用してご飯でもなんでも貰ってるんでしょ」
猫はこちらを見ない。自分の足に夢中になっている。
「…いいな、毎日楽しそー」
猫の生活など毎日が冒険のようなものではないのだろうか。木に登ったり、野原を走り回ったり、屋根の上で昼寝をしたり。
毎日いろんなことがあって飽きなさそう。そんなことを猫を眺めながら思った。

毎日が冒険で、発見に満ち溢れた生活。
変わったことも起こらない、おだやかな生活。
変わり映えがないことはつまらないかもだけど、それ相応の出会いがあったりする。

「でもまあ、平穏な暮らしも悪くないな」
ソファから体を起こすと、猫はもう居なかった。

【平穏な日常】

3/11/2024, 4:11:14 PM