噛まれゐぬ

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6/17/2024, 3:42:37 PM

いい時間になってきましたね
おなかがすきました。

3/21/2024, 1:56:52 AM

ああ、まちがえた。
あんなこと言わなければよかった。
あの時あんなことしなければよかった。
夜の帳が静静と下りた午前1時。布団の中で思い出すのは今日一日のこと。
大したことではないことかもしれない。
けど、ちょっとしたミスとか、言動とか、なんとなく「まちがえてしまった」ことを私はずるずる引きずってしまう。
資料のミス。会議での発言。同僚とのコミュニケーション。
その全ての記憶が私をぎりぎりと締め付ける。
後悔なんてしたって意味ないってことは理解している。でも後悔しないと私は生きていけない。
後悔は私にとっての薬であり毒である。
苦しいと分かっていても決して拭えない。

苦しくなって目をぎゅっと瞑るが、それでも身体中の傷跡は癒えない。
ただ瞼に映るのは今日一日の間違えた場面だけ。
ああ、つらい。
この苦しみに夜の深さが拍車をかける。
このまま闇に溶けて無くなってしまいたくなる。
夜よ、私をこのまま呑み込んでくれと、何度願ったことか。
目を閉じると体の奥の小さなすり傷に涙が染み入る。
くるしい。

冷たい指先で枕元の錠剤を手繰り寄せ、飲み込む。
こんな夜は、眠るのを待っても意味がない。
薬に眠らせてもらうことしかできない。

どうか、この傷たちよ癒えてくれ。
夜が明ける前に。
光がこの身を包む前に。
夢が醒める前に。


【夢が覚める前に】

3/11/2024, 4:11:14 PM

「なーんか暇ー」
暖かい日差しが降り注ぐ5月の日曜。
ソファに寝っ転がってみたは良いけど眠くないし、だからと言って動きたくはないし、でも日曜だから勿体無い気もするし。
原因不明かつ行き場のない“日曜日のきもち”。
日曜日あるあるな気がする。

ふと窓の外に目をやると、雉虎の目つきが悪い猫がのそのそと歩いていた。
体は大きめでぎりおデブといったところ。
「散歩たのしい?」
窓越しから話しかけると、猫はめんどくさそうにこちらを見てから足を止めて毛繕いをし始める。
「…お前、やるな」
まさか人間の言葉がわかる猫だとは。
目の前でぺろぺろと毛繕いをする猫をじっと見つめる。
耳が欠けているので恐らく地域猫というやつなのだろう。その割にはおデブだが。
「どうせ、その見た目を利用してご飯でもなんでも貰ってるんでしょ」
猫はこちらを見ない。自分の足に夢中になっている。
「…いいな、毎日楽しそー」
猫の生活など毎日が冒険のようなものではないのだろうか。木に登ったり、野原を走り回ったり、屋根の上で昼寝をしたり。
毎日いろんなことがあって飽きなさそう。そんなことを猫を眺めながら思った。

毎日が冒険で、発見に満ち溢れた生活。
変わったことも起こらない、おだやかな生活。
変わり映えがないことはつまらないかもだけど、それ相応の出会いがあったりする。

「でもまあ、平穏な暮らしも悪くないな」
ソファから体を起こすと、猫はもう居なかった。

【平穏な日常】

3/10/2024, 4:54:49 PM

「私も悠くんのこと好きなんだけど」
いつもの遊歩道の上、奏にそう告げられ私は奏をただ見つめることしかできなかった。
終わった。

奏とは小学生のころから仲が良い。いわゆる親友ってやつ。家が近いのもあって毎日一緒に登校して時間が合えば一緒に下校している。
10年近く一緒にいれば自分の秘密やら悩みやら、それこそ恋愛相談なんかを包み隠さず口にできるようになる。
誰が好きとかこうしたいとかそんなことを相談してはアドバイスしあったりして、お互いに信頼しきっている。
故に、私達が育んだ友情は何よりも強靭なものだとも信じきっていた。

それがこうなるなんて。
「…え、あ、そう…なの?」
「ガチガチ。…ていうか、香織こそそうなの?」
「え、まぁ…うん」
気まずい。
奏から目を逸らし、靴のつま先を見つめる。
今まで一度もこんなことにはならなかった。
どれだけ好きな人ができても奏とは絶対被らない。むしろそんな試しがなかったから被るなんて考えもしなかった。
不測の事態に俯いたままでいると、奏が口を開いた。
「なんか、香織が悠くん好きなの、意外」
「…そう?結構話す、し…優しいし…」
「へー。ていうか最悪、なんだけど」
「え、…ああ、なんか、ごめん」
「いや香織が謝ることじゃないし」
そう言って奏は前を向いて歩き始める。
コツコツと靴の音が夕焼けに響いた。
私も奏について行こうと一歩踏み出して、やめた。
奏の背中はどんどん小さくなっていく。
歩道に降りる階段の前で一瞬こちらを見た。
表情まではわからないが、気まずいような空気が視線を包み込んだ。
かと思いきや、ぱっと目を逸らして奏は階段を降りてゆく。
ただ1人取り残された私は、夕日の明るい光を身に映していた。
夕焼けよ、助けてくれ。
愛を手に入れるか、友との平和を手に入れるか、はたまたどちらも失うか。
愛と平和の選択なんて、私には難しすぎる。



【愛と平和】