噛まれゐぬ

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ああ、まちがえた。
あんなこと言わなければよかった。
あの時あんなことしなければよかった。
夜の帳が静静と下りた午前1時。布団の中で思い出すのは今日一日のこと。
大したことではないことかもしれない。
けど、ちょっとしたミスとか、言動とか、なんとなく「まちがえてしまった」ことを私はずるずる引きずってしまう。
資料のミス。会議での発言。同僚とのコミュニケーション。
その全ての記憶が私をぎりぎりと締め付ける。
後悔なんてしたって意味ないってことは理解している。でも後悔しないと私は生きていけない。
後悔は私にとっての薬であり毒である。
苦しいと分かっていても決して拭えない。

苦しくなって目をぎゅっと瞑るが、それでも身体中の傷跡は癒えない。
ただ瞼に映るのは今日一日の間違えた場面だけ。
ああ、つらい。
この苦しみに夜の深さが拍車をかける。
このまま闇に溶けて無くなってしまいたくなる。
夜よ、私をこのまま呑み込んでくれと、何度願ったことか。
目を閉じると体の奥の小さなすり傷に涙が染み入る。
くるしい。

冷たい指先で枕元の錠剤を手繰り寄せ、飲み込む。
こんな夜は、眠るのを待っても意味がない。
薬に眠らせてもらうことしかできない。

どうか、この傷たちよ癒えてくれ。
夜が明ける前に。
光がこの身を包む前に。
夢が醒める前に。


【夢が覚める前に】

3/21/2024, 1:56:52 AM