『宝物』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
<宝探しげえむ>(宝物)
『あの人気海賊アニメの劇場版第20作目がもうすぐ全国ロードショウです!
今回はある島に隠された昔の大海賊のお宝を、宿敵達も巻き込んで見つけ出す!という物語です。
今度こそお宝を見つけ出すことはできるでしょうか?
上映が待ち遠しいですね!
次のニュースです。』
何気なく付けたテレビから子供の頃に夢中だったアニメの映画のニュースが聞こえてきた。
もう20作目なのか。
いつになれば宝を見つけだせるんだろう?
今回もきっと見つからないんだろうな。
ふと、アニメを真似してみんなで宝探しゲームをしたあの頃を思い出す。
友達のたかゆきが隠したお宝はすぐに見つけられてしまって、悔しそうに地団駄を踏んでいた姿が少し面白かったなぁ。
でも、ゆきちゃんのお宝は最後まで見つけられなくて、休み時間が終わっても探し続けて、先生に偉く怒られたっけ。
あの時のゆきちゃんのしたり顔は宝物にしたいくらい可愛かったなぁ。
そういえば、ゆきちゃんが隠したお宝はなんだったのか結局分からないままだったな。
今聞いたら教えてくれるかな?
「ねぇ、あの時隠した宝物って何だったんだい?」
美しい白が機嫌良く返事をしてくれる。
「あぁ、そうだったんだね。悔しいな。結局本人に答えを聞く事になるなんてさ。」
僕は小さな宝箱の中に話しかける。
小さな彼女はキラキラと白すぎる肌を輝かせながら、おとなしく箱の中で笑っている。
『次のニュースです。
K県T市に住んでいた当時13歳の清水由紀さんが行方不明になった事件から10年が経過しました。今だに有力な情報はなく………』
僕はテレビの電源を切った。
僕の宝物もまだ誰にも見つかってないよ。
すごいでしょ?ね、ゆきちゃん。
作品10 宝物
『あなたは、私の宝物!』
昔、そう私に言ってくれた彼女は、窓から空に向かって、飛び立ってしまった。
目の前にいたのに、私には何もできなかった。私が陶器でできた人形じゃなかったら、止められたのに。
彼女は、ずっと、私を大切にしてくれたのに。
夜空に輝く星が、彼女が気に入ってくれていた私の髪飾りに似ていて、何故か、目が割れたように感じた。
彼女は、空の宝物のほうが、よっぽど好きだったみたい。
胸のあたりから、何かが割れた音がした。
⸺⸺⸺
作品数2桁目いったのに!
なのに勉強が忙しすぎて、短いのしか書けない!
適当すぎる!
自分の頭の中身
…宝物っていったら、何故だか宝石が思い浮かんだので、誰かに愛されていた宝石が、全く関係ない星に、その誰かを奪われたら、なんか良くね?でも、そういう設定は誰でも思いつくから、+α的な感じで宝石がついてる何かを登場させて、そいつに感情を付け足すか。なら、人型のほうが伝わりやすいし人形?宝石ついてる人形はあまり思い浮かばないけど、割れ物系なら、感情入れられるんじゃね?おっしゃ、それでいこう!
と、言う感じでやりました。
宝物
私の宝物はサクサクするレシピのノート。
今までの頑張りとか、
やっと完成したレシピとかがあって、
私の宝物。
セミが鳴き、太陽が燦々と照りつける夏のある日。
優斗は部屋の片付けをしていた。
というのも、母親である明美が実家の整理をするために呼び出されたからである。
「あっちぃ〜。こんな中片付けとか地獄かよ…」
優斗がぼやきながらしてしまうのも致し方ない。
温暖化と言うだけあって例年よりも暑い夏は昔ながらの風情を残したこの家屋には少々暑すぎるからだ。
昔は縁側で涼んだりしていたらしいが…今はその縁側はただの熱せられたものになっている。
優斗がいる居間の障子を挟んだ向かい側にある部屋は明美の部屋で、今明美が掃除している。
居間には2階に上がる階段もあり、このあと2階も掃除する。
古びた階段は少し心許なく、音も今にも壊れそうな音を出す。
その階段を登った先にある2階が物置部屋となっており、ラスボスなのだからたまったものではない。
手で額を拭いながら優斗はこの後のことを考えて余計に嫌気が差していった。
そもそも実家とはいえ、一人暮らしをする際に荷物は全部持っていったため自分のものは何ひとつないのだ。
居間の片付けを大方済ませた頃には空が赤く染まっていた。
太陽も少し熱を収め、縁側は涼めるようになっていた。
「優斗〜あんたの好きなかき氷持ってきたで〜」
明美は縁側に座っている優斗にかき氷を手渡した。
「ん。ありがとう。やっぱかき氷はうまいな。」
夏の風情とも言えるかき氷には赤い空と対照的青いシロップがかかっていた。
風鈴が風に揺れてチリンと涼しげに歌った。
その時、
「あんたにとって一番大事なもんって何?」
と、唐突に質問が投げかけられた。
「それは、宝物ってこと?だったら、まこちゃんから貰った誕プレかな。使いやすいし、嬉しいんだよね。」
若干戸惑いつつもそう返した優斗に明美は1冊のアルバムを見せた。
「あんた。これ何か覚えてないやろ?」
「おん。なんそれ?ちっさい頃のアルバム?」
明美はその問いには答えずにアルバムをめくっていった。
アルバムには優斗の生まれた頃から大学を卒業するまでの写真が貼られていた。
明美が1枚ページをはらりとめくる度に、成長していく優斗の姿が写った。
どのページにも写真一枚一枚に明美の優斗に対する思いが綴られていた。
「私にとって一番大事なんはな、優斗やねん。光太郎が私に最期に残してくれたもん。それがあんたやねん。優斗は気づいとらんかったんやろうけど、私はずっとあんたの成長を間近で見て、1番応援しとってん。まぁ、なんや。今更やけど私にとっての宝物は優斗。あんたやで。ってことをいいたかってん。」
そう語った明美の顔が赤いのは、夕日のせいか。はたまた少し照れているからなのか。
今度は少し淋しげな音色を風鈴は微かに奏でた。
優斗は何とも言えぬ思いになった。
母が自分をそのように思ってくれていたことは純粋にうれしかった。けれど、それは自分だからじゃなくて光太郎という1人間の形見的な役割でしかないのではないか。という気持ちもあった。
優斗は何も言えず、ただ遠くを見つめた。
食べかけのかき氷は溶けてブルーの甘ったるすぎる水になっていった。
暫く無言の時間が進み、虫の声が聞こえる頃。ようやく優斗は言葉を発した。
「母さん。」
「なに?」
「俺さ。ずっと考えとってん。俺って父さんの代わりかなんかなんかなって。父さんは俺が小さい頃に死んじまったから記憶にないけど、優しい手で俺の頭を撫でてくれたんは覚えてる。そんな、父さんの、代わりなんかなって。でもさ、母さんはオレのことたぶんそんな目で見てへんやろ。母さんにとって俺は俺なんやんな?」
「当然やろ。光太郎の代わりでも何でもない。優斗は優斗や。私は優斗やから好きやねん。」
「そっか。それが聞けて安心したわ。俺さ。もっと頑張るわ。ほんでいつか、今までもらった分の愛何倍にもして返したる。」
そう宣言した優斗に同意するように、或いはその背を押すように部屋においてある仏壇の炎は揺らめいた。
「だったら、先ずは2階の片付けやってもらおかな。」
そういった明美はおどけながらも涙が滲んでいた。
溶けたかき氷は美しく月の光を反射していた。
その日は朝から街全体が静まり返っていた。
3日前に吸血鬼の元に届いた一通の手紙が原因だ。
『3日後にお前の宝物を奪いに行く。お前の1番大切な宝物を壊す喜びをくれないか?』
手紙にはそう記されていた。
この吸血鬼をよく思っていない他の吸血鬼が躍起を起こしたのだという。
ヴァンパイアハンター協会からも「対吸血鬼特戦部隊」が動くとの知らせが来ている。
奴は街の郊外で既に待ち構えている。
屋敷から出る際に奴はこう言い残して行った。
「この街全てが宝物だ。ワタシを受け入れてくれた人々が宝物だ。大切な場所だ。アイツは何も分かっていない。大切じゃないモノなどこの街には無い。石ころ1つでも傷付けたらワタシは容赦しない。」
あそこまで怒りと覚悟をもった表情を見たのは初めてだ。
それだけこの街が大切な宝物なのだろう。
オレは、少しの躊躇いの後屋敷を飛び出し、特戦部隊の足止めへと走った。
オレにとってもこの場所は大事な宝物になっていたようだ。
(宝物)
本気の吸血鬼さん、自分の行動に躊躇いがあるものの走り出したハンター君、宝物を守れよ。
【宝物】
僕の宝物は
全て手の中から消えました。
僕が全部悪いのでしょう。
宝物を大事にしないから
全てを裏切ってしまうから
何も欲張らないから
1つ目の宝物は
大切にする方法を知らなかった。
叩く、殴る、蹴る、殺す。
全ての行動が愛に見えた僕は
大切にする方法が分からなかった。
2つ目の宝物は
大切にする方法を学んだ。
もちろん失った後に
叩く、殴る、蹴る、殺す…
必ず愛から全ての行動が来る訳では無いと。
何が愛なのかを考え始めた。
3つ目の宝物は
愛の弱さを知らなかった。
愛を知った僕は愛を貰った。
その愛がずっと続くものだと思った僕は
愛が常にあるものだと勘違いしていた。
4つ目の宝物は
未熟な愛を与えてしまった。
叩く、殴る、蹴る、殺す…
それも愛になりうるものだと知った。
全てが終わったあとに間違いに気づいた。
5つ目の宝物は
全てが間違いだと思った。
全ては愛じゃないが全ては愛だ
大切にする方法は人それぞれ。
分からない。分からない。
何を大切にすればいい?
大切にする方法って何?
僕は間違っている。
僕じゃない誰かが正解。
僕の中に正解はない。
生きていちゃいけないのか。。
分からないんだ。
叩くとか殴るとかは良くないことなのに
辞めた途端なんだかウズウズして、
またやってしまう。
でも悪気は全くない。
それが自分なりの愛だと気づいた
それで人は離れていったのだと。
気づいた瞬間すぐ辞めた。
それから人も集まってきた。
でも何かが足りなくて、何かが無い。
辞めてすぐはそんな状態が続いた
大切なものは殴ったり、叩いたりしたら
壊れてしまうのは知っているのに
簡単に壊れないことも知っているから。
壊れてしまうのは悲しいのに
それしか愛を伝える方法が分からないから
壊れてもなお続けたくなってしまう。
グッと堪えていたらそんな感情はパッと消えた。
消えたはずだった……のに……
最近それを思い出してしまった
壊したい、崩したい、消したい。
そんな感情が蘇ってしまった。
これから迷惑をかける大切な宝物達。
ごめんね。
ごめんね。
これしか知らないんだ。
【航海】
海賊は、船の奥深くにしまっていた宝物を引っ張り出してきた。
ありとあらゆる島で奪ってきた金品を、
あろうことか海に投げ込んでいく。
どす黒い青緑の海に、宝物がきらめいているのが見える。
「俺には、宝物はもう要らない。
だって、君がいなけりゃ意味が無いから。」
海賊にとっての本当の宝物は、
とっくの昔に失っていたのだった。
「宝物だから」
大切なものはあるだけでいい。
大切な人はいるだけでいい。
きっと、何よりも大事なものは、
手元にあるだけで、あなたの当たり前になっている。
だから、忘れてしまう。見失ってしまう。
近づけば近づくほど、遠くへいっちゃうもの。
だから、離さないよう、そっと握りしめておかなくちゃいけない。
空がある。雲がある。そして、友達がいる。
家がある。そこで、待っている人がいる。
日常は、あなたをずっと見てきた。
今度は、あなたが日常を見つめる番だ。
【宝物】
持ってるゼ
結構あるゼ
割と恵まれてるゼ
今の所は
いい人生だ
の方が勝ってるし
まだ伸びしろもあるゼ
宝物
大人になって自分でお金を稼ぐようになってから、身の回りにあるものの大半は宝物と言えるかも知れない
必要に応じてか、無駄と知りながらも手に入れたかったか、いずれにしても時間を対価に手に入れたお金で買ったものだ
だが、お店で見た時はどうしても欲しかったものがいざ自分の手に馴染むころには宝物には見えなくなる
自分自身の身の回りに宝物なんて似つかわしくないのだ
自ら宝物を宝物で無くしていくのは業の深さか、あるいは向上心か
そうして手放したものがいくつもある
時々あれを捨てたのは失策だったなあと感じることもあるが、そもそも宝物が宝物であり続けていたらそんな目にも遭わない
こうして1日の大半を社会に捧げ、宝物と見紛うほどのありふれたものを求め続けていく
......こんなありふれた日常を宝物と呼べることを願っている
もっと短くしたかったんですが800字弱です
─────────────────
【宝物】
同じ小学校に通っていた友人とたまたま高校で再会した。
彼が引っ越したのは両親の離婚が原因だと聞いていた。少し心配だったんだけど、思ったより元気そうでホッとした。
懐かしいねと話をして、どちらからともなく同じ部活に入ろうかなんて言い出した。
「調理部なんてどうかなぁ」
俺はかなり緊張しながら言った。男子がほとんどいない部活だということはわかっている。
「俺さ、弟が生まれたんだよ。信じられるか? 12歳も年が離れてるんだぞ」
流石に驚いている様子の友人に、調理実習で作ったスイートポテトを持ち帰ったら弟がすごく喜んだのだと話した。
「だからさ、他にも手作りのおやつとか、作ってやれないかなあって。料理できる兄ちゃんとか、ちょっといいだろ?」
まだ幼稚園児の弟は俺の宝物である。あの笑顔を見るためなら『男の癖に』なんて言われても構わない。
「でもさ、男ひとりはやっぱり肩身が狭いじゃん?」
だから付き合ってよ、と拝むようにすれば、友人が苦笑して言った。
「……仕方ねぇなあ。一緒に調理部見学しに行くか」
「ほんと? ありがと、恩に着る」
この友人は父親に引き取られたと聞いている。その父親は再婚したりはしていないらしい。
つまりこいつには母親がいない。
忙しい彼の父親は子供に料理を教えてくれるだろうか。無理じゃないかな、と俺は思う。
今時、料理なんてネットで調べればレシピも動画も簡単に出てくる。
それでも、わからないことはあるだろう。誰かに聞きたいことなんかも。
俺と一緒に調理部に入ったら、この友人の今後の『生きやすさ』に少しは良い影響があるかもしれない……なんて。
そんなの俺のエゴでしかないけど。
それでも、せっかく再会できたこいつとの友情も、俺にとっては宝物になっていく気がしたから。恩着せがましくない程度に、力になれたらと思うのだ。
もちろん、その分俺も頼らせてもらうけどね。
宝物
皆さん暗めの話は嫌ですかね?
先日の投稿にも書きましたが、どうしても暗めの記憶や思い出が多めの人生でして、宝物と聞いて浮かんだのが暗めだからどうかなと。
そもそもお前の駄文なんぞ読んどらんわ!!
スマホの画面からそんなご意見が聞こえてきた気がするので、明暗両方書きましょうかね。
ということで暗めを先に。
なんといっても、宝物だったとある有名人のサイン色紙とグッズを燃やされたことでしょう。
小学生の頃に子供会という地域の組織がありまして。
友達のいない私も、友達できるんじゃないかという家族の期待から入会し、月に1回の集まりに出させられていました。
大体は観劇がメインで、よくある児童劇団を呼んで公民館で上演するというやつでした。
もちろん私内容はさっぱり覚えておりません。
真面目に学生時代はいじめの記憶だらけで他も含めて覚えていること少ないんです。
そんな中で、とある月の集まりに、各自の宝物紹介という企画がありました。
行きたくなくとも観劇ではなく交流する回だから仲良くできるかもよとのせられ、件のサイン色紙とグッズを持っていったんですね。
それでまあ色々ありまして、帰り道に燃やされたと。
その子もその有名人が好きだったらしく、嫉妬心でそうしたらしいです。
子供同士のことだからと許してあげることになりましたが、私の大切な宝物は炭と化しました。
残ったのは、その子と同じ名字や名前を見聞きすると、今でもドキッと胸に響くものがある見えないささくれだけでしょう。
ということで次は明るめを。
私文通とご縁がありまして、小学生の頃にひとり。
中学校の頃にふたり。
その後数人と文通をしたことがあるんです。
経緯は長くなるので省略しますが、毎度可愛らしい封筒に入ったこれまた可愛らしい便箋に、年相応らしい直筆の手紙が送られてきまして。
毎度事務で使う茶封筒にワープロ用紙、封筒の宛名や住所しか直筆のない素っ気ない返事を書いていました。
今でもですが、私ほんと字きったないんです。
長い人で2年くらいだったでしょうか。
月に一度送られてきては、好きなテレビやアイドルの話題などから、お悩みなんかも書かれていましたね。
諸事情あって私の文通相手は、いじめだったり引きこもりだったり、何かしら心に傷のある人達でした。
片や丁寧な直筆の手紙。
片や素っ気ない活字の手紙。
それでも気にせず文通は続き、ある時に変化が現れてきます。
学校に行ってみようと思う
外に散歩に出てみたんです
家族と挨拶ができるようになりました
少しずつ変化が現れていき、そして文通に終わりも訪れます。
ありがとう
ありがとうございました
最後の手紙に書かれていたお礼の挨拶は、今でも私の記憶に残っています。
こちらこそ楽しいひとときをありがとう
私が最後に返した手紙の最後に、きったない字で書いたお礼の挨拶は、無事に読めましたかね。
そんな文通の記憶が、私の宝物です。
そういえば、それから数十年経って、また文通をする機会があるとは思わず、その場で交流できた数人とは、毎回楽しくやり取りさせてもらいました。
昔と違って突然一方的に辞める場でしたが、最後のありがとうはネットの文通相手さん達に届いているといいなと思います。
宝物ってあるとものすごく嬉しくて心強くて、それが失われるとものすごく悲しくて辛くて。
大事なものほど一喜一憂があるものです。
皆さんも今ある宝物は大事にしてくださいね。
そして、新しい宝物との出会いもあるといいですね。
いやいや、もういらないって?
私はほしいです。
記憶の宝物もいいですけど、形ある宝物もあるといいかなと。
「...俺の宝物? そんなの訊いてどうすんだ」
「宝物ってさ、幸せの定義と一緒でなんだかよく分かんなくない? これが俺にとっての宝物です、なんて簡単に言えないよ」
「簡単に言えないから宝物なんじゃないか?」
「...どういうこと?」
「宝物だって言えるほど大切なものが見つかってないから、そう思うんだろ。それこそ幸せの定義と一緒で、別に探すもんでもねえんじゃね? 気づいたときには、それが宝物になってたりするもんだろ」
「...ふーん。よくわかんないや」
「ま、いつかお前も見つかるだろ」
「“お前も”って...そっちはもう見つかってるの?」
「......」
お前と過ごしているこの時間が宝物だなんて言えるかよ。
─宝物─ #119
カチチ。
使い古したコンロが、音を立てて火を起こす。
俺はその上に、二人分のカップ麺の水を入れたヤカンを置いて、湯を沸かす。
俺は火の上で鎮座するヤカンを見ながら、浮足立つ自分の心を鎮めようとしていた。
自分の部屋だというのに、全く心が落ち着かない。
頭の中を占めているのは、部屋に上げた幼馴染のこと……
ついさっきの事だ。
仕事帰りにコンビニで弁当を買おうとしたら、偶然にも幼馴染と再会したのである。
小学生以来の再会なので、戸惑ったがすぐに打ち解けることが出来た。
けれど、肝心の弁当は売り切れ……
『食べるものが無い』と言う幼馴染を、『ならウチでカップ麺食うか?』と誘ったのだが……
「問題はアイツが女だっていう事なんだよなあ……」
そう、幼馴染の順子は女性。
俺はその場のノリで、女性を部屋に上げてしまったのである。
別に順子がウチに来たことが嫌なのではない。
ただ、俺と順子はいい歳をした社会人。
気軽に互いの部屋を行ったり来たりなんて出来ないのだ。
昔みたいに付き合うには、俺たちは歳を取り過ぎたのだ。
それに誘った目的がカップ麺である。
色気も何もあったモノじゃない。
まあ久しぶりに会った幼馴染に、色気を出すはずも無いのだが……
だが反省は後……
大事なのは今、ここをどうやって無難にやり過ごすかである
俺は打開策を考えるべく、順子の方を横目で見る。
だが順子も順子で、落ち着かない様子でソワソワしていた。
所在なさげに、放置していた漫画を取ったり置いたり……
明かに挙動不審であった。
そんな幼馴染の様子を見て、順子も同じ気持ちなのかと、少しだけホッとする。
だからと言って、何も解決はしていないのだが……
まあいい。
とりあえず今日はカップ麺を食べて帰ってもらおう……
友情を育むのは、今度でもいいはずだ。
今日は出会えた奇跡に感謝しながら、食卓を囲めばいい。
そう思っていた矢先だった。
「あ、これって……」
順子が驚いたような声を上げる。
気になって様子を見てみると、彼女はアロマキャンドルを手に持っていた。
俺が棚に置いて大事に飾っていたアロマキャンドルだ。
それを見た瞬間、俺の顔は日が出そうなほど熱くなる。
このアロマキャンドルは、引っ越す直前に順子と一緒に作ったものだ。
近所のショッピングモールのイベントで製作体験があって、せっかくだからと互いの両親に連れていかれたのである。
今思えば、親が最後の思い出を作らせてくれたのだろう……
ちょっと泣けてきた。
「これって、あの時のアロマキャンドル?」
回想に耽っていた俺は、順子の言葉で現実に引き戻される。
「あ、ああ」
油断していた俺は、気の無い返事しか出来なかった。
そんな挙動不審な俺に気づかず、順子は「まだ持ってたんだね」と呟いていた。
「順子はも持って無いのか?」
そう聞くと、順子は不思議そうな顔をして、
「あたりまえじゃん。
アロマキャンドルは使うものだよ」
と返される。
……正論だった。
……正論なんだが、どこか悲しい気持ちになる。
順子と一緒に作った思い出のアロマキャンドル。
思い出の証として持っていたのだけど、彼女は違ったのだろうか……
俺がメランコリーに浸っていると、順子は何かに気づいたような顔になる
「もしかして私だと思って大事にしてたの?」
図星だった。
図星過ぎてなにも言えなかった。
「え?」
返ってきた反応が思っていたのと違ったのか、順子が驚いた様子を見せる。
「こっちまで恥ずかしくなってきた」
そういうと、順子は両手で口を隠し、なにも言わなくなった
気のせいかほんのり頬も赤い
そして訪れる沈黙……
交差する視線……
聞こえるのは、外から聞こえる車の音だけ……
なんだこれ?
めちゃくちゃ恥ずかしいぞ。
だれか助けてくれ。
この状況を打破できるほど、俺は経験豊富じゃない!
ピーーーーー。
その時、ヤカンの汽笛がけたたましく鳴り響いた。
俺は慌ててコンロの火を止める。
助かった。
あのまま見つめあったらどうなっていたのだろうか……
想像できない。
俺は誤魔化すように、カップ麺にお湯を注ぐ。
けれど動揺しているのか、手が震えてお湯がうまく入らない。
おちつけ、俺!
「お湯を入れたからあと五分で出来るぞ」
「うん、ありがとう」
そして沈黙再び。
……
沈黙が辛い。
「ねえ」
俺がどうしようと悩んでいると、順子が声をかけてきた。
「再会を記念して、このアロマキャンドル使おうよ」
順子は名案とばかりに、胸を張って提案する。
だが俺はすぐには答えられなかった。
順子に再会できたとは言え、今まで大事にしてきたアロマキャンドル。
すぐに使う決心は出来なかった。
「私はもういなくならないよ」
だが俺の心の内を見透かしたのか、順子は俺の答えを待たず言葉を続ける。
「アロマキャンドルは、また作ればいいんだよ!」
そう言って、順子は親指を立てた。
それを見て、俺は決心する。
「分かった。
使おう」
そうだ、俺は何を怖がっているのだろうか。
順子とはもう出会えたのだ。
アロマキャンドルが無くなっても、寂しい思いをする事は無いのだ
「それをくれ」
俺は火を点けるため、順子からアロマキャンドルを受け取る。
だが手に持った瞬間、あることに気づく。
「火をつける道具がねえや」
二人で大笑いした。
[宝物]
友達により作られた勇気
母が与えてくれた私の命
そして、貴方からの手紙
【宝物】〜Mrs. GREEN APPLE様『はじまり』〜
今日までの足跡を数えてみたくなる
君と笑い合った日々が宝物なんだ
まるで奇跡のような眩ゆい毎日で
寂しさを知りながら喜びと出会えたんだ
宝物
この世界で一番輝いて見えるものはなんだろう?
思い付くのはきっと人によって全く違うだろう。
家族?ペット?友達?恋人?推し?恋?才能?自分?
食べ物?ぬいぐるみ?仕事?思い出?睡眠?趣味?
これ以外にもきっと無限にある宝物。
人は沢山の宝物と共に日々を過ごすのだろう。
その宝物はいったい、その人にとって、どんな影響があるのか?
それが良い事も悪い事もあるだろうし、
そもそも良い事も悪い事もないだろう。
人にとって、宝物には無限の意味や理由、輝きが存在する。
それがあるから幸せで、あるいは不幸で、あるいはそれが人生だと思っている。
宝物というのは、人の心を左右するものだと感じる。
海賊が宝物を奪ったり探したり喜んだりするのと、
お金持ちが宝物を持ってお金を得たり保管したり飾ったりする。
あるいは家宝として代々引き継がれてきた大切な物でもあり、
オタクが推しを宝物として一生拝み続け推し続けるように、
人の心を左右するものでもあるように感じた。
そういえば、ボクにとって宝物はなんなんだろう?
と、言われればボクは「人生」と答えるだろう。
理由は正直な話、一つに選べないのが本音なんだ。
本当にボクは優柔不断だな、と思う。
ボクにとって、選択をするのは宇宙の数と同じだと思っていて、宇宙にある星の数ほど、ボクの頭の中にある選択肢は星と同じ数だった。
だから、全部が大切だし、全部がキラキラして見える。
全部が素敵だし、全部が楽しいし、面白い。
何より、その中で生きている人生が一番宝物だと思えた。
美味しい食べ物を食べてる時も、
大切な人と一緒にいる時も、
推しを応援してる時も、
絵を描いて自分の想像を限りないように描く時も、
勉強をして様々な学びを得ている時も、
仕事をして自分自身の社会経験を積んでいる時も、
息を吸って吐いて、周りの景色を見ている時も、
無限大な想像、または妄想をしている時も、
無限大な色を見ている時も、
この書いている文章も、
全部、全部、全部ボクにとって大切な宝物だ。
そして何より、その人生を生きる自分自身も宝物だと感じる。
ボクをこの地球に産んだのは親だけど、
自分から息を吸って、考えて、日々、地球で生きているのはボク自身だ。
正直、親よりも自分自身が大切に感じる。
だから、ボクはこれからも自分自身の考えを語りたい。
こんな変で妄想癖がある普通じゃない、
自分を人間かどうかも分かってない、
普通に生きれない臆病なボクを、
これからも懲りなく書いていたい。
ボクにとって、人生は大変だし疲れるし辛い時もあるけど、それが楽しく感じる。何があるか分からない恐怖、感情、不安、楽しさが、人生の最大のサプライズになる。
それが楽しくて、全てがキラキラして見える。
その輝いている美しさはボクにとって、
どんな見た目でも味でも匂いでも、美味しく感じる、最高のご馳走だ。
ボクは、また息を吸って、吐いて、地球の上に立って生きている。
毒と書いてぶすと読んだあの人は、狂言に首っ丈だったか、漢方に精通した立場だったのかもしれない。
庭のトリカブトが、鮮やかに咲いていた。
額縁の外は、今日も騒がしくて眩しかった。
「人は嫌いだ」
かつて、あの人は、今日のような朝、そんな言葉を誰に訊かせるでもなく口にしながら、絵の具に占領されたパレットを片付けていた。
「作品にメッセージなんてあるものか。私の作品は全て、私だけのものだ!絵も、庭も、粘土細工も。…他人に分かってたまるか」
あの人は決まって、憮然とそう呟きながら、絵筆を振り回した。
あの人の手に握られた、けばだった絵筆に、たっぷり染み込んだ絵の具は、何よりも鮮やかだった。
その鮮やかな色から、私は生まれたのだ。
殴るように塗りつけ、塗り重ねられた、多量の色彩の塊として。
「完成だ。これがここでの処女作。私の宝物だ」
最後の鮮やかな水色を塗りたくられ、生まれ落ちた私が初めて聞いた言葉は、あの人のそんな言葉だった。
「ここなら、これを誰も解釈しない。私だけの、私のための絵画。私だけが知る私。それでいい。それが大切なんだ」
あの人はそう言って、玄関から一番遠い、中庭を望むこの部屋の壁に、私を額縁に入れて飾った。
薄紫に柔らかな花弁を戴く附子を背景に、あの人は満足気に私を眺めて、仕切りに「宝物」と呼称した。
私は、あの人の感情から生まれたが、あの人の思想や感情などテンで分からずに、ただぼんやりと、額縁の中で、あの人によるあの人にとっての最高傑作の色彩の重なりとして取りすました。
私は、形を成していない。
あの人が心のままに塗りたくった色彩でしかないのだから、当たり前だ。
私は輪郭を持たず、思想を持たず、意見を持たず。
ただ“ある”だけの絵だ。
それだけだが、それだけが大切だった。
私が、生まれた時からずっと宝物であるために、何も持ち合わせない、なんとなくの、只の、色彩の重なりである必要があった。
だから私は宝物であり続けた。あの人にとっての宝物で。
しかし、そんな日々も終わりを告げた。
いや、今から終わるのだ。
一刻前、暗い地平線から朝日がさす丁度その直前に、あの人は出し抜けに宣言した。
「もう終わりにする」と。
そうして、あの人は、私の額縁の歪みを正した後、中庭でトリカブトを一輪ちぎり、内側の部屋に消えていった。
あとは朝日が登り始め、小鳥が騒ぎ始め、俄かに賑やかな時の進みと長い沈黙とが、この家を満たした。
きっと、私とあの人が顔(私に顔があるかは不明だが)を合わすことは二度とないのだろう。
あの人がいなくなったこの家は、すっかり変わってしまうに違いない。
私の環境も、きっと。
しかし、それ以外のことは何も分からない。
それ以上に具体的なことは。
私はあるだけの色彩だから。
知能は高くないし、そもそも働かせる脳があるかも分からない。
しかし、誰になんと言われようと、なんと解釈されようと、それこそ、ブスだの不出来だの失敗作だのと罵られようと、私は変わらない。
不変であり、理解されないことが、私の在る意味なのだから。
私は、私の向かいのあのトリカブトたちは、この家全土は、今も尚、あの人のための、あの人だけの宝物なのだ。
それが変わることは、永遠にない。
私たちは、あの人の唯一の宝物として、遺るのだ。
額縁の外は騒がしい。
いろいろな音、いろいろな色、いろいろな動きが満ち満ちている。
トリカブトが、紫の花を揺らした。
宝物
辿りつけない場所もある
小さくて
当たり前の中に潜むもの
輝きが
価値を決める訳ではない
幼稚園の時に、祖母に買って貰ったブロック
これが私の宝物、今でも思い出す
ブロックの感触
祖母がいなくなっても、
そのブロックは、祖母との思い出という
宝物に変わる。
宝物というものは、どんな時でも、
いろんな意味の宝物になる