『好き嫌い』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
好き嫌い
好き嫌いをい行ったり来たり
まだまだ貴方への依存は解けないみたい
しつこい魔法ね
好きな時は
あの時、突き放さなければよかったって
最後に2人で会える機会をつくってくれたんだから
会えばよかったって
そこでまた私の気持ちだけを言えばよかったって
嫌いなというか冷静になれてる時は
あの時、突き放すのが辛かったけど
何も間違えてなんかないって
どうせ2人で会える機会を設けたのだって
私を都合よく使うためだって
寂しさを埋めるためだって
私の気持ちを伝えても何も変わんないって
分かってる
もう魔法は、依存は解けてる
それでもしがみついてる私はただの馬鹿
早く目覚めなさい
私がした行動は全て私を幸せにするために
必要だったのだから
『好き嫌い』
「好き…嫌い…好き…嫌い…」
花びらを一つ摘んでは千切り。
隣を一つ千切り。
また一つ。
「花占い? 珍しいことするね」
「嫌い…好き…」
「綺麗な花だね。マーガレット、だっけ?」
「ちょっと離れててよ」
「いいじゃんか。見てるだけなんだから」
「気が散るんだよ……。って、やばっ」
「どうかした?」
「次がなんだったか忘れた……。
最後どっちだったっけ?」
「ちなみに、聞かれてもこっちも覚えてないからね」
「邪魔されただけかーい!!
っく…、思い出せそうで思い出せない……!」
「ごめんって。
……ところで、何を真剣に占ってたの?」
「それは…、
……………秘密」
まだ半分花弁を残した、白いガーベラが宙をふわりと舞った。
好き嫌い
好きは好きだけど
嫌いにするには、ちょっと大変
ある意味整理整頓みたいで
トマトに嫌いな札が貼ってあって
だから、食べない
大変惜しい人生かもね
好き嫌いのはっきりした人
なんて言い方あるけど
一体どんな人なんだろう?
俺はトマトが嫌いだ
俺はトマトの入ったパスタは食べない。
生まれてから一度もトマトは食べてない。
その証拠に、まず味を知らない
好き嫌いの激しい子だった私。
あれはなんだかゴリゴリしてておいしくない。あれはなまぐさい。
子供ながらに、子供ゆえに無視できない違和感。
いいじゃない。
好き嫌いが多くたって。
でも、そうも言ってられなくなった。
私に妹ができたのだ。
好き嫌い
好き・嫌い・ハッキリ言えたら
みんなきっとストレスたまらない
誤魔化しながら必死に生きてる
いつか報わるといいな…
お題:好き嫌い
『空を仰ぐ』
波の音が響く浜辺に
月に照らされるひとつの影
波の音に誘われてか
月の光に魅せられてか
影はどこに行くでもなく
(いや、ひとり歩きをやめたのか?)
ただじっと佇んでいた
海が好きなのか
朝が来るのが嫌なのか
誰も知る術はない
朝が来る気配がした
背を向けて歩きだした影の
後ろ姿が懐かしいのは
夢という名の幻であろうか
長年一緒にいたら
私の好き嫌いなんて把握されちゃって
私が「代わりに食べて」なんて言う前に
あなたは自分の手元に持っていくの
でも、私もう食べられるようになったよ
あなたがいなくなったからだよ
苦手を克服したのは嬉しいことなのに
こんなにも悲しいなんて
#好き嫌い
目を瞑り、思い切って口に詰め込むと、一気に広がる青臭さと苦み。
「まずい……」
つい、口から漏れる。もう取り繕う必要のない正直な感想。
昔からずっと、嫌がる君の代わりに食べていた。本当は私も嫌いだったのに、平気なふりをして。そうして君に尽くせば、ずっと君の隣で君の一番でいられると思い込んでいた。
でも、そうじゃなかった。噛みしめると一層強く、青臭さと苦みを感じる。
好きだけど嫌い。
タワー・オブ・テラー。
建造物としてのインパクト。
隣接するS.S.コロンビア号との豪華な景観。
Qラインで美しいホテルの庭園・ロビーに触れ、
プレショーで謎を共有されるサスペンス。
そして通される怪しげな物品の数々が並ぶ倉庫。
好きだ。ここまでは心躍る完璧なコンセプト。
しかし、あれよあれよと進むうちに
謎の箱型の領域に通される。恐怖。
シートベルト着用せよ、とまで命じられる。
遂にもう逃げられないところまで来てしまった。
冷や汗が止まららず脚も落ち着きなく揺すってしまう。
前に掴まれそうな棒もない。
仕方なく心許ないシートベルト着用チェック用の紐を力一杯握って気を紛らわす。
ホテルスタッフが、
「いってらしゃい」と言う。
終わりの始まり。後ろに動き出す。
悲鳴の準備は万端だ。
好きだけど嫌い。
タワー・オブ・テラー。
これからも同じ事を繰り返し、
ますます好きになり、いっそう嫌いになる。
#好き嫌い
「すき、きらい、すき、きらい、すき、きらい……」
「すき」
はぁ、何やってんだろ俺
こんな歳になってまで花占いして舞い上がって…、ピュアかよ
地面に落ちた桃色の花弁のそばに残った筒状花を捨てる
「あ、いた、らん」
「何してんの?」
「花占い」
「は?なんで?」
「好きな人でもいんの?」
「まぁ、想像に任せる」
『いる』とも『いない』とも言わない。何を言っても面倒になりそうだから、適当に解釈してもらおう。
いるまは、俺が言った言葉に考え込むような表情をする。てっきり、笑われるのかと思ってたのに。
「いるま、?」
「あぁ、ごめん」
「で、どうだったん。占い」
「好き、だって」
「ふーん」
「まぁ、占い特に信じてる訳じゃないけど」
「じゃあなんでやってんw」
なんで…、、
チラリといるまの顔を覗く。横顔もかっこよくて、ついつい見つめてしまう
「なに?」
「なんでもー?」
「…そうだなぁ、信じてる訳じゃないけど、信じたくなる時はあるんだよ」
「好き嫌い」
この人が好き、というのは理解できる。LIKEでもLOVEでも好きな人と話したり一緒に何かをするのは楽しい。
でもこの人が嫌い、という感情をずっと持ち続けるのは理解できない。自分の限りあるリソースを、嫌いなその人の為にわざわざ割いているのだ。
この人のこういう所嫌だなとか部分的に思うことはあるけど、人格否定のような、根本を嫌うという行為はエネルギーの無駄だと思う。
「I don't have time to worry about who doesn't like
me. I'm too busy loving the people who love me.」
スヌーピー
「好き嫌い」
食べ物であれ人間関係であれ、必ず好き嫌いはある。
でも、いつかはそれを克服できるかもしれない。
小さい頃は嫌いだったのに、大人になるとそれに対する味覚も印象も変わる。
勇気をもって向かい合えば、一気にそれが大好きになることだってあるはずだ。
全てを好きになれるわけではないけれども、嫌いなものを理解しようとする気持ちは持つべきだ。
好き嫌いは、若い頃の方
が多々あって、、、
わがまましていた
今は好き嫌いは、無い
に等しいかもしれません
好き嫌い関係なく全て
役割があるように
見えてきたのです😔💦😝
私には好きなものも嫌いなものもたくさんある。
あれもこれも嫌いであれもこれも好き。
到底数えきれないくらいだけど確かなのは、
そんな私も、やっぱり大切な人には好きなものがたくさんあって欲しいと思ってるということ。
ーーーー幼馴染みが微妙な顔をした。
前からこの話題になると少し困ったような顔をするからなるべく避けるようにしていたけれど、もう四年生なろうというのに彼は入学してから一度も実家に帰らず、長期休みはずっと寮で過ごしている。さすがに一度も帰らないのはそろそろ不味いんじゃないだろうか。そうと思えばどうにもこうにもその話題に触れずにはいられなかった。
「去年は寮に残ってたでしょ?今年は実家に帰るの?」
「…どうしようかな。別に帰ってやりたい用事もないし…」
衝撃だった。
用事がない…!?実家に用事がない!?
実家なんて私にとったらパラダイスに等しいのにどうやら彼にとっては居心地の悪いところのようだ。
多くは語らないが、その語らなさが全てを物語っている。彼の実家では美味しいアップルパイとかキノコたっぷりカルボナーラとか出てこないのだろうか。
いっそ、私の家に引きずっていこうかね………
それもおおいにアリアリのアリだったけど、それはまたの機会にして今回は友の背中を押すことにしよう。
「じゃあ手紙、送るね!」
「え、いや、まだ帰るって決めた訳じゃ……」
「返事かいてくれないの?」
「そ、…そういう訳じゃないけど…」
「ふふ、よかった。じゃあ楽しみにしてるから!」
あれよあれよと彼が言いくるめられてしまうのはだいたいいつもの流れ。優しい幼馴染みは私の願いならいつだって叶えようとしてくれる。それなら私だって君の心の底の願いを叶えてあげたい。多少強引でも力になれるならなんだってする。
好きな場所は、好きなものは、多い方がいいってきまってるんだから。
ーーーーーーーーー
待ち遠しい長期休みはあっという間に訪れ、みんなそれぞれの帰路へと向かう。騒々しい学校や寮に静かな時間の訪れ…にはまだ少し私たちには早い。
「ちゃんと!家帰るんだよ!」
「わかってるよ(笑)気を付けて帰ってね」
「そちらも!忘れ物もしないように!」
「はいはい(笑)ところで切符は持ったのかい?」
「!!!!……………今持った。」
「(笑)(笑)じゃ、またね。休み明けに。」
「うん、休み明けに!」
少し不安げな表情に何か声をかけたかったけど。
詳しく事情をしらない私が何か言える言葉があるはずもなく。
「ぜったいてがみちょうだいねーーーーーー!!!!」
「わかってるよwwww」
いつものように振る舞うことが私の唯一出来ることだった。
(また、この学舎で会うとき君の笑顔が一層輝いていますように)
そう願って私は一足先に寮を後にした。
以下、手紙の内容を一部抜粋。
『今度、私の家に遊びに来てよ!ご馳走用意する~!何食べたい!?何嫌い!?何好き!?!?』
『課題終わらない、、なんならどこが範囲なのかもあやうい………タスケテェ』
『帰ってくるときお土産買ってきてね!みんな呼んでお土産パーティーしよ!』
『遊びたい~~~!ホウキかっ飛ばしてそっち行こうかな。名案だと思うんよ。罰則と退学のスリルも味わえる。けどここでひとつ問題。私、飛行術はE判定なの、、、』
「好き嫌い」HPMA side. T
幼い頃から正しい愛情を向けられなかった私は、
どうやら愛の価値観を違えてしまったらしい。
父は人に興味を持たぬ人で、
母はそんな人と一度だけ過ちを犯し、私を産んだ。
父は母にも私にも関心を向けることなど無く、
母は私を居ないものとして扱った。
好きの反対は嫌いではなく無関心。
私に食べ物の好き嫌いは無い。
それは、私が食に関心を持たないことを意味する。
つまりは、好きも嫌いも関心を持つが故の感情だ。
私を嫌いになれないのなら、どうか好いてくれ。
私を好きになれないのなら、いっそ嫌ってくれ。
無関心が何より恐ろしいものだと、私は知っている。
『 好き嫌い』
好き嫌い好き嫌い好き嫌い
私は指を見ながらそう言う。
食べ物の好き嫌いは分かる。
教科や自分が苦手な生活習慣もわかっている。
だけど、人の好き嫌いが難しい。
友達には気を使うし、遊んだ後は楽しい感情より疲れたという感情の方が多い。
自分に合う人が分からない。
こう考えることは嫌いだ。
正解が分からないから。
人の心には正解が存在していない。
人の気に触ることを言ってしまっても、あの時どう言えばよかったなんて分からない。
こう言う難しいこと、嫌いだな。
人間にとって一番思考や行動の原因となり得るのが「好き嫌い」だろう。この感情がなければ人間とは言えない。「好き」故に相手を殺してしまうこともあれば、不便な世の中が「嫌い」だからスマートフォンを開発するなど、好きがマイナスの働きをし、嫌いがプラスの働きをすることもある。だからどちらか一方だけという世の中は危険である。何事もバランスなのである。
「私を困らせて楽しいのは貴女だけです」
「あんたのそういうところが嫌いなのよ!」
ヒステリックに彼女は叫んだ。
そうは言われてもなぁ……
仕事に私情を持ち込まないでほしい。
上司に「ふたりで話し合え」と言われたが、歩み寄りというものは、お互いにしないと意味がないと思う。どちらか片方だけではダメなのだ。
それに、こちらの話を聞く気もない人と冷静に話し合えるわけがない。
だけど、これだけは言っておかねばならない。
「私のことをどう思おうが貴女の自由です。私のことを『死ねばいいのに』と思っていても、私は全然構いません。ですが、業務に支障が出るようなことはしないでください。私を困らせて楽しいのは貴女だけです。貴女が私に業務上必要な連絡を怠った結果、他の部署との連携に影響が出てしまいました。今回は社内だったので、まだいいです。もしこれが取引先だったら会社としての信頼に関わると思うのですが────」
落語の『大工調べ』の啖呵のごとく捲し立ててしまった。私だって貴女のことは正直嫌いだ。それを言えたらどんなにいいか。でも私はそんなことはしない。仕事に私情は持ち込まない。
だが、今回、いくらなんでもマズイだろうということが起きたので、言いたいことは言った。
これで彼女が態度を改めてくれれば良いのだけど……そんなに甘くないか。
────好き嫌い
#55 好き嫌い
――好きです。
予期せずそう言われた瞬間、わたしはその人のことを嫌いにならざるを得なくなった。
家族がいるのに、なぜそんなこと言うんだろう。
混乱した。
悲しかった。
とてもやさしい、いい人なのに。
一人の人としては好きではあった。
それなのに。
なんて自分勝手な、残酷な告白をするんだろう。
その言葉が大切な人全員を傷つける言葉だと、どうして気づかないのだろう。
わたしは惨めにもなった。
恥ずかしくもなった。
家族に憧れていて、でも自分の事情で人よりそれを得るのは困難で、そんなわたしの事情などもちろん知らず、その人はわたしに好きといいながら、家族との幸せをわざわざ名指しで垣間見せたりする。
法律が違ったら、国が違ったら、価値観が違ったら、ショックも受けず、うれしいと思うのだろうか。
この「好き」と「嫌い」が不思議なまでに、愚かなまでに、共存してくっついている「好き嫌い」は、なんなのだろう。
そしてそんな好き嫌いを心に棲まわせながら、無視をして、何事もなかったように接しているわたし。
仕事に支障が出ないように、距離を置きすぎないように、でももちろん近づかないように。自分勝手に、今まで以上でも以下でもなく接している。
サイコパスは、二人いるのかもしれない。
私たちが暮らしているこの世界では、よくアプリで作り話として動画で取り上げられるように、好感度が数値化され、頭上に浮かんでいる。つまり、この世の人としての判断基準はこの頭上の数字によって決められている。好感度が高い、即ち数値が大きい人は社会から必要とされ、一流企業への就職や特待生入学など、人生において様々な利益がもたらされる。が、好感度が低い人は、社会の最低地位の人種とされ、増税が課されたり就職や進学において不利となる。
今この私の手記を見ているであろう貴方からしたら、こんな世界はおかしいと思うだろう。だけど、私たちは生まれた時からこのおかしなルールに従って生きてきた。今更この頭上の数値抜きで、人の善し悪しを判断する事は到底不可能なのである。
平均の数値は真ん中の五十とされていて、それより上回っていれば、無論好感度が高いとされる。私の頭上には六十三という数値が浮かび出されているが、この数値はまだ中の上といったところで、上の上ともなると九十以上の規格外の数値が浮かぶ。そんな上の上の人間は、十年に一度現れるか現れないかと言われる奇跡の逸材と言われている。
私は一度だけその奇跡の逸材の人をこの目で見たことがある。その人こそが、私の幼馴染の紗倉愛花(さくらまなか)だ。花のように沢山の人々から愛されてほしい、という両親の思いを見事に具現化したような人だった。彼女は人に愛される為に生まれてきた、と言ってもいいほどで、誰もが惹かれる笑顔と愛嬌を持ち合わせ、愛情深く責任感が強い性格で、成績優秀、抜群の運動神経、容姿端麗、と誰もが憧れるステータスだった。そんな完璧な彼女を嫌う人は本当にごく僅かで、彼女の頭上の数値はいつも九十五をキープしていた。
先程彼女は私の幼馴染だと紹介したが、彼女と私の扱いの差が歴然と現れたのは中学校からだった。幼稚園や小学校の頃は、まだ物心ついている者が少なく、人に対して興味を持ったり、恋心を抱いたりすることが無かった。が、中学生は一番多感な時期で、彼女は勿論男女共に人気を博し、告白など日常茶飯事のように行われ、多い時には一日で五人の男子生徒に告白されるほどの人気っぷりだった。更に、成績優秀な彼女は常に学年のトップの成績を取っていて、生徒会長にまで推薦された。そんな住む世界が全く違う彼女と私に距離ができるのは、至極当然のことだった。彼女はいつも人に囲まれていたので、一緒に登下校することは疎か、会話をすることも出来なくなっていった。定かではないがその頃で、彼女の数値は既に九十を超えていたと思う。
高校はそれぞれ違う所に進学したが、地元での彼女の噂は一切絶えることが無く、彼女の両親はいつも近所の人に持て囃されていた。私も実際その現場を見たし、彼女の高校での話も(風の噂ではあるが)沢山耳にした。高校でも彼女は沢山の生徒から支持されていたらしく、二年生で生徒会長を務め、年下から年上まで沢山の生徒からアプローチを受けていたという。そんな彼女の就職先は勿論一流企業だったが、彼女は将来政治に関わる仕事をしたい、と昔から言っていたらしく、政治についての勉強をして政界進出を狙っていると聞いた。彼女の父親は国会議員だったし、母親は大臣レベルの人の秘書をしていたので、彼女の将来は既に安泰だと、近所の人は言っていたし、私もその言葉に頷けた。
そんな人気者だった彼女はある日突然、自ら命を絶った。それは本当に当然の出来事で、誰もが驚き、悲しみに暮れた。内定は決まっていたし、政界進出への一歩は既に踏み出していたのにも関わらず、一枚の遺書を残して彼女はこの世を去った。遺書を読んだ彼女の母親は、これは遺書ではなく、頭上の数値に踊らされ続けた私たちへの当てつけの手紙のようだ、と話した。後にこの手紙を読ませてもらった私は、ある三文に目がいった。
「私は十年に一度の奇跡の逸材じゃないし、頭上の数値は私自身を可視化したものじゃない。
この数値になる為に、期待を裏切らないために、奇跡の逸材たちがどれ程の努力をしてきたのか、この世界は何も分かっていない。
もう期待されることに疲れてしまいました。」
お父さんお母さん、私を奇跡の逸材として育ててくれてありがとう、と彼女らしく手紙の最後は締めくくられていた。
彼女も私と同じ、ただの一人の女の子だった。この世界中に沢山存在している女子高校生の一人だった。そんな彼女が奇跡の逸材で居続けるために、どれ程の努力をし続けてきたのか、どれ程の重荷を抱えていたか、幼馴染だったはずなのに、私は全く知らなかった。いや、知ろうとしなかったのかもしれない。どんなに悔やんだって遅いのに、私はその日、もう表情を一切変えることの無い笑顔の彼女に、ただひたすら謝ることしか出来なかった。
この経験をしてもなお、私は未だに頭上の数値を見る事でしか、人の善し悪しを判断出来ない。当たり前だと脳内に刻み込まれたこの世界のルールを、今更上書きする事など私には出来なかったのだ。でも、この彼女の死を通して、私の中で彼らに対するある思いが生まれた。それは"奇跡の逸材"と呼ばれる彼ら、彼女らは数値が高いからとその肩書きを嵌められたのではなく、ただ人に好かれようと、誰にも知られず努力をし続ける十年に一人の天才たちを、人々が"奇跡の逸材"と呼んだのだと。だからこそ、私は愛花のような努力の天才たちが輝く本当の理由が、好き嫌いなんかの単純なものでは語れないような気がするのだ。
最後にもう一度。
"奇跡の逸材"と呼ばれた天才、紗倉愛花は私の幼馴染だ。それは彼女が死んでも変わらない。
そして、私が彼女を心底憎み嫌っていたことも変わらない。
「好き嫌い」