好きな本』の作文集

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好きな本』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

6/15/2024, 4:00:07 PM

好きな本…



私は、よく本を読む子どもだった。

昔話とか千一夜物語とか好きだった。



ある時先生が、「他の本も読んでみなさい」と言い、

それから本を読みたくなくなってしまった。


呆れるほどのあまのじゃくだった。


しかし、ある時から自分で物語を書くようになった。


30万の賞金目当てだった。

1年ほどやってみたが鳴かず飛ばずだった。


圧倒的に経験値が足りなかったが、

その前に、文章を書くって大変なんだなあとわかった。



書くのをあきらめた私は、Hさんに出会った。

まだHさんが教科書に載る前の話だ。


Hさんの本を端から読んだ。


Hさんの短歌は素敵でキラキラだった。

また、書く文章はとてもチャーミングだった。

何より、ひとつの話が31文字という短いところが特に良かった。


その後テレビでHさんを観た。

優しい声だった。

ボールペンをクルクルしていた、そのボールペンになりたかった。


今で言うところの”推し“だ。



と、いうわけで私の好きな本は短歌の本です。

川柳もよく読みます。


あ、漫画の方がよく読むかも…ハハハ

6/15/2024, 3:54:58 PM

「こんなものを寝る前に読んでるから妙な夢を見るんですよ」

こんなものと、リビングのテーブルの上でバンバン叩かれていた本二冊を、君の手が離れた一瞬のスキをついて奪還。

そのまま寝室に逃げこもうとしたが、椅子の脚にスリッパが引っ掛かってしまいコケてしまった。

無様……、なんて羞恥心が湧き上がる前に両肘を交互に動かしてリビングの床を匍匐前進。

しかし、片足が君に捕まってしまいアザラシ狩りに遭った仔アザラシのようにズルズルと引きずられる。

「ぎゃあぁっ、いやー、ママー!」

「誰が、誰のママだって?」

持ち上げられた足を捻られ、床を転がされて力尽きた私の腕から君が本をもぎ取った。

「ほら、明日読めばいいでしょう?」

とっとと寝ましょう、と本棚の適当な段に無造作に仕舞われた二冊を閉まりつつあるリビングのドアから、君に羽交い締めにされながら見つめた。

ドグラ・マグラ……。

テーマ「好きな本」

6/15/2024, 3:51:57 PM

好きな本

古びたページの匂い。
黄ばんだ小口。
折れ曲がった帯。
少しふにゃついている角。

大好きな本。

僕の部屋の床には本が積み重なっているタワーがいくつもある。
その積み重なっている本はどれも大切な本で僕の宝物。

でも、本は僕一人に愛して欲しいから、早くまた開いて。とお願いをしてくる。
僕は本が好きなんだ。
どれも好きなんだ。

本は本だから、どれか1冊を決めろなんてできない。
全ての本を抱いて寝たい。

#09

6/15/2024, 3:49:11 PM

好きな本
コンビニ人間
100歳まで生きた赤ん坊

などなどです

6/15/2024, 3:48:14 PM

らくだい寸前のおてんば魔女っ子みならい
銀河を走る列車でずぶ濡れの親友を失った猫
もしくは砂漠に不時着した王子思いの飛行士
ふかふかのベッドを大事にしているそらまめ
大きなパンケーキたべてねたい

6/15/2024, 3:46:15 PM

(前回と同じ感じの関係性)
 さて、ユートピアの生活というのは基本的に暇である。
 権力者である彼女は、僕のことをほったらかしてしまうレベルにはやることが山積みで、それを僕はあまり良しとはしてないが、それはおいおいどうにかするとして。
 そんなわけでやることがない僕にはとっては、迷い子が来ない限り暇で。僕はこの世界で暇つぶしの能力を持たなくてはならなくなった。
 楽譜の創作、ユートピアの乗っ取り、権力者集団の懐柔や洗脳のやり方、権力者自身との恋の計画⋯⋯⋯⋯などのものに手を出してきたのだが。
 この間他愛もない話をした時に『きみと会えないあいだの暇つぶしが大変』みたいな話をした。僕としての理想の返事は「ボクも同じ気持ちだよ」とか「じゃあもっと会う時間増やす?」とかそういうのだったのだけど、彼女の返答はどれでもなかった。
 「ふーん」なんてただ一言返された。⋯⋯⋯⋯付き合ってるんだよな。
 そんな疑問が頭をよぎったが、さっき会った時に一冊の本を渡された。「好きな本だから君にも紹介したい。読んだら感想教えて」と。
 彼女の好きな本、というか好きなもの自体を知るのが初めてな僕は大分浮かれながらそれを受け取って、今こうして目の前に本を置いているわけである。まだ読んでは無い。
 読んでみたい気持ちは山々なのだが、よく考えたらこれは彼女の私物(仮)であり、それを読むというのはもはや間接キスと同じなんじゃないか、なんて思考が頭を支配してしまったからだ。
 だけれども受け取ってしまったからには、そして彼女から『感想を教えて』と言われてしまったからには読むしかなく、僕は震える手で本を開いた。

6/15/2024, 3:45:53 PM

「好きな本」

昔は本なんて読まなかったんですが最近ミステリー系にハマって、学校でお昼ご飯を食べ終わったあと休み時間まで時間があれば必ず読んでます
どんな方向に進んでいくのかわからなく、続きが気になって仕方がないです😇

6/15/2024, 3:43:52 PM

ジャンルで言えばファンタジーは全般的に好き。世界的に有名な魔法の物語からファンタジーの世界に入ったようなものだ。その物語のおかげで友人ができたくらいに。

今はかなりペースが落ちたが、あの頃は年間百単位で本を読んでいた。そのきっかけになった本も好き。赤川次郎の描くシリーズ。いろいろ読んだな。

青い鳥文庫の出す本にいろいろ手を出してた時期もある。図書館に通いつめてシリーズものを追いかけてたな。
今も出版社による夏のフェアとかは毎年チェックして何冊かは買っている。

あとは、小学生の頃に衝撃を受けて今でも印象深い本。好きかと言われればそんなに好きというわけではないし、読む人を選ぶような本ではある。道尾秀介の「向日葵の咲かない夏」は今でも時々読み返している。


#好きな本

6/15/2024, 3:42:55 PM

思えば、俺の好みは周囲と多少ズレていたかもしれない。というのも元々外で遊ぶより図書室で本を読むのが好きな子どもだったし、そりゃ他よりもたくさんの本を読んでいたわけで、気がつけば挿絵のない小説へ、気がつけば一ページあたりの文字数も減り、高学年になったころには、小学生には難しい言葉遣いばかりの海外文学なんかに手を伸ばしていた。
 そんなだったから友だちと本の趣味は合わなかったし、それで険悪になることはなかったが感想を共有できない孤独を抱えていた。おまけに、どういうわけか俺の選ぶ本は暗い結末が多いことも差を生んだ要因に思う。中途半端でご都合主義な救いで終わるくらいなら、道半ばで命を落としたものの本人は幸福の中で眠った、とかそういう救いの方が好みなのだと気がついたのはつい最近のことだ。
 しかし、高校に上がるとひとりだけ理解者と呼べる友だちができた。俺が読んだ本はほとんど読了済みだったし、彼から勧められたものはことごとく俺の好みのど真ん中を撃ち抜いてきたのだ。ここまでの孤独に耐えたのはきっと、彼に出会うためだったのだろうと思うほど。
 今思えばあのときの俺はおかしかった。どこか神秘的な雰囲気をまとった彼を信奉していたし、それは恋心にすら近かったと思う。それだけ彼の存在は俺の中で大きかったのだ。彼のためなら死んでもいいと本気で考えたこともあった。もしくは、そこまで他人を想う自分に酔っていたのかも。
 終わりを告げたのは高校卒業と同時に。地方の大学へ進んだ彼と会う機会はめっきり減った。メッセージのやりとりは続けていたが、やはり顔を合わせて話すよりもずっと熱量が足りなくて満足できなかった。少しづつ心の底のマグマが冷えていく感覚に襲われながら、ついに我慢できず彼の進学した大学の近くまで電車を乗り継いでしまったことがある。
 久々に見た彼の面影は変わらないながらも、隣にいる友だちらしき人に向けていた顔は全く俺の知らないものだった。あんな柔らかい、普通の人間みたいな笑顔、俺には見せなかったくせに。高らかに笑って人の腕を叩くような馴れ馴れしい仕草だって見たことがない。とても声なんてかけられなかった。
 中途半端でご都合主義な救いが欲しいなんて生まれて初めて願ったよ。


『好きな本』

6/15/2024, 3:24:47 PM

小説に求めるのは現実逃避
優しい嘘と理想で固めて
ありえないことが起きたら
全部魔法のせいにして
幸せと平安だけが渦巻けばいい

6/15/2024, 3:23:42 PM

好きな本

活字が苦手なアタシが、初めて買った本
お母さんには「別人になったのかい?」
なんて笑われた
ベットの上で早速開いてみたが
やっぱりアタシにはまだ早い。
ベットから椅子に姿勢を変えてみたけど
効果ナシ。それより眠くなってきた。
あの子も本を読み始めた時は、アタシと同じだったのかな
バカなアタシに「この本、大好きなんだ」
なんて言ってたよね。
眠たい目をこすった手でページを巡る。
好きな人の好きな本。少しだけあの子に
近づけた気がする。アタシもこの本を
好きになれたらいいな。

6/15/2024, 3:19:07 PM

「ひだまりのなかで同じ本を」


好きな漫画や小説が同じだとわかったことから、ふたりはどんどん仲が深まっていった。

やがてふたりは結婚。
子供が生まれ、家を建てる際に、膨大な量の漫画や小説を収納するためのスペースを確保した。
今では小学生の娘と近所の男の子がそこで漫画を読んでいる。

「異性の幼馴染と仲が良いなんて、現実にあるんだ……」
漫画やラノベの世界の中だけかと思ってた、と君が言う。

「いや、まだわからんだろう。今は仲良くても中学生になったらどうなるかわからない」
「まぁ、このままあの子たちが結婚しても私は構わないけど」
「結婚て。まだ小学生じゃないか」

ついこの間まで「おおきくなったら、おとうさんのおよめさんになる!」って言ってたんだぞ。

「十年後にはあの子たち十八よ。十年なんてあっという間よ」


まさか本当に、二十年経たずにあの子たちが結婚するとは、この時は思いもしなかった。


────好きな本

6/15/2024, 3:18:28 PM

昔から

活字を読み続けていると

イライラ

とすることが多くて。








アトピー持ちで
イライラが続くと

すぐに
身体が
痒くなって

本を読む
ことに
ニガテ意識があった。

きょうだいは
本好きで
日が暮れるのを
忘れるくらい
没頭してたのに。





わたしが好きなのは

字が多すぎない




出来れば

イラストがある



漫画だな。


#好きな本


―――
海外旅行のため
しばらく更新をお休みします。

6/15/2024, 3:14:35 PM

読書が苦手だと言っていたあの子に、自分のお気に入りの小説を試しに読んでもらったことがある。

―漫画は簡単に読めるけど、小説は同じ行ばかり読んでしまうから
そう言って、一行ずつ定規をあてて丁寧に読んでくれた姿を、今でも思い出す。

その後、時間をかけて最後まで読んでくれたあの子は、大の読書好きになった。そして私の好みを大絶賛してくれた。

私は私が好きな本を好きと言ってくれたあの子が大好き



『好きな本』

6/15/2024, 3:14:26 PM

人を愛したいと思った

どうしたら喜んでくれるのかな
どうしたら思い出に残るかな
どうしたら私を見てくれるかな

そんなふうに思っていても
何気ない言葉で私は君を酷く傷つけてしまう

今までも、うまく人に伝わらなくて
ああ、やっぱり自分は駄目だなあと思うばかり。

けれど、治し方がわからないのが今は苦しいよ。

価値観とか、感じ方の問題なのか

そもそもやっぱり私がおかしいだけなんだ。

君の最後の人になりたいのに、
すれ違って心がどんどん離れていってしまうのかもな。

胸が苦しくて痛い。

投げ出したくない、
もういいや、別の人探そう。なんて思えない。

君は唯一無二。

お互い余裕が無くてしんどい。

けれど支えあいたい。

自分が嫌いだとか、自己嫌悪してもなんの意味もないよ。


君と対等に、隣にいても平気なようになりたいの。
時間が足りなくて、泣けてくる。

この感情を愛してるというのだろうか。

とにかく不器用な私は、努力しないと。

6/15/2024, 3:13:49 PM

私は闇が深い本が好きだ
厨二病ではない
もっとくだらない理由だ


自分より不幸な生き様をみて
「自分は幸せだ」と、
自己暗示をしたいだけ


そして安心した後に
その物語を教訓にして
私は不幸にならないぞと足掻きたい

それだけなんだ
本当はもう限界なのにね

それでも足掻きたいのよ

6/15/2024, 3:13:31 PM

「好きな本」

 好きな本の定義とは、何があっても絶対これだけは手放さないと、思った本のことだろう。
それとは別に、買ってもその内読むだろうと思う本も、好きな本なのだろうか。
 人生の岐路で、引っ越しというのもある。
引っ越すたびに本が減っていく。
どうしても好きなのに減ってしまう。
本が読みたいけど、どうしても減ってしまう。
 だから電子書籍という存在が出たことは、嬉しいと思った反面、本独自の重みがなくなってしまうのが、悲しいと思うこの頃だ。

6/15/2024, 3:12:39 PM

『あいまいな空』


「有毒ガスで境界があいまいな空。
 ゴミが堆積して澱んだ海。
 なんか気味の悪い形の雲。
 ここは地獄の海水浴場。
 存分に堪能するがいい」

 目の前で、鬼がつばを飛ばしながら叫ぶ。
 地獄に落ちて、最初に聞いた言葉がこれである。
 現実世界もたいがい悪夢みたいなものだったが、まさか地獄でも悪夢を見る羽目になろうとは……
 現実は思いどおりにいかないな。

「なんだ新入り。
 しけたツラしてんな」
「悪いことしてないのに、地獄に落ちましたからね。
 落ち込みますよ」
「そんな訳無いだろ。
 地獄に落ちるのは悪人だけだ。
 お前は、詐欺師だと聞いたが……」
「違いますよ。
 悪どい商売で金を稼いだ悪代官から、貧しい人にお金を返しただけですよ」
「必要悪と言うつもりか。
 だが犯罪は犯罪だ。
 きっちり罪を償ってもらう……
 後ろを見ろ」
 鬼に言われて後ろを向く。
 そこにあるには、さっき紹介されたゴミだらけの砂浜だった。

「お前の仕事は、この砂浜の掃除だ」
 見渡す限りの、ゴミ、ゴミ、ゴミ。
 どれほど時間がかかるのか……

「コレを一週間でキレイにしてもらう」
「ハア!?」
 何を言っているんだ、コイツ。

「無理だ。
 流石に一週間は短すぎる」
「口答えするな。
 貴様は罪人だ
 やれと言ったらやれ」
 鬼は聞く耳を持たないようだ。
 ならば切り口を変えよう。

「一つだけ聞かせてくれ。
 なんで一週間なんだ」
「聞いてどうする?」
「どう考えても無理だ。
 だから掃除をする理由を聞いて、必要な分だけ掃除する」
「手を抜くつもりか」
「それくらいでないと一週間で終わらんぞ。
 それとも終わらなくてもいいのか」
 俺の言葉に、鬼は腕を組んで考える。

「いいだろう、教えてやる。
 実は我々の上司が急に海水浴に行きたいと言い出してな。
 それで急遽掃除する事になった。
 もし綺麗にできなければ、何を言われるか……
 言われるだけならまだ……」
「……地獄でも、クソみたいな上司がいるんだな」
「あえてコメントしないでおこう」
 鬼に少し同情してしまう。

「それで、海水浴をする予定の場所なんだが――」
「言わなくていい」
「お前が教えろと言ったのだぞ」
「それよりもいいこと考えた」
 俺の言葉に、鬼が警戒を露わにする。

「俺に詐欺をかける気か?」
「いいや。
 あんたは悪人ではないだろう?」
「その口ぶり……
 まさか上司を?」
「その『まさか』さ。
 あんたの言い分を信じるなら、その上司嫌われているだろう?」
「しかし、それは……」
「上司を嫌っている他の同僚を紹介してくれ。
 何、悪いようにはしないさ」

 ◆

「ひー、なんで儂がこんな目に」
「いいから働け」
 かつての鬼たちの上司は、今砂浜の掃除をしていた。
 この掃除は、もと上司が自発にやっているわけでは勿論ない。

 鬼たちは地獄の円滑な運営のために存在している。
 それを私物化していたことが閻魔大王にばれ、罰として掃除が命じられたのである。
 勿論俺がチクった。

 上司に不満を持つ鬼から話を聞き、証拠を集め、閻魔大王に上申したのだ。
 中にはなかなか口を割らない鬼や、ビビって逆に報告しようとしたヤツがいるが、そこは俺ももと詐欺師。
 口で宥め透かし、情報を引き出した。
 この程度朝飯前である。

 俺は不正を暴いた功績が認められ、鬼たちを従えるリーダーに抜擢された。
 にんげんとしては前代未聞の人事である。
 そして任務が与えられた。
 この砂浜を、閻魔大王が使えるように――ではなく、鬼たちが自由に使えるようにだ。

「閻魔大王がいいヤツでよかったぜ」
 もし悪いヤツなら、閻魔相手に詐欺をしなければいけなかったからな。
 さすがにアレを騙しきる自信はない。
 閻魔大王に嘘をついたら、舌を抜かれるからな。

「おい、もっとキビキビ動け」
 俺はサボって休もうとした元上司の鬼に怒号を飛ばす。
 アイツすぐサボりやがる。

 だが他の鬼たちは優秀だ。
 砂浜の掃除はすぐ終わるだろう。
 問題は……

「空、どうすっかなあ」
 見上げれば、毒ガスとやらであいまいになった空。
 アレを何とかするには毒ガスの出元を探らないといけないのだが、どこにあるのか見当がつかない。
 俺は、頭を働かせ考えに考えて、ひとつの結論を出す。

「ま、なるようになるさ」
 どうせ時間はたっぷりある。
 ゆっくり考えよう。

 俺はあいまいに笑って誤魔化すのだった。

6/15/2024, 3:07:11 PM

[容疑者Xの献身]
よくあるミステリー小説だ。
そう思わせる小説だと思ったが、
本質はミステリーではなく恋愛の部分にあったのだと思う。人を愛し、人のために尽くすとはどういうことなのか、それを殺人を肩代わりすることで切なくも重たく書かれている。
この本の裏の部分に気づけて良かったと思う。

<好きな本>

6/15/2024, 3:05:16 PM

嘗てはボーイッシュのかっこよかった幼馴染が、今は売女のような男を煽る服を着て夜の街を彷徨いていることを知って、私は世界が嫌いになった。
プラトニックでは救われない?
あんまりだ。たくさんだ。
彼女が傷つく度に増やす耳の穴と、売買している下肢の穴が、渦を巻く油のようにグロテスクだった。この世は仕組まれているのではないかと思う。搾取したい圧倒的な優等種に。
何処を見るでもなく、涙でくしゃくしゃになった前髪の奥から、私はずっとずっと、夜を睨み続けていた。



震えた手が適切にスマホを握れない。現実の音を聞きたくなくて吐き気がするほど飽き飽きした音楽をイヤホンから垂れ流している。

うちにはWi-Fiがなかった。1台のポケットWi-Fiを必要なときにつけている。貸してくださいと所有者に言い切るように申し出て、いそいそと自室に戻ってiPadを開く。私はこの一瞬がいつも怖かった。Wi-Fiの電源を入れたときに、また使うのかい。今日は多いね。などとため息交じりに低い声で言われてみろ。私の現実逃避は一気に心のなかで価値の枯渇を進めていく。心を守るために必要だった。しかし一方で生産性がないことも理解していた。やるべきことを投げ打って捧げる時間が、一体将来の何に出会うための延命に換えられるのかが、唐突にわからなくなってしまうから。

光る画面を見つめる。同じ形にくり抜かれたアイコンが、おんなじ顔してピエロみたいに私をからかっている。両親譲りの近眼はとうに最低視力まで到達していて、医者いわくこれ以上私の視界は変わらないようだった。目の悪い人間同士を掛け合わせたらこの上なく目の悪い人間が生まれてくるなんて目に見えてるはずなのに、文字通り目の悪い両親にはそれがわからなかったようである。

顔をくっつけて、YouTubeを開く。いつも間近でアイコンを発見するため、結局画面のどこにどのアプリがおいてあるのかいつまで経っても分からない。其の場凌ぎで躱して結局要領の得ないバイトのようだと鼻で笑った。

オフラインの音楽を聴いていたスマホとのペアリングを外して、ワイヤレスのイヤホンをiPadの方に繋げた。

創作がしたくてバイト代を貯めた貯金を切り崩して購入した薄い板は、今では他人の生み出したものを思考停止で消費するだけのツールになってしまった。
オススメのいつも持って来る音楽は食傷もとうに限界を超えて、耳にするだけで死にたくなるほど憂鬱になったが、無音よりはよっぽどマシだった。

耳から入ってくる音全てが、頭をつんざくように痛い。
そもそも自殺間際の人間の諦観の曲だとか、猿になった自分を退廃にかこつけて美化する曲だとか、微塵も好きではなかった。ただ放り投げるような純愛を聴きたかった。昔母親が手放しで腕の中に収めてくれた温もりのような、大丈夫だよ、の一言が欲しいのだと思う。尤も、私を愛した母親なんかはいなかったが。

自分が愛について考えを拗らせているのは知っていた。この穴は埋めるものでもなく癒すものだとも。しかしそれが頭にあるからなんだ。ローティーンでそれに気づいたとき、同時に、普遍的な愛の粘度も必然的に理解した。
私に救いは訪れない。

意味もなく壁を見ながら、ぼうっと頭を巡らせた。今私自身がここに立っている事実すべてが嘘くさかったからだ。

例えば今こうやって壁に向かっている私を見て、何も知らない人間は壁と女を認識するであろう。そこに私の過去は映らない。何故なら示唆するアイテムの一つもないからだ。それを裏付ける証拠や、面影もない。

その女の服の下には大量の根性焼きがあって、過去に母親に捨てられたとかいじめを受けたとか、父親に洗脳されていたとか十年間いろんな虐待を受けて家出をしたとか、幼稚でモラハラ気質な祖母に生理現象までも管理されて過ごしているだとか、PTSDに苦しんで教室にいられないだとか、全部足元にくっつく影にすら記されていないのだ。だから、時折私自身も信じられなくなるのだ。自分自身のなにもかもを。

イヤホンがバッテリーローを告げた。
私はまだ考えを巡らし続けた。

私は今泣いていない。息も乱れていない。ついでに服も、乱れていない。だから、今のわたしを見て、大抵の人は私の発作の凄惨さを想像できない。それは、今の私もおんなじである。

視線を左下にやった。床が見えた。その床は過去に私が跪いた床だった。

あのとき、私は死ぬことしか考えられなかった。胸が鉛を引っ掛けられたほど重く、頭はガンガン酒瓶で殴られたように痛く、振り子のように考えが辺りに散っていた。立てなくなって跪くと、腹から内臓が零れ落ちたみたいに重力を感じた。床から生えてきた手が私の落とした内臓を引きずり込むように両手で爪を立てて鷲掴んだ。呼吸は深いはずだった。しかし魚の鰓のように切り込みの開いた喉は空気を漏らしてしまって苦しかった。誰かに助けてほしかった。しかしスマホの文字が読めなかった。涙はとめどなく溢れて、鼻水と唾液に混じって床を汚した。声を上げながらひたすら濡れた床に額を擦り付け胸の痛みに耐えた。

この悲しみを、胸の痛みを。終わらせるには死ぬしかないのだと本気で思った。きっと、死なない限りは"戻ってこられない"。だから、カーテンタッセルを首にかけて馬鹿みたいに唸っていた。

頭を占領したのは明朝体の「死にたい」という文字四十九語だった。スクロールしても終わらない唯一の読める文字は、私を追い詰めた。死にたくない。死にたくない。どれだけそう思っても頭は死ぬことしか考えていないようだった。それ以外の文字は霧散されて、私より先に死んだ。

…あの後、結局数十分にかけて腕を炙り続け、無理やりホルモンを分泌させて素面に戻した。あそこまでいくと気分転換とか、気持ちじゃどうしようもないみたいだった。

そうやって、生きるか死ぬかを切り抜けてきた今までの激戦が、こうして穏やかにここに立っているとまるで夢だったのではないかと思えてくる。

知る者がいなければそれは嘘である。私の過去を寸分違わず知っているのは私だけで、私の口を通した事実は全て私の主観になる。だから、それは私の生い立ちを聞いたんじゃない、物語を聞いたことになるのだ。

イヤホンが再度バッテリーローを告げた。
私の台詞だ、と悪態を吐いた。

私だけがこれを背負っている。私さえいなくなれば嘘になる苦悩を、とうに歪んでいるかもしれない記憶の中を、一人で生きている。傾いても、誰も咎めてくれない現実を、もう一つの現実の中で飼っている。

全部嘘ということにしたかった。粘り気のある家族愛も、叩き込まれてきた優生思想も、ミソジニーもレイシズムもなにもかも。

幼少期に食卓で見せられてきた、死体のたくさん転がる戦争のフィルムみたいに、今は面影すら残してない凄惨な当時を、溜め込み続ける存在にはなりたくなかった。

左耳のイヤホンの充電が切れた。
左心房が死んだな、と思った。左翼でもいい。そしたら死ぬのは親父なのにな、と思った。

別に大したことではないのに、確かにまだ私を傷つけ続ける過去を引き摺ったまま、しばらく右耳だけで音楽を聴いていた。

引き摺って溜め込んでいるから、夜が嫌い。寒いのが嫌い。パンが嫌い。腐ったものが嫌い。死体が嫌い。女が嫌い。男も嫌い。体が嫌い。子宮が嫌い。性に関すること全部が嫌い。大人が嫌い。
汚いから、人間が嫌い。

なんとなく、わかっている。
どうでもいい過去なのに、現在に繋がりかねるありふれた過去なのに、そうやって嘘みたいだと思うことによって蓋をしようとするから、辛くなるのだろうと。

普通のものを抱えていると思うことにしてくれ。何もおかしくなかったと思うことにしてくれ。
私はトラウマを持っていない。成り得る経験がないから。だから普遍的な人生をこれからも送れる。蓋をしていた私が取り零した人生を、なんの障害も無く。

恋愛をして、大人の順序を踏んで、結婚して、子供をつくって、温かい家庭を築く。友達と恋バナなんかをしたり、気になる異性の一挙一動に一喜一憂する。友達の結婚式に出席し、心の底からの笑顔を向ける。

決して配偶者を機嫌次第で轢いてはいけない。子供は性的な目で見ない。家族全員、たったの一人も奴隷なんかではなくて、人格を否定したり殺害をほのめかしてはいけない。しかし。

頑張って心がければ、いつか誰かが愛してくれるわけでもあるまい…。

これまでを普通にすれば、これからも普通になれる。
このままじゃ私は、普通じゃ、ない。
ぐるぐると考えて、なんだか泣けてきてしまった。
イヤホンをケースにしまい、右手で顔を押さえるようにして、目元を包んだ。

わかってる。やってる。すでにやってる。ずっと戦ってる。
お願いだ仏様。切望するのはこれだけだ。

私は純で結んだ絆に救われたいんだって。

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