「こんなものを寝る前に読んでるから妙な夢を見るんですよ」
こんなものと、リビングのテーブルの上でバンバン叩かれていた本二冊を、君の手が離れた一瞬のスキをついて奪還。
そのまま寝室に逃げこもうとしたが、椅子の脚にスリッパが引っ掛かってしまいコケてしまった。
無様……、なんて羞恥心が湧き上がる前に両肘を交互に動かしてリビングの床を匍匐前進。
しかし、片足が君に捕まってしまいアザラシ狩りに遭った仔アザラシのようにズルズルと引きずられる。
「ぎゃあぁっ、いやー、ママー!」
「誰が、誰のママだって?」
持ち上げられた足を捻られ、床を転がされて力尽きた私の腕から君が本をもぎ取った。
「ほら、明日読めばいいでしょう?」
とっとと寝ましょう、と本棚の適当な段に無造作に仕舞われた二冊を閉まりつつあるリビングのドアから、君に羽交い締めにされながら見つめた。
ドグラ・マグラ……。
テーマ「好きな本」
6/15/2024, 3:54:58 PM