『好きじゃないのに』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
“3月3日”
「春麗らかな…」なんてよくある決まり文句で始まる挨拶。今日は皆との最後の日。だから、この一瞬一瞬がとても尊くてかけがえのない時間なのだ。でも、私はなんだかほっとしてる。何事もなく終われたことに…。校長先生の挨拶。BGMの卒業ソング。そして、誰かのグスッと、鼻をすする音。そんな中で私はどこか他人事のように時間を過ごしていた。
“最後のホームルーム”
皆が席に着くのにあわせて席に着く。すると、
「あれ?中野、泣いてねえじゃん!なんでだよ~」
と、どこか間延びした声が振ってきた。まだ、立ったままの彼を見上げると、
「はは…!俺ダセえ。」
目を真っ赤にして、鼻をグスグスさせた隣の男子がたっていた。というか、まだ、目が潤んでいる。どう見たって泣きすぎ…。
「もう…、泣きすぎ…」
思わず呆れてしまう。だけど、そんな私に食いつくように、
「だってさ、俺けっこう皆が好きなんだよな~。だから、もっと、皆と一緒にいたかったよ。中野だって、最初、全然しゃべんねえって思ったけど、けっこう喋るし面白いしさ…。もっと、話したかったな。なあ…、ありがとな!」
といって、握手を求めていきた。彼の目は真剣そのもので、私を見つめている。手を差し出しながら、こちらこそとかえそうとしてうまくいえなかった…。なによ、移ったじゃない…。
一人一人からの感謝の言葉。そして、先生からの挨拶があって、あっさり終わったホームルームの後、じゃあなと、いつものように笑って手を振る彼に手を振りながら、そっと呟いた。
“ありがとね”
たまに酔っ払うと冗談で「すきー」と言ってくるアイツ
その度に「ありがと~」と受け流す私
恋愛的な好きじゃないのに私じゃなかったら勘違いする子だっているんだから気をつけろよ、と心のなかで忠告する
そしてまた「すきー」と忘れた頃に言ってくるアイツ
ペットが飼い主に懐いてる感覚だから
大事な友達だし変に意識しないようにしてた
いつもの仲のいい三人で飲んでたある日
喋りながら二件目に向かってる最中、隣のアイツが手を繋いできた
私の反対側には何も気づかず喋り続けるもう一人
驚いて、手を繋いできた隣のアイツをチラッと見ると
何事もないように前を見て喋ってるのを見て自分も平静を装う
でも意識も神経も全部繋がれた手に持っていかれて
何を話していたのかも覚えてなくて
少しだけ握り返したのは覚えてる
二件目に着いた瞬間、手は離れて
そのあとはまた普通に楽しんで解散した。
・
・
・
当時のことを「あの時すごいドキドキした」って
教えてくれる旦那が可愛い
「好きじゃないのに」
好きじゃないのに
あの日何故あなたを頼ったのだろう?
誰か一人でも話して聞いて欲しかった
ただそれだけだった
なれない距離を
電車は走る
家が少なくなり山が多くなり
冬は寒く雪が積もり
奈良を超えて三重に入る
来た事がないのに
なんか優しい風景は
懐かしい感じがするんだろう
ただ理解者が欲しかった
それが偶然あなただった
好きじゃないのに抱かれたのは
一夜でいいから誰かに
大切にされたくて
2023年 62
好きじゃないものを
好きと言って
好きじゃないことを
好きと言って
自分を偽って
生きていくのです
他人に合わせながら
生きていくのです
でも
そんな生き方は
嫌なのです
自分の好きなものを
好きと言うのです
―好きじゃないのに―
例えば誰かと、お互い違うケーキを食べる時
「一口ちょうだい」は別にいいけど
「一口食べる?」って言われるの好きじゃない
断ると、人によっては「嫌いなの?」って言われる
一口貰いたい時はこっちから言う、私は目の前のケーキに集中したいだけ
好きじゃないのに
私はイクラが苦手だ。コンビニのおにぎりの並んだ棚の前で暫し立ち尽くす。
ガラガラで殆ど何もない!
イクラには申し訳ないが、イクラのおにぎりと 割引シールのついた昆布のおにぎりだけ。
仕方がないので、昆布のおにぎりをカゴに入れてレジに並んだ。
新時代のコンビニと言えばいいだろうか? セルフレジが2台ある他は店員の気配もない。
無人のコンビニとは、こんなものなのか?
レジで店員に話しかけられるのも戸惑うが、無人のコンビニで
勝手も分からないまま並んでしまい 引き返そうにも一人が並ぶだけのスペースしかない。
引き返すのも諦め、たったひとつのおにぎりの入ったカゴを持って並ぶカッコ悪さよ。
セルフレジで商品のバーコードをかざして会計を済ませてビジネスバックにしまい込む。
何も買わない訳にもいかず、好きじゃないのに買ってしまった。もちろん昆布に罪はない。
あぁ、セルフレジっていつまで経っても好きじゃない。
自販機は便利だと思えるのに。
新時代に置いていかれてるな
ノーという意思表示をした。彼のわがままに合わせるのはもう限界だった。だから勇気を出して断った。彼はとても驚いて、その後しかめ面になったけど、それきり話しかけてこなくなった。
平穏な日常に戻った私の中に後味の悪さが残った。好きじゃないのに付き合って、散々振り回されてきたのに、最後は私が悪いことをして傷つけたみたいな気分だった。ずるい。
#好きじゃないのに
優しくされるとつい
好きじゃないのに
好きになる
『危険』
誰でもいいから
勘違いだと言ってくれ
痛い目に会う前に
「可愛いね」「お人形さんみたい」
昔から、呪いみたいに私の周りに染みついつてる。
生まれつきパッチリ二重な目、長いまつ毛。肌は白く、頬はほんのり桃色。太りにくい体型で、サラサラな髪。文武両道で、誰もが羨む私。
だけど、私はこんな私が好きじゃなかった。
誰も本当の私を見てくれない。外見だけで、「可愛いです」って耳にタコができるぐらい聞いた。フリフリな可愛い服なんて着たくない。スカートなんて履きたくない。こんなのじゃなくて、もっとかっこいい男の子みたいな服を着たい。
こんな可愛くて、お人形さんみたいな私なんていらない。好きじゃない!嫌い!大嫌い!
誰か、早く本当の私を見つけて...
【好きじゃない】
「また雨だってー」
「えー! 今週はお花見行くって決めてたのにまたぁ!? せっかく開花が早くたって、これじゃ意味ないってーのぉ。あーどこ行くか話し合ってたのに〜」
「春が好きなわけでもないのに、花見には熱が入ってるよなぁ毎年毎年」
「春はお別れの季節だから好きじゃない! でもお花見はお別れする前に最後に楽しめるイベントだから好きってだけ。わかるっしょ」
「花見は会社の場所取り地獄って印象しかないわ」
「なにそれ。花がなーい! 絶対みんなとお花見すんだからなーくっそ、ちゃんと半日くらい晴れろ!」
「はいはい。来週末は晴れるといいね」
#好きじゃないのに
にっこり笑顔は仮面。
家族にとって自慢の子供と呼ばれましょう。
友人にとって共感できる友達と覚えてもらいましょう。
先生にとって手のかからない優等生と頼られましょう。
添加物や余分な糖分は食べずに、お菓子はオカラやドライフルーツを食べましょう。
ニキビ、肌荒れは厳禁です。化粧で隠すことは禁止です
黒髪でおかっぱ。膝下まで隠れるスカートを履き、常に姿勢良く、礼儀正しく振る舞う事を心がけましょう。
最後に、にっこり笑顔は必須です。
《好きじゃないのに》
『好きじゃないのに』
僕の好きなものはかわいいフリルやレース。
それとお人形。
かわいいもの、美しいものが好きなだけ。
彼女たちは引っ込み思案でいつも下を向く僕に、前を向ける強さをくれた。優しいあの人との会話を生んでくれた。
僕は君たちがいれば幸せなのだと、いつも彼女と話しかけた。幸せだった。楽しかった。
なのにそれを周りは許さなかった。
「おとこなのに人形遊びが好きなんて変なヤツ!」
「神田くんて女の子遊びなんてするんだね。気持ち悪い」
「なんで他の子みたくできないの?」
うるさいな、うるさいうるさい。
僕はこの世界で生きていくんだ。
彼女たちだけいてくれたらいいんだ!
そう思っても成長していくたびに変化していく自身が憎かった。変声期を迎えた、声が低くなった。
第二次性徴期が来た、肩幅が伸び可愛い服を着れなくなった。望んでないことが次から次へと襲ってくる。
彼女たちとの共通点がなくなっていく。
いつしか僕はおとこになって、周りに合わせた服を纏う。
「あんたがものを受け取るなんて珍しい。特に花は嫌いだって言ってなかったかい」
「ええ、好きじゃないわ。でも今回はお断りする理由がなかったの」
「……相手はあのお客か」
「うふふ。好きな人からの贈り物って、なんでも嬉しいものね」
そう言って女は腕の中の花束を大事そうに抱え直した。どこに飾ろうかしら、と鼻唄でも歌うように呟くその表情は、向けられればころりと相手を落としてしまう甘やかなもの。恋する乙女の顔をした女を前に、女将は深くため息を吐いた。
「悪い女だよ、まったく。贔屓の客に自分の好みも教えてやらないなんて」
「健気って言ってちょうだい。それにね、あの人は贈り物に意味を込めているの。その意味を直接言葉で伝えてくれない限り、本当のことは教えてあげないわ」
「ロマンチシズムってやつかい? 向こうの方がよっぽど健気だねえ」
「可愛いでしょう? ……女将さん、手を出しちゃダメよ」
「安心おし。あんな若造、あたしの趣味じゃないよ」
「まあ! ふふ、そんな言い方はないじゃない?」
女将の言葉をたしなめながらも、女は肩を揺らして楽しげに笑った。その様子に呆れを隠さぬ女将との間、女の細腕に抱かれて、房状に咲く黄色の花はやわらかく揺れているのだった。
好きじゃないのに
貴方のこと好きじゃないのに
頭から離れないし
ずっと考えてしまう
この気持ちは恋なのだろうか
ポツポツと浮かぶ星に白い街灯。ネオンが輝く煌びやかな風景でもなければ、宝石を散りばめたように美しい星空でもない。所謂、閑静な住宅街。その先には天に向かって伸びる高層ビルが立ち並ぶ。都会の片隅から覗く味気ない景色をアパートのベランダから眺め私はグラスを傾けた。
氷で冷えたコーヒーが喉を潤す。含まれたカフェインが訪れる睡魔を撃退してくれるだろう。そう期待を込めて私はただただグラスを傾ける。だけど虚しいかな、味はしなかった。
氷だけ残ったグラスを置くと私は近くにあったコンビニのビニール袋を漁った。中にはタバコとライターが入っている。箱を開けてタバコを一本取り出すとライターで火をつけた。タバコの先端が燃え、ふわりと白煙がくねりその後筋の様に立ち昇る。その煙を逃さぬように私はタバコを吸い込んだ。
苦い空気が肺に流れ込んで私は思わず咳き込んだ。なんだってこんな苦い物を好んで吸うのか、理解ができないと思った。
銘柄は知らない。ただあの人が同じ様な物を吸っていたので選んだだけだ。たったそれだけ。
立ち昇り黒檀の空に溶けていく煙を視界の端にとどめてから私はそっと瞳を閉じた。
視界を覆う暗闇の中、思い出すのはあの人の浮かれた声と喜色を含んだ笑み。どうしてかその笑みが腹立たしくて、恨めしくて、仕方がない。
再度タバコを吸い込む。やっぱり苦くて身体が受け付けない。咳き込む度に目尻に浮かぶ涙は感情の発露か、それとも生理的現象か。私には分からなかった。
好きじゃないのに
「日常的に多いシチュよな。『好きじゃないのに』」
ぱり、ぱり、ぱり。好物たる堅揚げポテチを賞味しながら、某所在住物書きは己の行動を振り返る。
「なんか惰性でログインだけしてるソシャゲ。明日の話題に必須だからチェックするSNSトレンド」
なんならクソ苦手で全然好きじゃないのに継続してる人付き合い、なんてのも有らぁな。
物書きは付け足し、またポテチを口に放る。
「うん。……別に……好きじゃあ、なかったんよ」
思うところがあるのだろう。ピタリ動作を止めると、
「でも環境が環境で、人権で、完凸必須だから……」
過去のガチャ爆死を告白し、弁明し、崩れ落ちた。
――――――
3週間前から定期的に、週に1〜2度の頻度で、何故か私のアパートに二足歩行の子狐が餅を売りに来る。
理由は子狐から聞いた。私が始めて餅を買ってくれた人間であり、唯一の得意先だから、だという。
シュール過ぎるものの仕方がない。警察でも保健所でも、通報したところで信じてもらえる気がしないし、画像・動画加工技術が発達した昨今では、撮ったところでフェイク認定されて終わる。
仕方が、ない。
納得いかないものに対する諦めと思考放棄は世の常で、なにより子狐の餅は、不思議なことに、食べると何故か心身の毒気が抜けていく心地がする。
それでかれこれ複数回、呪術や魔法が「非現実的」とされ久しい現代に、この不思議な関係を続けている。
今夜も、その非現実が来て、インターホンを鳴らし、「おとくいさん、こんばんは」と頭を下げる。
「キラキラ、いっぱい、いっぱい!」
今日購入した餅は、子狐が私の小言を聞いて一生懸命作ったという、低糖質の、いわゆる惣菜餅。1個200円で5個のお買い上げ。つまり1000円。
子狐はペラペラの紙幣より、キラキラした貨幣を好むようなので、100円5枚と500円1枚を渡した。
案の定、子狐はぴょんぴょん跳んで喜んだ。
「おとくいさん、トーシツノスクナイモチ、好き?」
「特段好き、というワケでもない」
「好きじゃないのに、普通の甘いおもちより、いっぱい買ってくれるよ。なんで?」
「運動量の少ないデスクワークだ。だから、1日の糖質量など150程度で十分足りる。それにこの量と栄養バランスで200円はコスパが良い」
「ですくわーく?こすぱ?好きなの?」
子狐は知らない言葉を聞くと、その場で小さなノートとクレヨンを取り出し、床に広げてぐりぐりメモを……取っているのか絵を描いているだけなのか、よく分からない。何せ書いてあるものが読めない。
まるでそれこそ、小さな子どものお絵描きだ。
「……子狐。人間にはな」
ぽん、ぽん。二足歩行の子狐の、おそらく肩と思われる場所に、手を置く。
「好きだけど食べ過ぎると体に悪い物と、好きじゃないけどお金のためにやっている仕事があるんだ」
目を見て言い諭すと、子狐は頭をかくんと傾けて、
「なんで?」
返答に困る一言を、ストレートに投下してきた。
気持ちが繋がっていると
思っているのは
あなただけ
✎𓂃好きじゃないのに
お土産で泡盛をもらった。
1,8リットルの30度。
最初は、美味しいと思ったが後味が苦手だ。
昨日やっと呑み終わった。
好きじゃないのになぜか寂しい。
覚えてる限りもう呑まないからかな。
もう好きじゃないの惰性で続けるソシャゲや読んでいる漫画。時間の無駄だね。
でも続けた時間や課金したのが無駄になるからなんとなく続ける。こういうのってコンコルド効果って言うんだっけか。
調べたが合っているな。有名だからなコンコルド効果。語感もいいし覚えやすいから覚えてたわ。
こういうのは食べ物や飲み物でもあるな。買って微妙だけどもったいないから好きじゃないけど食べる。
さっさと処理しないとと思って美味しいとも思わずに無駄にカロリーを接種して貴重な食事の機会を無駄にする。
一生で食べることができる回数は決まっているからな。その貴重な食事の機会を無駄にするなら捨てればいいがもったいないから食べてしまう。まさに小市民だね。
しかし連日雨で寒いねぇ。今も電気毛布つけてるよ。この前は扇風機をつけてなんだったらエアコンつけたいと思ったくらいなのに。
まぁ雨だと花粉症が和らぐからいいけどね。そろそろ花粉症も終わりかな。いつ薬をやめればいいんだろうか。
ずっとトモダチだった。
みんなでいると時間を忘れるほど楽しくて
学生時代の休みをほとんどみんなで過ごした
そんなみんなの中の一人だった
卒業が近いたある日、親友の彼氏になった。
慌ただしい日々の中3人でいる事が増えた
黒猫みたいな親友
気まぐれに振り回されながら幸せそうにわらってたのに
今日もトモダチからの連絡がくる。
「仕事の帰りに飲まないか」
今回も黒猫はいないのだろう
気まぐれに疲れ果てた心を私で埋めようとする
ずるいやつ
ただ今でも時間を忘れるほど楽しいの
好きなわけじゃない。
だって私はトモダチだから
この角を曲がったら自宅が見えるはずなのだが、くるりと後ろを向き来た道を戻っていく
自然と笑顔が浮かぶ自分に気づかないふりをしながら
@好きじゃないのに