viola

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『好きじゃないのに』

僕の好きなものはかわいいフリルやレース。
それとお人形。
かわいいもの、美しいものが好きなだけ。
彼女たちは引っ込み思案でいつも下を向く僕に、前を向ける強さをくれた。優しいあの人との会話を生んでくれた。
僕は君たちがいれば幸せなのだと、いつも彼女と話しかけた。幸せだった。楽しかった。
なのにそれを周りは許さなかった。

「おとこなのに人形遊びが好きなんて変なヤツ!」
「神田くんて女の子遊びなんてするんだね。気持ち悪い」
「なんで他の子みたくできないの?」

うるさいな、うるさいうるさい。
僕はこの世界で生きていくんだ。
彼女たちだけいてくれたらいいんだ!
そう思っても成長していくたびに変化していく自身が憎かった。変声期を迎えた、声が低くなった。
第二次性徴期が来た、肩幅が伸び可愛い服を着れなくなった。望んでないことが次から次へと襲ってくる。
彼女たちとの共通点がなくなっていく。


いつしか僕はおとこになって、周りに合わせた服を纏う。

3/26/2023, 3:13:37 AM