『ミッドナイト』
誰もが眠る微睡。
けれど自身はそこには居ない。
そう、居ないのだ。
皆と同じではない僕は今日も今日とて愛し夜の誘い人となる
夜伽の相手は僕とだれか。
この身はだれかに捧げん。
身体を開き奥の奥まで。この身まで。
それが仕事、僕のやること。
僕はミッドナイトで飯を喰らう。
『冬は一緒に。』
冬は綺麗だ。
緩やかに瞬く君の睫毛に結晶がぼやりと乗って滲む。
冬は美しい。
普段の騒々しい街が白一色に淘汰される。
冬は神秘的。
軒先に連なる氷麗に霜柱、積もる雪の落ちる音、そのどれもがこの世から自分だけが取り残されたように思える。
冬は可愛らしい。
真白に残る小さな足跡が確かな成長を感じる。
冬は温かい。
何をするにも独りじゃ寒い、三人寄り添って初めて温もる。
羽毛布団を被り窓辺に手を突き白を臨む。
軈て雪解け春を待つ。
『眠れないほど』
日付が変わってもう、4時間半も経っている。
昨日一日疲れたからと心地良い安眠に沈んでいたいのに、
如何にも眠れなかった。何度も寝返りを打ってはキツく目を瞑り、夢を待てどこない。
諦めて目を開ける。
あたり一面くらい海の底のようだった。
見慣れた室内ですら少し怖く感じるような、そんな空間にたった1人、取り残されたみたいだった。
思わず手元にいたテディベアを抱きしめる。長く愛用しているからか、既に腑の綿はぺちゃんこになっていて、抱きしめがいがない。それでもないよりは全然良かった。
寂しい、淋しい、さみしい。
暗い部屋には自身の暗い思考が蔓延していると思った。
救って欲しくて仰ぐように首を上に向ける。窓から覗く、僅かな隙間からはこの場よりかは少しばかり明るい黒。
助けてくれ、誰か。助けてくれ。
これ以上周りの人間に敵意を向けたくない。
嫌いになりたくなんてない。
人から離れたくない、まだ社会的動物で居たい。
轟々と窓を打つ夕方から続く嵐の音。
ふと気が付けばその音も止み、いつしか日頃の喧しい喧騒の音が朝陽を連れて来ていた。
また今日も眠れない。
『愛情』
私の大事な人素晴らしい人、
あなたこそ私の最後の一ページ
私の喜び
私の誇り
私の幸せ。
たった一時間でもあなたに捨てられたら私耐えられない……
…なんて、そんな人と愛情を育んでいくんだと思ってた。
もうそんな人、二度と逢えないけれど。
『ハッピーエンド』
愛する者と結ばれる。
なんてハッピーエンド、ステキね。
わたしもいつか、そんな夢みたいな出来事が起きないかしら
なんて燻る紫煙の合間から覗く月明かりに溜息をこぼした。