『手を繋いで』手をつないでいて、離さないで。朧げな夢の記憶に寝惚けた自身はなんとはなしに手を差し出した。けれどただ空を掴むだけで何かに触れられるわけもない。手を繋げない自身には、まるで抵抗を許さないとでもいうかのように腕に繋がれた沢山のチューブと薬品混じりの匂いが鼻腔を突いて苦しくなったのかもしれない。頬を伝う温かな温もりは確かにあの人の手と同じ温さだった。水嵩の迫り来るあの夏の川を、自分は生涯忘れられずにいる。
12/9/2024, 6:38:01 PM