『好きじゃないのに』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
このお茶は嫌いだ。甘ったるい匂いがするから。
この菓子も嫌いだ。中のドライフルーツが甘すぎるから。
趣味の合わないインテリアも、手元ばかり明るい照明も、何もかも嫌いだ。趣味が合わない。
それなのにここから動けない。
目の前でニコニコと笑うこの人の笑顔を見ているとそれだけで幸せで。悲しみに歪むところなど見たくないから何も言えずにいる。
それに、笑顔に見守られながら飲むお茶の温度は心地よくて、甘い香りが思考を溶かしてくる。蕩けたフルーツの風味が舌に絡みついて喉に落ちていく感覚が気持ちいい。
何もかも好きじゃないはずなのに、きっとこの味も景色も幸せに紐付いて消えないだろう。
好きじゃなかったけど、明日には好きになってしまっているだろう。
この人の笑顔に連なるものは、私の中で全部好きなものになってしまう。
好きじゃないのに飲んじゃうお酒、好きじゃないのに食べちゃうつまみ、嘘、全部大好き、飲んじゃえ飲んじゃえ。
好きじゃない。
これが、「好き」なわけが無い。
ヘドロみたいな色と粘性
吐瀉物混じりの饐えた匂い
誰もが眉を顰めるソレ
そんなものを、ズルズルと、今日も、引きずって。
今日は殺せるか、明日こそは殺せるだろうか。
確かめる度に、足首を掴まれて、血反吐の海へと沈んでいく。
自分は良くても、他人の嘲りは決して許せない。
他人は良くても、自分だけは決して許されない。
こんなのは嫌だ。
こんなものを「好き」にした自分が嫌だ。心底厭だ。
助けて欲しい。助けないで欲しい。
見て、聞いて、口を開いて、
目を閉じて、耳を塞いで、口を閉ざして、
何をしても、何をしなくても、分かるのは自分の形だけ。
ただ、思い知るだけ。
ああ、今日も捨てられなかった。
#好きじゃないのに
ネオンが照らす繁華街。
その一際目立つオブジェの真下に立ち、スマホをいじる。
『ピンクのカバンと茶色のコート着てます』
そうLINEの文面を打ち込み、あたしは一旦スマホをしまいため息をつく。
辺りを見渡すと、若いカップル、仕事終わりのサラリーマン、若い女性とおじさんなど、様々な人がこちらを歩いて過ぎていく。
皆、それぞれの思惑を抱えながら、夜の街に消えていく。
きっと、あたしもその一人なんだろうな。
幸せそうに去っていくカップルを一瞥し、顔を落とす。
そうしていると、一人の男性がちらりとこちらを見やり、駆けてきた。
あたしはにこやかな顔をして、出迎える。
あたしは今日だけ、あなたの彼女。
あたしは、金で買われた関係。
好きじゃないのに、
言い寄られて困ってるの。
…なんてセリフを言ってみたいものだな。
「好きじゃないのに」
もう好きじゃないのに目で追いかけてしまう好きな人
なんでだろう。もう好きじゃないのにな。気づいたら目に追っている。他の女子といるとなんかムカつく。
まぁいいや。今日は寝よう。
明日にはこの気持ちがなくなっているか、、、?
明日も明後日も明明後日も1年後も2年後も未来でも、
一緒に居たいな。
そう思いながら私は明日をむかえようとしていた。
好きじゃない。
そう思っても、気づいたら好きになってる。
人間ってそんなモン。
「自分は好きじゃない」って思ってても、
心の方が素直なんだよ。
だからもう、
「好き」なら「好き」で突き通しちゃえ。
“別れよう”
私はその言葉をぐっと飲み込んだ
桜の下で無邪気に笑う彼
半年前突然この人に告られた
同じクラスの人だなぁとしか思っていなかった私
一生懸命に告白してくるこの人に押され
ついつい承諾してしまった
すぐに言い直そうとしたけど
すごく嬉しそうなこの人を見て
つい押し黙ってしまった
そして初めて2人で迎えた春
日が暮れ始めたとき
突然彼が花見をしようと言い出した
バタバタ準備して今に至るが
私はまだ彼に言い出せていない
彼は私と居るとき
いつも笑顔だ
何がそんなに嬉しいのか
ずっと話しかけている
私もそんな彼を見るのは、、、
嫌いではない
嬉しそうに手を振っている
あれ?目が疲れたかな??
なんだか耳と尻尾が見える気がする
彼は大きな声で何か叫んでる
いつの間にかだいぶ離れてしまったようだ
私は彼の元まで小走りで向かった
前にいる彼が夕日と重なって
眩しくて目を細めてしまう
桜と夕日と彼
絵のようだ
そう思ってしまうくらい
綺麗な景色だった
彼の顔が見えるくらい距離が近づいた
すると彼は優しく微笑んで
手招きをする
彼はときどきそんな顔をする
私は息を整えながら彼の元へ行く
動悸は何故か治らない
桜の下にいる彼はずっと待っていてくれている
“別れよう”
そんな言葉はすでに風と共に去っていった事に
私はまだ気づかない
『好きじゃないのに』より
好きじゃないのに…私も最初はそうだったのにな…
陸上部に入部して少し経った。私は私の種目に命をかける。ただそれだけ。先輩は尊敬している。特に長距離のs…いや、言わないでおこう。走る姿勢が綺麗でつい目で追ってしまう。やっぱり今日もカッコイイ。部活に対して真剣に向き合っている。私もいつか余裕が出来たらあんな風に…。
ある日の事。私はいつものように部活に行き、セクションにわかれた練習をしていた。その時、誰かの笑い声がした。先輩だった。汚れのないあの笑顔は今でも忘れられない。そう、その時。私の胸は高鳴っていた。それからというもの、四六時中先輩の事を考えては勝手に気分が舞い上がってしまう。
「あ、私…先輩の事、好きになっちゃった」
好きじゃないのに…はもう既に好きという感情に変わっていた。
好き・好きじゃない・好き・好きじゃない…みなさんも幼い頃、経験したのではないでしょうか。花びらを一枚一枚ちぎりながら占うんですよね。実は私も少し前にやったんです。
幼馴染くんは私を弄(もてあそ)んでいる。スキンシップは多いし、距離は近いし。私は幼馴染くんに対して決してそのような感情はございません。ですが、最近厄介なことに少し避けられると心配になるんです。というか寂しく思うんです。親しくしては距離をおく。また親しくしては距離をおく。この繰り返し。そばにいるのが当たり前になるといないことを不安に思うようになるんですよ、これがね。そうして、私自身の想いが狂わないためにもという予防策を考えた結果。あの遊びに辿り着いた訳です。今丁度、3回目が終わりました。偶然に偶然が重なり3回とも好きで終わってしまう。こんなことを聞いたことはありませんか?
ー1度目は偶然。2度目は必然。3度目は運命ー
と。つまり、私が偶然だと思っていたことは偶然ではなかった訳です。私は好きじゃないのに…幼馴染くんの発言や行動に期待してしまう。これはもはや運命なのでしょうか。
最初は初心。ただそれだけの話だったのに。
男なんてみんな浮気するもんでしょ?
女なんてみんな察してちゃんでしょ?
好きじゃないこと笑顔で引き受けるやつとか異常じゃん。
笑顔でいればなんとかなるとか言い出したやつ誰だよ
【好きじゃないのに】
ネオンの輝く歓楽街の片隅。開いたスマホの画面に、無機質な文字が踊っている。高校の頃の同級生全員が、問答無用で登録されたメーリングリスト。そこから届いた一斉送信のメールの文字が、変わることのない事実だけを粛然と俺へと突きつけた。
(あいつが、死んだ……?)
古くさい慣習に縛られた狭い世界が窮屈で仕方がなくて、高校の卒業と同時に故郷を飛び出した俺と違い、家業を継がなければいけないからと寂れた田舎町に残った幼馴染。気分屋で悪戯好きだった俺のことを、幼い頃からいつも小姑みたいに叱りつけてきた、何もかもが正反対だったヤツ。
好きなんかじゃなかった。むしろ大嫌いだった。上京してきてからは一度も、連絡すら取っていなかった。昔からずっと、口を開けば喧嘩ばかりで。ああ、なのにどうして。
頬を冷たいものが伝う。こぼれ落ちた水滴が、スマホの画面を濡らしていく。手の甲で必死にこすっても止まることなく、まるで涙腺の制御を失ってしまったみたいに。
(……どうして俺は、泣いてるんだ)
わからない、何も。俺には全然、わからないんだ。
騒々しい都会の喧騒の向こう。バカだねと笑うかつてのお前の涼やかな声が、耳の奥で響いたような気がした。
テーマ“好きじゃないのに”
何でだろう。
嫌いなはずなのに、好きじゃないのに
こんなにも気になってしまうのは…
毎年毎年、泣かされて
辛い思いをしているのに
こんなにも考えないといけないなんて……
花粉症…っ
大嫌いなんだからね!?()
おのれ!自称 友達め!貴様らの連絡先など全て消し去ってくれるわ!
悩み事と見せかけた惚気も、他人を下げてまで主張してくる幸せも何もかも気に食わない。
好きじゃないのに付き合う理由なぞあるものか。くだらない。
そうやって簡単に何もかも綺麗さっぱり消せればいいのに。めんどくさくて勇気がない。
好きじゃないのに
自分のことは好きじゃない
でも♡押してもらえると嬉しいんだ
嫌いなやつが♡もらってても嬉しくないだろ?
好きじゃないのに、嫌いでもない
この承認欲求は くすぐったくて 悪くない
※お題を見てのお悩みエッセイになっています。
このお題を見てずっと悩んでいる。なにを書こう、分からん。好きじゃないのに〇〇(例 付き合っているとか、それを好きと言う私)ってことだろうなあ。その続きの言葉が浮かばない…。
悩んでいるうちにパッと浮かんだのは「好きじゃないのに仕事をしている自分」みたいな現実を直視するものだった。ぐええ
非課税の5000兆円欲しい〜
好きじゃないのに
好きじゃないのに
大人になると、好きじゃないのに
好きだって言うことありますよね。
例えば、姑が
これ、着る?って見せられた
デパートで買ったチュニック。
心の中では、あんまり好きじゃないし貰ってもきっと着ないと思うのに‥
ありがとうございます!とつても素敵だわーって言うんです。
大人の忖度ですかね。
姑には、子供たち面倒みて貰ったり、家では食べないような食材使ったお料理食べさせて貰ったり。他にも感謝することたくさんあって‥。
好きじゃないのに、好きって言う場面
大人になるといろいろありますよね。
『好きじゃないのに』
雨の中の二人。バス停が私達を濡らさない。君は好きな人いないのと問う。雨の音は、ため息を隠す。
君の手が、私の手に近づく。私はとっさに手を引いてしまう。
雨が止んでしまった。隣の君は、帰ろうかと問う。
私は、用事あるからとそっぽ向いた。先に行く君。
乾いていた、私の顔は濡れていた。
お題 好きじゃないのに
眠れぬ夜は外へ飛び出して
瞬く星屑を見つめてた
私の心に秘めているこの想いは
いつになったら言葉に出来るだろう
「好きじゃない」と誤魔化してた
私を捨てて生きて行く
あなたが欲しいから
貴女だけは、私の目の前でずっと笑っていてくれ
何故かそう願ってしまう
好きでもない貴女に、どうでもいいはずのあなたに
この気持ちは、いったい誰のものなのだろう
【好きじゃないのに】
「ねぇ見てみて!」
卒業旅行。高校生活最後の思い出。修学旅行は広島だった私達は、それぞれの進路を決める活動を終えて、千葉県の有名テーマパークに来ていた。私服で学校の友達と集団行動というのは、なんだか不思議な気分だ。
班は六人。女子は私と、なっちゃんとみっち。男子はヤマとキミ、もう一人はあまり関わりのないリオくんだった。
なっちゃんが手に持ってきたのは、六個入りのモチーフ付きキーホルダーセットだった。
「奮発して買っちゃった! みんなで持とうよ、お揃い!」
バイトを頑張っていたのはこのためだったらしい。
「私ピンク!」
「あっじゃあ私赤!」
「おー、俺黄色」
「俺どうしよ、緑」
皆で決める、ということはあまりない。大抵主導を取るのはなっちゃんかみっちで、私はだいたい最後だった。残ったのは青と白だ。
「かっちゃんは青か白好きだもんね!」
「かっこいいもんね〜!」
なっちゃんとみっちの、こういう言葉だけは好きじゃないな、と思う。
私は名前が勝己。字面だけだと男子にも見える。それに加えて、長いこと女バレにいたし、背も男子と並ぶくらいある。髪型は自分が好きでベリーショートにしている。
端的に言えば、とてもボーイッシュだ。別に男の子になりたいとかそういうわけではなく、それが自分の好きの形、というだけ。でも、好きな服はロングスカートとブラウスだし、今日はカバンも新しくしてきた。可愛いピンクのトート。白はあるけど、青の要素はない。
学校にいると、制服だからそのあたりのことが度外視されてしまうのは分かる。でも、私は自分から「青や白が好き」「男の子っぽくしたい」とは言ってないんだ。別に好きじゃない。好きなのはピンクとかブラウンとか、暖かみのある色だ。
ひょい、と私の横から手が伸びてきて、青い方を摘み上げた。
「ヤマ、黄色と交換してくれる?」
「ん? あ、おう」
ひょい、と手の中で交換されて、黄色いモチーフが私の前に差し出される。
「はい、黄色だけど」
その手の主は、リオくんだった。背は少し低くて、髪が肩に付くくらい長い。パッと見ただけだと、線が細くて、女の子みたいで、全然強そうとかそういうタイプじゃない。なのに、その時は本当に、彼のやることに誰も何も言えなかった。
私は手を出してそのキーホルダーを何とか受け取る。
「あ、ありがと……」
リオくんが、前髪の隙間から私を見上げる。
「好きなものは好きって言お、ね」
その、舌に、見間違えでなければピアスがついていて、私は思わずドッキリしてしまった。
「じゃ、僕、白貰っちゃうね」
みんなが呆気に取られているのに、リオくんは当たり前みたいな顔をして、持ってきたバッグ──パークの女の子のキャラクターが刺繍されたトートバッグに、キーホルダーをつけていた。
「ほら、早く行かないとパレード見る場所取られちゃうよ。それともアトラクション行く? 今の時間ならまだ空いてるよ」
歩き出した彼に、みんなも慌てたようについていく。私も後ろから着いて歩きながら、もし後で時間があったら、リオくんは何が好きで、何が好きじゃないのか、聞いてみようと思った。