このお茶は嫌いだ。甘ったるい匂いがするから。
この菓子も嫌いだ。中のドライフルーツが甘すぎるから。
趣味の合わないインテリアも、手元ばかり明るい照明も、何もかも嫌いだ。趣味が合わない。
それなのにここから動けない。
目の前でニコニコと笑うこの人の笑顔を見ているとそれだけで幸せで。悲しみに歪むところなど見たくないから何も言えずにいる。
それに、笑顔に見守られながら飲むお茶の温度は心地よくて、甘い香りが思考を溶かしてくる。蕩けたフルーツの風味が舌に絡みついて喉に落ちていく感覚が気持ちいい。
何もかも好きじゃないはずなのに、きっとこの味も景色も幸せに紐付いて消えないだろう。
好きじゃなかったけど、明日には好きになってしまっているだろう。
この人の笑顔に連なるものは、私の中で全部好きなものになってしまう。
3/25/2023, 12:13:40 PM