『奇跡をもう一度』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
奇跡の一枚
呼び出しの葉書に覚悟を決めて、家を出る。美容室には行ったし、メイクもバッチリだ。
以前のものを返却する。五年前の奇跡。あれは本当に可愛かった。その奇跡をもう一度。服の襟元を整え、カメラのレンズを見つめる。
「撮りま~す」
講習の後、番号を呼ばれ、新しいものを受け取る。
「……奇跡は起きなかったか……」
睨むような強ばった顔の運転免許証の写真に、私はガックリと肩を落とした。
お題「奇跡をもう一度」
『奇跡をもう一度』
何故かずっとここに居る私
誰も私を見てくれない
「あの!」
「え?」
これが私と、貴方の2度目の出会い
奇蹟をもう一度
何をもって奇蹟というのか
それは偶然ではないのか
幸せな結果ゆえに奇蹟と呼ぶなら
奇跡的な不幸は何と言うべきか
まあ個人的に奇蹟を感じた記憶が無いので、それをもう一度って、そんな贅沢言うなよって感じです。
私は今50歳。
たまに昔を振り返る。
叶うものならもう一度体験したい事がある。
それは、昔働いていた会社。
その会社での何気ない日常。
ごく普通の1日を過ごしてみたい。
あの頃には気がつかなかった大切な日々。
星の数ほどある都会の会社の中から、この会社を選んだ奇跡。
今は亡き社長を筆頭に、良くも悪くも昭和のおじさんたちが生き生きと働いていた懐かしい日々。
どうか願いが叶うなら…
1日だけでいい。
奇跡をもう一度…!
paki
静寂に包まれた部屋
チク、タク、と時計の音が響く。沈黙の中に、パラ、カサ、と時折ページがめくられ紙が擦れる音が混ざる。
パタン、と本を閉じたのは、黒髪の少年だった。感慨深そうに表紙を撫でると、顔を上げて部屋の主を探した。
銀髪を緩くまとめた部屋の主は、安楽椅子に身を預けて文字に目を走らせていた。それがまだ中盤であると見て取った少年は、新たな一冊に手を伸ばした。
それが交互に繰り返されていることを知るのは、時計だけだった。
別れ際に
「バイバイ」
変だな、と思った。いつもなら、またね、と言うのに。でも、その日はいつも以上に楽しくて、はしゃいで、笑ったから、その幸せな余韻が残っていて、深くは考えなかった。同じように「うん、バイバイ」と返して、手を振り合って別れた。別れてしまった。
それが最後になるなんて。
そうとわかっていれば。あの違和感を見逃さなければ。問い詰めていれば。
違う。例えそうしても、きっと彼女は本当のことなど言わなかった。
通り雨
「うひ〜冷たい!」
濡れた髪をタオルで拭う。ついで服と鞄の水も払えば、小さなハンドタオルはぐっしょりと重くなった。
飛び込んだ軒先は、古い民家のようだった。手持ち無沙汰に見回すと、レースのカーテンがかかった窓からぬいぐるみがのぞいている。首から看板を下げていた。
「アンティークショップ……ぱらぷるー?」
「はい。よかったら中へどうぞ」
「へ!?」
クマが喋った!? と思ったら、玄関から男の人が顔を出していた。
秋🍁
カサカサ、と足の下で乾いた葉が砕けた。
一歩、もう一歩と踏むたびに心地よい感触と音がして、段々足取りが軽くなる。さらに奥へ踏み入ると、たくさんの落ち葉を着込んだ山は空をも黄色く染め上げて、やがてくる冬に備えて最後の彩りを散らしていた。
息を深く吸い込むと、煙の匂いがした。目的を思い出して急ぎ足を進める。大木を越えると山が開けて、足元は土に変わった。パチパチと火が燃えている。
「来た来た。焼き芋できたよ」
奇跡をもう一度
あなたと出会った瞬間に
もう一度戻りたい…
ときめきで胸いっぱいな
あの頃…
あなたの顔を見るだけで…
笑顔になれる
そんな奇跡をもう一度
別に、ただのクラスメイトで、仲間で、腐れ縁なだけだ。情なんてサムいものはない。それなのに、いつまでもずっと、あの時浸っていられた眩しい青が心に残り続けている。
叶うならば、時を遡ってお前と出会うという奇跡を、もう一度やり直したい。
"奇跡をもう一度"
奇跡なんてものを信じていない。
いつも信じているのは、自分の身一つ。チャンスは二度と来ないかもしれない、だから目の前のすべてに常に全力で挑んできた。だから奇跡なんて絵空事を信じていない。起きたとしても、偶然そうなっただけ。けれど、
偶然を集めて重ねればいずれ奇跡になる。
そんな事を思わずにいられない事を、何度もこの身で感じてきた。まだ信じていないけれど、願わずにはいられない。「奇跡よ起これ、あの時のように」と…。
奇跡をもう一度、
起こしてください。
神様。
君は、運が強くて、
いつだって奇跡に助けられたじゃないか。
神様に守られてるんじゃないか?ってぐらいだったのに。
なんで
なんで今だけ、
神様。
奇跡をもう一度見たいだなどと、私は言いません。
ただ、もう一度、おまえの死に顔を思い浮かべることだけは赦してください。
【66,お題:奇跡をもう一度】
ああ、神様。私のこの不躾な行為をどうかお許しください
街から離れた場所に、ひっそりと佇む教会に小さな少年の姿があった
まだ10にもならないような子供だ、廃れ朽ちて廃墟と化した教会で床にへたりこみ
必死に両手を握り締め、祈りの言葉を呟いている
力を込めすぎて白くなった指先が、すがるように震えていた
「貴方に二度も頼ろうとするなんて、図々しいことこの上ない
恥じるべき行為なのは百も承知です、...ですがッ」
どうしても会いたい人が居るんです
「彼女は、私のせいで死にました。本来彼女は生きるべき人間でした
彼女の夢も未来も全て、私が奪ってしまった...」
竦み上がる喉から、やっとの思いで紡ぎだされる言葉は震えていた
お願いです、と涙ながらに懇願する少年の顔は、言葉遣いからは感じられない年相応のか弱さが見えた
「私は...ッもうどうなっても構いません、どんな罰も受けるつもりです
なのでどうか...どうか...ッ」
私のこの我儘を、どうか聞き届けてください
一生懸命二人で歩んできた
あれからもう10年という月日
この先もまた10年という
奇跡をもう一度歩もう
運が良い。それは、生まれながらに在ると思う。裕福な家に生まれたり、
良い親の元に生まれたり、『運が良い』の基準は人により…様々だろう。
どうしようも成らないことは、この世に沢山在る。
恐らく、どんなに時代を経ても、種類は変われど、ずっと残り続ける。
でも、困難を乗り越えた先に学べることは多い。
だから、苦労して、努力して、成功した人は、口々に『私は、運が良い』と
言うのだろう。
私は、まだ、『運が良い。』とは、到底、言えそうに無い。
私は、まだ、私より苦しみ…乗り越えた人を、この目を通して
見たことは無い。
私は、まだ、私より苦しんだ人を聞いたことは…無い。
内心、分かってる。
見聞きしたことが無いからと言って、存在しないことには…ならない。
私が見聞きした事が、全てでは……無い。
でも、どうしても、まだ、飲み込めないのだ。
頭では分かっていても、感情が追いつかないのだ。
きっと、私は……まだ、無知なのだ。
だから、まだ認められないのだ。
私より、苦労してきた人々のことを……。
私は、世間知らずの只の子どもだということが、まだ認められないのだ。
10/2「奇跡をもう一度」
蘇りの儀式は成功した。崖崩れの事故で土砂の下敷きになり命を失った我が妻は、再び生を取り戻したのだ。
目を覚ますなり、妻は息子の名前を口にした。
「あなた、ロビーは?」
「…君と同じ事故で死んでしまった」
「そんな…。あなた、お願い。私を生き返らせたように、ロビーを生き返らせて」
「それは…」
「お願いします。私の命をあげてもいいから。ロビーだけは、どうか…」
妻を再び失うわけには行かない。私はうなずいた。
「では再度、儀式の準備をしよう。部屋を出ていなさい」
妻が出て行った後、私は隣の小部屋を訪れた。
「やはり、そう言うと思ったよ」
小部屋の老人は笑った。
「構わん、わしの命をやりなさい」
「しかし…」
「良いのだ。妻も同じことを予想し、望んでおった。娘と孫のためなら何も惜しくはない」
義父はそう言って儀式の部屋に行き、魔法陣の中央に立った。
奇跡を起こすための準備は、整った。妻の母を、そして今度は妻の父を、儀式の生贄として。
(所要時間:9分)
何も不自由なく過ごせてる今。
3年前、大きなホールでたくさんの仲間たちと音を重ねあったあの時期が、とても懐かしい。
またあの奇跡を、もう一度体験できたなら……。
「ああ、神様! もうちょっとだけ、時間を伸ばして……。あの人に、もう一言だけ聞きたい!」
「君の願いは、聞き入れられた。どうか、グッドラック!」
視界が揺らぐ。
気がつくと、カイに私は膝枕されていた。
「カ、カイ!? な、なんで、一体なんでこんな状況に?」
「それは、セレナがして欲しいって言ったから」
カイは、相変わらずのほほんとした調子で答える。
細長い指が、おでこに乗っかった私の髪をつまむようにして触る。
カイは、私の銀髪の長い髪を撫で付けている。
「そ、そんなこと、私言ったかしら……!?」
(ああ、ありがとう、神様! 私の願いを叶えてく)て!)
私は神様に感謝を伝えた。
(ありがとう神様! 私、もうちょっとだけ、この幸せな時間を大切にします!)
「ねえ、カイ。聞きたいことがあるんだけど……」
「なんだい、セレナ」
「あのね、意を決して聞くわ。私を愛してるって、言ったあとの晩……」
それは、私が転生する前の夜。
私は彼の「愛してる」という言葉を聞いて、その人生を終えた。
なぜなら、そこでゲームが終わったから。
私はまた、ループという転生の輪に戻ったのだ。
神様は言った。
「お疲れちゃーん」
「って、それだけかい!」
この人生をクリアしてしまった私は、「愛してる」の後の言葉を聞くことが出来なかったのだ。
未練は他にもあるけど、私はもうこの人生十二ループはしてるもの。
「ねえ、愛してる。って、言って?」
「愛してるよ、セレナ」
「その次の言葉は?」
「結婚しよう、です」
彼はにこやかに爆弾発言した。
神様、撤回撤回。
もう一回だけ、この人生やり直させて!
私はテストで1位をとったことがある。だからこんな奇跡をもう一度体験したい。
2人で映画を見てた。恋人同士の片方の記憶が失われる映画だ。
隣で俺の恋人はすんすんすすり泣きをしている。俺は泣くところを見られたくなくて、ティッシュで目の縁を押さえて誤魔化してるけど、全然気づかれてるのはわかってる。
だって映画が終わった途端、君は俺をチラッと見てクスッとひと笑い。
「…んだよ」
「べつにー」
君はニヤニヤ。俺は照れ隠しにぶすっとしながら話を変えようと君に聞いた。
「なぁ。もし記憶なくなったらどうする?」
「今見た映画みたいに?」
「そう…今までの生活も俺のことも全部忘れちゃうの」
「えー…」
君は何度か首を右に左に振って、んーと思案顔。
「俺ねー、俺たちが出会ったのって奇跡だと思ってるわけ」
「なに急に」
「だからね。記憶なくなってもこれだけは覚えてて欲しいな」
「俺のことをってこと? それはズルいじゃん」
ううん、違うよ。
君はそう言って両手を組んで目を閉じて、祈るように言った。
「神さまお願い。奇跡をもう一度起こして、俺の恋人に会わせてくださいって――会えば、会えば絶対に、絶対にわかるからって」
▼奇跡をもう一度
【奇跡をもう一度】
無数の星々が輝く空に手を伸ばす
魔女は星を紡ぐ
星座を描くように、星々が巡り会うように
彼との想い出が詰め込まれた、数多の星が煌めく空に、魔女は1つ、また1つと星を紡ぎ星座を創り出す。
『…貴方に会いたい』
貴方の隣で見る、あの星空が好きだった
私に嬉しそうに星を教えてくれる、あの顔が好きだった
今思い返せば、彼との想い出が全て幻だったかのように想う
あれは全て夢だったのだろうか
淡い、泡沫の日々
だけど、決してこの胸に焼き付いては消えない
鮮烈な日々
ずっと、このまま私の胸から消えないで
例え私の中にある想い出が、全て夢か幻であったとしても、構わない
私の中で彼は生き続けるから
けれど、もしこの世界に奇跡が有るのだとすれば
私の願いが叶うのならば
また、もう一度彼に合わせて欲しい
嗚呼、星々よ。彼との想い出を煌やかせる、満点の星空よ
どうか、奇跡を起こし給え
もう一度、彼と巡り合わせ給え
終ぞ叶わぬ願いに想いを馳せ、魔女は今宵も星を紡ぐ。
奇跡をもう一度……。
もう一度どころか、奇跡なんて一度もお目にかかったことがない。
あのゲスに、人生を台無しにされたお蔭で。
人のおもいを躊躇いもなく踏みにじった売女……犯罪者・今井貞夫の娘、人でなしの今井裕子。
奇跡をもう一度……。
やってくるのは、奇跡じゃなくて鬼籍のほうかな?