「ああ、神様! もうちょっとだけ、時間を伸ばして……。あの人に、もう一言だけ聞きたい!」
「君の願いは、聞き入れられた。どうか、グッドラック!」
視界が揺らぐ。
気がつくと、カイに私は膝枕されていた。
「カ、カイ!? な、なんで、一体なんでこんな状況に?」
「それは、セレナがして欲しいって言ったから」
カイは、相変わらずのほほんとした調子で答える。
細長い指が、おでこに乗っかった私の髪をつまむようにして触る。
カイは、私の銀髪の長い髪を撫で付けている。
「そ、そんなこと、私言ったかしら……!?」
(ああ、ありがとう、神様! 私の願いを叶えてく)て!)
私は神様に感謝を伝えた。
(ありがとう神様! 私、もうちょっとだけ、この幸せな時間を大切にします!)
「ねえ、カイ。聞きたいことがあるんだけど……」
「なんだい、セレナ」
「あのね、意を決して聞くわ。私を愛してるって、言ったあとの晩……」
それは、私が転生する前の夜。
私は彼の「愛してる」という言葉を聞いて、その人生を終えた。
なぜなら、そこでゲームが終わったから。
私はまた、ループという転生の輪に戻ったのだ。
神様は言った。
「お疲れちゃーん」
「って、それだけかい!」
この人生をクリアしてしまった私は、「愛してる」の後の言葉を聞くことが出来なかったのだ。
未練は他にもあるけど、私はもうこの人生十二ループはしてるもの。
「ねえ、愛してる。って、言って?」
「愛してるよ、セレナ」
「その次の言葉は?」
「結婚しよう、です」
彼はにこやかに爆弾発言した。
神様、撤回撤回。
もう一回だけ、この人生やり直させて!
10/2/2023, 10:31:27 AM